仕事を要領よく進められる人は、何が違うのか。『AI分析でわかった 仕事ができる人がやっている小さな習慣』(アスコム)を書いた越川慎司さんは「資料作成に時間を割きすぎるのはよくない。
仕事ができる人の作業を分析してみると、例えばパワーポイントのスライドにはある共通点があった」という――。
※本稿は、越川慎司『AI分析でわかった 仕事ができる人がやっている小さな習慣』(アスコム)の一部を再編集したものです。
■仕事の遅い人は「やらなくていいこと」をやっている
頑張っても、頑張っても残業は減らない。真面目に仕事に取り組んでいるのに、なかなか評価されないという経験はありませんか? かたや、要領よくコンパクトに仕事を進めて、定時に上がっているのに、トップクラスの結果を残す人がいます。
2016年頃までは、頑張ってたくさん働けば評価されていました。しかし、今はより少ない時間で、より大きな成果を出さないと認められません。つまり、頑張り方を変えないといけないのです。
私は、業務改善コンサルタントとして、800社以上、17万3000人のビジネスパーソンの行動をAIで分析しました。その結果、見えてきたのが、仕事が遅く結果が出ない人の多くは良かれと思って「やらなくてもいい」ことをやっています。
かたや、仕事のできる人は、本質を理解し「何が必要で、何が必要でないのか」がわかっているので、必要ではないことを極力避けるように心がけて行動をしているから、仕事が速いのです。必要なことに時間と労力を注げば、結果も出やすくなります。
では、「やらなくていいこと」とはどんなことなのか。
それが、本書で指摘する「名もなきムダ仕事」です。名もなきムダ仕事とは、日々のルーティンに組み込まれ、一見するとムダだと気づかない仕事の数々を指します。
例えば、あなたが上司からプレゼン資料の作成を命じられたとします。あなたは張り切って、見た目も豪華な、説明がしっかり入った分厚い資料を作るかもしれません。しかし、それがクライアントに対するアピールになると思っているのであれば、それこそがムダなのです。
■過剰な気づかいで増える「忖度ページ」はムダ
働く時間のうち12%を占めるのが「資料づくり」です。ここでいう「資料」とは、たとえば会議用の発表資料、お客様へ提出する提案書、プレゼンテーション用のパワーポイント資料、そして、上司に提出する週報など。
資料の作成は、ムダな仕事の温床になりやすいもの。私は、パワーポイントの資料だけでも5万ファイルを調査。さらに企業の意思決定者826人に対し、資料作成についてヒアリングを実施し、その結果をAIで分析しました。そのうえで、どんなムダな仕事があるのか、その対策は何かをまとめました。
こうした資料づくりで、もっともネックになっているもの。
ズバリ言えば、それは「過剰な気づかい」! ムダな配慮によって、資料のページ数は増大します。私は、「過剰な気づかい」によって増えてしまうページのことを「忖度ぺージ」と名づけました。
思い出してみてください。「発表資料のこの部分は、部長からツッコまれる可能性が高いから、詳しい説明を入れておこう」とか、「役員は、必ず数字について聞いてくるはずだから、グラフを2つ追加しておこう」とか……心あたりがあるのでは?
役員会議など、かしこまった会議ほど資料のページ数が増える傾向が強くなりますが、残念なことに、調査では、こうした「過剰な気づかい」で増やした「忖度ページ」の8割はめくられてもいないという結果が出ています。
どんなに時間と手間をかけて作られようとも、見られることもない資料は、言葉は悪いですが、紙くずでしかありません。
■カラフルで文字数が多いパワポはNG
たとえば、大勢の前でプレゼンテーションをするとき。本当に説明に自信がある人は、ホワイトボードの前に立って、必要なことは、その都度、手書きしながら説明を進めたりします。逆に、凝りに凝ったパワーポイントやエクセルの資料を投影しながら説明する人は、実は自信がなかったりするもの。
もちろん全員がそうとは言いませんが、パワーポイントの達人は、意外と実質的な成果を生み出していないものです。達人なだけに、会議などで説明するときに、ついパワーポイントに頼ってしまうのかもしれません。
あなたも、もし、カラフルで、文字やグラフを詰め込んだ、凝りまくりのパワーポイント資料を作っていたら要注意! あなたの作る資料は、説明を受ける人たちの目をチカチカ、頭をクラクラさせているかもしれません。
せっかく、何時間も費やして作った資料が伝わらないのでは、時間のムダ。
努力が浮かばれません。お客様へのプレゼン資料なら、成約にもつながらず、骨折り損のくたびれ儲けです。
■“会社のエース”のパワポは「1画面105文字以内」
解決策として、パワーポイント資料5万ファイルを分析した結果得られた、「読んでもらえるパワーポイント資料」の条件についてお伝えしましょう。
5万ファイルのパワーポイント資料における、「1画面に入っていた文字数」の平均は380文字でした。作った人はよかれと思っているのでしょうが、この文字数では、進んで読んでくれる人はいません。事実、1画面に300文字以上入ったパワーポイント資料を作っている営業はあまり実績が出ていませんでした。
逆に、営業成績が高く、会社内でエースと呼ばれているような方たちが作るパワーポイントの「1画面に入っている文字数」を分析してみると、平均値の3分の1から4分の1、たったの105文字でした。
パワーポイント画面では、1画面の文字数はこの105文字以内にしてください。
文字を羅列するよりも、少ない文字数で、「要は何か」ということが10秒で伝わるようなパワーポイント資料が成果につながります。
■画面に使う色は「3色以内」
「メラビアンの法則」って、たぶん、1度や2度は耳にしたことがあると思います。ものすごく簡単に言えば、「人は55%の情報を視覚から得ている」という法則。
ですから、相手の目を疲れさせてはいけないのです! カラフルで、原色がバンバン使われているパワーポイント資料は、それだけで見る人の目が疲れてしまい、それ以上続けて見る気力を失うことがわかっています。

