■「進次郎構文」を自然に使う若者たち
アナウンススクールの代表や転職コンサルタントとして就職・転職活動の支援をするなかで、苦戦している若者たちの話し方に“ある共通点”があることに気づきました。
若者たちは一生懸命に話しています。言葉遣いも丁寧で、態度も真面目。それでも、話を聞き終えた面接官が首をかしげる場面が増えてきているのです。
例えば、面接練習でよく耳にするのが、次のような自己PRです。
「私は、自主性を持って行動できる人間です。だからこそ、自主性のある行動を心がけてきました」
ふざけてるのかと思ってしまいますが、話している若者はいたって真剣です。わざわざ説明するまでもないことですが、同じ意味の言葉を言い換えて繰り返しているだけなのです。
本人に「なんでこういう話し方をしているの?」と聞いてみると「主張を補足している」「丁寧に説明している」といった答えが返ってくるのですが、補足にもなっていなければ丁寧にも感じられません。
これは、いわゆる「進次郎構文」とよく似ています。「進次郎構文」とは同じ意味の言葉を言い換えて繰り返し、話が前に進まない話し方を指します。
■主張に根拠がなく、説得力を感じない
「AだからAなのです」
「Bということは、Bだということです」
このような同語反復のフレーズが、「進次郎構文」の代表例として挙げられます。実際に小泉進次郎氏の発言の代表的な例として、次のような発言があります。
「今のままではいけないと思います。だからこそ日本は今のままではいけないと思っています」
一文目で示した考えを、二文目で言い換えて繰り返していますが、なぜ今のままではいけないのか? という理由は示されていません。
また、次の発言もよく知られています。
「約束は守るためにありますから、約束を守るために全力を尽くします」
こちらも、前半で述べた内容を後半で言い直しただけのものです。どの約束を、どのように守るのか? という具体的な説明は含まれていません。
そのため、政治家のスピーチのように、ひとつのメッセージを繰り返して印象を強めたい場面や、議員や記者からの追及をはぐらかす際には効果的なのですが、主張の具体的な根拠が求められる面接やビジネスの現場では「中身がない話し方」だと受け止められてしまうのです。
■「伝わっていないかも」と不安がっているが…
先日の模擬面接でも、こんなことがありました。
講師「あなたの強みを教えてください」
生徒「はい。私の強みは、責任感があるところです。
講師「その責任感が発揮された具体的な場面を教えてください」
生徒「責任を持って行動することを意識していたので、最後までやり遂げるようにしていました」
少し沈黙が流れたあと、生徒はこう尋ねてきたそうです。
「……いまの説明、伝わっていますか? 分かりにくくなかったでしょうか?」
興味深いのは、こうした進次郎構文の話し方をする若者ほど、「ちゃんと伝わっていますか?」「分かりにくくなかったでしょうか?」と不安そうに尋ねてくる点です。
これは面接官に対して「誤解されたくない」「きちんと理解してもらいたい」という強い思いがあるからこそ、同じ言葉を何度も繰り返してしまうのです。
しかし皮肉なことに、伝えようとすればするほど伝わらなくなり、話はぼやけてきます。にもかかわらず、「たくさん話す=伝わる」「丁寧に言い換える=わかりやすい」という誤解が、大学の偏差値にかかわらず若者の間で広まっている印象があります。
■「伝わりやすい表現」を勘違いしている
進次郎構文型の話し方の問題は、主張の根拠がスルーされている点にあります。
・そう主張できる具体的な理由は?
・どんな経験から、そう考えたのか?
これらの要素がないままでは、どれだけ言葉を重ねても説得力を持ちません。実際、採用担当者や現場責任者に話を聞くと、「話が長い若者ほど、仕事を任せた後が不安になる」という声をよく聞きます。
結論にたどり着くまでが遠く、同じ意味の言葉を何度も繰り返す。話を聞き終えても、「結局、何をした人なのか」がわからない。しかも、さきほどもご紹介した通り、「長いだけで内容のない話し方」をする若者は、いわゆる高学歴と呼ばれるような学生にも当てはまります。
「進次郎構文」的な話し方は就活生にとっては「丁寧な説明」かもしれませんが、面接官からしたら説得力のないダラダラとした話し方にしか聞こえないのです。
■大切なのは「主張」と「根拠」のつながり
「伝わる話し方」に必要なのは、大袈裟な身振り手振りや自信満々な態度ではありません。それは「主張と根拠がきちんとつながっているか」という非常にシンプルなルールです。
ここで言う「根拠」とは、輝かしい実績や特別な数字のことではありません。面接官の頭に自然と浮かぶ、「なぜ、そう言えるのか?」という問いに答えられる内容が含まれていればそれが「根拠」です。
「私はリーダーシップがあります」と聞いた瞬間、面接官は必ず「なぜ、そう言えるのか?」と考えます。この「なぜ?」に答えないまま、言葉だけを言い換えて繰り返すと、進次郎構文になってしまいます。
「私は、プロジェクトリーダーとしての自覚があります。
リーダーという立場を意識して、プロジェクトをまとめることを大切にしてきました。
そのため、常にまとめる意識を持って行動してきたと思っています。」
一見すると、落ち着いていて、責任感もありそうに聞こえます。しかし実際には、「リーダーの自覚がある」という内容を表現を変えて繰り返しているだけです。具体的な出来事や行動が出てこないため、面接官は「どんな場面で、何をした人なのか」を想像できません。
言葉は増えているのに、情報は増えていない。
■「状況・判断・行動・結果」を明確に語る
では、どうすれば「なぜ?」に応える話し方になるのでしょう。重要なのは、自分の経験を具体的に語り、出来事の「状況・判断・行動・結果」を明確にすることです。さきほどの事例と同様に「リーダーシップ」について語ってみると下記のようになります。
前職では、4人で進める業務改善プロジェクトのリーダーを担当しました。メンバーそれぞれの役割を整理してプロジェクトを前に進めてきました。当初は担当が曖昧で、作業が止まる場面がありました。このままでは間に合わないと感じ、一人ひとりの話を聞き、得意分野と負担の偏りを整理しました。役割を決め直したことで作業が進み、予定どおりプロジェクトを終えることができました。
この話では、「私にはリーダーシップがあります」とは言っていません。ですが、
・どんな状況だったのか
・何に悩み、どう判断したのか
・どんな行動を取ったのか
・結果、何が変わったのか
という一連の流れが「一つの物語」として伝わります。このストーリーが、根拠になるのです。
■「進次郎構文」では相手の心はつかめない
この切り替えができないまま面接に臨むと、「丁寧に話しているのに評価されない」という違和感を抱えることになります。
実はこの問題は、就活以外の場面でも悪影響を与えます。
・上司への報告が長くなる
・結論が見えず、指示が曖昧になる
・会議で「で、何が言いたいの?」と止められる
その結果、「仕事は真面目だが、任せにくい」という評価が定着してしまいます。進次郎構文型の話し方は、社会人になってから、より大きな壁になるのです。
就職・転職者に必要なのは、印象的なフレーズでも、流暢な話し方でもありません。「なぜ?」という疑問に正面から根拠を持って語る力です。
それこそが、面接官の心をつかみ、「この人と一緒に働きたい」と思わせる、本当の意味での伝わる話し方なのです。
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松下 公子(まつした・きみこ)
元アナウンサー、アナウンススクール代表
STORYアナウンススクール代表/STORY代表。1973年茨城県鹿嶋市生まれ。25歳フリーターでアナウンサーに内定。テレビラジオ4局のステップアップを果たす。
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(元アナウンサー、アナウンススクール代表 松下 公子)

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