生きづらさを解消するにはどうすればいいか。カウンセラーの藤本梨恵子さんは「成人しても幼少期に築かれた『愛着』という心のクセが、7割以上の人に継続するといわれる。
これらのパターンに気づき、ケアしていくことで、不安を軽減し、自己肯定感を徐々にアップしていくことができる」という――。
※本稿は、藤本梨恵子『なぜか機嫌がいい人がやっている100の習慣』(明日香出版社)の一部を再編集したものです。
■いつも不安で、人に認めてもらおうと過度に努力する
子供は親に嫌われたら生きていけません。
子供は何か努力をするから愛されるわけではありません。しかし、「親の言うことを聞いて、いい子にしていたら」「きちんと兄弟の世話をしたら」「いい成績をとったら」など条件づけの愛情で育てられると自分は無条件で生きていて良いという基本的な安心感が乏しくなります。
親の望み通りに振る舞った時だけ認められ、そうでなければ冷たくされるような状況では、子供は安心安全な愛着の土台を得ることができません。すると親を求めながら、同時に恐れはじめます。
愛されたい、認められたいという思いを満たされず育った人は、大人になっても、その気持ちを引きずり、いつも不安で、人に認めてもらおうと過度に努力したり、依存し、気を引くために困らせ、反発しがちです。
また、甘えて拒絶され傷つくことがないように人と距離を置いたり、親しい関係を煩わしいと感じ、人に助けを求められないこともあります。
愛着が不安定だと、自己肯定感が低く、相手により安心感が大きく左右されます。さらに年齢を重ねると安心感が徐々に減ってしまう傾向にあります。
■心のエネルギー不足がトラブルを招く
幼い頃にしっかりとした愛着形成ができた人は、心のエネルギーが常にフル充電されているので、人生をスムーズに運転でき、大人になった時、何が起こっても自分を励まし、支えていけます。
だから機嫌がいい状態を保ちやすいのです。
これは、太陽光発電で蓄電し充電不要なEV車と同じです。
反対に愛着に傷がある人は、人生の運転も揺れに弱く、些細なことで、エネルギー不足になり、周囲からエネルギーを調達する必要があります。
基盤が弱い建物は地震に弱いように、愛着形成が不十分な人は、ストレスに弱いのです。でも、建物も補強工事をすると、頑丈になるように、自分の愛着のパターンに気づき、ケアしていくことで、不安を軽減し、自己肯定感を徐々にアップしていくことができます。だから、自分の愛着のパターンに気づくことが大切です。
あなたの心のエネルギー量をチェックしよう!

■成人でも3分の1の人が不安定型の愛着を持つ
幼児期の愛着のパターンを、成人しても7割以上の人が継続すると言われます。
愛着パターンはまず安定型と不安定型に分かれ、さらに細分化されますが、今回は不安定型の不安型と回避型についてお伝えします。成人でも3分の1の人が不安定型の愛着を持っていると言われます。
《①安定型》
人間関係で深い信頼関係を構築でき、困ったことがあれば気軽に相談し、自分が嫌われたり、見捨てられることを常に心配することはありません。意欲的に物事に取り組め、率直に自分の意見を相手に伝えられます。
必要に応じて人に助けを求めることもできます。
そのため、ストレスを溜めにくいと言われています。
《②不安定型―不安型》
嫌われることを恐れ、人の顔色ばかりみてしまい、少しでも愛着を抱く相手が離れそうになると恐怖を感じ、騒ぎ立てて関心を惹く傾向があります。幼い頃、親から自分が騒いだ時だけ関心を寄せられた経験があるからです。
また、親の機嫌の良し悪しで振り回されて育つと、状況が変化すれば見捨てられるのではという不安を抱くようになります。だから自分の発言や行動で相手に嫌われるのではないかと、本音を伝えられなくなります。
■他人に依存するのも、依存されることも苦手
《③不安定型―回避型》
人と親しくなるより、距離を置いた人間関係を好みます。他人に依存するのも、依存されることも苦手。ぶつかりあったり、束縛されるのを避けようとします。心理的にも物理的にも距離を置き、自立した状態を望みます。
人に迷惑をかけず、何事も自分の責任で行うことを重視し、団体行動が苦手です。葛藤することを避けるので、相手の痛みに無頓着になりやすく、ストレスがかかると攻撃的な口調になることも。
不安傾向と回避傾向の人が付き合うと、不安傾向の人は、回避傾向の人の態度がそっけなく感じ、愛されていないのではと不安になり、しつこくまとわりつくことも。

反対に回避傾向の人は趣味や仕事に没頭し、相手とデートを楽しむというより、しぶしぶ合わせているという状況になります。愛着形成が不十分なところを補強するにも、自分のパターンがわからなければ難しいですよね? 次は補強方法についてお伝えします。
愛着のパターンを理解しよう!

