年収300万円台なのに、株投資によって総資産2億超へ。そんな名古屋の長期投資家(通称:なごちょう)さんは、「じつは私のやり方は、初心者でも、日中に働いていても、時間や資金がなくても可能でリスクが低く、とても再現性が高い」という――。

※本稿は、名古屋の長期投資家『2億稼げる なごちょう式 低リスク超分散株投資』(高橋書店)の一部を再編集したものです。
■リスクが少なく再現性の高い投資法
「どうして、年収300万円台で、しかも働きながら『億り人』になれたんですか?」
資産が1億円を超えたころから、こういったインタビューを受けることが増えました。投資成績だけ見ると、資産50億円以上稼いだ「たーちゃん」さんや、たった5年で1億円を稼いだ「kenmo」さんのように、もっとすごい成果を上げている個人投資家の方も多いので、この質問に答えるのにちょっと気後れしたりもします。
ただ、私は専業投資家でもなく、先ほどのお2人のように医師や東証一部上場企業の社員としての収入があったわけでもありません。年収300万円台、ときにはそれを下回るような町の小さな文房具店の店主として日中はフルで働き、近年は追加の資金投入もほとんどせずに、株だけで日本のビジネスパーソンの生涯年収ともいわれる2億円の資産を稼ぐことができました。
私のやり方は、ほかの投資家の方に比べると少し地味ですが、売買に費やす時間が少ないですし、投資のセンスも必要ありません。相場を常時チェックする必要もないので働きながら少ない資金で投資を志す多くの方にもまねしやすく、再現性が高いのではないかと思っています。ここでは、そのやり方の大まかな説明と、株での稼ぎ方の基本についてお伝えしたいと思います。
■お買い得を探す「バリュー株投資」
私のやり方の軸となるのは「バリュー株投資」と「超分散投資」です。
バリュー株投資は「会社としての資産価値があるのに市場では評価が低く株価が安い銘柄」を見つけ、割安なときにその株を買い、値上がりを待つ長期投資です。
株価は投資家の人気によって変動しやすいので、本来優良企業であっても、知名度が低かったり、一時的に人気が落ちて割安になっていたりすることがあります。こうした企業の利益や資産などを分析し、「本来の実力より安い」と判断したときに投資し、じっくり値上がりを待つのです。

派手さはありませんが、堅実に資産を増やしたい人に向いている方法です。価格ではなく中身を見る、いわば“お買い得”を探す投資スタイルです。
■リスクを軽減できる「超分散投資」
もう1つの軸は「超分散投資」です。投資には集中投資と分散投資があります。集中投資は、「上がる」と信じた銘柄に資金を集中させ、一気に利益を得ることを目指します。一方、分散投資は、資金を多くの銘柄に分けることで、リスクを分散させる方法です。
私の保有銘柄は200を超えています。これだけ分散すると株価の上下に一喜一憂しないで済み、また値上がりするお値打ち銘柄だけを買っているので、確実に資産が増えていくわけです。もちろん、超分散しても利益を高めるためには銘柄を“上がる”ものに厳選するのが大切です。
バリュー株投資は、「本来の実力に対して、今の評価(株価)が安すぎる会社」に目をつけて投資します。これは、まるで野球のスカウトのようなもの。甲子園への出場経験はないけれど、将来的な伸びしろを見据え、走力、守備範囲、打撃のパワーなど、高い身体能力を持つ選手に、プロ野球チームのスカウトが目をつけるのと似ています。

■「隠れた逸材」の将来性に投資する
投資の世界でも、誰もが知っていて世間から注目を浴び続けている人気の銘柄もあれば、実力があるのに日の目を見ない株があります。
プロ野球のスカウトが、見た目の派手さや一時的な注目度に惑わされず、選手の基礎的な能力、継続的な結果、成長余地を冷静に分析するように、バリュー株を狙う投資家は、たとえ今は無名でも将来必ず飛躍すると信じて“安いうちに”評価しておきます。これは村上ファンドに学んだ方法です。
たとえば、市場全体がAI関連株に注目しているとき、地味な製造業の会社が見向きもされないことがあります。しかし、よく決算を見てみると、利益率が安定していて、自己資本比率も高く、地道に売上を伸ばしている。そうした企業の株は、指標で見ても割安で、将来評価される可能性がある「隠れた好素材」です。
■いちばん大事なことは、いち早く仕込むこと
バリュー株投資とはつまり、注目されていない企業の「実力」を見抜き、世間が評価し始める前に投資する方法といえるでしょう。野球でいえば、一軍のレギュラーに育つ逸材を無名の高校生の中から見つける目利き。それができる投資家こそ、長期的に資産を築く力を持っているのです。
バリュー株投資でいちばん重要なのは、「割安なうちに仕込む」ことです。ほかの投資家がその企業の成長性に気づき、市場全体が評価し株価が上がりきってしまう前に買っておく目利きの力が、最大のポイントです。「割安」かどうかを判断するためには、企業の事業内容を理解するだけではなく、いくつかの指標を使います。

