■答え方に「品格」が出る
年末年始、帰省やパーティーなどで多くの人と顔を合わせる機会が増えます。
そこで悩ましいのが、久しぶりに会う親戚やママ友からの、デリカシーのない質問です。
「家賃はいくら?」「ご主人の会社は?」「まだ結婚しないの?」
雑談の相手は、必ずしも品の良い人ばかりとは限りません。土足でプライベートに踏み込むような質問をされた時、その人の「育ち」と「守備力」が試されます。
答えにくい質問に「嫌な顔を見せない」のが育ちがいい人の証。とは言え、咄嗟にどう返していいのか焦ってしまい、また、関係が壊れるのを恐れて、言いたくない質問に答えてしまうこともあるでしょう。しかしそれは決して知的とは言えません。
不用意に答えれば嫉妬や対立を生み、嘘をつけば後の信頼に関わります。
どう対応するのが正解でしょうか?
相手に恥をかかせず、かつ自分の領域には一歩も踏み込ませない。
本稿では、そんな「ロイヤルな雑談術」の極意をお伝えしたいと思います。
■「おたくのお子さん、お受験は?」
この季節ありがちなのが、ママ友や親戚からの「お受験するの?」という質問。
一流とそうでない人の差は、答えたくない質問をされたときの“答え方”に表れます。
三流は、“反射”で答える
言いたくないのに、相手の押しに負けて「○○中学を考えていて……」と情報を漏らしてしまい、後で「なんで言ってしまったんだろう」と自己嫌悪に陥る。これは相手に主導権を握られ、弱みを見せている状態です。
また、とっさに「受験なんて全然!」と嘘をつくのも三流の答え方。
受験は隠し通せるものではありません。後々バレた時に、「あの人、嘘をついていたわね」と、合格の事実よりも「嘘つき」というレッテルが貼られ、信頼関係が崩壊します。
“とっさの反射”で答えてしまうのは、知的な対応とは言えませんね。
二流は、肯定も否定もしない
「今、本人が伸びる環境を探しているところなんです」
「これから両親の意見も聞こうと思ってます」
この返し方は、“反射”で出るものではありません。答えたくないことは言っていないし、嘘もついていません。
この答えを聞いて、不快になるひともいないでしょう。
実はかなり「上級者」の回答ですが、“パーフェクト”とは言えません。
なぜか。
「環境を探している」といえば、「それはどこなの?」「やっぱり塾に行ってるんでしょ?」、「両親の意見を聞く」といえば、「あなたはどう思ってるの?」「ご主人は?」と聞かれるかもしれません。
こうした曖昧なで回答は、相手の好奇心を鎮火しきれないのです。
■相手を不快にさせず、立ち入らせない
では、一流はどう返すのでしょうか。
実は、二流の「曖昧な答え」に、たった“ひとこと”を付け加えるだけで、鉄壁の守りを作ることができます。
「具体的には申し上げられないのですが(否定)」+「本人が一番伸びる環境を今探しているところなんです(肯定)」
「まだ決まっていないので詳しくは言えませんが(否定)」+「これから主人の意見も聞こうと思っているんです(肯定)」
いかがでしょうか。
最初に「具体的には言えない」「詳しくは言えない」とピシャリと(しかし丁寧に)線を引いています。この前置きがあることで、相手は「あ、これ以上詳しくは聞けないんだな」と悟ります。
その上で、「探しているところなんです」と肯定の形で言い切っているため、相手は「答えてもらえた」「受け入れてもらえた」という満足感を得ることができます。
■ポイントは、言葉の「順番」
この「踏み込ませないけれど、感じが良い」を実現するために、非常に重要なポイントが、「順番」です。
先ほどの答えを、前後入れ替えてみましょう。
「本人が一番伸びる環境を今探しているところなんですが(肯定)」+「具体的には申し上げられないのです(否定)」
どうでしょう?
