■昨年末フィンランドで差別問題が
2025年12月、いったんはミス・フィンランドに選ばれた女性がSNSに自身の「つり目」ポーズを投稿したため、ミス・フィンランドの称号を剥奪され、その後同国の右寄りの政治家らもSNSにて「つり目」ポーズをアップしたことが、多くの日本人の怒りを買った件は記憶に新しいです。
日本人の母を持ち、幼少期や思春期にこの「つり目」ポーズを何回もされたことのあるドイツ育ちの筆者もまた、フィンランドでのこの事例に対して怒り心頭です。その一方で、ようやく日本でもこの問題、すなわち「日本人を含むアジア人が欧米諸国で差別されていることにスポットが当たったこと」について、どこかホッとしている自分もいました。というのも、留学、駐在、結婚などで欧米諸国に長く住む日本人であれば、周囲の人から「つり目ポーズ」をされたり、「チンチャンチョン」などと言われバカにされるということを多くの人が経験しているからです。それにもかかわらず、この問題について「日本に住む日本人」が興味を示すことは今までほとんどありませんでした。
【参考記事】フィンランドの「つり目ポーズ」が大炎上…なぜ差別する相手に「中国人ではなく日本人だ」の反論が無効なのか
「日本にいる日本人」は日々の生活の中で欧米人と関わる機会があまりありません。仮に日本国内で欧米人と交流があったとしても、「日本に来ている欧米人」というのは、少なからず「日本が好き」という気持ちがあるからこそ日本に来ているわけです。ですから、日本国内において「日本人に対して差別行為をする欧米人」というのはまずいないでしょう。
■海外に行けば差別は避けられない
ヨーロッパに行けば、残念ながら「アジア人は自分達よりも下」だと潜在的に考えている人が少なくありません。そういった意識が冒頭のような「アジア人に対してつり目のポーズをする」という行為につながっているわけです。記事がYahoo!ニュースに転載された際、仕事や留学などで欧米に住んだ経験のある人から「自分も欧米で、差別行為をされた」と日本人からのコメントが多くありました。
周囲の人に「つり目ポーズをして差別された」といった内容の相談をすると、「そんなことをする人とは付き合わなければよい」と言われることがあります。でも予め言ってしまうと、それは全く現実的ではありません。なぜならば、「道端でたまたますれ違った酔っ払い」が差別行為をするとは限らず、差別をするのは職場の同僚や上司だったりするからです。子供の同級生や学校の先生がこの「つり目ポーズ」をすることだってあります。
■フランスの語学学校で起こったこと
そういった時に「かかわらない」という方法はないに等しいです。Yahoo!のネットコメントでは「フランスで語学学校に通っていた時、授業で『先生が誰かを描写して、誰か当てる』というゲームをした。カメルーン人の先生が『その人は黒髪女性で……』と口頭で生徒の特徴を言った後に『これヒント!』と言い、いきなり『つり目ポーズ』をした」というエピソードが紹介されています。
以下、Yahoo!ニュースに付いたコメントです。
フランスで語学学校に通っていた時、先生はカメルーン人女性でした。授業で、先生がクラスの誰かを描写して、誰か当てるゲームをしました。「その人は黒髪女性で……」といくつか言った後に、これヒント! といきなりつり目ポーズをしたのです。
生徒の半数がアジア人であるなか、投稿者の日本人は「自分は目が大きくタレ目なので、自分のことではないだろうな」と思いつつ「嫌なポーズだな」と思っていると……なんと先生は自分のことを指差したとのことです。このようにして投稿者は「つり目のポーズ」が目の大きさ、タレ目、つり目などの目の形とは無関係で「アジア人全員を指すポーズ」だと理解したとのことです。
■日本人の誇りを持てば良い⁉
語学学校で加害者と被害者は「先生と生徒」という立場であったわけです。生徒が下手に抗議をすれば大ごとになり今後の成績や卒業に不利な状況につながりかねない……そう考える生徒がいてもおかしくありません。いつ・どこで「差別をする人」に出会うか分からないのです。こういったケースに対して「差別をする人とは付き合わなければよい」というのは、的外れなアドバイスだと言わざるを得ません。
