※本稿は、原晋『決定版!青学流「絶対王者の鉄則」』(祥伝社)の一部を再編集したものです。
■人が入れ替わっても勝ち続けるのには理由がある
なぜ青山学院大の駅伝チームはこんなにも強いのか。
これは、よく聞かれる質問です。
なぜ強いのか?
そこには、こんな疑問も含まれているようです。
学生スポーツは選手が毎年入れ替わるのが必定。どれだけ強いチームをつくりあげても、いつか主力の選手たちは卒業していく。それなのにどうして勝ち続けられるのですかと。
箱根駅伝に限って言えば、私たちは直近10年で7回の総合優勝を成し遂げています。その前には4連覇がありましたから、11年で8回の優勝。これはかなりの高確率です。
なかには、低い下馬評をひっくり返して勝利をつかんだこともありました。ただし、こうした結果も、私からすればそう驚きではないのです。
■勝つための条件は2つ
いきなり結論的なことを言えば、勝つための条件は大きく分けてふたつです。
まずひとつは、正しいメソッドを持っているかどうか。メソッドとは、「勝つための育成論」とも言い換えられるでしょう。2018年1月3日に史上6校目となる4連覇を達成したとき、勝つためのメソッドがほぼ完成しました。やはり勝利には、選手の実力を正しい方向に伸ばすための育成術が不可欠です。
そして、もうひとつの条件が、勝つために本当の努力をしているかどうかです。
努力とはきわめて主観的な言葉ですから、誰だって「自分は努力をしている」と言うことはできます。ただ、それが他人の目から見た場合にはどうでしょう。自分はまだ甘かった、と気づかされることも多いのではないでしょうか。
2004年4月に青山学院大体育会陸上部長距離ブロック(以下、青学大またはチームと略)の監督に就任して以来、私は常に他人から見ても「ようやっとる」と言ってもらえるような努力を続けてきました。
■寮生活にこそチームが強くなる秘密があった
地元広島の中国電力を辞め、妻の美穂と一緒に東京都町田市にある駅伝チームの寮に住み込んではや22年――。プライベートがほとんどないような空間で、今も40名余りの部員たちと生活をともにしています。数ある実業団、そして大学のなかでも、ここまで自分を投げ出して指導に打ち込んでいる指導者はわずかでしょう。
実を言うと、この寮生活のなかにこそチームが強くなる秘密が隠されているのです。これまで20年以上にわたる指導のなかで、とりわけ工夫を重ねてきたのが寮生活のあり方でした。人が入れ替わっても勝ち続けられる組織であるために、日常生活を徹底的に見直したことが現在の成果につながっているのです。
では、監督は普段、寮でどんな振る舞いをしているのか。父と息子ほど年の離れた学生たちに、どんな言葉をかけているのか。常日頃から私が学生たちに言い聞かせている言葉を通じて、チームの強さを明らかにしようというのが、この本の狙いです。
とかく扱いが難しいといわれる令和世代の若者に、昭和のオヤジがどう向き合い、成長を促しているのか。駅伝ファンのみならず、学校で教える教師の方々やビジネスパーソン諸氏にも、何かヒントになるものが見つかることを願っています。
■なぜ2026年大会も優勝できたのか
今シーズン、わがチームは大変厳しい状態からスタートしました。
前回2025年の箱根駅伝で2連覇を達成しましたが、その連覇に貢献した主力たちがごそっと抜けてしまったのです。
2年連続区間賞の太田蒼生、遅れてきた天才の鶴川正也、山登りのスペシャリストであった若林宏樹、前回の大会MVPである野村昭夢という、タレントぞろいの最強世代が卒業したのです。
優勝した翌日、私が残った学生たちに言ったのは次のひと言でした。
「今の時点で3連覇ができる確率は0%だよ」
希望がほぼない状況からスタートして、スピードを磨く春にチーム状態がやや上向き、充実した夏合宿を終えると、その確率は30%~40%にまで上がってきました。
いよいよ秋の駅伝シーズンが開幕し、初戦である10月の出雲駅伝は7位と「惨敗」とも言える結果に、驚いた方も多いと思います。ただし、私はそれほど心配していません。今回はプレッシャーのかかる区間に駅伝経験の少ない選手を配置した監督のミス。改めて区間配置の難しさを知った、意義のある大会でした。
そこからチーム内でミーティングを開き、軌道修正を図った11月の全日本大学駅伝は3位に入り、ようやくエンジンがかかってきました。この3位も決して満足のいく結果ではありませんが、メダルの色でいえば銅メダルです。表彰台に上がったのですから、学生たちに「可」の及第点は与えられるでしょう。
■「原マジック」と呼ばれるが、私は魔法を使えない
駅伝王者の真骨頂は、まさにここからです。メソッドに沿って強化を進め、さらにチーム力を磨いていけば、冬が本格化する12月中旬あたりまでには、次の箱根駅伝が楽しみな状態にまで仕上がってきているのではないでしょうか。
たとえ下馬評が低くても、青学大は必ず箱根に向けてピーキングを合わせてくる。谷間の世代と言われながらも、いつの間にか優勝候補の一角に名を連ねている。そんな手腕を評して、よく「原マジック」とも言われます。
大変光栄ですが、私に魔法は使えません。あるのは勝つための哲学と信念に基づいた言葉のみです。さあ、皆さんも私の言葉に耳を傾けてみてください。
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原 晋(はら・すすむ)
青山学院大学陸上競技部長距離ブロック監督、同地球社会共生学部教授、一般社団法人アスリートキャリアセンター会長
1967年、広島県三原市生まれ。青山学院大学陸上競技部長距離ブロック監督、同地球社会共生学部教授、一般社団法人アスリートキャリアセンター会長。
広島県立世羅高校で全国高校駅伝準優勝。中京大学卒業後、中国電力陸上競技部1期生として入部するも、故障に悩み5年で引退。
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(青山学院大学陸上競技部長距離ブロック監督、同地球社会共生学部教授、一般社団法人アスリートキャリアセンター会長 原 晋)

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