スキンケア用品や化粧品、タオル、ドライヤー……限られたスペースがゆえに物があふれがちな洗面所。お片付け習慣化コンサルタントの西崎彩智さんは「お金の貯まらない家の洗面所は、とにかく物が多いので、掃除がしにくい。
自分の暮らしには何が必要で、実は何が不要なのかを見極めることが大切だ」という――。
■お金の貯まらない家の洗面所にあるもの
洗面所を一目見れば、その家が「お金の貯まる家」か「貯まらない家」かわかります。
理由は単純で、お金の貯まらない家の洗面所というのは、とにかく物が多いからです。ちょこっと残った化粧水や美容液など、実際にはほぼ使っていないスキンケア用品のボトルや、ファンデーションやチークなどの化粧品、ヘアスプレーやヘアクリームといった整髪料、そして絶対に同時にすべてを使うことはないであろう洗剤が何本も並んでいます。
特に洗剤は、洗濯洗剤もあれば、襟用、おしゃれ着用、柔軟剤、お風呂のバスタブ用、洗面台用、パイプ用……など、「そんなにこだわって洗い分けるの?」と聞きたくなるくらい何種類もあることが少なくありません。
また引き出しにも、石けんやシャンプーなどのストックがいっぱい。家族によって使う物が違うと、それだけですごい数になります。なぜか、洗濯ネットが何十個も出てきた家もありました。
さらに壁にも、いろいろなものが吊るしてあります。洗濯ネットにスポンジやブラシなどの掃除グッズ、子ども用の防水のおもちゃなど、やたらめったら物がぶら下がっている。
■キレイになる「かも」という幻想
それから「床置き」もよく見る光景です。過去、いちばん衝撃的だったお宅は、床に足の踏み場もないほどボトルやハンガーなど、あらゆるものが積み重なり、散らかっていて、バスマットも敷けない。
だから、お風呂上りは自分が脱いだ服をバスマットにしているという……。
なぜ、これほど物が増えてしまうのでしょうか。それは、このスキンケアや化粧品があればきれいになる「かも」、この洗剤があると家の中がピカピカになる「かも」という自分への期待感から。直視したくない現実(散らかった家)から、理想をえがくことで一時的に逃げられて心が楽になるため、つい買ってしまうのです。
またスーパーやドラッグストアで「特売日だったから」と、買いだめしてしまうケースも少なくありません。まだあるものを「安いから」という理由だけでストック買いして、結果的に使用期限が切れるまで放置しやすいのは、キッチンの食品と同じです。
ここではっきり伝えておきたいのが「かも」や「安かったから」で購入したものは、実は、大体なくても困りません。これこそがむだ遣いで、塵も積もれば総額は大きくなるので、なかなかお金が貯まらない原因になっているわけです。
■タオルを見ると家計がわかる
お金の貯まらない家は、とにかく物が多いので、掃除がしにくいですね。
でも洗面所は、服を脱ぎ着する場所なので、ほこりが溜まりやすく、髪の毛も特に溜まりやすい場所。掃除をしないと、すぐに薄汚れてきます。
薄汚れているといえば、お金の貯まらない家には、タオルがやたらとたくさんあるのが特徴です。
そのどれもが、黒ずんでいたり、生地がゴワゴワになっていたり、くたびれています。そして、なぜか箱に入った新品のタオルは、洗面所の棚の上のほうに置いてあり存在を忘れられている……。
反対に、お金の貯まる家の洗面所とは、どういう状態か。多くの家は掃除が行き届いていて、外に出ているものも最小限。そしてタオルは、枚数は少ないけれど、どれもキレイな状態が保たれています。お金持ちの家に泊まりに行くと、必ずと言っていいほど、キレイなタオルが出てきます。これは心に余裕があるからでしょう。余裕がなければ、くたびれたタオルを買い直すという発想もわいてきません。
■1年に一度、3590円の出費は「無駄」じゃない
そもそも多くのタオルの寿命は、約1年と言われます。ちなみに、わが家のタオルは、フェイスタオルが10枚だけ。「タオル研究所」で1年に1回、10枚買い直しています。タオル研究所のフェイスタオルは、10枚で3590円(2025年6月26日)ですから、1年に一度、3590円の出費で、いつもキレイなタオルが使えるわけです。
これは本当に気持ちが良いので、おすすめです。新年に向けて、くたびれたタオルの断捨離と大事に使いたくなる厳選タオルの買い替えを、年内にしてみてはいかがでしょうか。
バスタオルは干す場所をとるし、なかなか乾かないので、あるときから使わなくなりました。以前は「バスタオルは必要」と信じ込んでいましたが、フェイスタオルで十分に代用できます。こういった今までの常識を疑うことも、片づけには大事です。
もちろんバスタオルを否定しているわけではありません。大きなバスタオルで包まれながら拭くのが好き、など、そこに幸せや癒やしを感じている人は多くいるでしょう。ですが、きっとその人はバスタオルもきれいに洗って干して、管理しているはず。自分の暮らしには何が必要で、実は何が不要なのかを見極めることが大切なのです。必要なものは、自然と管理が行き届き、不必要なものは放置されていきます。
■洗面所の片づけ3ステップ
では洗面所は、どこから片づけていけばよいのか。3ステップで考えていきましょう。

