言いにくいことでも、相手を不快にさせずに伝えるにはどうすればいいか。カウンセラーの藤本梨恵子さんは「ビジネスマナーでは、相手に伝えづらい内容や要求を、前置きし柔らかく伝える『クッション言葉』が必要だ。
依頼やお詫び、断りなどを伝える際には、『お・も・し』と呼ばれる三大クッション言葉を使うといい」という――。
※本稿は、藤本梨恵子『なぜか機嫌がいい人がやっている100の習慣』(明日香出版社)の一部を再編集したものです。
■言い過ぎや言いそびれをなくす
嫌な目にあったら、やり返すのも我慢するのもよくありません。
カチンときて感情的に「言い過ぎ」ればトラブルや自己嫌悪を招きます。反対に、我慢して「言いそびれ」が多くなれば、ストレスに感じます。
だから、攻撃的でも受身的でもなく、互いを尊重しながら率直に話し合うアサーティブコミュニケーションが大切です。基本の3タイプを紹介します。
アグレッシブ(攻撃型)
「他人が間違いを犯したら、怒るのは当然だ」という価値観で感情を攻撃的に表現しがちなタイプ。ドラえもんにでてくるジャイアンのように自己中心的で自分の意見が通らないと不機嫌になります。
ノン・アサーティブ(非主張型)
自分に自信がなく、頼まれると断ることができません。我慢に我慢を重ねた結果、爆発し、相手と縁を切るなど極端な行動にでることもあります。
ドラえもんののび太くんのように嫌でも自分を押し殺し、相手に合わせてしまう消極的で依存的なタイプです。

アサーティブ(双方を大切にした自己表現型)
相手も尊重しながら、自分の主張も率直にできるタイプです。ドラえもんのしずかちゃんのように、友人の誘いに対して「誘ってくれてありがとう。今日は塾でいけないの。また誘ってね」と相手を尊重しつつ、自分の意見も言えます。
人間関係を良くするために自分の性格を変える必要はありません。伝え方を変えればいいのです。
練習すれば誰でも上達できます。
自分も相手も大切にして伝える!

■感情的にならない会話術「DESC法」
アサーティブな会話にDESC(ディスク)法があります。
修得すれば、言いにくいことも相手を不快にさせず伝えることができます。
《DESC法》
① Describe(描写する)……客観的な状況・事実を伝える。コツ:憶測で話さない。

② Explain(説明する)……主観的な意見や感情を表現する。
コツ:感情的にならず建設的に伝える。

③ Specify(提案する)……要望を伝える。コツ:強要しない。責めない。

④ Choose(選択する)……選択肢や代替案を提示する。コツ:実現可能なものを提案する。
NG例
「ちょっと、そこの二人、うるさいよ! 今、お客様と電話してるんだ! 静かにして!」
緊急性が高い時はこの言い方でも仕方ないですが、相手を強く非難しているので、相手に「すみません」と謝らせることはできても、心から「次回は気をつけよう!」と改心させるのは難しいはずです。
OK例
「①(描写)電話の側で二人が大きな声で話していると

②(説明)お客様の、声が聞こえにくいんだ。

③(提案)もう少し小さな声で話すか

④(選択)別の所で話してくれないか?」
このようにDESC法で伝えると相手も次から気をつけようという気持ちが湧きやすくなります。「うるさい」は主観で「大きな声で話している」は事実です。
DESC法は、「客観的な事実は?」と一度考えるので、感情的になりにくいのです。
話す前に相手を思いやろう!

■言いにくいことを伝えるクッション言葉
言いにくいことでも、相手を不快にさせずに伝えられたらいいと思いませんか?
ビジネスマナーでは、相手に伝えづらい内容や要求を、前置きし柔らかく伝えることを「クッション言葉」と言います。
依頼やお詫び、断りなどを伝える際に使います。
「お・も・し」と呼ばれる三大クッション言葉を紹介します。
お:「恐れ入りますが」、も:「申し訳ございませんが」、し:「失礼ですが」
《依頼》
恐れ入りますが(例:お忙しいところ恐れ入りますが、アンケートのご協力をお願いいたします)

