2025年12月に、プレジデントオンラインで反響の大きかった人気記事ベスト3をお送りします。マネー部門の第3位は――。

▼第1位 町内会は入会金50万円、よそ者が歩けばすぐ通報…田園調布や松濤とは違う「日本で一番お金持ちが住む街」の掟

▼第2位 高所得者層ほど肉とスパゲッティを好む、では低所得者層は…データでわかった収入差"による食生活の格差"

▼第3位 「年金だけで暮らす人」は定年前に手放している…大掃除で捨てるべき老後のお金を食い潰す"無駄なもの2つ"

物価高が止まらず、不安が増す「老後の家計」。ところが多くの家庭には、“お金を食い潰す無駄”が大量に眠っている。消費経済ジャーナリストの松崎のり子さんは「特に50代以降は、気づかぬうちに家計を圧迫する“無駄”が加速する。今年の大掃除で真っ先に手放してほしいものがある」という――。
■家庭に眠る「かくれ資産」
フリマアプリ大手メルカリが発表した「2025年版 日本の家庭に眠る“かくれ資産”調査」によると、日本全国の“かくれ資産”は、推計約90兆5352億円になるそうだ。これを国民一人あたりに直すと平均約71.5万円となる。
“かくれ資産”とは、ざっくりいうなら1年以上使われずに保管している不要品を、もしメルカリで売ったらいくらになるかという金額を算出したもの。つまり、一人当たり約71.5万円、二人家族なら約143万円相当の「使っていないモノ」を家庭で保管していることになる。
問題は、このかくれ資産総額が年々増大していることだ。2018年に行われた第1回調査では約37兆円、2021年の第2回調査で約44兆円、2023年は約67兆円。今回が91兆円なのだから、7年間で約2.5倍に近い増え方だ。
内訳をみると、「ファッション用品」が33.6%で最も大きな割合を占め、次いで「ホビー・レジャー」が22.2%、「書籍・音楽・ゲーム」が21.2%、「家具・家電・小物」が20.0%、「美容・健康」グッズが2.9%だそうで、特別高額な品ばかりとは言えない。
物価高が嘆かれ、節約志向が高まっているというのに、なぜか私たちは年々「使わなくなるモノ」をせっせと買い込んでいるらしい。
■「モノと支出」が年金生活を左右する
さらに、年代別にみると最もかくれ資産額が大きいのは60代で、なんと平均で100万7328円。生きている年月が長いほどモノも増えていくのは当然だが、逆に考えればかくれ資産になるようなモノを買わなければ、100万円の半分くらいは節約できていたかもしれない。
なお、今年の大掃除で捨てられそうなモノだけでも全国で約9兆9373億円、国民一人あたり平均約8.9万円になるという。
50代後半から収入が減少し、老後の暮らしが視野に入りはじめると、普段の支出のコントロールが大事になってくる。
稼いでいるのだからと気ままに使っていれば、生活サイズは膨らむばかりだ。その挙句、かくれ資産に計上されるムダなモノばかり買っていては、二重にお金の無駄だ。年金暮らしに突入するまでに「モノと支出を増やさない」ための消費習慣に変えていく必要がある。
■一番の無駄は「着ない服」
かくれ資産の内訳をみると、最も多いのはファッション用品とのことだが、環境省が衣料品の現状についてこんな数字を発表している。
一人当たり平均の年間購入枚数は約20枚、手放す枚数は約14着、そして1年間で一度も着られなかった服が23枚もあるという。それだけあれば、クローゼットやタンスはぱんぱん・ぎゅうぎゅうだろう。
その背景にあるのが、衣服1枚当たりの単価が安くなり続けたことだ。
1990年の消費額は1着あたり6192円だったのが、どんどん低価格化が進み、2021年には2775円。2023年には少し上昇して3140円となっているが、いずれにしても「安さ」が購入ハードルを下げていると考えられる。(「サステナブルファッション」/環境省のサイトより)。
23着もの着ない服を買わないためには、この「安さ」の誘惑に負けないことが肝心だ。そこで、注意すべき代表的なキーワードを3つ挙げよう。
「あと2着買うと10%オフ」