ここからは、バリュー株投資で必要な「割安な株とは何か」を理解するために、株のしくみや儲け方、各指標が示す意味について説明していきます。
■株は大航海時代に始まった
株を買うことは、会社の「所有権」を買うことです。「所有権」といわれてもピンと来ない人も多いと思うので、まず株式投資の歴史について簡単に説明していきます。
株のしくみができたのは、大航海時代(大交易時代)といわれた15世紀末から16世紀のヨーロッパでした。東ローマ帝国がオスマン帝国に滅ぼされ、陸路での東方貿易が難しくなったことから、ヨーロッパでの香辛料の価格が高騰します。航海術が飛躍的に向上したこともあり、ヨーロッパ各国は新航路を開拓し、ヨーロッパでは栽培できない香辛料、金銀、宝石、絹などをアジアやアメリカ大陸から輸入し高値で売るために、交易船を大量に世界中に派遣していました。
人件費や大型船の建造費、補給物資の調達費用など、一度の航海にかかるコストは膨大です。成功すれば莫大なリターンを得られる一方、海賊、難破など、航海自体にリスクがありました。そこで生まれたのが「航海単位の共同出資」という手法です。複数の人が少額ずつ出資し、航海が成功すれば、利益を出資比率で配分し、失敗してもリスクを抑えるしくみでした。
■会社の所有権を分割して持つ
遠洋貿易が軌道に乗っていくにつれて、一度きりの航海で終わらず、継続的に拠点を形成し長期的に利益を得ようと考えるようになります。
そこから「航海が終われば精算・解散」というスタイルではなく、「出資した船団を長く存続させる組織を作ろう」という発想へとつながり、誕生したのが「『株』を発行して多数の投資家から資本を募る」方法です。

株を持つ投資家は、船団の利益に応じて配当を受け取ります。配当を待たずに出資したお金を回収したかったら、株を売却できます。これにより船団は長期的に安定した資金を活用できるようになったのです。このように、複数の出資者(株主)が資金を提供し、会社の所有権を「株」という形に変えて分割して所有する株式会社は、企業の資金調達がしやすく、また事業拡大に適しているため、現代経済の中心的な役割を果たしています。
■キャピタルゲインとインカムゲイン
株式投資での儲け方は、「キャピタルゲイン(値上がり益)」と「インカムゲイン(配当益)」の2つに大別されます。それぞれの性質や特徴を説明すると次の通りです。
キャピタルゲイン(値上がり益)

株を「安く買って高く売る」ことで得られる利益。購入時よりも上昇したタイミングで売却することで、差額が利益となります。株価は市場の需給、企業の業績、経済情勢などで変動するため、後述する配当益(インカムゲイン)より、短期間で儲けられます。しかし、予想に反して株価が下落した場合、損失(キャピタルロス)が発生します。
インカムゲイン(配当益)

株を保有することで会社が株主に利益の一部を分配する配当金で得られる利益。配当金額は1株当たりで決められ、企業の業績や方針によって変わります。
日本では年1~2回支払う企業が一般的で、期首に配当金額を発表します(一部例外あり)。企業業績が悪化すると、配当が減額・廃止されることもあります。

また、企業が株主に対して行う株主優待もインカムゲインの中に含まれます。配当金は、基本的には安定しているので、株価や業績よりは予想しやすいといえます。
企業が純利益の中からどれだけの割合を株主に配当として還元するかを示す指標を「配当性向」と呼びます。日本では2000年代半ばくらいまで配当性向が低い企業が多かったのですが、2025年現在では東証に上場する企業の平均配当性向は30%を超えています。
■値上がり益と配当とどちらを重視するか
株で儲けを出す人には、割安な株を買って高く売る「キャピタルゲイン重視派」と配当利回りが高い株を買って配当で儲ける「インカムゲイン重視派」の両方がいます。
キャピタルゲインを目指す場合は、短期から中長期で売買を繰り返すスタイルです。一方、インカムゲインを狙う場合は、ずっと保有を続けるスタイルになります。
私はどちらかではなく、両方を目指しています。「安いと思った会社の中で、ある程度の成長性があると思われる会社の株を買い、ずっと保有し続ける」といった投資スタイルです。
割安な会社が成長し続けると、稼ぐ利益が増えることで株価は上がりますし、利益が増えると配当金も増えていきます。
たとえば、ユニクロを運営するファーストリテイリングの株価は、2016年時点では8434円でした。2024年の高値が5万5310円ですから、含み益は、1株で約4万7000円、100株で約470万円になります。さらに配当が年2回つき、1株当たり2236.68円の利益です(税引き前)。
このように長期間、売上と利益が増え続ける会社を、「充分に安い価格」で買うことで、大きな利益を得られるのです。

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名古屋の長期投資家(なごやのちょうきとうしか)

投資家

名古屋在住の覆面個人投資家。10歳のころ『こち亀(こちら葛飾区亀有公園前派出所)』で目にした投資エピソードと、親の知人が任天堂株で大儲けしたのをきっかけに投資を志す。大学生時代にバイトで貯めた50万を元手に1995年12月から株式投資を開始。徹底した銘柄分析と、低リスクを志向した「超分散投資」の長期投資家で、208銘柄を保有。インカムゲインと配当の成長を重視したポートフォリオを組む。家業である文房具店で日中働きながら、投資手法の研究を重ねた結果、総資産は2億円を超えた(2025年9月19日時点)。Xのフォロワーは7.6万人。

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(投資家 名古屋の長期投資家)
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