※本稿は、深沢真太郎『本当に頭がよくなる シン・理解力 具体と抽象で鍛える数学的・言語化トレーニング』(実務教育出版)の一部を再編集したものです。
■あなたの理解力を高める数学的思考
「数学的思考」を使えば、誰もが理解力を身につけることができます。
では、数学的思考とはどういうものなのか。
なぜ、数学なのか。
なぜ、数学的思考があなたの理解力を高めるのか。
これらの疑問について、できるだけわかりやすくお伝えしていきます。最初に、非常に重要な前提をお伝えします。
それは、「数学は『正しく』(誤解を恐れずに表現すれば「カンペキに」)理解することが求められる学問である」ということです。
「なんとなく(理解できたかも)」が許されない世界なのです(どうかここで本を閉じないでください。数学とはそういうものなのだ、という程度に考えてもらえれば十分です)。
たとえば、方程式という単元なら、「『方程式を解く』とはどういうことか」を正しく理解できている必要があります。
なぜなら、ある問題ではたまたま正解できても、別の問題で正解できないことが起こるからです。数学の世界では、これを「理解した」とは言わないのです。
実際、数学に強い苦手意識を持っている人に話を聞くと、たいてい「算数から数学に変わってからつまずいた」とか「高校で微分や積分が出てきた時点で数学を諦めた」という声が聞こえてきます。
聞いたことのある方も多いと思いますが、「数学は、理解の上に理解を積み重ねていく学問」ですから、いったん「理解不能」の状態になると、その先に進めなくなります。そのため、常に正しく理解することが求められるのです。
裏を返せば、私たちが数学を勉強した意味とは、「自分で『理解』を作る力を育むため」とも言えます。私たちが学生時代に数学を学んだことには、じつはものすごく大切な目的があったのです(多くの教員が、そのことを言語化してくれなかっただけです)。ですから、いまからでも数学的思考を身につけられたら、あなたの理解力は飛躍的に高まるはずです。
数学の勉強をすることなく数学的思考を身につけ、それを理解力に直結させる。それが、他の本ではなくこの本をあなたに読んでほしい最大の理由です。
■数学とは、説明である
数学とは、「説明」である。
これは私が仕事上、いろいろな場面で伝えていることの一つです。
いわゆる「◯◯であることを証明せよ」といった類(たぐい)の問題と言えばわかりやすいかもしれません。
たとえば、中学の数学の授業で私たちが学んだ「Aが偶数でBが偶数のとき、(A+B)も偶数であることを証明せよ」という問題は、一般的な解答としては下記のようになります(図表1)。
この文は、「Aが偶数でBが偶数のとき、(A+B)も偶数である」という主張が「正しい」と説明していることと同じです。
つまり、数学とは「説明すること」なのです。「理系のお勉強」と考えると息苦しいですが、こう考えると少し気が楽になってきませんか。
■数学とは、理解である
そこで、「説明とは何か」をあらためて考えてみたいと思います。
一般的に、物事を説明する際に必要なことは何でしょうか。また、「説明できるとき」と「説明できないとき」の違いは何でしょうか。
たとえば、あなたの友人が「ある本を読んだこと」をあなたに伝えたとします。
あなたはその本がどんな内容だったか、その友人に聞きます。そこで、友人の口から「ヤバかった」「エグかった」「すごかった」「面白かった」といった言葉しか出てこなかったとしたら、あなたはその本がどんな本か理解できないでしょう。
当然です。
つまり、「説明とは、理解である」ということが言えます。
先ほど私は「数学とは、説明である」とお伝えしましたが、いわゆる「三段論法」によって次のことが言えます。
(1)数学とは、説明である
(2)説明とは、理解である
(3)ゆえに「数学とは、理解である」
この結論は前のトピックで私がお伝えした、「数学は正しく理解することが求められる学問」というフレーズにそのまま重なります。
つまり、理解力を身につけることは、「説明できる状態を作るスキルを身につける」ということ。そしてそれは、数学を通して得られるスキルであること。「数学とは理解であり、理解とは数学である」の理由がおわかりいただけましたでしょうか。
■理解を促す「DAS分析」
では、いよいよ本題に入りましょう。
まずお伝えするのは、「理解には2つの段階がある」という考え方です。次の解説の中に「説明」という言葉が使われていることに注意してください。
【第一の理解】まず、目の前の対象について説明できる状態にする
まず目の前に与えられた課題Xを言語化し、説明できる状態にします。
そのプロセス・ステップは次の3つです。
私はこの3つの要素の頭文字をとり、独自に「DAS(ダス)モデル」と呼んでいます。
・ステップ1 Definition(定義)
↓
・ステップ2 Analysis(分析)
↓
・ステップ3 Systematization(体系化)
DASモデルについては、第2章で詳しく解説します。
まずは「DASモデル」という言葉だけ覚えておいてください。
【第2の理解】異なる対象を「同じもの」とみなし、説明できる状態にする
「Xを体系化したものに当てはまるほかのもの」=Yを探します。もしあれば、Yは第一の理解で扱ったXと同じものだと認識できます。
よって、Yも説明できる(=理解できる)ことになります。
これは概念的な説明ですから、現時点では具体的なイメージが湧きづらいと思います。でも、用語や理論は次章以降でしっかり説明しますのでご安心ください。
■「信号」をDAS分析で説明する
唐突ですが、質問です。
「あなたは道路にある信号について、どう理解していますか?」
「理解も何も、信号は信号でしょ」とか、「信号なんて子どもでも知ってるよ」と思われるかもしれません。
