※本稿は、八木雅之『最新科学でわかった 老けない食べ方の新常識』(三笠書房)の一部を再編集したものです。
■若返りという現象を引き起こす方法
黄金トリオを意識して食事をすれば、アルデヒドスパークを防げます。
しかし、血糖値の上昇をゼロにすることはできません。上昇した分だけアルデヒドは発生します。また、脂質やアルコールを摂取してもアルデヒドは発生します。
ですから、私たちの研究課題の一つは、発生したアルデヒドを無毒化する方法を見つけることでした。その方法を「アルデヒドトラップ」と呼んでいます(※1)。
アルデヒドトラップができれば、アルデヒドによる細胞へのダメージをなくし、糖化反応を抑制し、老化と病気の元凶となるAGEsの蓄積を防ぐことが可能です。
それが結果的に若返りという現象を引き起こすと期待できます。老化する細胞が減れば、新陳代謝によって若々しい細胞で体が構成されていくからです。
では、アルデヒドトラップを起こすにはどうしたらよいでしょうか。
アルデヒドが体内のタンパク質と結びつく前に、違う成分と結合させることです。そしてこのたび、私たちは、アルデヒドトラップを起こせる成分を発見できました。
※1 﨑山智恵子ら, 第31回糖化ストレス研究会発表(2025)
■アルデヒドの害を帳消しにする「牛肉スープ」
その成分こそが「アミノ酸」です。アミノ酸は、タンパク質を構成する基本成分で、全部で20種類あります。この20種類のアミノ酸の組み合わせによって、筋肉、酵素、ホルモンなど、人体をつくるさまざまなタンパク質が生み出されます。
食品中のうま味成分がアミノ酸で、肉や魚などに豊富です。そのアミノ酸にアルデヒドトラップを起こす働きがあることがわかったのです(※1)。
この実験で使用したのは、牛肉のスープです。牛肉には、アミノ酸が豊富に含まれます。さまざまな部位の牛肉を24時間かけて煮出すことで、スープ中にアミノ酸が豊富に抽出しました。
そのスープを用いて、どの部位から得られたアミノ酸がアルデヒドトラップ作用を強く示すかを、学生たちと一緒に比較・調査しました。
実験の結果、アルデヒドトラップ率が最も高かったのがモモ、2位がスネとリブロースでつくったスープでした(※2)。
「最近、なんだか老けてきたな」と感じたら、コトコト煮出した牛肉のスープを飲むことをおすすめします。ぜひ、お試しください。
■老化を予防するには、うま味の強いものから口に
食事の最初にアミノ酸を摂取すると、食事中にアミノ酸の血中濃度が上がり、アルデヒドトラップを効果的に起こせると期待できます(※3)。アルデヒドが発生しても、アミノ酸が速やかに結びついて無毒化してくれると考えられるからです。
つまり、老化を予防するには、うま味の強いものから口にすること。こうしたアルデヒドトラップを引き起こす食文化が、日本には昔から受け継がれてきました。
その一つが懐石料理です。コースの最初に出される「先付」には、出汁の効いた煮物や酢の物、豆腐料理など、うま味の強い小鉢がよく登場します。うま味の成分は、アミノ酸です。
つまり、食事の始まりにアミノ酸を摂取することによって、アルデヒドトラップの準備を整えることができるのです。
また、日常の食事でも、アルデヒドトラップを起こしていくことは可能です。とくにアルデヒドトラップの効果が高いメニューは「鍋料理」です。
※2 川西友佳ら, 第27回糖化ストレス研究会発表(2023)
※3 吉川政巳ら, 日本老年医学会雑誌, 3: 182-186 (1966)
■健康づくりに最高の食の知恵はこれ
肉や魚介類を野菜とともに煮込む鍋料理では、うま味が溶け出したスープをたっぷりと飲むことができます。牛肉だけでなく、豚肉や鶏肉、鴨肉などにもアミノ酸は豊富です。
白身魚や貝類、エビ、カニなどの魚介類にも、それぞれ特有のうま味成分があります。それらがスープに溶け出すことで、さまざまな種類のアミノ酸を効率的に摂取できるのです。
