■箱根駅伝 往路の最注目は「5区」
東京・大手町をスタートする箱根駅伝の往路(箱根・芦ノ湖までの計107.5km)の見どころに、実力者が揃う「2区」とともに、“山”を駆け上る5区(20.8km)を挙げる人も多いだろう。小田原中継所の標高は約35m。そこから国道1号線最高地点(標高874m)まで約16kmの道のりをひたすら上っていく。往路のアンカーでもある5区は数々のドラマが誕生してきた。
2026年の箱根駅伝も山で果たして何が起こるのか。
出場大学の21人(巻頭連合含む)の“クライマー”のなかで今回、最も注目を浴びる存在が早稲田大の工藤慎作(3年)だ。1年時にいきなり5区を任され、1時間12分12秒の区間6位と好走。人気アニメ『名探偵コナン』の主人公・工藤新一に名前が似ていることに加え、コナンをほうふつとさせるメガネ姿から「山の名探偵」と呼ばれるようになった。
3年生になった今季はハーフマラソンで“学生世界一”の座を獲得。今回の5区では区間賞候補の筆頭に挙げられている。
メガネ姿が知的な印象を与える工藤。中学時代から競技を始めたが、意外なかたちで陸上部に入っている。
「中学時代、卓球部に入ろうと思っていたんですけど、練習場所が学校から少し離れた公民館のような場所だったんです。そこがちょっと分からなかったのが理由です」
卓球部を案内してくれた担任がたまたま陸上部の顧問だった縁で方向転換。卓球部が体育館で活動していたら「山の名探偵」は生まれていなかったのかもしれない。
八千代松陰高(千葉)ではインターハイ5000mに2年連続で出場。全国高校駅伝も上り基調の3区を2年連続(区間6位、同5位)で好走した。そして「アスリート選抜」で早大スポーツ科学部に合格する。
しかし、大学ではすぐに結果を残せたわけではない。1年時は箱根駅伝の前に開催される出雲駅伝と全日本大学駅伝で“挫折”を経験した。
「出雲は4区で関東勢最下位(区間9位)。大学駅伝の壁を感じました。
■「天才ランナー」の大先輩の記録を抜いた
その後は「かなりヘコんだ」というが、工藤は山で自信を取り戻す。1年生ながら箱根5区を好走すると、今度は快進撃が待っていた。
昨季は出雲駅伝の最終6区で区間2位、全日本大学駅伝もアンカー(8区)を任されて区間3位。箱根駅伝は5区(区間2位)で6位から3位に順位を押し上げた。
そして今季はさらに充実している。学生のオリンピックといわれるFISUワールドユニバーシティゲームズのハーフマラソンで金メダルを獲得。全日本大学駅伝では、かつて「天才ランナー」と表された大先輩で、その後早大駅伝監督として箱根駅伝優勝(2011年)を達成した渡辺康幸が保持していた8区の日本人最高記録を30年ぶりに塗り替えたのだ。
「渡辺さんの記録を超えたいと思っていたので本当にうれしいです。3大駅伝で初の区間賞ですし、自信になりましたね。2年前の挫折が原動力になって、強さに変えられているかなと思います」
今年の箱根駅伝は3年連続となる5区での出場が濃厚な工藤。
■区間新記録の対策はバッチリ
3回目の5区をどう攻略するつもりなのか。聞けば、平地での強化を重視してきたという。
「5区の強化としては、山上りに特化してなにかをするより平地の走力を上げることを意識してきました。前回はそのアプローチでうまくいきましたし、有酸素能力を高めることで、傾斜がきついところでも息が上がりにくくなり、タイムも上がると思っています」
過去2回の5区体験で“攻め方”も十分にわかっている。
「課題はわかっています。主に改善するのは大平台から小湧園の定点間。特に宮ノ下を過ぎた後の坂が一番課題かなと思っています。城西大・山本唯翔選手(現・SUBARU、2023~24年の2年連続で5区区間賞を獲得し、「山の妖精」と称された)と自分はそこで30秒近い差がある。そのきつい傾斜を攻略できれば、区間新だけでなく、68分台も射程圏内だと思います」
2023年の大会で、1時間9分14秒の区間記録(当時)を打ち立てた山本唯翔は、大平台(7.0km地点)から小湧園前(11.7km地点)の4.7kmを16分35秒で走破しているが、工藤は前々回が17分39秒、前回が17分08秒。山本とは33秒差の開きがあった。
単純計算だが、課題である大平台と小涌園前の4.7kmを30秒短縮して、他の16.1kmを前回と同タイムでカバーできれば、区間タイムは1時間9分01秒になる。
■“往路V”の難問を解決できるのか?
