ユニクロの「ヒートテック」に代表される冬の保温肌着はどれくらいの頻度で買い換えればいいのか。ライターの南充浩さんは「着用や洗濯を繰り返すと、生地に含まれるレーヨンやポリウレタンが劣化し、肌との密着感が悪くなって発熱しにくくなる」という――。

■SNSで盛り上がった「ヒートテックの寿命」
今季の冬の寒さは長期予報では「平年並み」となっており、寒かった昨冬よりも過ごしやすそうです。これまでの気温の推移を見ていると、比較的暖かい日もあった中で、寒波が来た日もありました。短い寒波が襲来したことから、冬物衣料品は概して好調に動き始めました。
冬物衣料品の定番商品の一つに、保温肌着があります。現在の保温肌着の王者といえばユニクロの「ヒートテック」でしょう。ヒートテックは2003年に発売開始し、23年には世界累計で15億枚を売り上げるユニクロを代表する商品です。
このヒートテックについて先日、SNS上で「着用寿命はどのくらいなのか?」という話題が盛り上がっていました。
どんな衣料品もいずれ寿命を迎えます。もちろんヒートテックとて例外ではありません。かならず捨てる時が来ます。永遠に使い続けられる衣料品など存在しません。
■なぜ着用と洗濯を繰り返すと暖かさが損なわれるのか
衣料品の寿命は着用回数の多さと洗濯回数の多さによって決まります。
着用回数と洗濯回数が多ければ多いほど寿命は早く訪れます。逆にあまり着用せず、洗濯もしなければかなり長い期間着続けられるということになります。ヒートテックも同様で、たくさん着てたくさん洗濯をすれば早く寿命を迎えます。
特に肌着は身体と直接触れ、かつ保温肌着の性質上密着しているため、汗や皮脂を多く吸収します。汗に含まれる塩分や皮脂は生地を劣化させる原因の一つです。また体の動作にも密接に連動しているため、摩擦や伸び縮みによって、生地が伸びたり擦り切れたりします。
今回SNS上で話題となっていた「ヒートテックの耐久性」は、どうやら何回も着用するにつれて暖かさが弱まっていると感じられるようになったことを指していると思われます。今回は、ヒートテックの寿命と暖かさが感じられなくなる原因について考えてみましょう。
■レーヨンが湿度を吸収し、熱を発生させている
ヒートテックの寿命について、ユニクロが公式に発表しているものはありません。ですから、理論上は着ようと思えば擦り切れて破れるまでは着用できるということになります。
現在のメンズのベーシックなヒートテックシャツの素材組成は、ポリエステル40%・アクリル32%・レーヨン21%・ポリウレタン7%となっています。このうち、21%配合されているレーヨンがヒートテック特有の吸湿発熱機能とソフトな触感を担っています。

ヒートテックを着て暖かいと感じられる基本原理は、レーヨンが肌の表面の湿度を吸収し、それを熱に変えるというものです。そのため、生地ができるだけ肌に密着している必要があります。
余談ですが、過去のヒートテックは乾燥肌の人が着用すると、皮膚表面が乾燥して痒くなったり、軽い肌荒れを起こしたりすることがありました。それを解消するために、現在は保湿成分として植物性オイルを配合するようになっています。
SNS上では、ヒートテックの着用と洗濯を繰り返すことで生地が伸びてしまい、肌に当たる面積が減ることで暖かさが感じられにくくなっているとの指摘がありました。これはその通りです。生地が肌に接触しないことには表面の湿度を吸収できないので、発熱も起きないということです。
■洗濯を繰り返すとレーヨンが痩せて発熱量が減る
ただ、暖かさを感じられなくなる原因はそれだけではありません。繊維の検査機関に在籍したことのある知人は次のように話していました。
「洗濯を繰り返すことでレーヨンが劣化して痩せて(細くなって)しまう可能性が高い。レーヨンそのものの吸湿発熱機能は劣化しないが、痩せてしまっているので吸湿できる表面積が減少し、その結果、発熱総量が減ることが考えられる」
先述したようにヒートテックの素材は、ポリエステル、アクリル、レーヨン、ポリウレタンという4種の合成繊維による複合素材となっています。このうち、ポリエステルとアクリルは綿や麻などの天然繊維に比べると丈夫で劣化しにくいという特徴があります。

一方、レーヨンは合成繊維に分類されているものの、植物由来の繊維を原料としているので成分的には植物性天然繊維と同等であり、劣化しやすい特徴があります。
また、ヒートテックのストレッチ性をつかさどっているポリウレタンは植物成分とは無関係な合成繊維でありながら、湿気や熱、紫外線などで劣化する性質があります。ポリウレタンが劣化するとストレッチ性がなくなり、生地が伸びてヨレヨレになって、肌に密着しにくくなることは避けられません。
■着用、洗濯回数によって寿命は変わるが目安はある
総合すると、生地が伸びることで肌に接触する面積が減ることと、レーヨンが劣化して痩せるために吸湿発熱できる量が減ること――この2つが、ヒートテックを着ても暖かくなくなる主な原因だと考えられます。
では、本題のヒートテックは何シーズン着たら買い換えるべきなのでしょうか。
具体的な耐用年数を示しているところでは、現在大ヒット中のワークマンのリカバリーウェア「メディヒール」が、中に入れられている説明書きに「耐用年数2年間」と書かれています。一方で、ヒートテックに関しては先述した通りそのような公式設定は存在しません。
肌着素材に強いある大手合繊メーカーの社員に質問したところ、「着用回数と洗濯回数によって生地や繊維の劣化速度は変わるため、一概に何年とは言えない」という、なんとも言えない返事が返ってきました。また、この合繊メーカーと付き合いのある中国の肌着メーカーの社長は「自分は3カ月くらいではないかと見ている」と話していたとのことでした。
ただ、この「3カ月」では1シーズンも着通せないことになり、あまりにも短いです。おそらくこの社長は物作り系特有の「厳しい査定」でもって「3カ月」としたのではないかと思われます。
■2~3年でフィット感が失われた時が買い替え時
ここでカギになるのが、先ほどのポリウレタンです。
ポリウレタンの寿命は着用回数と洗濯回数、保管状態にもよりますが、業界的に3~10年ぐらいと認識されています。このことから、どれだけ丁寧に着用していても、3年を超えると伸縮性が悪くなり始めることが考えられます。
最も簡単な買い替えのタイミングは、着ていて生地がヨレヨレになり、肌のフィット感が失われた時ということになります。
例えば5枚所有していて、毎日着替えて、それをまとめて週に1度洗濯するという生活ペースを守った場合、2~3年で買い替えの時期がやってくるのではないでしょうか。
一人暮らしか家族との同居かなどにもよって洗濯回数は大きく変わります。一人暮らしなら週に1回か2回ですが、同居人がいるとほぼ毎日洗濯し、同じ肌着を着る回数も増えます。
毎日着替えて毎日洗濯しているなら、ヒートテックは長くても3年くらいで暖かさが感じられにくくなると想定しておくのがよいと思われます。

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南 充浩(みなみ・みつひろ)

ライター

繊維業界新聞記者として、ジーンズ業界を担当。紡績、産地、アパレルメーカー、小売店と川上から川下までを取材してきた。 同時にレディースアパレル、子供服、生地商も兼務。退職後、量販店アパレル広報、雑誌編集を経験し、雑貨総合展示会の運営に携わる。その後、ファッション専門学校広報を経て独立。
現在、記者・ライターのほか、広報代行業、広報アドバイザーを請け負う。

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(ライター 南 充浩)
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