■豪華ゲストに沸いた「丸亀うどん祭り2025」
讃岐うどんチェーンの丸亀製麺と丸亀市が、2025年11月に開催した「丸亀うどん祭り2025」は、地元の人たちにとって異例の規模のイベントだった。
「初の四国ですごくテンションが上がっています!」 ゲストとして招かれた上戸彩さんの第一声に、「丸亀うどん祭り2025」のメイン会場・丸亀城芝生広場の観客は沸き返る。
総合司会は、会場とは目と鼻の先にある丸亀高校OB・中野美奈子アナウンサー(丸亀市出身)が務めた。ほか、丸亀製麺とゆかりの深い俳優・松岡昌宏さんや、「うどん県副知事」を長らく務める要潤さんなども登場。ふだん生で見かけることのないゲストを少しでも最前列で見ようと、この日は早朝から長い行列ができていたという。
開会式には、丸亀市の松永恭二市長、トリドールホールディングスの粟田貴也社長、丸亀製麺の山口寛社長が登壇した。
一方で、このイベントには香川県や県内最大の業界団体は協賛していない。あくまで「丸亀市と丸亀製麺」の関係性が前面に出た催しであり、香川県全体との距離感は、なお残されたままだ。
■丸亀製麺を「初めて食べる」香川県民たち
イベントの目玉企画の一つが、ギネス世界記録への挑戦を兼ねた「最大のうどん試食イベント」だった。3種類のうどんを315人がいっせいに試食するという企画で、会場は終始にぎわいを見せていた(ギネス記録は達成)。
この日提供されたのは、丸亀製麺の定番である「釜揚げうどん」と、期間限定商品の「甘口トマたまカレーうどん」と、地元の名店「よしや」の山下義高さんらが作った「しょうゆうどん」の3種類だ。
会場で印象的だったのは、「丸亀製麺を初めて食べた」という香川県民が想像以上に多かったことだ。県内に店舗が1店しかないため、名前は知っていても、実際に口にする機会がなかった人が少なくなかった。
感想を聞くと、「思ったより美味しい」「全国チェーンの味としては驚いた」と好意的な声が多い。一方で反応には世代差も見られた。高校生や若年層は「CMでよく見る全国チェーン」として受け止め、働き盛りの世代からは「市街地活性化のために来てほしい」という声が目立った。
試食によって丸亀製麺を“知った”人は増えたが、それが日常的な選択につながるかどうかは、まだ別の話のようだ。
■「一夜限りの名店コラボ」に夜まで行列
丸亀製麺のレギュラーメニューとしてのうどん提供は試食会に限られていたが、会場周辺のキッチンカーでは、地元の讃岐うどん店による「一夜限りの名店コラボ」が行われた。
会場では、丸亀製麺のブース以上に、これらのキッチンカーに長い列ができていた。上戸彩さんや松岡昌宏さんらゲストが会場を去ったあとも、行列は夜まで途切れなかった。
提供されたのは、ジャンボうどん髙木(善通寺市)と純手打うどん よしや(丸亀市)による釜揚げうどん、そして手打うどん丸亀渡辺と手打うどん竹寅によるかけうどん。いずれも香川県内では広く知られた名店同士の組み合わせである。
普段は絶対食べることのできない「幻のうどん」とあって上戸さん・松岡さんが会場を去っても、夜まで行列が絶えることはなかった。
■香川県民にとって、うどんは“日常”
列に並ぶ人々に話を聞くと、理由は明快だった。
「渡辺さんのお店に親の代からお世話になっている。竹寅も弟子の時から知っとるから来んわけにはいかん」(丸亀市・40代夫婦)。
「『よしや』はいつも大行列で駐車場にも停めれん人気店。高木さんも存じ上げているので、絶対食べたいと思ってきた」(多度津町・50代男性)
香川県民・丸亀市民の比率がかなり高く、期待の熱量も強かったようだ。世代を超えて共有されているのは、「知っている店」「通ってきた店」への信頼感である。
提供されたうどんはいずれも完成度が高く、満足度は非常に高かった。しかしここで浮かび上がったのは、味の評価以上に、香川県民のうどん観がいかに“日常と記憶”に根ざしているか、という点だった。
この「名店コラボ」の盛況は、丸亀製麺が受け入れられた証しというよりも、香川県民がうどんに何を求めているのかを、あらためて示す結果だったと言えるだろう。
■丸亀製麺を食べた地元の人たちの本音は…
さらに、市民広場からアーケード街にかけては20台以上のキッチンカーやワークショップが並び、親子で楽しめるイベントが開かれていた。
参加して感じたのは、丸亀製麺の“人”が前面に出ていたことだ。
全国から派遣された約200人の社員は、子どもから大人まで幅広い客層でしっかり目線を配り、「丸亀製麺の歴史」「粉と水を麺にするまで」といったブースの説明を丁寧に行っていた。
展示内容は「『讃岐うどん』なのに出汁に『いりこ』が使われていない」など否定的な意見が出そうな内容であったが、こう感じた人々でも「丸亀製麺の人々は優しく丁寧な対応だった」という認識を持ったのだろう。
では、丸亀製麺の想いは地元の人に届いたのか。会場周辺で十数名に話を聞いた。
もっとも多く聞かれたのは、「ここまでのイベントをやってくれたことへの感謝」だった。
■「開催に感謝」「出店大歓迎」
人口10万人強を擁する香川県第2の都市とはいえ、丸亀市はいま人口減少や、市街地の空洞化に悩まされている。こうした大規模イベントは久々だったようで、
