肌を健康に保つためには何が大事なのか。東海大学医学部客員教授の平山令明さんは「毎日のスキンケアを続けることが大切だ。
ケアの内容は朝と夜では大きく異なることを知っておくといい」という――。(第2回)
※本稿は、平山令明『スキンケアの科学』(講談社ブルーバックス)の一部を再編集したものです。
■朝のスキンケアは1日を守る準備
スキンケアには大きく分けて「洗浄」、「整肌」、「保護」の3段階があります。基本的に朝と夜の2回、同じ3段階で行いますが、朝と夜では少しメニューが異なります。
●朝のスキンケアについて
朝のスキンケアの大きな目的は、これから始まる1日の活動中に肌の状態を守るための準備です。
その日に予想される活動や環境によって準備する内容も変わります。たとえば海や山に行く場合と職場に行く場合とではおのずと異なりますし、天候や季節によっても大きく異なります。
朝は忙しいので、スキンケアが手短かつルーティン的になってしまいがちですが、適切なスキンケアを朝行うことはとても重要です。
(洗浄)
就寝中には皮脂や汗が分泌されるため、布団などからの埃が顔にどうしても付着します。またターンオーバーで表面に出てきた古い角層細胞も肌の表面に付着しています。
これらの汚れは水洗いでは落ちにくいので、洗顔剤が必要になります。洗顔剤をよく泡立て、泡で顔を覆い洗浄します。

■朝の洗顔は優しく、素早く潤す
肌を強く擦るのは、皮膚を守るために必要な角層まで傷つける恐れがあるので厳禁です。優しく洗い、かつ洗顔剤や汚れが残らないようにすすぎます。肌からの水分を拭き取る時も、擦るのではなく、柔らかく吸湿性の高いタオルをそっと肌に押し当てて拭き取ります。洗顔時の水の温度はやや冷たく感じる32~34℃が適温です。
(整肌)
水で洗浄した皮膚の表面はとても早く乾燥しますので、素早く(5分以内に)化粧水で整肌を行う必要があります。
化粧水の主たる目的は、肌に水分を補給し、うるおいを与えることです。洗顔後の角層は敏感な状態にありますので、ここでも肌に擦りつけるなどの刺激は与えず、両手で包み込むように優しくつけます。
角層に十分なうるおいを与えることで以後のスキンケアを効果的に行うことができます。化粧水の成分はほとんど水ですが、その他の成分も含まれています。
それらの成分と働きについては、第3回で詳しくお話しします。
■朝のスキンケアは「守り」で締める
(保護)
整肌で行った保湿などの処置を保護するために、油分を多く含む乳液、美容液またはクリームを塗布します。ジェル状の化粧品などもありますが、油分の配合量の差により使い心地が異なるだけで、基本的な働きは同じです。