しかし、ここでは知っているかどうかではなく、「どう理解しているか」に焦点を当てています。
まずは著者である私自身がこの問いをどのように考え、相手に説明するかを考えてみます。
【第一の理解】まず、目の前の対象について説明できる状態にする
・ステップ1 定義(Definition)
いまから理解することは「道路にある信号」というものについて。
名称や外見ではなく、信号が持つ「機能」に焦点を当てて考える。
↓
・ステップ2 分析(Analysis)
赤青黄3つの色によって、交通整理の機能を担っている。
その機能が正確な状態とそうでない状態を比べたとき、前者は安全が保たれるが、後者は保たれない(安心して運転や歩行ができない)。
↓
・ステップ3 体系化(Systematization)
信号とは、以下の2つの特徴を備えた社会的機能である。
・歩行者と車に対し、適切な行動を指示する
・指示が正確でないと事故につながる
つまり私は「道路にある信号を、どう理解していますか?」という質問に対し、次のように言語化します。
信号とは、以下の2つの特徴を兼ね備えた社会的機能です。
・歩行者と車に対し、適切な行動を指示する
・正確でなければ事故につながる
【第2の理解】異なる対象を「同じもの」とみなし、説明できる状態にする
「第一の理解」のステップ3で得た結論について、この2つを兼ね備えた機能は、ほかにもいろいろ考えられますよね。
たとえば野球。野球では監督やコーチ、キャッチャーが選手にサインを出します。その目的は選手へ適切な行動を指示することで、サインを間違えてしまうとアウト(事故)につながります。ですから、この「信号」と「野球のサイン」は本質的に同じものだとみなすことができます。
■【練習問題】大谷選手の言葉を分析してみよう
この本では、(特に後半で)簡単なトレーニング問題を考えてもらうことで、少しずつ感覚的につかめるようになることを目指します。
さっそくですが本稿の最後に、あなたに楽しんでほしいトレーニング問題を一つだけ用意しました。どうか肩の力を抜いて取り組んでみてください。
「(相手の選手に)憧れるのをやめましょう」
これは、野球のWBC第5回大会の決勝戦前に、大谷翔平選手がチームメイトに発した言葉です。あなたはこの発言の意味をどう理解しますか。第一の理解、第二の理解、それぞれを念頭に置いて考えてみてください。
さて、あなたはこの発言についてどう理解したでしょうか。
もちろん「シビれました!」「やっぱりカッコいいですね!」「ホントその通りだと思った」という感想を求めているのではありません。この言葉を知っていたかどうかでもなく、共感できるかどうかでもありません。
あなたがどう理解したか、この言葉の意味を大谷選手を知らない人でもわかるように、自分の言葉で説明してみましょう。
■著者の理解「能力とメンタリティが違う」
あくまでも参考例ですが、私の理解を説明してみましょう。
定義する
「(相手の選手に)憧れるのをやめましょう」とは、文字通り「憧れ」という感情を捨てることを勧めるものです。
「憧れ」とは、「理想とする物事や人物に強く心惹かれる感情」、そして、「やめる」とは「捨てること」と定義します。この定義は後ほど重要な意味を持つので、覚えておいてください。
分析する
重要な勝負に勝てる人とそうでない人を比較したとき、その違いは何かを考えてみました。その結果、次の結論にたどり着きました。
「能力とメンタリティが違う」
この1行は、次の2つの要素に分解できます。
・能力
・メンタリティ
より大きく差がつくのはどちらか、より勝負に影響を及ぼすのはどちらか、この2つを比較して考えてみました。
■メンタリティが大きな差を生む
そもそも私は、人間の能力にそれほど大きな差はないと考えています。
たとえば、あなたがビジネスパーソンだとして、職場の同僚たちと人間としての基本的な能力に大きな差はないはずです。みんな同じように日本語が話せるし、会社では同じようなことを学んできたし、程度の差こそあれ、同じようにワードやエクセル、パワーポイントを扱えるはずです。
しかし、仕事に対する意欲や姿勢、価値観はじつに多様です。私はこの差が、仕事のパフォーマンスを決めていると考えました。
高い能力とスキルを持ちながら、「こんな仕事、自分には簡単すぎる」と意欲を示さなかったり、周囲の同僚を見下したりする人は、往々にして成果の天井も高くないものです。
しかし、意欲とモチベーションのある人は、スキルに未熟な面があったとしてもいずれ驚くような成長を見せ、高い成果を出すことがあります。
より大きく差がつくのはどちらか、より勝負に影響を及ぼすのはどちらか、この2つを比較して考えた結果、私が軍配を上げるのはやはり「メンタリティ」です(ここでは、メンタルや心理学の専門領域には立ち入りません)。
たとえば、抜群の身体能力を持ちながら本番や大舞台に弱い、メンバーとの協調性がないなど、メンタリティの問題で成果を出せないスポーツ選手は少なくありません。
ビジネスパーソンであればなおさらです。
大谷選手が訴えているのは、「メンタルで負けていたら、勝負には勝てない」ということです。いわゆる「気持ちで負けるな!」ということですね。
■「憧れ」という感情の取扱方法
一方で私は、「憧れという感情は、本当に『捨てなければいけない』ものだろうか?」という視点も持っています。
日本代表メンバーには、アメリカ代表の選手に憧れ、自分を磨き続けた人も大勢いたはずです。彼らの地位と活躍はその賜物です。憧れがあり、憧れに向かって練習を重ねたからこそ、日本代表はより成長し、アメリカに勝つことができたのです。
ならば、憧れという感情は、「勝負に勝てる人に必要なメンタリティ」と捉えることができるのではないでしょうか。
すると、次の問いが生まれます。
本質的な話として、「憧れ」は善か悪か?