今季の早大は前評判が高い。
昨年10月の出雲駅伝で2位に入るなど少数精鋭ながら、主力選手は魅力にあふれている。駅伝主将・山口智規(4年)は日本インカレの1500mと5000mで日本人初となる中長距離2冠を達成。昨年の全国高校駅伝1区で区間記録を叩き出したスーパールーキーの鈴木琉胤や前回3区を区間3位と好走した山口竣平(2年)もいる。
花田勝彦駅伝監督は“往路V”だけでなく、総合優勝も狙っているようだ。
「圧倒的な個を育てることを4年間やってきました。まずは半分、臙脂(エンジ)色に染めたいと思っています。5区には名探偵がいるので、その難問を解決してもらうためのストーリーを組んでいきたい。後半(復路)の逆転は難しいので、往路の貯金でいかに逃げ切れるのか。今季は先頭の景色をテーマにしてきました。前を走ることでモチベーションも上がりますし、第1中継車で放送されながらレースを進めることが大事かなと思っています」
■超エリート新人3人の加入で早大時代到来か
花田監督から大きな期待を寄せられている工藤。
「自分でもけっこう気に入っています。(主人公コナンがする決めポーズを披露することを)2年時の出雲駅伝から考えていたんですけど、チームの成績的に出せないことがあって、前回の箱根まであたためるかたちになりました。ウサイン・ボルトやモハメド・ファラーら強い選手は自分の決めポーズがある。僕も『山の名探偵』に恥じない活躍をしたいです」
なお2011年以来の総合優勝に向けては、「チームが勝つためには復路も重要です。11月の全日本大学駅伝(チームの結果は5位)は、つなぎ区間で上位4大学(駒澤、中央、青山学院、國學院)と差がつきました。復路を走るメンバーが奮起してもらえれば、早稲田が優勝できていない問題を解決できるのではないでしょうか」と“推理”している。
ここへきて早大にはさらに希望の光が差している。来年3人の超エリート新人の加入が決定したのだ。
12月に開催された全国高校駅伝の1区で、かつて鈴木琉胤がマークした日本人最高記録を大幅更新する28分20秒で区間賞を獲得した増子陽太(学法石川高)、同2位の新妻遼己(西脇工)、同3位の本田桜二郎(鳥取城北高)。高校長距離界のBIG3との呼び声も高いメンバーがそろって合格を決めたのだ。工藤が最終学年を迎える来季は今季以上の戦力がアップするのは確実だろう。
箱根駅伝後はマラソンに出場するプランもあり、2028年のロス五輪が大きな目標だという山の名探偵は次々と難問を解決していくつもりだ。
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酒井 政人(さかい・まさと)
スポーツライター
1977年、愛知県生まれ。箱根駅伝に出場した経験を生かして、陸上競技・ランニングを中心に取材。現在は、『月刊陸上競技』をはじめ様々なメディアに執筆中。著書に『新・箱根駅伝 5区短縮で変わる勢力図』『東京五輪マラソンで日本がメダルを取るために必要なこと』など。最新刊に『箱根駅伝ノート』(ベストセラーズ)
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(スポーツライター 酒井 政人)

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