わかりやすいパワーポイント資料の条件は、「相手の目を疲れさせないこと」。ですから、パワーポイントの画面に使用する色は、「原色以外で3色以内」がベストです! 具体的には、真っ赤よりはあずき色、真っ青よりはダークブルーですね。
色数は3色以内と言いましたが、仕事ができる人の約4割は2色を使っていて、割合としては一番多いというデータもあります。
さらに高度なテクニックでは、白色をうまく使うと、より効果的だということもわかっています。白色とは、たとえば余白とか、白抜き文字のこと。重要な情報の周りに余白を入れたり、目立たせたい言葉を白抜き文字にしたりする。白抜き文字には、ろうそくのような効果があり、相手の頭に残りやすいことがわかっています。
■キャッチーな内容は左上に
画面を見たとき、人の視線というのは、左上から右下に向かって、対角線上に移動します。そのうえで、興味を持ったら左上から右上へと移動するのです。ですから、それを意識して、キャッチーな内容を左上に持ってくるようにする。目線誘導で、対角線上にアイコンを置くのが効果的です。
以上、「1画面の文字数は105文字以内!」「画面に使う色は3色以内!」「対角線を意識する」が、読んでもらえるパワーポイント資料の条件です。

この3点を、128社2万1308人の営業担当者に、2カ月間、トライアルで実践してもらった結果、資料の作成時間はマイナス20%を実現しました。さらに、商談の成約率は22%アップ! 作成時間が短くなって、成約率がアップするのですから、よいことずくめではありませんか。

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越川 慎司(こしかわ・しんじ)

クロスリバー代表

元マイクロソフト役員。国内および外資系通信会社に勤務し、2005年に米マイクロソフト本社に入社。2017年にクロスリバーを設立し、メンバー全員が週休3日・完全リモートワーク・複業を実践、800社以上の働き方改革の実行支援やオンライン研修を提供。オンライン講座は約6万人が受講し、満足度は98%を超える。著書に『AI分析でわかったトップ5%リーダーの習慣』、『AI分析でわかったトップ5%社員の習慣』(共にディスカヴァー・トゥエンティワン)、近著に『29歳の教科書』(プレジデント社)がある。

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(クロスリバー代表 越川 慎司)
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