仕事を効率よく進められる人は、何が違うのか。『』(アスコム)を書いた越川慎司さんは「真面目な人ほど懇切丁寧に資料を作ろうとするが、それは間違いだ。
情報を詰め込むほど“読まないでください”と言っているのと同じで、結局誰の目にも留まらずムダになる」という――。
※本稿は、越川慎司『AI分析でわかった 仕事ができる人がやっている小さな習慣』(アスコム)の一部を再編集したものです。
■上司からの「差し戻し沼」に陥らない方法
会議の資料や提案書など、上司からの指示を受けて、何日もかけて作成したあなた。締め切りの前日に持っていくと、資料を見た上司から、耳を疑う言葉が。
「なんなんだ、この資料は? 指示したこととぜんぜん違うじゃないか! 今晩中に作り直してくれ!」(うそ! 指示どおり作ったはずなのに!)
そう思ってもあとの祭り。結局、翌日の会議の直前まで修正に追われることに。締め切りがあればまだいいほうかもしれません。
自分では、もらった指示どおりに完璧に作ったと思って、自信満々に見せた資料が全否定されて、差し戻し。一から全部作り直して再度提出すると、またしても差し戻し。また、全部作り直して持っていったら、また、差し戻し……。最終納期がなくて、差し戻しの理由もわからないと、そのような底なしの「差し戻し沼」にハマってしまう可能性もあります。
そんな、ボタンのかけ違いに起因する「差し戻し沼」にハマらないための解決策として、私が提唱しているのは、「フィードフォワード」という方法です。
「フィードバック」というのは、終わったあとに意見を聞くことですよね。これに対して、「フィードフォワード」は、作成途中で意見を聞くということ。
■「20%の出来」で上司に持っていく
たとえば、上司から指示されて資料を作るときは、だいたい全体の20%くらいまで(2枚程度)できたら、「こんな感じで作っているのですが、イメージは合っていますでしょうか?」と、ゴールイメージがずれていないかを聞いてみるのです。なんなら、資料を作りはじめる前に、資料の目次や予定ぺージ数を先に見せるのもよいでしょう。
そうすれば、それを見た上司は、「30ページなんてとんでもない。3ページでまとめてくれればいいよ」とか、「目次のこれとこれは要らない」とか「もう少し、データを中心にまとめてくれないかな」なんて、言ってくれるはず。
たぶん、その言葉を聞いたあなたは、「もし、フィードフォワードしないで、最後まで資料を作っていたら、どれだけ時間をムダにしただろう」って、胸をなでおろすことでしょう。
2万5327人を対象に、この「フィードフォワード」を実施した結果、なんと、差し戻しが74%も減る(20代では87%減!)という結果が出ています。効果は絶大ですので、資料づくりの際は、ぜひ、実践してください。
なお、この「フィードフォワード」は、お客様に対しても有効です。お客様への提案書も、2割くらいまで完成したら、「こんな感じで、求めておられるニーズと合致していますか?」と、お見せしてしまうのです。それだけで、お客様に対して、「ネガティブサプライズ」の提供を避けることができ、成約率が2割アップするという結果が出ています。

■「資料は1枚にまとめろ」を真に受けてはならない
ひと昔前まで、「発表資料は1枚にまとめなさい」というのが流行っていました。これが呪いの言葉になって、A3用紙1枚に、何から何まで詰め込んだ資料を作っている会社があります。枚数が減っても、それでは本末転倒。誰も見てくれない資料の出来上がりです。
「1枚でまとめるんだから、時間と労力が減っていいんじゃないの?」と思いましたか。
テンプレート化して、必要最小限の必須情報を漏れなく、コンパクトにまとめるのはいいんです。あくまでもそれは、見た人が、パッと短時間で全体像を把握していただけるようにするのが狙いです。枚数にこだわって、全部読むのに20分くらいかかる内容を1枚に詰め込んでしまったら、意味がありません。まるで飲食店の特盛メニューのようです。
紙の資料だけでなく、「発表資料は1枚にまとめなさい」という言葉だけが受け継がれて、パワーポイント資料でも、1画面にギッシリと情報を詰め込んでいることもあります。
第1回で「パワーポイント資料では、1画面の中に入れる文字数は105文字以内がよい」とお伝えしました。それなのに、ギッシリと情報を詰め込むなんて、「どうぞ、読まずにスルーしてください」と言っているようなものです。

