血糖値を上昇させる炭水化物と上手に付き合うにはどうすればいいか。同志社大学糖化ストレス研究センター客員教授の八木雅之さんは「炭水化物の中でも、白ご飯の摂取量が増えると血糖値が高くなり老化につながる。
しかし工夫するだけでこれを防ぎ、抑えることができる」という――。
※本稿は、八木雅之『最新科学でわかった 老けない食べ方の新常識』(三笠書房)の一部を再編集したものです。
■毎日の食事で重要な指標となる「血糖値」
老化を防ぐ食べ方の最重要ポイントとは、何でしょうか。
それは、「アルデヒドスパーク」を防ぐ食べ方です。
この言葉は、私たちがつくったものです(※1)。まるで火花がパッと散るように、体内で老化を引き起こす悪の元凶であるアルデヒドが急速に発生するイメージです。
そのイメージ通り、食べ方しだいで体内ではアルデヒドが急激に増加し、それが引き金となって細胞障害や糖化反応を連鎖的に引き起こしていきます。結果、老化が加速して進むことになります。
アルデヒドスパークを防ぐうえで、第一に重要なのは「食べ過ぎない」ということ。
そして第二に重要なのが、アルデヒドスパークを防ぐ=老化を防ぐ「食べ方公式」です。この食べ方公式については、のちほどじっくり説明します。「食べ方公式」に基づいた食べ方さえしていれば、糖も脂質も安心してとることができます。

毎日の食事で重要な指標となるのが、「血糖値」です。血糖値には、空腹時血糖値と食後血糖値があります。健康診断では、前日の夕食以降絶食し、空腹時血糖値を測定します。
一方、私たちは食事をすると、血糖値が一時的に上昇します。そして、食後2時間ほどかけて元の値に戻るのが一般的です。こちらが「食後血糖値」です。この血糖値の上昇と下降の様子を示したグラフは「血糖値変化曲線」と呼ばれます。
じつは、老化の原因とされるアルデヒドは、この血糖値変化曲線とほぼ同じカーブを描いて血中で増減していることがわかっています(※2)。
つまり、食後に血糖値が大幅に上昇すると、それに連動してアルデヒドも急増するということです。逆に、血糖値の上昇をゆるやかに抑えることができれば、アルデヒドの生成も抑えられるのです。

※1 M Yagi, et al, Glycative Stress Research, 5: 151-162 (2018)

※2日本糖尿病学会 , 糖尿病治療ガイドライン2024, 南江堂 (2024)
■糖化を加速させる「本当の引き金」
この関係性が明らかになったのは2015年です(※3)。アルデヒドが糖化やAGEs生成の「引き金」であることが、はじめて研究論文によって示されました。


それ以前は、糖化とは、糖がタンパク質と反応してAGEsをつくる現象と考えられ、糖化の原因は「糖そのもの」と考えられてきました。
しかし、この仮説だけでは説明できない糖化の疑問点を、私たち研究者はつねに抱いていました。
すなわち血糖値が上昇するのは、食後30分から1時間程度の短時間であり、1日のうちでも限られたタイミングです。一方で、糖化反応は非常にゆっくりと進む現象です。それなのに、AGEsは年齢とともに確実に蓄積していくのです。
「短時間の血糖値の上昇だけで、なぜ糖化反応が進み、大量のAGEsが体内にたまることになるのか?」
という疑問に対する明確な答えを、私たちは持てずにいました。
しかし、アルデヒドこそが糖化の元凶だと明らかになったことで、この疑問は解消されました。アルデヒドには、還元糖よりもはるかに反応性が高いという特性があるからです。
血糖値が急上昇すると、これにともなってアルデヒドも急激に増加します。すると、体内のタンパク質と速やかに結びつき、AGEsの生成量を増やすのです。
このメカニズムが明らかになったことで、これまで解けなかった「老化の謎」に一つの答えが見えました。アルデヒドスパークこそが、糖化を加速させる「本当の引き金」だったのです。

