■営業マンには「愛されテク」が必要
日本トップクラスの年収を誇る企業として知られるキーエンス。その強さの秘密は、徹底したデータ活用や合理的な営業スタイルにあると思われがちです。もちろん、データや営業スタイルは基本的なスキルとしては重要です。
しかし、私が同社で史上初となる3期連続営業成績トップを記録できた理由は、こうした「基本スキル」以外にあります。それと同じくらい、あるいはそれ以上に重要な要素があったのです。それが「愛されテク」です。
「愛されテク」といっても、決して生まれ持ったカリスマ性や、天性の人たらしの才能が必要なわけではありません。それは「相手に違和感を与えない」「マイナスをゼロにする」ための、極めてロジカルで実践的な技術です。
どれほど商品知識が豊富で、完璧なプレゼン資料を用意していたとしても、目の前のお客様に「なんとなく嫌だ」「話しにくい」と思われてしまえば、その先へは進めません。心の扉を開いてもらうためのスキルが、「愛されテク」なのです。
特に新人のうちは、お客様である現場のエンジニアなどと比べ、圧倒的な知識格差があります。
■営業先に腕時計を着けて行ってはいけない
お客様に違和感を与えないための第一歩は、身だしなみにあります。私が提唱する「愛されテク」の一つに「腕時計は着けていかない」というルールがあります。これは単なる精神論ではなく、リスク管理の観点から導き出されたひとつの結論です。
営業先、特に工場などの製造現場において、高級ブランドの腕時計は「給料が高い会社の人間が来た」という反感を招くリスクがあります。一方で、あまりに安価な腕時計やボロボロのものを着けていれば、「頼りない」「仕事ができなそうだ」という不安を与えかねません。
また、3万円程度の手頃な時計であっても、時計好きなお客様から見れば「センスが良い=高そうだ」と捉えられる可能性もあれば、逆に「安物を着けている」と見下される可能性もあります。つまり、どんな腕時計を選んでも、相手の価値観次第でマイナスの印象を与えるリスクがゼロにはならないのです。
であれば、最初から「着けない」という選択をすることで、そのリスクを最小限に抑えることができます。アップルウォッチなどのスマートウォッチも同様です。相手がどのような価値観を持っているかが分からない初対面の段階では、不要な情報を発信しないことが、もっとも安全で賢明な戦略となります。
■「スーツと革靴」以外にコストをかける
身だしなみにおける「愛されテク」の真髄は、相手の環境に溶け込むことにあります。
キーエンスの営業先は工場などの製造現場が多く、お客様は作業着を着ていることも珍しくありません。そのような場に、新品の高級スーツにピカピカの革靴で現れれば、相手は無意識に心理的な壁を感じてしまうでしょう。「現場を知らない人間が来た」と警戒されれば、本音を引き出すことは難しくなります。
そのため、私はスーツや革靴はあえて高級品を選ばず、多少の着慣れた感がある状態を保つことを意識していました。完璧すぎる身なりは、時に相手に緊張感や劣等感を与えてしまうおそれがあるからです。適度に力が抜けているほうが、相手もリラックスして話ができます。
しかし、ここで勘違いしてはいけないのが「清潔感」の重要性です。スーツや靴が多少くたびれていても許容されますが、ワイシャツの汚れやシワだけは絶対に許されません。不潔さは生理的な嫌悪感に直結し、即座に「仕事ができない人」というレッテルを貼られる原因になるからです。
私は、スーツや靴の手入れはほどほどにしつつも、ワイシャツだけは毎回必ずクリーニングに出し、白くパリッとした状態を維持することにコストをかけていました。これが、好感度と清潔感を両立させる黄金比なのです。
■身長を小さく見せて威圧感を取り除く
相手に威圧感を与えないための配慮は、服装だけにとどまりません。
自身の身体的な特徴さえも、相手に合わせてコントロールするのがトップ営業マンの技術です。私は身長が186センチあるため、普通の姿勢でいたらかなり背が高く見られるのですが、初対面のお客様に対してはその高さを感じさせないような工夫をしていました。