実際に情報を詰め込んだパワーポイント資料の悪い例が図表2です。こんな資料を作っているようでは、1枚といえど時間がかかってしまいますし、相手に読まれない資料を作ることは、言うまでもなく時間のムダづかいです。1枚目にこの資料を見せられたら、「さようなら」って言いたくなりませんか?
■資料の1枚目は「10秒で伝わる」がベスト
資料の1枚目は、10秒で「要はこの資料はこういうものです」という中身が伝わることがベスト。それを意識して、とくに1枚目は、見た人ができるかぎり短時間で全体像を把握できることを心がけましょう。「1枚目は全体を把握するためのさわり」「2枚目以降は補足資料」と割り切ってもよいくらいです。
また、リモート会議では、小さい文字を使用すると、画面共有した相手に見えません。ですから、パワーポイントの文字は、少なくとも24ポイント以上の文字を使ってください。
大きな文字で引きつけておいて、「重要なポイントはこれです。詳細についての資料は、のちほど、メール・チャットで送ります」とやれば、「人は、完結せず、途中になってしまった事柄のほうが記憶に残りやすく、その先に興味を引かれるという効果」によって、8割近くの人が、メール・チャットを見てくれます。
この効果は、「ツァイガルニク効果」と呼ばれていて、テレビCMで、「続きはwebで」などというのも、この効果を狙っているのです。
■「細かいところ」まで説明しなくていい
真面目な人ほど、懇切丁寧な資料を作ってしまいがちです。「ちゃんと、細かいところまで説明しなければ」という思いがアダとなって、かえって、「わかりづらい資料」を作ってしまうのです。

そんな資料では、1ページ目を見た瞬間に、相手は先を読む気を失います。細かい文字がびっしりと詰まって「え、これ読まなきゃいけないの?」と、げんなりしますよね。単に読むだけではなく、大事なポイントを読み解き、自分の頭で整理するのはなかなかに疲れるものです。たとえるなら、どこに埋まっているかわからないお宝を探すようなものです。読むほうはイライラして、読もうとすることすらやめてしまうことになってしまいます。
パワーポイントの説明資料なら、先を聞く気がなくなって、まぶたがどんどん重くなる……。資料の究極の目的は、「作ること」でも「提出すること」でもなく、「見た人を思いどおりに動かすこと」であると私は思っています。
見た人が、「これはわかりにくい」と思って、途中で興味をなくしたり、「最後まで我慢して読んだけど、結局、何をしたらいいの?」と思ったりするようでは、ただの紙くず資料になってしまいます。そうならないためには、いったいどうしたらよいのでしょう。
■最初の3行に「要点」「結論」を書く
ちなみに、パワーポイントの説明資料について調べた結果、78%の意思決定者は、たったの10秒で「これはわかりやすいプレゼン資料かどうか」を判断するという結果が出ています。
勝負は最初の10秒! せいぜい、最初の3行です。
持ってまわった説明を続けて、最後の最後に結論がくる……と、そんな資料にお付き合いしてくれる人はまれだということです。
できるだけシンプルな資料が望ましいのです。
私も、とっとと結論を言いましょう。
「読んだ人に動いてもらえる、わかりやすい資料」にするためには、次の2点を意識してください。
・最初の3行に、要点や結論が書いてある。

・最後には、「相手に求める行動」が書かれている。

2つ目の「求める行動」については、さらに、「それをやることで得られるベネフィット(利益や恩恵)」があれば、動いてくれる確率はさらに高まります。資料で、誰かを動かしたいというのであれば、ぜひ、この2つを心がけてみてください。

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越川 慎司(こしかわ・しんじ)

クロスリバー代表

元マイクロソフト役員。国内および外資系通信会社に勤務し、2005年に米マイクロソフト本社に入社。2017年にクロスリバーを設立し、メンバー全員が週休3日・完全リモートワーク・複業を実践、800社以上の働き方改革の実行支援やオンライン研修を提供。オンライン講座は約6万人が受講し、満足度は98%を超える。著書に『AI分析でわかったトップ5%リーダーの習慣』、『AI分析でわかったトップ5%社員の習慣』(共にディスカヴァー・トゥエンティワン)、近著に『29歳の教科書』(プレジデント社)がある。


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(クロスリバー代表 越川 慎司)
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