お酒を楽しみながら若さを保つにはどんな嗜み方をすればいいか。同志社大学糖化ストレス研究センター客員教授の八木雅之さんは「お酒の中には、ポリフェノールが豊富な抗酸化作用を持つものがある。
ただし、飲み方と低血糖による食べたくなるシメのラーメンに注意が必要だ」という――。
※本稿は、八木雅之『最新科学でわかった 老けない食べ方の新常識』(三笠書房)の一部を再編集したものです。
■果物に含まれる果糖の功罪は
「果物は果糖が多く含まれているから、食べないほうがいい」という言葉を信じて、果物を控えている人も多いと思います。しかし、それは正しい情報でしょうか。
真偽を確かめるため、私たちはスーパーに並ぶ果物類を買ってきて実験を行ないました。それぞれの抽出液を使って、AGEsの生成抑制効果を調べたのです。
結果、ほとんどの果物がAGEs生成抑制効果を示したのです(※1)。
とくに高かったのは、フルーツトマトやパイナップル、グレープフルーツ、ブルーベリーなどの果物。他に、デラウェア、豊水、巨峰、グリーンキウイ、富有柿(ふゆうがき)にもAGEs生成抑制効果が見られました。
ただ、果物に含まれる果糖は、ブドウ糖より糖化反応を10倍も起こしやすいと指摘されています。しかし、それは「果糖単体とタンパク質を試験管内で糖化させた場合」の話。実際の果物は、ビタミン、ミネラル、食物繊維、ポリフェノールなどの成分が豊富。

栄養素の複合的な働きによって、果糖の糖化作用は打ち消されるどころか、AGEsの生成を抑える効果が高まると、私たちの研究でも明らかになっています。
なお、レモン果汁とクエン酸水溶液を比べた試験結果もあります。どちらもAGEs生成抑制効果が見られましたが、より高い抑制率を示したのは、レモン果汁です(※2)。
これは、レモンが持つフラボノイドというポリフェノールの効果と考えられます。
柑橘類は果物の中でも糖質が少ない傾向があります。そこで私たちは、柑橘類のAGEs生成抑制作用も調査しました。結果は、とくにレモンやライム、スダチなど、酸味の強い柑橘類が顕著な抑制効果を示しました。
ちなみに、「糖尿病の人は果物を食べてはいけない」とよくいわれます。一方で、「果物の摂取が糖尿病のリスクを下げる」という研究結果も報告されています(※3)。
とくに効果の高かったのが、ブルーベリー、ブドウ、レーズン、プルーンです。
こうした研究結果を見ると、「果物=糖化や糖尿病の原因」という考えは思い込みといえます。果物は「適度」に食べることで、AGEsの生成の抑制に役立ちますし、糖尿病予防にも心強い味方になります。
悪いのは果物でなく、食べ過ぎなのです。

※1 L Parengkuan, et al, Anti-Aging Medicine, 10: 70-76 (2013)

※2 﨑山智恵子ら, 第31 回糖化ストレス研究会発表(2025)

※3 I Muraki, et al, BMJ,347: f5001 (2013)
■日本酒、ワイン、ウイスキー……老化を防ぐお酒の飲み方
お酒が好きな人に朗報です。お酒の中にも抗糖化作用を持つものがあるのです。
一つめは、日本酒です。
糖質制限をすすめる専門家の中には、日本酒は糖質が多いため「飲んではいけない」と指摘する方もいます。しかし、試験管レベルでの実験では、日本酒にAGEsの生成を抑える効果があることが確認されました。
この調査は、私たちの研究室の学生が行なったもので、彼は大の日本酒好き。京都の地酒を十数種類も買い集め、AGEs抑制効果を比較したのです。
その結果、日本酒によってAGEsの生成量が減ることが明らかになりました。
ただし、日本酒のどの成分がその効果をもたらしているのかは、特定できていません。おそらく、麹菌が米の成分を分解する過程で、抗糖化作用を持つ新たな物質が生まれているのだろうと考えています。
二つめは、ワインです。