これらの化粧品には、肌の問題を改善あるいは予防することを目的とした成分が含まれます。たとえば、肌へのうるおいの補給、シワの改善と予防、美白、過剰な皮脂の対策を目的にした成分などです。これらの成分は、具体的な効果や効能を持っているので、有効成分とも呼ばれます。
朝のスキンケアの最後の仕上げは、日焼け止め(サンスクリーン)の塗布です。第1回で述べたように、紫外線の量が年々増加しており、室内にいても紫外線は少なからず浴びています。その日の活動や環境に応じた紫外線防御効果のある日焼け止めを使用する必要があります。
お化粧(メイクアップ)をする女性の場合は、この後でメイクアップのためのベースメイク(肌の質感を整える化粧)およびポイントメイク(眼の周り、頰および唇などに魅力を与える化粧)を続けて行います。基礎となるスキンケアをしっかり行っておくと、メイクアップもより効果的になります。
■夜のスキンケアは回復の時間
●夜のスキンケアについて
1日の活動を終えたあと、肌には様々な汚れが付着しているだけでなく、肌に悪影響を与える反応も進み始めています。そのため、帰宅後の早い時期にスキンケアを行うことが望ましいでしょう。朝と同様に洗浄、整肌、保護の3段階で見ていきます。
(洗浄)
環境の汚れや分泌された皮脂によって肌は朝よりもずっと汚れています。
メイクアップ、つまりお化粧をした場合には、それを落とす必要もあります。それらの汚れには油分が多く含まれ、通常の洗顔剤では落ちにくいので、クレンジング剤を使って洗浄します。
クレンジング剤には様々な種類がありますので、肌の状態や使用感の好みに応じて使い分けが可能です。
クレンジングの後に、朝も行った洗顔を再び行います。この洗顔の目的は、肌表面に残ったクレンジング剤の油分を洗浄すると共に、水溶性の汚れや古い角層を落とすことです。泡で優しく肌を包み、肌を擦らずに洗浄し、柔らかいタオルで優しく水分を拭き取る手続きは朝と同じです。
(整肌)
1日の活動した環境によっては肌の水分がかなり失われています。その水分を補給するために、まずは化粧水をたっぷり使って、肌に十分な水分が行きわたるようにします。
■スキンケアは毎日の積み重ねが大切
(保護)
肌に与えた水分が就寝中に逃げないように、乳液、美容液またはクリームの油分で優しく閉じ込めます。さらに、日中に乾燥、紫外線そしてその他のストレスによって傷んでしまった肌が劣化(老化)しないように、肌を健康で若く保つ効果のある成分を含む化粧品(乳液、美容液またはクリーム)を使います。
含まれる成分が有効であれば、傷んだ肌は就寝中に回復し、次の朝に触れた肌にみずみずしさ、ハリ、若さをきっと感じるはずです。
スキンケアは毎日の積み重ねが大切です。
化粧品中に含まれる成分にどんなに効果があっても、一夜にして若返りさせることはできません。前述したようなスキンケアのルーティンをこまめに続けるうちに、効果を実感できるようになるのです。
■新しい化粧品は試してから使う
日常的なスキンケアでは色々な化粧品を使います。化粧品は他の工業製品と同じように法律でその内容が規定されています。
医薬品や化粧品を規制する現在の法律の正式な名前は「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」ですが、やたら長くて不便なので「医薬品医療機器等法」さらには「薬機法」という略称で呼ばれています。
この薬機法では、化粧品は「人の身体を清潔にし、美化し、魅力を増し、容貌を変え、又は皮膚若しくは毛髪を健やかに保つために、身体に塗擦、散布その他これらに類似する方法で使用されることが目的とされている物で、人体に対する作用が緩和なものをいう」と定義されています。
スキンケアに使う化粧品の観点でいえば、「皮膚を清潔にし、健やかに保つために、身体に塗擦、散布その他これらに類似する方法で使用されることが目的とされている物で、人体に対する作用が緩和なもの」ということになります。
また化粧品は、ほぼ毎日のように使うために、原則として副作用があってはいけません。
ただ、個々人によって肌の質が異なり、通常の人には何の問題がなくても、敏感な肌を持つ人が使用すると、皮膚のかぶれやひどい場合には炎症を起こす場合もあります。
このような副作用は誰にでも、場合によっては突然起こることがあります。従って、新しい化粧品を使いたい場合は、試用して問題のないことをチェックすることをおすすめします。
■「化粧品」と「薬用化粧品」はどう違う
化粧品のコーナーで売られている製品には、この他に「薬用化粧品」があります。

「薬用化粧品」は化粧品としての効果を示す成分に加え、肌荒れ防止、美白などの効果がある「有効成分」を含んでいます。「有効成分」とは、その効能が厚生労働省によって認められた成分のことです。
「薬用化粧品」は化粧品と医薬品の間に位置し、「医薬部外品」とも呼ばれています。「薬用化粧品」の容器や外箱には「医薬部外品」と表示されています。
「有効成分」と似た言葉に訴求成分という言葉があります。これは化粧品メーカーが、その商品の特徴として謳っている配合成分であり、必ずしも有効成分ではありません。通常、有効成分には*印などが付けられ、明記されています。
薬機法では「化粧品」には全成分表示が義務づけられていますが、「医薬部外品」には全成分表示の義務がありません。しかし日本化粧品工業会など業界団体が自主的な基準で成分表示をしています。
医薬部外品の表示のある化粧品は、その効能・効果が認められた有効成分を、安全と考えられる濃度範囲で含みます。しかし安全な濃度範囲ということは、体質やその時の体調によっては悪影響も出る可能性をまったく否定できないことを一方で意味しています。医薬部外品である薬用化粧品の取り扱いは個人の判断に任せられていますが、この点は注意すべきです。

まとめますと、治療を目的とした「医薬品」、美容を目的とした「化粧品」、そして両者の間に位置し、予防や衛生を目的とした「薬用化粧品(医薬部外品)」があるということになります。
それぞれの特徴と違いについて、表にまとめておきます。

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平山 令明(ひらやま・のりあき)

東海大学医学部客員教授、理学博士

1948年茨城県生まれ。1974年東京工業大学大学院修了。インペリアル・カレッジ・ロンドン博士研究員、協和醗酵工業㈱東京研究所主任研究員、東海大学開発工学部教授、東海大学医学部教授、東海大学糖鎖科学研究所所長・教授、東海大学先進生命科学研究所所長・教授を経て現職。現在の主な研究課題は、コンピュータ科学を駆使した、より効率的で、より安全な医薬品開発。さらに人間のQOL向上につながる有用物質の探求・創製にも興味をもって研究活動を展開している。著書に『初めての量子化学』『「香り」の科学』『カラー図解 分子レベルで見た体のはたらき』『暗記しないで化学入門 新訂版』(いずれも講談社ブルーバックス)など。専門的でわかりやすい科学・化学の解説に定評がある。

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(東海大学医学部客員教授、理学博士 平山 令明)
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