「日本人としての誇りをもっていれば、そんな差別行為は気にならないはず」というコメントもありましたが、そういった意見に関してもしかりです。
■パスポート取得率が低く、内向き
日本のパスポート所持率は17.3パーセント。世界は差別だらけです。中国のこと、と言って逃げているケースはその人は中国以外のアジアなんて知らないから名前を出すだけです。日本は存在も知らない、若しくはもっと下に見ているから言い訳するまでもない、どちらかです。これをまず知識として持って頂きたい。
Yahoo!のコメント欄にこう投稿されていたように、「日本人のパスポートの所持率は17%」です。例えばドイツ人の所持率は60%以上なので、先進国の中でもかなり低く、日本人の多くが「内向き」になっているわけです。筆者自身も「日本にいて居心地良い」と考えているので、「何もわざわざ海外に出かける必要はない」という気持ちに共感できるところがあります。そうはいっても、「海外に出ていかないこと」の弊害もあると考えています。
海外に出かけて行かないと、海外の現実を身をもって知ることはできません。
■ドイツの悪しき「サーカス」文化
筆者は子供時代を1980年代のドイツで過ごしました。筆者が通っていた小学校では学校の行事の一環で地元ミュンヘンのサーカスに出かけることがありました。サーカスを借り切って、全校の生徒がサーカスで「象やライオンの芸」を見るとともに、「人間の芸」も見ます。そのなかには「ドイツ語がままならない中国人が、おかしな言語で叫び、箸(はし)を髪の毛に刺したまま(かんざしではありません)、場内をピョンピョン飛ぶ」という、今の時代であれば確実に炎上するであろう「芸」も含まれていました。それを受け「チョンチャンチョンだと言っているけれど、僕には分からないよ」と言って笑う相方のドイツ人の姿が……。
このサーカスでの一コマこそが、今もなお続く「アジア人蔑視」のベースにあるものだと思います。つまりはアジア人のことを、遠く離れた国にいる得体のしれない人だという烙印を押し、その一環で「容姿、言語、発声のしかた、身体的な特徴、動作」も何もかもバカにして笑うというものです。当時、小学生だった筆者はこの「芸」を見てモヤモヤしたことを覚えています。
■アジア人差別には長年の歴史が
今の40代や50代のドイツ人であれば、子供の頃に学校や家族と一緒にサーカス鑑賞をしていた人も多いです。さらに上の世代であれば、今よりも娯楽が少なく、「サーカスへ行く」ことは市井の人にとって年に一度あるかないかの「楽しみ」でした。
でもこのようにドイツ人の楽しみとなっていたサーカスではお決まりのように東洋人をバカにするような「芸」が行われていたわけで、差別の歴史は根深いのです。「アジア人を見たら笑ってもいい」という感覚で育った人が親となり祖父母となり、子供や孫が「つり目ポーズ」をしたり「チンチャンチョン」と言ったりしても、「昔からあることだし何が悪いの?」とばかりに、その行為を注意することなく、むしろ面白がっている様子が見られるのは、そういった差別の歴史が長いからなのです。
■見た目で多様性を教えればOKか
ヨーロッパの学校のもう一つの問題は、「多様性」というものについて、先生が「アジア人の目の形に言及すれば、子供達に多様性を伝えることができる」と勘違いしているケースが多々見られることです。
イタリアで育った日本人女性A子さんは、「イタリアで小学校に通っていた時、同級生が素朴な疑問として、先生に『なぜA子は見た目が僕たちと違うの?』と質問をした」と言います。すると、先生はA子さんを皆の前に立たせ、「世界には色んな見た目の人がいます。A子はアジア人なので目が細いです(ここで先生が例の「つり目ポーズ」をする)。そして、A子の肌は黄色です。世界には色んな人がいます。
この先生に限らず、いまだに多くの欧米人が勘違いしているのは、子供達に対して「世の中には見た目が違う人がいるということをしつこく繰り返すことで、多様性を伝えるという目的が達成された」と勘違いしている人が一部にいることです。
■日本人も白人の鼻をバカに?