■欧米の食生活をもとに算出されるGI値の見方
アルデヒドスパークを防ぐには、食後高血糖を防ぐことが何よりも重要です。
そのためには、炭水化物の選び方が一つのポイントになります。
そこで、炭水化物選びの判断材料として注目されているのが、「GI(グリセミックインデックス)値」という指標です(※4)。
GI値とは、食品に含まれる糖質が体内でどれくらいの速さで消化・吸収され、血糖値をどの程度上昇させるかを示した数値です。数値が高いほど血糖値が上昇しやすく、低ければ上昇は緩やかになります。
基準となるのはブドウ糖です。ブドウ糖を50g摂取したときの血糖値上昇量(血糖値上昇曲線下面積:iAUC)を「GI値100」と設定し、そこから各食品のGI値が算出されています。そして、GI値が70以上を「高GI食品」、56~69を「中GI食品」、55以下を「低GI食品」と一般的に分類されています(※5)。
老化の原因物質であるアルデヒドは、血糖値の上昇とともに発生することはお話ししました。アルデヒドの発生量を抑えるためには、できるだけGI値の低い食品を選ぶこと。それが血糖値の急上昇を避け、アルデヒドの発生を抑える手段になるのです。
なお、GI値の概念はカナダのトロント大学のジェンキンス博士の研究によって誕生しました。
GI値は欧米の食生活をもとに算出されています(※6)。
そこで、日本人の食生活に即したGI値が日本GI研究会から示されています。この日本人用GI値は「サトウのごはん(包装米飯) 147g=炭水化物50g」を摂取したときのGI値を100とすることが提唱されています。
私たちの研究でも、炭水化物の種類と摂取量による血糖値の変化を調査しました。結果は予想通り、摂取量が多いほど血糖値は高くなりました(※7)。

※3 D Maessen et al, Diabetes Care, 38: 913-920 (2015)

※4 DJ Jenkins, et al, Am J Clin Nutr, 34: 362-366 (1981)

※5 FS Atkinson, et al, Am J Clin Nutr, 114: 1625-1632 (2021)

※6 日本GlycemicIndex 研究会, プロトコル( 統一手法),

※7 M Matsushima, et al, Glycative Stress Research, 1: 46-52 (2014)
■血糖値を上昇させる白ご飯と上手に付き合う方法
さらに、同じ量でも「米由来の炭水化物」と「小麦由来の炭水化物」で血糖値の上がり方には違いが現れます。理由は、小麦粉に含まれる「グルテン」というタンパク質が、糖の吸収スピードを緩やかにしているためと考えられます。
血糖値上昇の程度が高かった順に並べると、
「白ご飯」「赤飯」「玄米」「もち」「市販のうどん」「手打ちうどん」「十割そば」「食パン」「パスタ」となりました。
これらを単体で食べたとき、アルデヒドの発生量はこの順番で多くなると推測できます。
とはいえ、「白ご飯を食べてはいけない!」とはいいません。日本人でありながら、白ご飯を禁止されるのはとても寂しいことです。
高GI食品の白ご飯を食べる場合は、「一緒に何を食べるか」「どの順番で食べるか」を意識すればよいのです。

その工夫だけで、白ご飯を食べても、血糖値の急上昇を防ぎ、結果としてアルデヒドの過剰な発生も抑えることができます。

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八木 雅之(やぎ・まさゆき)

同志社大学生命医科学部糖化ストレス研究センター客員教授、農学博士

京都生まれ。京都工芸繊維大学繊維学部卒業、同大学院修士課程修了。1989年、京都府立大学大学院農学研究科博士課程修了。日本抗加齢医学会評議員、糖化ストレス研究会理事。糖化アミノ酸分解酵素を用いたグリコヘモグロビン測定系や、抗糖化作用をもつハーブ素材の開発などに従事。糖化ストレスに関する基礎研究から応用研究まで一貫して取り組む。2011年より現職。老化や生活習慣病の原因となる“糖化ストレス”の解明と対策に力を注ぎ、抗糖化素材や測定法の開発など、糖化研究の最前線を支える、日本を代表する第一人者。「糖化は老化」「糖化ストレス」「抗糖化」という言葉の生みの親。

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(同志社大学生命医科学部糖化ストレス研究センター客員教授、農学博士 八木 雅之)
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