■問題を伏せたまま突然発表された番組降板
今年6月、日本テレビは福田博之社長自らが緊急会見を開き、TOKIOの看板番組「ザ!鉄腕!DASH‼」のスタッフに対し複数のコンプラ違反行為が判明したことから、国分さんの降板を発表しました。しかし国分さんのどんな行為が問題であるかを一切伏せての会見であり、いったい何が起こったのか不明のまま、国分さんへの降板だけが決まるという異例の進展となりました。
日本テレビと国分さんの問題は、テレビ局側から突然の番組降板通告から、ご本人による人権救済の申し立てと続いていた中で、同メンバーの松岡昌宏さんが週刊誌の記事に答えることで流れが大きく変わりました。
12月3日、「デイリー新潮」と「文春オンライン」でのインタビューで初めて言葉を発した松岡さんは、抑制の利いたトーンで日本テレビへの不満を述べました。
私はクレーム対応などを長年やってきましたが、実際に手ごわいのは大声で怒鳴り散らしたりする人より、落ち着いたトーンで理性的に指摘をするような人です。
難しい立場に置かれつつ、冷静なコミュニケーションを図る松岡さんの姿勢は、交渉や危機でのコミュニケーションとしても優れていると思います。
インタビュー記事における、松岡さんの決して感情に走らない問題提起は、日本テレビの対応への反発の根深さを表現しているのではないかと感じました。
■松岡氏の発言から見える日テレへの疑念
一般の視聴者だけでなくグループのメンバーである松岡さんも、何も情報が無いことが今回週刊誌のインタビューで初めてわかり、この事件にまとわりつくモヤモヤが、あらためて浮き彫りになったと思います。
松岡さんはデイリー新潮のインタビューで「日本テレビさんの方から何の説明もいただいておりません。そんな中で「番組には引き続き出演していただきます」と、言われたとのこと。そして「何かしら言える範囲での説明があるのが普通なのではないかなと思うのですが、それがないまま、撮影が続いているわけです。」と、現状を冷静に説明しました。
抑えた表現ではあっても、松岡さんの抱いた違和感、国分さんを降板させるのも、松岡さんら残ったメンバーだけは出演させるのも、すべてテレビ局の一存であることへの疑問があらわれています。自分たちの意思を聞こうともしていない姿勢に、感情的な反応ではない分、深みがあります。
国分さんの問題がずっとすっきりしないのは、とにかく何があったのかが何もわからないからでしょう。「コンプライアンス違反があった」以外の情報が一切無い中では、突如人気番組を降板させるほどの何か大きなことをしでかしたとしかいえません。
■世間が日テレに対し批判の目を向け始めた
とはいえコンプラ違反は重大な行為なので、国分さんは表舞台から消されました。この宙ぶらりんの状況から、国分さん本人は自らの会見において「答え合わせがしたい」と述べ、人権救済を訴えたのでしょう。
モヤモヤしつつも、どちらかといえばコンプラ違反という罪状を突きつけられた国分さんに厳しい反応がありましたが、それでもテレビ局の一刀両断的な対応は、中身を明らかにしないのにどうしてそこまで強硬なのかという疑問はありました。
国分さん自らが口を開いた今年11月の会見と、それに応える局側の反応である「答え合わせをするまでもない」という日テレ・福田社長のゼロ回答で、厳しい拒絶をあらためて浮き彫りにしたと思います。(朝日新聞、2025年12月1日)
そこで新たに加わったのが、松岡さんです。松岡さんがこれまで意見発信をしてこなかったことや、やっと出てきた今回の発言も含め、きわめて抑制的で理性的であることは、逆にテレビ局側への不満を際立たせたと思います。これによって流れはテレビ局側に逆流し、批判的な目が向き始めたと考えられます。
流れを変えたのは“国分さんの会見、日本テレビの反応、松岡さんのインタビュー”というセットによるものと考えます。
■落ち度があったと言える日テレの対応
松岡さんのインタビューが出てから、日本テレビのプロデューサーなどがすぐさま、もう一人のメンバーの城島茂さんへ、状況説明に動いたとの報道がありました。城島さんの収録現場にスタッフが出向いたものの、撮影に集中したいということで、話はできなかったとのことです(デイリー新潮 日テレが城島茂に謝罪を試みるも拒否されていた! 「鉄腕!DASH‼」ロケ現場で… 城島は「撮影に集中したい」 2025年12月17日)
もしこれが事実であれば、今さら感があります。説明するのであれば松岡さんのインタビューが出るよりもっと前、6月の福田社長会見と同時期に行うべきだったのではないのでしょうか。松岡さんの記事の後という、泥縄(どろなわ)な対応は不信感を増強しかねません。ちなみに、日本テレビは上記報道に対し「事実誤認に基づく内容」が多く含まれているとしています。
福田社長の会見にモヤモヤした最大の理由である“明確な情報の無さ”が、一部報道を信じるならばTOKIOメンバーの方からの反発によって改めてあぶり出された形です。
この報道もあり、日本テレビの一方的な強硬姿勢への批判の流れを強めてしまったと考えられるでしょう。
■交渉は論破することではない
フジテレビが中居正広さんの問題で、経営陣総入れ替えになるほどの大きな体制変更に及んだことは、日本テレビにとっても他人事ではなく、国分さん事件の拡大を阻止して、組織を守ることは大きな目的だと理解出来ます。しかしそうであるなら、TOKIOのメンバーへの説明はもちろん、国分さん自身への対応も、もっとソフトに、ていねいな対応ができたのではないかと思います。
理詰めでガンガン話を進めることが交渉ではありません。論破することではなく、交渉の結果、達成したい目標に至れるかどうかが交渉の要諦です。一方的に国分さんを降板させ、その内容を一切開示しないというのは限りなく無理筋でした。
一方の松岡さんは仲間を守りたい気持ちと、コンプラ違反という現在の社会では致命的なミスをなかったことにはできないという非常に難しい立場の中、「ていねいな説明」をインタビューで心がけたと思います。
強硬な相手に同じ目線でやりあったとしたら、もしくは自分たちがコンプラ違反をしたくせに開き直っているのではないかなど、さらに世間から批判を呼んだ可能性もあるだけに、非常に優れた対応でした。
■千鳥大悟の「酒のツマミ」と似た構造
もはやテレビ局の意思がすべてを決する環境ではありません。
他にもフジテレビでは松本人志さんのあとを引き継いだ千鳥の大悟さんが、「酒のツマミになる話」でハロウィンのコスプレとして松本さんの格好をした回が直前で放映中止になりました。結果として相方ノブさんとも合意の上で千鳥さんが番組の出演を辞退し、番組そのものが終了となった件も類似性があると感じます。
事態はまだ流動していますが、私たちは時代に合った交渉、コミュニケーションが求められています。それは立場の強さに乗じて一方的に押しつけることではありません。芸能人など著名な人はもちろん、一般人でさえSNSによって意見発信は可能となりました。これを防ぐことは不可能です。
この前提に立った交渉コミュニケーションでは、結局「ていねいなコミュニケーション」と言う、一見遠回りに見える戦略は、これまで以上に有効な選択肢となったと感じています。
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増沢 隆太(ますざわ・りゅうた)
東北大学特任教授/危機管理コミュニケーション専門家
東北大学特任教授、人事コンサルタント、産業カウンセラー。
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(東北大学特任教授/危機管理コミュニケーション専門家 増沢 隆太)

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