※本稿は、千葉祥子『奪われない!お金を守る7つの習慣』(きずな出版)の一部を再編集したものです。
■同じ利回りでもコストで変わる手取り額
「同じ利回りなのに、お金の増え方が違うの?」
その疑問を持ったあなた、大正解です。
私たちのお金には、いろいろな形で「手数料」がかかっています。
投資するときも、手数料や信託報酬などが差し引かれます。
海外旅行に行くときに、円をドルに両替するときも、売値(Offer)と買値(Bid)の差があり、両替をした後に実際に受け取ったドルを見て「思っていたより少ない……」と感じたことはありませんか?
あなたが受け取れるお金は、こんな方程式で計算できるのです。
[実際に受け取るお金=利益−見えるコスト(手数料など)]
このように、表向きに見える利益と現実に受け取れるお金には、違いがあります。
手数料などのコストがとても大きい場合があるので、よく注意して見る必要があります。
さらに、そこに「見えないコスト」たとえば、投資を決めるまでに画面を繰り返し見ている時間、ドキドキするストレスなど、もあなたの心の状態で上乗せされます。
[実際に受け取るお金=利益-(見えるコスト+見えないコスト)]
■コストを意識し利益を出す3つのポイント
このコストを考えずに「利回り○○%も出ています」という言葉だけを聞くと、あとで残高を見て「あれ? もっと増えているはずだと思っていたのにそうでもない?」ということになりかねないのです。
「コストを気にするなんて窮屈そう」と感じるかもしれません。
私がいた外資系の世界では、コストを徹底してチェックしていました。
ある日、各自のデスクにあったゴミ箱がすべて撤去され、フロアに分別ステーションがつくられました。
ゴミ箱が減ったことで清掃の方の移動が減り、時間短縮することでコストを減らす。
この徹底したコスト意識は、衝撃的な出来事として記憶に刻まれています。
“コスト”を忘れないためのチェックポイントを3つお伝えしましょう。
① 手数料を必ずチェック:利益の中から「いくら引かれるか」
② 全体像(年間の総額)で見る:1年間の見込み利益を確認
③ 収益が出る分岐点を知る:手数料以上の成績が出てからが利益となる
高いコストには、それだけの理由があります。
そこに自分が納得できるかどうかが、大切なポイントとなります。
■減らすべきコストと増やすべきコスト
「蟻(あり)の一穴(いっけつ)」という諺があります。城壁(じょうへき)に蟻が開けた小さな穴から水がしみ出し、やがて城壁でさえも崩してしまう。お金も同じで、手数料などのコストを意識しないでいると、あとで大きな損につながりかねません。
だからこそ、その小さな穴を先にふさぐことがいちばん手堅い増やし方なのです。
もう一つとても大切なことをお伝えしましょう。
「見えないコスト」は状況によってはプラスに働くこともあります。
あなたが静かなワクワクを感じて、お金が増えることを楽しみに感じるときなどです。
急かされた焦燥感ではなく、お金に対する感謝の気持ちが湧き出ているときは、コストがプラスに働きます。
「目に見えるコスト」と「目に見えないマイナスのコスト」は減らし、「目に見えないけれどプラスに働くコスト」を増やす。
これが、お金を守って増やすための心得なのです。
■気軽にタップから始まる投資詐欺
「有名人もやってるし、儲かりそう!」
ふと目に留まったスマホの画面を、気軽な気持ちでタップ。
そのまま進んでみると、“アシスタント”から丁寧な説明を受け、LINEの専用グループへと案内されました。案内されるまま、金融サービスに契約。最初は小さな金額でしたが、「もっと投資しましょう」と背中を押され、投資額はどんどん増えていきました。
ところが、ある日突然連絡が取れなくなりお金も戻ってこない。
これは、警視庁の特殊詐欺対策ページで公表されている、実際にあった投資詐欺の事例です。
こういうことは、誰にでも簡単に起こり得ることです。
「あの画面さえ見なければ、こんなことにならなかったのに……」
と、あとからどんなに悔やんでも、もう遅いのです。
では一体、そのスマホに出てきた画面は何だったのでしょうか?
それはルールを守っていない金融広告の可能性が高いです。
金融広告とは、投資や口座開設へ人を誘導するために発信される情報のことです。
■知らないと危ない金融広告の共通点
メールやホームページのバナー、チラシ、テレビCM、ランディングページ(LP)はもちろん、SNSの投稿やインフルエンサーによる紹介であっても、企業などからの依頼や報酬、指示が伴うものは広告にあたります。
お金に関する広告には細かいルールがあります。それを守っているか、いないかで、その広告が信頼できるかどうかを見抜くことができます。
【気を付けたい金融広告のポイント】
□ 「必ず」「確定」「年○%保証」などと断言している
□ リスクなど大切な注意点が、読めないくらいの小さな文字や早送りで表示される
□ 会社名、連絡先、住所、登録番号が見当たらない
□ 「業界最安」「当社がいちばん」と謳いながらその理由は書いていない
□ 体験談や口コミのように見えて、実は広告である。それにもかかわらず、広告であることがどこにも開示されていない
一つでも当てはまったら、レッド・フラッグ(危険信号)です。
■見落としてはいけない小さな表示
SNSや動画での紹介も、金融広告にあたることがあります。
紹介料やポイントが入る仕組みなら、発信者は「勧誘する側」です。悪意がなくても、熱の込もった体験談は判断を鈍らせます。
投稿の端に小さく「PR」「広告」「タイアップ」「提供」とある場合は、広告なのです。
広告が全部悪いわけではありません。
見た目の演出にも気をつけましょう。派手なグラフの上昇、成功者の写真、ビフォーアフターの画像。過去のいちばんいい期間だけを切り取ったグラフや、仮定の数字を大きく見せるプレゼンテーションなどは、判断力を鈍らせます。
もし魅力的なサイトを見たら、この3つのステップを思い出してください。
① 「広告かもしれない」という前提で見る
② 小さな字を注目して読む
③ リンクは基本的に触らない
広告でも役立つ情報はあります。ただ、主導権は自分で持ちましょう。
こういった金融広告に関する注意点を知っていれば、騙されるリスクを減らすことができるでしょう。
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千葉 祥子(ちば・しょうこ)
エグゼクティブマネーライフコーチ/金融犯罪対策の専門家
LA MER BLEUE株式会社 代表取締役。ゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレー、PwCなど、世界的金融機関で28年間にわたり活躍。とくに金融犯罪対策の責任者として、マネーロンダリングなどのリスク対応に従事し、延べ2万人以上に研修・講演を実施してきた。心の限界を感じた経験から「お金と愛」「本当の豊かさ」のあり方を探究し、ライフコーチへ転身。
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(エグゼクティブマネーライフコーチ/金融犯罪対策の専門家 千葉 祥子)

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