語尾が「言えません」という「否定」で終わるだけで、言葉の中身は変わっていないのに、印象が一気にネガティブになってしまうのです。
・「答えたくない情報は出さない(肯定も否定もしない曖昧な答え)」
・「言えない(ネガティブ)」を先に置く
これが一流の答え方です。
このテクニックは、「勤務先」や「住まい」など、はっきりとは答えたくない質問をされたときにも使えます。
Q1「おたくのご主人、どこにお勤めなの?」
×「××銀行です」
△「金融関係で働いています」
◎「会社名は控えておりますが、金融関係です」 Q2「お住まいはどちら?」
×「△△駅です」
△「中野区の方です」
◎「具体的な駅名は申し上げられませんが、中野区の方です」
「言えません」というクッション言葉を先に置き、最後を「金融関係です」「中野区です」という「肯定」で言い切る。
情報はぼかしていますが、文脈としては「答えましたよ」という形をとっているため、相手は「受け入れられた」と感じます。
「否定」で終わるか、「肯定」で終わるか。このわずかな差が、あなたの品格を決定づけるのです。
■義母の嫌味は「感謝」で味方につける
そして、もう一つ、覚えておいていただきたいテクニックがあります。
年末年始の帰省で、ありがちなのが、親戚や義理のご両親からの余計な一言。
「○○ちゃん、塾ばかりでかわいそうね」
「まだ結婚しないの?」
「二人目は?」
こうした言葉には何と返せばいいのでしょうか?
すでにお分かりかと思いますが、“カチン”ときて、反論したり弁解したりするのは三流です。
相手は悪気があるわけではなく、「心配」や「親切心」で言っているケースも多いからです。
「いやいや、絶対に嫌味です」という人もいるかもしれませんが、例えそうだとしても、対応は変わりません。
一流の答え。
「ご心配いただきありがとうございます。実は私も気になっていたので、お義母さんに相談したかったんです」
「あ、やっぱりそう見えますか? 気にかけてくださって嬉しいです」
いかがでしょう?
ここで大切なのは、「気がついてくださいましたか」というリスペクトの姿勢を見せることです。
「うるさいな」と突き放すのではなく、「ありがとうございます」と受け止め、さらに「相談したい」と懐を開いてみせる。
そうすると、相手は「私の言葉で心を開いてくれた」「頼りにされている」と感じ、自尊心が満たされます。「攻撃」のベクトルが、「協力」へと変わるのです。
相手の「上に立ちたい」「役に立ちたい」という気持ちを優雅に満たしつつ、その場の空気を丸く収める。これこそが、賢くしなやかな「育ちのいい人」の対応と言えるでしょう。
■それでも踏み込んでくる人とは、距離を置いていい
ここまで、相手も自分も傷つけない「守りの雑談術」をお伝えしました。
しかし、あなたがどれほど丁寧に接しても、土足で心の中に踏み込んでくる相手もいるでしょう。
そんな時は、無理に付き合う必要はありません。
特にママ友関係など、「住む世界や価値観が違う」と感じる相手とは、挨拶などの最低限の礼儀は尽くしつつ、深くは関わらないと決めることも、あなたの心の平穏を守るためには大切です。
「逃げる」のではなく、「住み分ける」。これもまた、大人の処世術です。
冒頭でも申し上げましたが、「育ち」は生まれ持ったものだけではありません。大人になってからでも、自分の意思で作り上げることができるものです。
品格ある言葉遣いや、相手との距離感の取り方を身につけることは、あなた自身と、あなたの大切な家族を守る「鎧」になります。
年末年始、多くの人と会うこの時期。
不躾な質問をされても、動じず、笑顔で、エレガントにかわす。そんな「新しい自分」で、晴れやかな新年をお迎えください。
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諏内 えみ(すない・えみ)
「マナースクール・ライビウム」「親子・お受験作法教室」代表
VIPアテンダント業務を経てスクールを設立。上質なふるまいや会話、社交術、テーブルマナーが学べるオンライン講座『Class the SUNAI』を主宰。難関幼稚園、名門小学校合格率95%のお受験講座は「にじみ出る育ちの良さ」が身につくと話題に。映画やドラマで女優への所作指導のほか、テレビ出演多数。
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(「マナースクール・ライビウム」「親子・お受験作法教室」代表 諏内 えみ)

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