私は、この問題を時間軸での場合分け、すなわち「勝負する前と勝負するときの2つに分ける」ことで説明できると考えます。
ケース① 勝負するまで:徹底的に憧れること(必要)
ケース② 勝負するとき:憧れを忘れること(不要)
つまり、これは「勝負直前で、心のスイッチを切り替える技術があるかどうか」の話だと考えることができます。
■勝負に勝つ人の方程式
体系化する
まとめると、私は大谷選手の名言を「勝負に勝てる人が持っている心のスイッチ」を説明したものだと理解しました。結論を、まるで数式のように表してみます。
(勝負に勝てるアスリート)=(優れた競技能力)×(心のスイッチを切り替える技術)
心のスイッチとは、以下の切り替えを行う装置のこと。
試合をするまで=憧れを持つ
↓
試合をする直前=憧れを捨てる
私の知人の男性に、著名なメンタルコーチがいます。
彼はビジネスパーソンをはじめ、五輪でメダルを狙うトップアスリートのメンタル面をサポートするプロフェッショナルですが、「メンタルとは鍛えるものではなく、コントロールするもの」と言っていたのが印象的でした。
「気持ちで負けるな」とは単なる精神論ではなく、「スイッチを入れる」という動作を指示するもの、つまり技術論。これもまた、私の中ではっきり言語化できたことです。
ちなみにこれは、スポーツに限った話ではないように思います。先ほどの整理は抽象度を上げると、「勝負に勝てる人に共通する条件」と言えるからです。
■受験など「人生の勝負事」すべてに応用可能
ちなみに心のスイッチとは、以下の動作のことです。
憧れを持つ
↓
憧れを捨てる
第二の理解を得る
たとえば、「受験」で考えてみましょう。ここでは、わかりやすく東京大学を例にします。
東大に合格した人の多くは東大に憧れを抱き、必死に勉強したはずです。
しかし、いざ試験会場に行けば、憧れている場合ではありません。ともすればその感情は、自分自身に「私は東大になんて合格できるわけのない未熟者だ」と暗示をかけることにつながるかもしれません。憧れは、このときだけは手放さなければならないでしょう。
人生を決める勝負で結果を出す人のメンタリティとは、このようなものだと思います。
WBCの決勝で勝つことと、受験という関門を突破することは、異なるけれども本質的には同じこと。
そういう意味で、大谷選手の名言はすべての勝負に通じる真理を説くものです。だからこそ、WBCの決勝という場面において、あの発言ができたのだと私は理解しています。
最後に、この問題で私が得た教訓を言語化しておきます。
強い人とは、ずっと大切にしてきたものを、一瞬で捨て去ることができる人。
あなたは、私の理解についてどのような感想を持ったでしょうか。共感したこと、「それは違う」と感じたことも含めて、「あなたの理解」を言語化してみてください。
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深沢 真太郎(ふかさわ・しんたろう)
ビジネス数学教育家
日本大学大学院総合基礎科学研究科修了。理学修士(数学)。国内初のビジネス数学検定1級AAA認定者。予備校講師から外資系企業の管理職などを経て研修講師として独立。その独特な指導法で数字や論理思考に苦手意識を持つビジネスパーソンの思考とコミュニケーションを劇的に変えている。大手企業をはじめプロ野球球団やトップアスリートの教育研修まで幅広く登壇。SMBC、三菱UFJ、みずほ、早稲田大学、産業能率大学など大手コンサルティング企業や教育機関とも提携し、ビジネス界に数学教育を推進。2018年に国内でただ1人の「ビジネス数学エグゼクティブインストラクター」に就任し、指導者育成にも従事している。著書に『数学的思考トレーニング 問題解決力が飛躍的にアップする48問』(PHPビジネス新書)、『わけるとつなぐ これ以上シンプルにできない「論理思考」の講義』(ダイヤモンド社)、『数字にだまされない本』、『数学女子智香が教える 仕事で数字を使うって、こういうことです。』(ともに日経ビジネス人文庫)などがある。
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(ビジネス数学教育家 深沢 真太郎)

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