ですから、鍋料理を食べるときには、最初にスープをしっかり飲むことがポイント。アミノ酸の血中濃度を先に高めておき、アルデヒドの害を抑える体内環境を整えていきましょう。
そのあとに肉や魚、野菜などの具材を食べ、最後にご飯やうどんなどの炭水化物を加えて煮込み、スープと一緒にいただく。この食べ方こそが、血糖値の上昇を緩やかにしながら、アルデヒドスパークを効果的に抑え、老化を防ぐ方法になるのです。
しかも鍋料理は、寄せ鍋、しゃぶしゃぶ、キムチ鍋、豆乳鍋、トマト鍋など、味を変えれば飽きず、老化予防に役立つさまざまな栄養素をとり込むことができます。冬だけでなく、季節を問わずに食べたい、健康づくりに最高の食の知恵なのです。
■日常的に使うにはとても有用な食材
私たちは、出汁にどれほどのAGEsの生成を抑える効果があるのかを実験で調べました(※4)。使った素材は、枯節・荒節・にぼしの3種類です。
枯節……カビづけをくり返し、長期熟成された鰹節。うま味が凝縮された高級品。
荒節……燻製と乾燥のみで仕上げた、日常で使いやすい鰹節。
にぼし…… 小魚を丸ごと乾燥させたもので、アミノ酸だけでなくカルシウムやミネラルも豊富。
これらの素材から出汁をとり、AGEsの生成抑制力を比較したところ、すべてに高い抗糖化効果が認められました。最も強い抑制力を示したのは「枯節」の出汁です。
とはいえ、荒節やにぼしの出汁も十分な効果を持ち、日常的に使うにはとても有用です。高価な枯節でなくても、AGEsの生成を抑えることは可能です。
さらに、枯節の出汁を使って肉団子を煮込んだ実験では、AGEsの生成が有意に抑えられたという結果も出ました(※5)。通常、タンパク質と糖質を高温で加熱するとAGEsが増えやすいのですが、出汁を使うことでその反応が起こりにくくなるのです。
では、どの種類のアミノ酸が、アルデヒドトラップの作用が強いのでしょうか。
その作用がとくに強かったのがシステイン。
これらを豊富に含む代表的な食品が鰹なのです。鰹節は出汁として使う他にも、ご飯やお浸し、野菜炒め、サラダなどにトッピングしましょう。
また、システインは肉類、魚介類、卵、乳製品、大豆製品、ナッツ類、全粒穀物、ニンニク、玉ネギなどに多く、シスチンは、カツオやマグロなどの赤身魚、鶏胸肉・ささみ、卵、乳製品、小麦胚芽、大豆製品、ナッツ類に豊富。
ヒスチジンはカツオやマグロなどの赤身魚、鶏胸肉・ささみ、チーズ、大豆製品、ゴマ・落花生に多く含まれます。
これらの食品を積極的にとることもアルデヒドトラップに役立つでしょう。
※4 Y Ishioka, et al, Glycative Stress Research, 2: 41-51 (2015)
※5 山田 潤ら, 2014 年度日本調理学会発表 (2014)
■「焼き肉」「しゃぶしゃぶ」の老けない食べ方
老化を防ぐ肉の食べ方は、「焼き肉より、しゃぶしゃぶ」とよく言われます。
しかし、この言説に明確なエビデンスがあるわけではありません。
焼き肉かしゃぶしゃぶかは、その日、どちらを食べたいかで決めるとよいのです。
ただし、それぞれに食べ方の工夫は大事です。
焼き肉を食べるときには、サンチュやエゴマの葉などで肉を包んで食べましょう。焼いた野菜や野菜サラダも一緒に食べるのがベストです。
とくに注目すべきは、ポリフェノールの含有量。ポリフェノールとは、植物に含まれる天然の成分で、苦味や渋味のもとになる物質です。もともとポリフェノールの健康作用としては、活性酸素を除去する抗酸化力が高いことが知られています。
しかも、ポリフェノールは、抗糖化作用にも優れていることが私たちの研究によって明らかになりました(※4)。抗糖化作用とは、体内で糖とタンパク質が結びついてAGEsが生成されるのを防ぐ働きのこと。
ポリフェノールが豊富な野菜や果物を食べることで、万病のもとになるAGEsの生成を防ぐことができるのです。