■生きづらさを解消する5つのポイント
愛着の傷を癒し、生きづらさを解消するにはどうしたらいいのでしょうか?
《①ストレス状態から避難する》
非難や攻撃を受け、傷つき、ストレスを感じる状況では、愛着行動の過剰活性化が起こります。大切な人を攻撃し、拒絶し、無関心になることがあるので、その場から離れることがファーストステップです。適切な距離をとり、気持ちを落ちつかせましょう。
また、愛着が不安定な人は他人を優先し、自己犠牲に陥りやすいので、無理をせず、睡眠や食事、休息などを十分に摂り、自分をケアすることも忘れずに。
《②安全基地を確保する》
次にあなたが弱音を吐いても、責めたり、お説教やアドバイスするのではなく、受容と共感を持って話を聞いてくれる人=安全基地を見つけましょう。傷ついた経験などを安心して語ることで、心の整理がつき、傷が癒えていきます。
《③言語化する》
子供時代にできた愛着の傷は、痛みは感じていても、言語化されておらず、モヤモヤと心に残ります。言葉にすることで痛みが意識化・理性化され、客観的に受け止め癒すことができます。
日記や自分年表などを作って、衝撃を受けた出来事とその時の自分の気持ちを書き出すのも効果があります。
■幼い日のあなたに大人の自分が手を差し伸べる
《④客観的な視点で振り返る》
愛着不安定・不安型の人は、初対面でも全てを打ち明けずにはいられない衝動にかられて、相手が驚くことがあります。
反対に愛着不安定型・回避型の人は警戒して本音を話すことができません。
自分の気持ちに何が起こっているのか? 相手と自分の関係の深さと話の深刻さをリンクさせて伝えるなど客観的に振り返る力が心と人間関係を安定させます。
《⑤子供時代の自分を大人の自分がケアする》
子供時代にもっと親に優しい言葉をかけて欲しかった、一緒に遊びたかったなど叶わなかった子供の頃の願いは、案外、大人になった自分が叶えてあげることができます。それが癒しになり、今のあなたの心を穏やかにします。
私も幼い頃は習えなかった習い事をしています。幼い日のあなたに大人の自分が手を差し伸べることが大切なのです。
愛着の傷はいつからでも癒せる

■子供の自立を阻む親の3つの行動
人と適切な距離をとるのが難しいと感じることはありませんか?
実は恋愛からハラスメントまで、全ての人間関係は自分と他人を区別する目に見えない心理的な「境界線=バウンダリー」が決めています。敷地ならお隣との境界が明確ですが、心理的な「境界線=バウンダリー」は目に見えないので曖昧になりやすく、適切な位置に引かないと人間関係のトラブルにつながります。
「境界線=バウンダリー」の形成には大きくは生育歴と社会的環境の2つが影響します。
誰でも子供の頃は、「境界線=バウンダリー」が曖昧です。例えばお母さんが悲しんでいると、子供も悲しくなるのは、「相手と自分は同じ感情や感覚を持っているのが当たり前」という母子一体感があるからです。成長すると自我が芽生え、適切な心の距離感が生まれるのですが、養育環境によっては、うまくいかないことがあります。

次のように親が過干渉の場合、「境界線=バウンダリー」は曖昧になります。
①子供が朝、起きなければ、必ず親が起こす、②片付けや宿題なども親が子供の代わりにやる、③子供が悪さをしても、親が謝り、子供に謝罪や責任を取らせないなどです。
親にとっては、「子供が心配で……」と転ばぬ先の杖と思っての行動なのですが、子供の自立を阻んでしまいます。子供に過保護、過干渉になるのは、このような親の「不安」がベースになっています。
■他者との境界が曖昧になりがちな日本人
Aさんは、「あなたは何にもわからないのだから、お母さんに任せておけばいいの!」と過保護に育てられ、大人になっても、自己決定に不安を感じ、人の意見に従ってしまいます。
これでは、自分の人生を生きられません。親との心の距離感は、そのまま他人との心の距離感になります。人間関係の土台は親子関係から始まるからです。
社会的な環境も「境界線=バウンダリー」に影響します。日本は欧米などに比べ、周りの空気を読んで合わせる個性埋没気味の文化です。だから、他者との「境界線=バウンダリー」も曖昧になりがちです。
本来はお互いを尊重し、傷つけ合わないために存在する「境界線=バウンダリー」に侵入したり、侵入されてしまうことがあります。
これを心理学ではバウンダリーオーバーといいます。
心には境界線があることを知ろう!

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藤本 梨恵子(ふじもと・りえこ)

ファイン・メンタルカラー研究所代表

NLP心理学を中心にコーチング、カウンセリング、マインドフル瞑想などの手法を習得し統合。その手法を生かし、キャリアカウンセラー・講師として独立。各企業・大学・公共機関の講演の登壇数は2000回を超え、婚活から就活まで相談者数は1万人を超えている。コーチング、パーソナルカラー、カラーセラピスト、骨格診断ファッションアナリスト等のプロ養成講座の卒業生は500人を超え、個人診断においては1000人を超える。著書に『いつもよりラクに生きられる50の習慣』(かんき出版)などがある。

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(ファイン・メンタルカラー研究所代表 藤本 梨恵子)
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