■実家が“負の遺産”になるかもしれない
遠く離れた実家に不動産があるご家庭も少なくないでしょう。
漠然と「相続後には資産になる」「少なくとも損はしないだろう」とお考えかもしれません。ところが現実にはそうでもないのかも? 相続後の維持に困ったうえ、引き取ってもらうために数百万円もの費用がかかる負の資産、つまり「負動産」予備軍かもしれません。
両親が住む地方の不動産が、相続後にどのようなリスクを抱えることになるのか? 皆さんもこのお正月に帰省した際に、親兄弟と、これからお伝えする記事の内容について話し合ってみるのがいいかもしれません。
■「家だけ相続しない」は選べない
私は経済評論家であると同時に4年前に相続を経験しました。
親の実家と、親が相続していた祖父の実家の持ち主になりました。
これからお話しすることは、皆さんにとっても他人事ではないかもしれません。
最初に相続の基礎知識からお話ししましょう。両親が亡くなって相続をする際には、財産を全部相続するかそれとも全部放棄するかを選ばなくてはいけません。
「銀行預金と株だけもらって、古ぼけた家はいらないよ」
というようなおいしいところだけを選ぶことはできません。
そのため大半の方は相続するほうを選ぶと思います。
その際の基礎控除額は昔と違ってかなり下がってきました。
たとえば父親が亡くなった際に法定相続人が母と自分と弟がいたとすれば基礎控除額は4800万円で、それ以上の財産には相続税がかかります。
地方都市の築50年の古い家を相続する場合には、評価額はざっくり言って2000~4000万円という感じでしょう。その7割以上が土地の評価額です。それに加えて2000万円程度、老後に蓄えていた預金を相続することになるというのが一般的なケースでしょうか。
私の場合はそのレンジから若干外れていて、相続の際の評価は父の家が6000万円ほど、祖父の家は1000万円という評価額でした。
幸いにして父の家は20年ほど前に新築した物件で、市の中心に近い住宅地の立地だったので、すぐに借り手がみつかってお金を稼いでくれています。もちろん修繕費や維持費、固定資産税などがかかりますがトータルではプラスの資産です。
一方で祖父の家は私が相続した後も空き家です。
■登記に10万円、管理に月1万円、そして…
私の少年時代には祖母がまだ存命で、夏休みの1カ月はここで過ごした思い出があります。先祖代々の実家でもあり、両親もこの家は残したいと考えていたはずです。
ただ人口減少地域の一軒家ですのでたぶん買い手はつかないでしょう。そうやって「保存」されてきた祖父の実家をどうするか、今、私の課題になっています。
ひとつ良かった点は相続の際に話し合った結果、私単独で所有できていることです。もしこれが兄弟の共同所有になっていた場合は、これからお話しする負動産としての負担をどうするかの話し合いがより複雑になっていたことでしょう。
さて、ここからが負動産としての具体的な説明です。
2024年から相続登記が義務化されました。実はこの不動産、私が会ったこともない曾祖父の名前で登記されていたのですが、法律で私の登記に変更する必要がでてきました。登記費用は諸税込みで10万円程度かかります。
空き家はそのまま放置すると朽ちてしまうので管理が必要です。祖父の家のある集落の知人にお願いして毎月1万円ほどの管理費をお支払いして維持ができています。一般には地元のシルバー人材センターに依頼して同じくらいの費用で空き家を管理してもらうケースが多いそうです。
問題はそれができていない場合です。
■固定資産税が“6倍”に上がるケースがある
管理ができていない空き家がだんだんと朽ちてきて、そのまま放置すれば地域のリスクになると自治体が判断すると「特定空き家」に認定されます。外壁が崩れそうだとか、窓ガラスが割れているとか、落書きだらけで不審者が入り込むリスクがあるような空き家のことです。
まだ制度ができたばかりの特定空き家は全国で2万5000か所ぐらいしか指定されていないようですが、今後どんどん増えていくでしょう。
持ち主にとっての一番のリスクは固定資産税が最大6倍に跳ね上がることです。
一般的な住宅用地の固定資産税ですが、地方都市の郊外住宅地で年間6万円程度、山間部で2万円程度というのが相場だとします。相続する立場では、