(1)「使っている物」と「使っていない物」を分ける
使っていない化粧水や化粧品、整髪料などをまず処分しましょう。特に化粧品は一度口を開けたら、2年ぐらいしかもたないにもかかわらず、使わないままに長く持っている人が意外と多くいます。
去年の冬に買ったけれど一度も使っていないクリームは、今年の冬にも使いません。そういった季節ごとのアイテムも、今すぐ使うか、使わないのであれば場所をとるだけなので始末しましょう。
洗剤類も、本当に必要かどうか疑ってみましょう。例えば、カビキラーとキッチンハイターは、どちらも塩素系漂白剤で、成分はほぼ同じ。ならば、どちらか一つでいいだろうと思います。それ以前に汚れを溜めないようになれば、強い洗剤も必要なくなります。
とにかくアイテムは最低限に絞り、収納に入るだけと決めましょう。
■ドライヤーはフックにかけて準備を時短に
(2)導線を設計する
どこの家も、朝の洗面所は、洗顔をする人、化粧をする人、ドライヤーをかける人と、戦場さながら。家族が毎日使う物は、取りやすく、戻しやすい場所に置いておかなければ、使いっぱなしで放置されて、洗面所がすぐに物であふれてしまうでしょう。
わが家の場合、外に出ているのはドライヤー、ハンドソープ、アルコール除菌、そしてゴミ箱の4点です。
ドライヤーはコードを巻いて伸ばしてを繰り返したくないので、美容院のように右側のフックにかけて、時短を目指しています。
ハンドソープやアルコール除菌を出しているのは、使うのを忘れないようにするためです。なんでも収納して隠せばいいというわけではなく、使わないと! と思っているものは、すぐに目に入る位置に定位置管理するのがおすすめ。
ゴミ箱は、なるべく床にもの置きたくない(掃除がしずらくなる)ので、コンパクトサイズのゴミ箱をカウンターに置いています。置く場所がないという受講生さんには、洗面所の洗濯機に磁石でフックをつけて、そこにゴミ袋を引っ掛けるようにアドバイスしました。
■片付けば、不要な出費が減っていく
しまってあるのはスキンケア用品、歯磨きセット、洗剤、タオルなど。特にスキンケア用品は鏡台の扉の中に、クレンジング、化粧水、美容液、目元クリーム、日焼け止めなど上から使う順に並べてあります。使ったら順番に、どんどん戻していけばいいだけなので、使いやすいですし、整理も簡単。歯磨きセットも鏡台の扉の中、洗剤とタオルは、カウンターにしまってあります。
ちなみに化粧品は、すべてポーチにいれているので、毎日そこから出して化粧をして、またそこにしまう。出張や旅行のときは、それごと持っていきます。
物を減らせば、掃除しやすくなり一石二鳥です。

(3)掃除アイテムは取り出しやすい場所に
汚れやすい洗面所は、掃除の習慣が特に大切な場所です。片づけられたら、掃除の習慣をつけていきましょう。
床は、ハンディ掃除機で汚れをとるのがおすすめ。私が子どもたちと住んでいたときは、ハンディ掃除機を洗面所の引き出しに入れておき、「朝の支度が終わって、自分が洗面所から出るときに必ず最後に掃除機をかけてね」という約束をしていました。そうすれば、次の人が気持ちよく使えます。
洗面台やおふろの掃除は、毎日のことなので、洗剤や掃除グッズなどは洗面台の下、扉を開けてすぐの取り出しやすい場所に置いておきましょう。蛇口や鏡にたまりやすい水あかは、放置したあとの掃除は大変ですが、お風呂上りに毎日さっと拭いておけば、こびりつくこともありません。
先述したように溜めると落ちなくなり、強い洗剤が必要になりますが、溜めなければ、それも使わずに済むし、そもそも買う必要もない。不要な出費を減らすことにつながります。
■家が散らかっている…罪悪感を手放そう
洗面所を片づけたらお金が貯まるようになった、という人は実際に多いです。
よく聞くのが「使いかけのコスメを処分した」という人。実際に捨てるという行動をとおして「もったいない」を感じ、むだ遣いに気づいて、それ以降は1本を使い終わるまで買わない、買い控えるようになる……という人が多いようですね。ストックを見直すことで「ドラッグストアの特売日に行かなくなった」という人もいました。何かがなくて困っているわけじゃないのに、特売日を理由にしょっちゅう行っていたことに気がついたって。行くと何か買いたいとなりますから、そもそも足を運ぶ回数を減らせるのは良いですね。
物を減らして片づけることで、物を探す時間やメイクにかける時間、家族との洗面台の奪い合う時間まで減って、朝がラクになったと話してくれた人も。いい気分で職場に向かえるようになったことで、仕事のパフォーマンスも上がったそうです。仕事のパフォーマンスが上がれば、稼ぎが増える機会にも恵まれやすくなります。本当にたかが片付け、されど片付けで、片づけるだけで「出ていくお金」「入ってくるお金」が徐々に変わっていくのを感じられると思います。
洗面所というのは、人が来たときに貸すことのある場所。いつでも人が入れる状態になっているのが大切ですから、ささっと毎朝掃除をして、よどみをなくしてほしいと思います。見て見ぬふりする罪悪感をはじめとするよどみがなくなれば、いつもスッキリした気分でいられるでしょう。

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西崎 彩智(にしざき・さち)

お片づけ習慣化コンサルタント Homeport代表

1967年生まれ、岡山県出身。大学卒業後、住宅メーカーのインテリアコーディネータとして従事。結婚し、20年専業主婦を経験したが離婚。その後はヨガスタジオの店長としてスタジオに通う多くの女性のさまざまな相談に応じる。2015年、得意の片づけを生かして起業。お片づけ習慣化講座「家庭力アッププロジェクト」修了生は全国で3000名を上回る。

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(お片づけ習慣化コンサルタント Homeport代表 西崎 彩智)
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