失礼ですが(例:失礼ですがお名前を伺ってもよろしいでしょうか)《お断り》

申し訳ございませんが(例:申し訳ございませんがスケジュールの調整が難しい状況でございます)
ビジネスで使っている、クッション言葉を、普段の生活でも、カジュアルな言葉で前置きして使ってみませんか?
《依頼》
悪いけど(例:悪いけど、お願いできる?)
《お断り》
ごめんね~(例:ごめんね~予定合わなくて)
など、相手に配慮した言葉を前置きできれば、言いにくいことも言いやすくなります。
他にも自分の非を認めると反感を買わずにすみます。
■相手の耳に優しい言葉を選んで伝える
「私も、前もって伝えておけばよかったんだけど、うちの会社は電話は3コールででないとお客様を待たせたと注意されるのよ。これからは、気をつけてね」

「僕も最初、わからなかったんだけど、この書類、押印が必要でね。最終チェックで、印の押し忘れがないか確認してくれる?」
「電話は3コールででるの常識でしょ? 早くでなさいよ」とキツく言うといくら正しくても反発されます。
苦い薬にいくら効果があっても子供は飲みません。でも、甘いジュースに混ぜると飲んでくれます。
同様に大人も相手が受け取りやすい言葉を選ぶことで、あなたの要求を受け入れてもらいやすくなるのです。
耳に優しい言葉を選ぼう!

■人は常にミスコミュニケーションしている
心理学では「人は事実ではなく意見を言う」と言われるほど、私たちは自分の思い込みの世界で生きています。
では、なぜ人は思い込みの中で生きているのでしょうか?
それは、人それぞれ、体験・経験が異なるからです。
「ハンバーグ定食はおいしいですよね?」と質問され、仮に「はい」と返事をしたとして、あなたは今、どんなハンバーグをイメージしていますか?
ソースは和風orデミグラスソース? 付け合わせはニンジンorコーン? 器は皿or鉄板?
このように、私たちは全く別のものをイメージしながらわかったつもりになっているのです。つまり、普段の会話は全て、ミスコミュニケーションなのです。体験を全て言葉にしていたら時間がいくらあってもたりません。だから、体験を言葉にした時点で、脳内で必ず単純化が行われます。その過程で、①一般化②歪曲③省略が起こります。
①「一般化」:例外を考えず、一部の出来事をすべてと考えること。
「必ず失敗する」などの決めつけです。「成功したことは一度もないの?」とツッコミを入れると毎回失敗しているわけではないという真実が見えてくれば、自己否定をやめて自信を取り戻すことができます。
■言葉の真意に気づく
②「歪曲」:話の内容を簡略化する時に意味や真意が歪められること。
「仕事中に笑うなんて不真面目だ」という思い込みを持っているために職場のメンバーに怒りを感じている人もいます。しかし実際には、仕事中に笑顔がある職場の方が、失敗しても凹まないチームが育つ、という研究結果も存在します。
③「省略」:人は自分の関心がある部分のみ言葉にし、他は削除・省略します。

「この商品は高い」と言う場合、「何と比べて?」と比較の対象が省略されていることも多いものです。体験を言葉にする時に失われている情報を取り戻したり、言葉の真意に気づくことで、ミスコミュニケーションを防いだり、偏見に気づき、正しい見方や解釈を取り戻すことができます。
言葉の底に沈んだ体験を取り戻そう!

----------

藤本 梨恵子(ふじもと・りえこ)

ファイン・メンタルカラー研究所代表

NLP心理学を中心にコーチング、カウンセリング、マインドフル瞑想などの手法を習得し統合。その手法を生かし、キャリアカウンセラー・講師として独立。各企業・大学・公共機関の講演の登壇数は2000回を超え、婚活から就活まで相談者数は1万人を超えている。コーチング、パーソナルカラー、カラーセラピスト、骨格診断ファッションアナリスト等のプロ養成講座の卒業生は500人を超え、個人診断においては1000人を超える。著書に『いつもよりラクに生きられる50の習慣』(かんき出版)などがある。

----------

(ファイン・メンタルカラー研究所代表 藤本 梨恵子)
編集部おすすめ