「それならなんとか捻出できる」
というラインなのですが、それが6倍になるとしたらどうでしょう。
もうほとんど帰省しない場所の空き家が特定空き家になって、年間の固定資産税が6倍の36万円になったとしたら? これはもはや行政からの「早く手放してくれ」というシグナルに他ならないでしょう。
そこであなたは負動産を売却する決断をします。本当の負担はここからです。
■「更地にすれば万事解決」とはいかない
実際にそのような不動産を売ろうとしたときに直面する現実は、そのままでは買い手がいないということです。
私の祖父の家の場合、山間部の一軒家ですから解体して更地にしたとしても買い手がいるかどうか微妙でしょう。更地にすることで特定空き家になるリスクは避けられますが、更地にすると実は固定資産税がやはり6倍に跳ね上がります。
そうなると結局毎年12万円の固定資産税を支払う必要があります。
こうやって考えると、経済のメカニズムがうまくできていますね。空き家の管理を頼むと年間12万円の管理費用がかかり、放置すると特定空き家になって固定資産税が12万円に跳ね上がり、解体して更地にするとやはり固定資産税が12万円になる。
では私はどうしたらいいか?
最後の最後は解体コストは自分が負担したうえで、売却しやすい更地にして、ただ同然の価格でも構わないので土地を買ってくれる人をなんとか探すことになるでしょう。
しかしその解体費用はいったいいくらかかるのでしょうか。一般的な住宅の解体ですが残置物処分を含めておそらく3~800万円はかかるはずです。もしアスベストが使われているとさらに200万円加算されるでしょう。
地方都市の住宅地であればそうやって更地にすることでプラスで売却できる可能性が出てきます。ただし実はその前にまだ課題があります。
隣地との境目が不明で測量が必要な場合には追加で1~200万円の測量費用がかかります。
こうやって苦労して更地にできた土地の相場を調べてみてください。地方都市の郊外で50坪程度の土地を売りに出した場合の価格ですが、場所にもよりますがおそらく6~800万円ぐらいになるケースが多いのではないでしょうか。
どうでしょう。特定空き家になるリスクのある実家は、いずれ相続し更地にしたうえで売却する際には500~1000万円の経費がかかります。その土地がプラスで売れれば御の字ですが、解体費用よりも安くなければ売れないとしたら、それはまさに負の資産というべきでしょう。
では帰省の際に両親や兄弟と何を話し合っておくべきなのでしょうか?
■親が元気なうちにやるべきこと
まずはここでお話ししたように、
・固定資産税の金額
・地元での解体コストの相場
・更地にした場合の土地の実勢価格
の3点は、家族の知識として知っておくべきではないでしょうか。
ちなみに地方自治体によっては空き家バンクや地方移住促進の目的で自治体に買い取ってもらえる制度が出始めています。が、実際のケースを調べてみると京都市の古民家の再生のように例外的な事例が多いようです。
話し合いの中で仮に両親がバリアフリーのマンションに移りたいとか、施設に入ることになった場合は、両親が存命のうちに実家を早じまいしたほうがいいかもしれません。
ケースバイケースですが、一軒家の実家は両親の費用で更地にして売却し、相続は賃貸しやすいマンションが残ったほうが相続しやすいかもしれないといった出口戦略の選択肢はいろいろあるはずです。
自分の家族の場合、このままいったらどうなりそうなのか? ほかにどのような方法があるのだろうか? といったあたりの確認からこの年末、帰省の折に家族で話し合ってみてはどうでしょうか。
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鈴木 貴博(すずき・たかひろ)
経済評論家
経済評論家。未来予測を得意とする。経済クイズ本『戦略思考トレーニング』の著者としても有名。
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(経済評論家 鈴木 貴博)

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