立ったまま相手を見下ろすような角度で話をすれば、どれだけ丁寧な言葉を使っていても、相手は心理的な圧迫感を感じてしまいます。そこで、挨拶をする際は相手よりも深く頭を下げ、話すときは背中を丸め気味にして視線の高さを合わせます。座って商談をする際も、あえて猫背気味の姿勢をとることで、物理的な威圧感を消し去るように努めていました。
商談が終わって立ち上がった瞬間、お客様から「あれ、こんなに大きかったんですか」と驚かれることが何度もあったほどです。それは、商談中に相手が身長の高さを忘れてしまうほど、徹底して「小さく」振る舞っていた証拠でもあります。
自分の身体的特徴が相手にどう映るかを客観的に計算し、マイナスに作用する要素があれば、姿勢や振る舞いでカバーする。これもまた、相手の警戒心を解き、スムーズなコミュニケーションを実現するための重要なテクニックなのです。
■先輩のすごい話を引き出すための「最初のひと言」
「愛されテク」が有効なのは、社外のお客様に対してだけではありません。社内の人間関係、特に優秀な先輩からノウハウを学ぶ際にも大きな力を発揮します。
営業成績を上げるための最短ルートは、すでに結果を出しているトッププレイヤーの真似をすることです。しかし、忙しい先輩にただ漫然と「教えてください」と聞いても、表面的なアドバイスしか得られないことが多いのです。
そこで重要なのが、相手の承認欲求を満たすアプローチです。私が実践していたのは、単に「すごいですね」と褒めるのではなく、「周囲の評価」を添えて教えを請うことでした。「同期のA君もB先輩も、C先輩の○○の提案方法がすごいと話していました」「他の部署でも先輩の伝説を聞きました」と伝えるのです。
自分一人の意見ではなく、第三者も評価しているという事実を伝えることで、相手の喜びは倍増するはずです。「そこまで言われては悪い気はしない」という心理状態を作り出し、具体的な資料やトークの秘訣、さらには失敗談まで聞き出すことができます。
社内の人間関係を円滑にし、有益な情報を引き出すこの技術は、営業成績に直結する重要なスキルの一つといえるでしょう。
■「基礎力×愛されテク」で結果は大きく変わる
ここまで紹介してきた「愛されテク」は、決して小手先の誤魔化しではありません。キーエンスが誇る膨大なデータ活用や、徹底的に型化された営業プロセスという「基礎力」があってこそ、その効果は最大化されます。
商品知識や論理的な提案力といった基礎力の上に、相手の感情に配慮し、コミュニケーションの摩擦をゼロにする技術を掛け合わせます。ロジックで相手を納得させる準備をしつつ、「愛されテク」で相手の心の扉を開く。
多くのビジネスパーソンは、知識やスキルの習得には熱心ですが、相手にどう見られているか、どうすれば可愛がられるかという視点が抜け落ちがちです。しかし、ビジネスを動かすのは最終的には人間です。相手の懐に入り込み、味方につける技術は、AI時代においても決して陳腐化しない最強の武器となるでしょう。
スーツのシワ一つ、腕時計の有無一つにまで気を配る繊細な計算こそが、大きな成果を生み出す源泉なのです。
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齋田 真司(さいた・しんじ)
キーレイズ代表取締役
2007年、株式会社キーエンスに新卒入社し13年半在籍。2022年、営業サポート事業を展開する株式会社キーレイズを創業。伴走支援先・研修指導先は多岐にわたり、大手から中堅中小まで、のべ3,000名を超える。著書に『キーエンス 最強の働き方 新人からベテランまで、最短で成果を最大化するシンプルなルール』(PHP研究所)がある。
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(キーレイズ代表取締役 齋田 真司)

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