「靴下よりどり3足で1000円」

「全品半額」
心当たりはあるはずだ。本当は1着しか買う予定がなかったのに、「割引」という言葉に惹かれて、無理やり他の2着を買っていないか。まとめ買いすればバラで買うより安くなるので、それではと気軽に1000円札を出してしまわないか。
■「お得」の文句に流されてはいけない
「全品半額」というPOPを目にすると、本来買う予定はなかったのに、「何か買わないと損だ」とつい売り場を覗いてしまわないだろうか。かくして、出番のない衣料品がどんどん家に溜まり、かくれ資産化していくわけだ。
溜まっているだけならまだしも、そのせいで自分がどんな服を持っているのか把握できないのも問題だ。クローゼットがぎゅうぎゅうで、買ったはずの服が見つからない。

もしかして捨てたのかも? と、同じような服をまた買ってしまう。それで余分にお金を払うはめになり、クローゼットはさらにぎゅうぎゅうになる。もはや着ない服が23着どころの騒ぎではない。
この悪循環から解放されるためには、まず「着ていない服」を把握することだ。何着あるのか、なぜ着ていないのか、この先着る機会はあるのか。そもそもサイズが合わなくなった、流行のスタイルではない、年齢にそぐわないなどの「この先も着ることはない服」だとはっきりすれば、潔く処分に回せる。
クローゼットもかなりすっきりするはずだ。しかし、それで新たな服を買い込んでしまうようでは元の木阿弥となる。整理の作業をしているうちに、これから本当に必要な洋服がわかってくるだろう。
「あと2着買うと10%オフ」「よりどり3足で1000円」「全品半額」に遭遇したとしても、必要な服を必要な量だけ買うことが本当の「お得」なのだと、自分を戒めたい。
■「パンパンの冷蔵庫」は要注意のサイン
年金生活に入ると、生活費は現役時代の7割程度に落ちるといわれる。しかし、現役時代と同じように買っていては減るものも減らない。