記事のコメントにもありましたが、日本で「白人の真似」をする時に「高い鼻のパーティーグッズ」を使うことがあります。何年か前には日本の航空会社がそのようなCMを流し炎上したことがありました。
ただ、筆者は「アジア人を前に、つり目ポーズをする外国人」は沢山いる一方で、「白人を前に、白人の鼻をバカにする日本人」には会ったことがありません。だから「つり目ポーズをすること」と「高い鼻のパーティーグッズをつけること」が「同じぐらいひどいことなのか」と聞かれると、筆者個人の心情としては「ちょっと違う」と感じています。そうはいっても、身体の特徴を映像化することには慎重になるべきです。
■アジア人をからかうのは「いじめ」
そもそも筆者は「容姿に関する会話」があまり好きではありません。「美容」の話になるとき、よく女子同士で「あの人は顔が大きい」だとか「あの人は目が残念」だとか言ったりするのを聞きます。筆者自身もきっと色々と言われているのだと想像します。でも見た目はあくまでも見た目で、わざわざ話の材料にする必要はない気がします。そして「人の見た目に言及して良い」という空気が広まってしまうと、前述のような発言をする人と同じレベルになってしまう気もします。ですから、個人的には、人の見た目に言及しないに越したことはないと思っています。
「チンチャンチョン」と言ってアジア人の言語をからかうのも、「つり目ポーズ」をしてアジア人をからかうのも「陰湿ないじめ」です。アジア人が白人の配偶者などと一緒に道を歩いていると、道行く人からそういったからかいやいじめはされない傾向があります。逆にアジア人が一人で歩いている時、アジア人同士で歩いている時、そういった目に遭いやすいです。つまり、人種差別をする人は「スキを狙ってやってくる」のです。そういったことを踏まえると、「悪気はない」という説明は通用しない気がします。
■つり目ポーズに反撃する方法
さて、予期せぬ形で目の前で「チンチャンチョン」と言われたり「つり目ポーズ」をされたら、どう反応すればいいのでしょうか。Yahoo!のコメント欄には、こんな対処法が投稿されていました。
私も海外に居た時に吊り目ポーズで揶揄された事がありますが"Wow! you look much bettter than ever"(おー! 全然今までの顔よりマシだよ)と言い返したら相手が屈辱的な顔をしてました。全力で怒るのは疲れるので、バカにし返すのが正解だと思います。あと記事にある通り、無知な相手からすれば東洋人は一括りなので、日本人は好感度が高いから別などと考えない方が良いです。
やはり黙っていては相手の思うがまま。この投稿をした人のように、即座に言い返すことのできる「瞬発力がある人」は強いです。
では「瞬発力」のない人はどうすればよいのでしょうか。今後、海外旅行に出かける方、海外に長期滞在する予定のある方は、事前の準備として「挨拶」だけではなく「反撃の言葉」も暗記していくとよいでしょう。
もしも「つり目ポーズ」をされたら、「今、あなたはアジア人の目の形をバカにしましたね。それはレイシストの行為ですね」というこの二つの文章をハッキリと大きな声で言うのが効果的。相手が何か言ってきても、同じ文章を抑揚つけずに、何回も繰り返しましょう。英語と現地の言葉の二カ国語で言えればなおよいです。
人の多い場所であれば良識のある第三者が助け舟を出してくれる可能性もありますし、そうはならなくても「譲らず反撃した人」として相手の記憶に残ります。それが長期的にこの手の「いじめ」や「からかい」をなくしていく上で、我々にできることです。
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サンドラ・ヘフェリン(さんどら・へふぇりん)
著述家・コラムニスト
ドイツ・ミュンヘン出身。日本語とドイツ語の両方が母国語。自身が日独ハーフであることから、「ハーフ」にまつわる問題に興味を持ち、「多文化共生」をテーマに執筆活動をしている。著書に『体育会系 日本を蝕む病』(光文社新書)、『なぜ外国人女性は前髪を作らないのか』(中央公論新社)、『ほんとうの多様性についての話をしよう』(旬報社)など、『ドイツ人は飾らず・悩まず・さらりと老いる』(講談社)、『有休取得率100%なのに平均年収が日本の1.7倍! ドイツ人の戦略的休み方』(大和出版)などがある。
ホームページ「ハーフを考えよう!」
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(著述家・コラムニスト サンドラ・ヘフェリン)

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