さらに、食品中に含まれるAGEsは野菜などに含まれる不溶性食物繊維の一つであるセルロースに吸着することもわかりました。焼肉と野菜を一緒に食べれば、食品中のAGEsが体に吸収されるのも防げることになります。
■ちょっと得した気分で焼き肉を楽しむ方法
一方、しゃぶしゃぶも大切なことは同じ。肉と一緒に野菜もしっかり食べること。しゃぶしゃぶで使う、春菊、水菜、キノコ類にもポリフェノールが豊富です。
なお、ポリフェノールはわかっているだけでも8000種類以上あります。それぞれ、抗糖化作用・抗酸化作用の他にも特有の健康作用があります(※6)(※7)。主なものを177ページで紹介しました。多くのポリフェノールは水に溶け出る性質を持ちます。
また、焼き肉やしゃぶしゃぶの際には、タレに酢やレモン果汁を使いましょう。それによって、酸を摂取でき、アルデヒドスパークも防げます。
たとえば、ポン酢や「醤油+レモン果汁」の組み合わせがおすすめです。レモンのさわやかな酸味が脂っこさを中和してくれるうえ、醤油のメラノイジンが抗糖化作用などの健康効果を発揮してくれます。
なお、焼き肉屋さんでは、牛タンにレモンが必ず添えられています。あのレモンを焼いた肉に絞って食べる人がいますが、これは誤り。正解は焼く前の肉にかけること。レモンのクエン酸が、肉を焼く時に発生するAGEsの生成を抑えてくれます(※8)。
もっとも、食品中のAGEsは人の老化に関与しません。とはいえ、「焼く前に、肉にレモンをかけると体にやさしい」。そんな小ネタを一つ知っておくだけで、ちょっと得した気分で焼き肉を楽しめるでしょう。
もう1点、食品中のAGEsの問題で誤解を解いておきたいことがあります。それは、電子レンジで加熱すると「AGEsの発生量が多くなる」という指摘について。
電子レンジ調理でAGEsが増えるといわれるのは、加熱時間の設定が長すぎて一部の場所だけが高温になり、食品の水分が飛んで乾燥しやすくなるためです。こうした状態では、糖とタンパク質が反応してAGEsができやすくなります。
ただし、通常通りの短時間での加熱であれば問題はありません。電子レンジの使用も心配し過ぎず、上手に活用するとよいでしょう。
※6 小瀬木一真ら, Nagoya Journal of Nutritional Sciences, 1: 1-6 (2015)
※7 越阪部奈緒美, Food style 21, 21: 51-54 (2017)
※8 Y Yonei et al, Glycative Stress Research, 11: 79-93 (2024)
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八木 雅之(やぎ・まさゆき)
同志社大学生命医科学部糖化ストレス研究センター客員教授、農学博士
京都生まれ。京都工芸繊維大学繊維学部卒業、同大学院修士課程修了。1989年、京都府立大学大学院農学研究科博士課程修了。日本抗加齢医学会評議員、糖化ストレス研究会理事。糖化アミノ酸分解酵素を用いたグリコヘモグロビン測定系や、抗糖化作用をもつハーブ素材の開発などに従事。糖化ストレスに関する基礎研究から応用研究まで一貫して取り組む。2011年より現職。老化や生活習慣病の原因となる“糖化ストレス”の解明と対策に力を注ぎ、抗糖化素材や測定法の開発など、糖化研究の最前線を支える、日本を代表する第一人者。「糖化は老化」「糖化ストレス」「抗糖化」という言葉の生みの親。
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(同志社大学生命医科学部糖化ストレス研究センター客員教授、農学博士 八木 雅之)

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