効率がいい人は、何が違うのか。『A』(アスコム)を書いた越川慎司さんは「メールの処理に時間を割きすぎると、本来の業務に手が回らなくなってしまう。
仕事ができる人を分析すると、件名や本文にある工夫をこらしていた」という――。
※本稿は、越川慎司『AI分析でわかった 仕事ができる人がやっている小さな習慣』(アスコム)の一部を再編集したものです。
■メールチェックには、意外と時間が取られている
メール、チャットにまつわる作業は、仕事全体の9%を占めています。みなさんも「メールチェックに時間を取られすぎて、本来の業務にまで手が回らない」という悩み、心あたりがあると思います。まさに、「名もなきムダ仕事」の宝庫と言っていいでしょう。
たとえば、「○月○日に送ったメール、見てくれていますか?」というメールは、世界一ムダなメールだと思っています。
音沙汰がないために、ちゃんと読んでもらえたかどうか不安になり、このようなムダが発生してしまうわけですが、メールの弱点は相手の状態がわからないこと。外出中なのか、休暇中なのか、会議中なのかわからないのです。幸いなことに、今や56%の企業が社内メールからチャットへと移行をして、相手のプレゼンス(状況)がわかるようになりました。
すると今度は、「メール時代の長文のクセ」が抜けない人がいたり、テーマごとに細分化されたチャットなのに、関係ない書き込みを延々としてくる人がいたり、チャットの会話が外部にダダ漏れになったりと、あらたな問題が湧き上がってきました。
メールに関する悩みあるあるでとくに多いのが、過去の関連メールを探す作業。また、大量に届く自分の仕事とあまり関係のないメールの捌き方に苦心している方も多いと思います。

本稿では、メール・チャットまわりで、自身の仕事の効率化に加え、一緒に仕事をしている上司、同僚、部下の時間泥棒にならない方法という視点からのメソッドをお伝えします。
■「CCメール」は“聞いてない”を防止するが…
有給休暇の翌日、出社してメールを開いてみると、そこには未読メールの山が……
「なんだよ、メールがこんなに溜まっているのか……。しかも、そのうちのほとんどはCCメールじゃないか! まあ、とりあえず送っておこうという気持ちはわかるけど、読むほうの身にもなってよ。全部に目を通していたら1日が終わっちゃうよ」
いっぽう、送る立場になると、たとえば、「とりあえず部門長にも」「関連部門にも」と保険をかけてしまう気持ちもわからないではありません。あとから「そんな話は聞いてないぞ」と言ってくる部門長がいたりしますから、その予防策なのですね。
部門長とまではいかなくても、会社でそれなりの中堅クラスになると、上司や部下、他部門とのプロジェクト関連や取引先などから、たくさんのメールが届きます。できれば、それほど関係が深いわけではないCCメールについては、送ってほしくないのが本音でしょう。
「あとから何か言われないように、あの人にも、とりあえず送っておくか」
そんなノリで送られる「とりあえずCCメール」が増える原因は、「過剰な気づかい」や「忖度」、そして、「心理的安全性」がないことです。もし、心理的安全性が確保されていたら、「あとで送っていないことがわかったら文句を言われるのではないか」とは思いません。
■情報共有は【共】、アクションを求めるなら【求】
しかし、いくら「過剰な気づかいは要らない」と言っても、CCメールから外していたために、「聞いてないぞ」と怒り出す方が本当にいますから、送るほうとしてはリストから外すという判断はなかなか難しいところ。
そのせいで、重要度の低いメールが、ボックスに蓄積し、仕事の足を引っ張ってしまいます。
今まで、多くの企業に「ムダなCCメールはやめるべきです」という助言をしてきました。
しかし、いくら「べき論」を言っても守られることはありませんでした。すでにお気づきかと思いますが、いくらアナウンスしても、それだけでは意味がありません。問題の本質は、ほとんどの企業でCC運用の明確なルールがないことです。
あらかじめ、「こういうメールのときは部長まで送る」、「こういうメールのときは課長まで送ればよい」などと送り先をルール化してしまうのが1つの方法。このように、「CCに入れる人の範囲」をルール化すると、CCメールの数は13%減になるという結果が出ています。
もう1つは、メール件名で内容をすぐに理解させる方法です。「要は何か?」を受信者が理解すれば適切なアクションを取ることができます。
・情報共有だけのメールは【共】と冒頭に入れる。

・資料提出などメール受信者にアクションを求めるメールは【求】と入れる。

一例をあげると、こうした方法です。こうしておけば、情報共有は受信フォルダから別のフォルダにいったん振り分けたあとに、時間のあるときに見ることもできます。
■メールの件名に「自分の名前」は最悪
「こんにちは、田中です」