ワインはブドウを発酵させてつくるお酒であり、豊富なポリフェノールを含むことが知られています。ポリフェノールは抗糖化作用に優れた成分です(※4)。
三つめは、ウイスキーです。
ウイスキーは、大麦などの穀物を発酵・蒸留し、オーク樽で数年以上熟成させてつくります。このオーク樽の影響で、香りと色あいが深まり、その中にポリフェノールが多く含まれるようになります。つまり、ワインと同様、ウイスキーもポリフェノールが豊富なお酒なのです(※5)。
■居酒屋で人気のレモンサワーを飲むときの注意点
一方、「とりあえず1杯目」として選ばれることが多いビールはどうでしょうか。
じつは以前、ビールの抗糖化作用を調査しようと試みたことがあります。しかし、その分析は断念せざるを得ませんでした。
理由は、ビールの原料や製法が多岐にわたり、成分構成が非常に複雑だったからです。たとえば、麦芽やホップの種類、発酵方法、濾過や熟成の違いによって、含まれるポリフェノールの種類も量も大きく変わってしまいます。
仮に抗糖化作用が確認できたとしても、「どの成分がどのように作用したのか」を特定するのが極めて難しい。
そう判断し、この研究はいったん見送ることにしました。
さらに、居酒屋で人気の「レモンサワー」についても触れておきましょう。
多くの居酒屋のレモンサワーや缶チューハイには、果糖ブドウ糖液糖(異性化糖)などの糖質が多く含まれています。この場合は、アルデヒドスパークの危険性が高まります。この点には注意が必要です。
レモンサワーなどを飲む際には、なるべく無糖タイプを選ぶか、自分でつくるとよいでしょう。
なお、いくら抗糖化作用があるお酒を選んでも、飲み過ぎれば逆効果。アルコールが分解される際に発生するアセトアルデヒドが糖化を進めてしまうからです。
お酒を楽しみながら若さを保つためには、「何を、どう飲むか」も大切ですが、「どれだけ飲むか」も忘れてはならない要素です。
もう1点、飲酒における老化予防の注意点があります。お酒を飲んだあとの「シメのラーメン」。これは糖化のリスクが非常に高い行為です。

私たちは以前、宴会時にお酒を飲む人と飲まない人では、血糖値の上がり方がどのように異なるのかを調べたことがあります。結果は、お酒を飲まずに食事をとっている人は、血糖値が通常通りに上がっていきました。

※4 T Tanabe, et al, Glycative Stress Research, 11: 151-167 (2024)

※5 M Fujieda, et al, J. Agric. Food Chem, 56: 7305-7310 (2008)
■シメにラーメンを食べたくなるメカニズム
一方、お酒を飲んでいる人は、血糖値がなかなか上昇しないのです。それによって脳が「糖質不足」と感じるのだと思います。そのため、お酒を飲み終わる頃、脳が糖質を執拗に欲するようになります。
それによって、シメにラーメンなどの糖質が無性に食べたくなるのです。
しかし、アルコールが切れてくる頃、血糖値は一気に上昇します。シメに炭水化物をとってしまうと、その分、血糖値が高くなり、アルデヒドスパークが起こります。
しかも、アルコールの摂取によって体内ではアセトアルデヒドも発生しています。そのうえ、アルデヒドスパークまで起これば、まさに糖化のダブルパンチ。
だからこそ、お酒は適量を守り、シメのラーメンはしない。ここを意識してお酒の席を楽しむことができれば、飲酒による老化は防げるはずです。


なお、お酒は飲む前の対策も重要。アルコールの分解によってできる「アセトアルデヒドスパーク」を防ぐためには、アミノ酸やポリフェノールを含むチーズやナッツ、ゆで卵などを先に口にしておくとよいでしょう。

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八木 雅之(やぎ・まさゆき)

同志社大学生命医科学部糖化ストレス研究センター客員教授、農学博士

京都生まれ。京都工芸繊維大学繊維学部卒業、同大学院修士課程修了。1989年、京都府立大学大学院農学研究科博士課程修了。日本抗加齢医学会評議員、糖化ストレス研究会理事。糖化アミノ酸分解酵素を用いたグリコヘモグロビン測定系や、抗糖化作用をもつハーブ素材の開発などに従事。糖化ストレスに関する基礎研究から応用研究まで一貫して取り組む。2011年より現職。老化や生活習慣病の原因となる“糖化ストレス”の解明と対策に力を注ぎ、抗糖化素材や測定法の開発など、糖化研究の最前線を支える、日本を代表する第一人者。「糖化は老化」「糖化ストレス」「抗糖化」という言葉の生みの親。

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(同志社大学生命医科学部糖化ストレス研究センター客員教授、農学博士 八木 雅之)
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