「もう何十年も明るい話題がないのに、『丸亀お城まつり』(年1回開催)並みの催し物を企画してくれる丸亀製麺には、感謝しかない」(丸亀市、近所に在住の70代女性)
「上戸彩さん・松岡昌宏さんを呼べる丸亀製麺の本気度に驚いた!」(丸亀市・20代女性)
と、終始驚いていた様子だった。
一方で、現実は変わっていない。丸亀製麺の実店舗は、いまだに丸亀市にない。「丸亀市創業でもないのに“丸亀”製麺を名乗っている」「讃岐うどんとは味が違う」という声は根強く、なかなか香川県内で支持を得るに至っていない。
それでも、「丸亀製麺が丸亀に来るならどう思うか」と尋ねると、返ってきた答えは意外なほど前向きだった。
特に若い世代は、外食チェーンの進出を渇望しているようだ。
「丸亀製麺に限らず、全国チェーンの進出は大歓迎」(20代・地元男性)
「マクドナルドもガストも郊外にしかない。丸亀高校近くの市街地に出店してほしい」(10代・高校生)
■「行くかどうかは…」に潜む本音
彼らにとって丸亀製麺は、「讃岐うどん論争の当事者」ではなく、「知っている全国ブランド」のようだ。つまり、丸亀製麺に対する評価は確実に上向いている。ただし、それは「日常的に通う店」としてではない。感謝され、歓迎され、好意は持たれている――しかし、食べるかどうかは、また別の話なのである。
中高年を中心に「出店を大歓迎」の声も強かった。しかし、話を一歩踏み込んで「自分が通うかどうか」を尋ねると、空気は微妙に変わる。
「丸亀市には50軒以上のうどん店があり、ワンコインで十二分に贅沢できる店が多い。新商品のうどん一杯で800~900円かかる丸亀製麺ができても、行って2、3回だろう」(50代・主婦)
「試食で美味しいことはわかった。ただ、麺・出汁ともに食べる前から分かる違いがあり、『讃岐うどん』と言われて違和感が残る」(50代・高松店に食べに行ったという夫婦)
好意はある。
■立ちはだかる「ワンコイン」の壁
背景にあるのは、香川県に根づいた独特のうどん文化だ。
県内には製麺所タイプも含めて700~900店のうどん店があり、多くが自宅改造や家族経営という低コスト体制で、「かけ1杯200~300円」、しかも味の満足度が高い。県民にとって、うどんは「外食」ではなく「日常食」であり、「ワンコインを超えると贅沢」といった感覚で、それ以上は注文にブレーキがかかってしまう人も多い。
しかも丸亀製麺は、香川県向けに味や価格を大きくローカライズする戦略をとっていない。全国で同じ体験を提供することを、ブランドの軸としているからだ。
となれば、勝負の仕方は一つしかない。「安いうどん」ではなく、「料理としてのうどん」「体験としてのうどん」として、どこまで価値を認めてもらえるか。そのハードルは、香川県では特に高い。
総じて言えば、丸亀製麺は嫌われてはいない。むしろ好意的に受け止められている。
歓迎されるが、選ばれない。この距離感こそが、丸亀製麺が香川県で直面している最大の壁なのである。
■店を出せなくても、売れなくてもいい
丸亀製麺の創業者でもあるトリドールHD・粟田貴也社長は、取材に応じて「近い将来、丸亀に出店する」と、明言している。ただし、今回の取材を通じて見えてきたのは、「出店できるかどうか」よりも、もっと根源的な問いだった。
丸亀製麺は、香川県で嫌われているわけではない。むしろ好意的に受け止められ、感謝され、歓迎すらされている。しかしそれでも、「日常的に通う店」にはなりきれていない。そこには、ワンコイン文化に象徴される、香川県特有の食の価値観と、ちょっとした味の違いという、簡単には越えられない壁がある。
それでも丸亀製麺は、丸亀市との関係構築をやめない。出店に直結するかどうか分からないイベントに、人と時間とコストを投じ続けている。短期的に見れば、どう考えても割に合わない投資だ。
だが、丸亀製麺にとって丸亀市は、「売れるかどうか」を試す市場ではない。25年前、讃岐うどんの食体験に心を打たれ、「丸亀製麺」という名を掲げる原点となった場所だ。今回の「丸亀うどん祭り2025」は、その原点と正面から向き合い直し、せめて「歓迎はされている」ことを可視化するための一大イベントだったと言える。
出店は結果であって、目的ではない。たとえ店舗ができなくても、丸亀製麺はこの地での挑戦を続けるだろう。割に合わないと分かっていても、そこに向き合わなければ、全国860店舗で、「讃岐うどん」を名乗るブランドの物語は完成しないからだ。
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宮武 和多哉(みやたけ・わたや)
フリーライター
大阪・横浜・四国の3拠点で活動するライター。執筆範囲は外食・流通企業から交通問題まで、元・中小企業の会社役員の目線で掘り下げていく。各種インタビュー記事も多数執筆。プライベートでは8人家族で介護・育児問題などと対峙中。
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(フリーライター 宮武 和多哉)

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