「お疲れさまです」

「お久しぶりです」
実際によく見かける社内メールのタイトルです。
なかには、「田中です」「田中です」「田中です」と、延々、メールの件名を自分の名前で続けてくる人もいます。
このタイトル、意識せずに使っている人もいるでしょうが、何が問題だと思いますか? このタイトルが時間泥棒になっている理由とは?
それは、タイトルを見ても何のメールなのかわからないからです。それに、「えーと、あの件のメールはどこだっけ」と過去のメールを探すときも、同じタイトルばかりで、なかなか見つかりません。いちいちメールの中身まで見て、やっとの思いで探していたメールにたどりついたという経験がある方も多いでしょうつけるほうは、とくに何も考えずにつけたことが丸わかりのズボラな件名です。
ある出版社の編集者さんが、こんなことをおっしゃっていました。
「小説のタイトルと違って、ビジネス書のタイトルは、一見して、何について書かれている本なのかが読者に伝わることが重要。書店やネットの画面で表紙を見た人に、『この本を読めば、自分が抱えているこんな問題が解決しそうだ』と、一瞬でわかってもらえないと、買ってもらえない」
■件名には「要点+何を求めているのか」を入れる
メールの件名も同じです。
件名を見た相手が、「何に関するメールなのか?」「自分にどんなアクションが求められているのか?」がわかる件名をつけることが大切。そうでないと、スルーされてしまいます。
たとえば、こんな件名なら、とりあえず読まなくてはと思ってもらえるのではないでしょうか。
「○○会の出欠確認の件」

「○○書類の提出期限」

「承認依頼:○○社向け提案資料」
こんな件名なら、要点と求めるアクションがひと目でわかります。内容がひと目でわかるメールの件名を送り合うための解決策としては、CCメールの送り先範囲と同様に、メールの件名も、チーム内で話し合ってルール化するのがよいでしょう。

一度ルール化してしまえば、少なくとも、意味不明なメールの件名によって、余計な時間を費やさなくてもよくなります。
ルール化が難しい場合でも、あなたが率先してわかりやすいタイトルを使えば「お、これは見てすぐ理解できるから、私も真似してみよう」という人も増えてきます。あなたの社内的な立場にかかわらず、周囲のお手本になるような振る舞いをすれば、社内外で評価が上がります。ぜひ、実践してください。
■「熱意のこもったメール」は伝わらない
メールを読んで、次のように思ったこと、ありませんか?
「取締役からのメールを読んだのだけど、なんだか、売り上げが伸びずに業績が低迷していて、このままでは、今期の目標達成が難しい。今こそ、全社員が結束のとき……みたいなことが、延々と書かれていたけど、あれ、結局何が言いたかったの?」
語りたい年配者が書いてしまいがちな熱いメールの欠点は、長いだけではありません。熱い気持ちが先に立ってしまって、何を伝えたいのかがわからないことが多々あります。こういうメールを送られても、読まされた人たちは、いったい何をすればよいのかがわからず、「あ~、そうなんですね」と思うだけ。これでは、ただの空回りです。
語りたい年配者だけではありません。気をつけないと、あなただって、そんな「相手に伝わらないメール」を送ってしまいますから、要注意です。
■「何を」「いつまでに」やるのかを書けばいい
このような、「相手に伝わらないメール」に共通することは次の2つです。

・相手に求めるアクションが具体的でない。

・期限が明確でない。

この2つが、メールを意味不明なものにしてしまう原因なのです。
たとえば、例に使った「業績が不振だから、みんなで頑張ろう」というメールの場合。「何を」「いつまでに」やればいいのかがさっぱりわかりません。もしかしたら書かれているのかもしれませんが、ほかの部分の「圧」にかき消されているのです。
そんな、「ムダなパッション」は不要です。
ストレートに「業績が伸び悩んでいるから、期末まで、全社員で経費削減に取り組もう」と書いてもらえればいい。「ついては、具体的な経費削減のアクションはこちら」と、具体的な取り組みは添付しておけば、たぶん全員が添付書類を見るはずです。
本書では、「資料は、読んだ人に動いてもらうのが究極の目的。そのためには、『伝える』のではなく『伝わる』を意識しましょう」とお伝えしています。また、16万人を対象にした調査の結果、メールの文面は、100文字を超えると、閲覧される確率が一気に下がることも紹介しています。

文字数を100文字以内になるようにテンプレート化し、「やっていただきたいこと」「期限」など、必須事項が抜けないようにするとよいでしょう。文章が長くなってしまいそうなら、箇条書きを使うなどして、「伝わる」ように意識してください。

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越川 慎司(こしかわ・しんじ)

クロスリバー代表

元マイクロソフト役員。国内および外資系通信会社に勤務し、2005年に米マイクロソフト本社に入社。2017年にクロスリバーを設立し、メンバー全員が週休3日・完全リモートワーク・複業を実践、800社以上の働き方改革の実行支援やオンライン研修を提供。オンライン講座は約6万人が受講し、満足度は98%を超える。著書に『AI分析でわかったトップ5%リーダーの習慣』、『AI分析でわかったトップ5%社員の習慣』(共にディスカヴァー・トゥエンティワン)、近著に『29歳の教科書』(プレジデント社)がある。

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(クロスリバー代表 越川 慎司)
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