例えば2024年家計調査から年代別消費支出を見ると、50~59歳では約35.7万円が、60~69歳では約31.1万円と、さほど大きな減額ではない。70歳以上になって約25.3万円と、ようやく現役時代の7割に落ち着く。
なお、勤労者世帯と65歳以上の夫婦世帯を比較すると、食費にかける支出の割合は後者の方が大きくなっている。外出が減り、食べることが楽しみの中心にくるのだろうが、先のかくれ資産ではないが、冷蔵庫の中が食品でぎっしり・ぱんぱんという世帯は少なくないだろう。
それがどんなムダにつながるかは言うまでもない。2023年度の食品ロスの数字を見ると、家庭から発生する量は約233万トンで、事業系の約231万トンと拮抗している。うち、未開封の食品のまま捨てられている量が約4割を占めるという。買ってきて冷蔵庫に入れたまま、気づかず期限切れとなった食品がいかに多いかの表れだろう。
■「入れもの」をサイズダウンする
こうした無駄買いを防ぐ方法として、家族が減って年金暮らしが見えてきたところで、冷蔵庫をサイズダウンするのも一案だ。
私たちは、入れものが大きければ大きいほど安心して買い込んでしまう。隙間があればその隙間に押し込む。食べ忘れていた食材を見つけたら、慌てて冷凍庫へと移動する。
かくして、冷蔵室もチルドルームも野菜室も、そして冷凍庫も食品でぎっしり、何がどこに入っているのかわからない魔窟になってしまう。
食べきれない量の食品を買ってしまうくらいなら、いっそ入れる容器を小さくすればいい。そこに入る量だけ買う。そして食べきる。それなら食品を買う金額も、捨てて無駄にする金額も、両方減らすことができるだろう。
より効果的なのは、家全体の収納を減らすことだ。着ていない洋服を整理して衣装ケースが空いたら、思い切ってケース本体も処分する。服を掛けていたハンガーも減らす。100均には「収納力を2倍にする便利グッズ」が売っていたりするが、決して手を出してはいけない。そこに入る分しか買わないと決めればいい。
日用品の買いだめにも注意が必要だ。洗剤やトイレットペーパー類のストックが収納庫を占拠してはいないか。
「どうせいつか使うのだし」と言い訳しがちだが、数年分に当たるほどのストックをずっと抱えている必要はない。家の中にモノが多いほど空間を圧迫し、私たちにストレスを与えるものだ。家の中が散らかっていたら、収納する入れものを買うのではなく、収まる量まで減らすという発想に切り替えたい。
■「ちょっといいもの」ばかり選んでいないか
年金生活への準備として、買うモノの数を減らす思考について書いてきたが、次は「単価」を減らす話をしよう。
私たちは年齢が上がるにつれ、「どうせ買うなら、ちっといいものを選びたい」という思考になっていくものだ。食品なら、ちょっといい調味料を選ぼうとか、ちょっと上質なティッシュを使おうとか。美容アイテムも、どんどんグレードが上がっていく。
むろん、自分が満足するもの、こだわりたいものにお金を払うのは間違ってはいない。しかし、なんとなく惰性で買い続けているのなら、本当に金額相応の価値があるのか立ち止まって考えることも必要だ。
食品や日用品、理美容品は、毎日のように消費するものだ。単価の高いものを買い続ければ、支出もずっと高いまま変わらない。老後生活に向かって暮らし全体をサイズダウンしていくなら、当たり前のように買い続けてきたモノの「単価」も見直して、プライスダウンする余地はあるはずだ。
ライフスタイルが変わってくれば、必要だったものも変化する。記事(「『年金だけで暮らす人』は早々に手放している…50代までに捨てておくべき『老後のお金を食い潰すもの』8選」)で触れたように、現役時代は活躍したステイタスの高いクレジットカードを高い年会費を払って持ち続ける必要があるだろうか。
また、現役時代に契約した生命保険の、高額な死亡保障は今も必要だろうか。今後のライフスタイルに合わせたアップデートをすることで、支払い全体をサイズダウンできるに違いない。
■モノも支出も「7割」を目指そう
現役時代の7割支出を目指すと先に書いたが、保有するモノの数も現役時代の7割を目指すといい。整理収納のプロに、収納するモノの量はスペースの7~8割を目指すとすっきり見えると聞いたことがある。クローゼットも冷蔵庫もストック庫も、収める量を7割として、それ以上のものを家に持ち込まないことだ。
その癖をつければ、買う量が減り、そのぶん出ていくお金も減り、せっかく買ったモノを捨てる残念な行動も減る。すっきりした家に暮らしていれば快適さが増し、モノを増やしたいという物欲も抑えられるのでは。
大量にモノを持つことが豊かさだという時代はとうに終わっている。かくれ資産を増やし続けるような消費習慣から決別し、家計サイズを年金サイズへとそろえていきたい。
(初公開日:2025年12月5日)

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松崎 のり子(まつざき・のりこ)

消費経済ジャーナリスト

『レタスクラブ』『ESSE』など生活情報誌の編集者として20年以上、節約・マネー記事を担当。「貯め上手な人」「貯められない人」の家計とライフスタイルを取材・分析してきた経験から、「消費者にとって有意義で幸せなお金の使い方」をテーマに、各メディアで情報発信を行っている。著書に『定年後でもちゃっかり増えるお金術』『「3足1000円」の靴下を買う人は一生お金が貯まらない 』(以上、講談社)ほか。

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(消費経済ジャーナリスト 松崎 のり子)
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