■一度面接で落とされるもなんとかキーエンスに入社
私が新卒でキーエンスを選んだ理由は、自分の性格に合っていると考えたからです。私は飽きっぽいところがあるのですが、キーエンスの顧客である製造業は、食品から自動車まで裾野が広く、ここなら飽きずに続けられそうだと思いました。また、ハードワークで知られる環境に身を置けば、仮に転職することになっても通用する力がつくと考えたのです。
本来は技術職を志望していました。営業のような対人コミュニケーションに自信がなかった上、全国転勤の可能性が低い技術職の方が、東京や大阪などの都市部に配属されやすいという安易な計算もありました。しかし、せっかくの機会なので苦手を克服しようと営業職にもチャレンジすることにしたのです。
ところが、就職活動はいきなりつまずきました。会社説明会の場で行われた「20秒自己PR」という、いわゆるゼロ次面接で、私は緊張のあまり頭が真っ白になり、一言も発せずにフリーズしてしまったのです。当然、結果は不合格。それでも諦めきれず、理系学生向けの採用枠で再チャレンジし、なんとか入社にこぎつけました。しかし配属されたのは、希望していた技術職ではなく、最も苦手意識のあった営業職だったのです。
■周囲は結果を出すも、自分は怒られ続ける
なんとか入社できたものの、当時の私は同期の中で間違いなく落ちこぼれでした。研修でのロールプレイングでも、コミュニケーション能力が高く話の面白い同期たちは、教わったことをすぐに見事に実践してみせます。一方、私はあがり症で口べた。講師役の先輩からは毎日のように叱られてばかりでした。
配属されてからも、しばらくは苦しい日々が続きました。「自分には営業のセンスがないのではないか」「やっぱり向いていないのではないか」という不安が常に頭をよぎります。周りの同期がノルマの達成や大口受注を喜んでいる中、私はなかなか結果が出せず、焦りばかりが募っていきました。
特にキーエンスのような実力主義の会社では、数字がすべてです。プロセスも評価されるとはいえ、最終的な売上がなければ居場所がありません。優秀な同期たちとの差を痛感し、自信を喪失していく毎日。それでも「人生で一度は何かしらの1位を獲ってみたい」という思いだけで、必死に食らいつきました。
そんな私が、後に全社の営業成績で3期連続を含む1位を5回獲ることになるのですから、人生とは分からないものです。
■「売れる営業の型」を実感
配属されて1年目の冬、私にとって大きな転機が訪れました。ある大口案件の引き合いがあったのですが、自分一人では到底受注まで持っていける自信がありませんでした。そこで、同じ営業所のエースだった先輩に頼み込み、商談に同行してもらうことにしたのです。
それまでも先輩の営業に同行することはありましたが、それはあくまで「先輩のお客様」への訪問でした。横で見ているだけでは、どこか他人事で、本当の意味での学びにはなっていませんでした。しかし今回は「自分のお客様」です。必死さが違います。
先輩は私の目の前で、鮮やかに商談を進めていきました。私がつまずいていたポイントを軽々とクリアし、お客様の課題を浮き彫りにし、解決策を提示して受注を勝ち取ったのです。帰社後、先輩は「あの場面はこういう意図だったんだ」「資料はこう使うんだ」と、その一つひとつを丁寧に解説してくれました。
この経験で、私は「売れる営業の型」を肌感覚で理解しました。そして、できないことはできる人に聞けばいい、というシンプルな事実に気づいたのです。
■推定年収6000万円の事業部長の「愛されテク」
私が、キーエンスで先輩から学んだことはこれだけではありません。セールストークだけでなく、お客様に対する振舞い方についてもたくさん学ばせていただきました。そのひとつが「スーツへのこだわり」です。
当時のキーエンスでは年収数千万円クラスの幹部であっても、現場では新人のように振る舞う文化がありました。
私が目撃した推定年収6000万円の事業部長は、お客様の前で自身の役職をひけらかすことは決してありませんでした。それどころか、あえて「異動してきたばかりで」などと新人を装い、少しヨレっとしたスーツで相手の懐に入り込んでいくことさえあったのです。
なぜ、そこまでするのでしょうか。それは「偉い人」として接した瞬間、お客様が身構えてしまい、本音を話してくれなくなることを知っているからです。現場のエンジニアや担当者が抱えている真の課題や不満は、立場の高い人間には見えにくいものです。だからこそ、あえて敷居を下げ、相手が安心して話せる「無害な新人」や「相談しやすい営業マン」を演じるのです。
プライドを捨てて実利を取る。
本物のトッププレイヤーほど、この優先順位を明確に理解しており、TPOに合わせて自分を演出する「愛されテク」を使いこなしているのです。
■キーエンス流「動かない担当の落とし方」
ただ、「基本スキル」と「愛されテク」を身につつけたとしても、すべての営業が上手くいくわけではありません。
商品とお客様が求めているものが完璧にマッチしているはずなのに、どうしても動いてくれない担当者に出会うことがあります。「今は忙しい」「現状で間に合っている」と、のらりくらりと交わされてしまう。こうした「動かない担当者」をどう攻略するか。ここにもキーエンス流の型があります。
それは、「担当者以外を攻める」というアプローチです。商品の導入を検討する担当者と、実際に現場で使う人、そして決裁権を持つ人は、それぞれ別であることが多いのです。導入を検討する担当者が動かないなら、実際に困っている現場の人に会いに行きます。
「いまの機械だとメンテナンスに手間がかかることはありますでしょうか?」「この不具合が無くなったら現場としてはどのくらい楽になりますか?」と現場のリアルな声を集め、「現場の方はこうおっしゃっています」「このままでは生産に支障が出ます」と、事実を武器にして担当者に迫るのです。
正面突破が難しければ、視点を変えてみる。組織の力学を理解し、誰が鍵を握っているのかを見極める。キーエンスでは他社が動かない担当者を口説いている横で、周囲の関係性に対し徹底的にアプローチをかけていたのです。
そうやって複数のルートからアプローチすることで、難攻不落に見えた扉もこじ開けることができるのです。
■「営業力」はすべての仕事に生かせる
私は現在、営業支援の会社を経営し、「売れない営業パーソンをゼロにする」という目標を掲げています。キーエンスで培った営業ノウハウは、特殊な才能が必要なものではありません。「いつ、誰に、何を、どうやって売るか」という型を身につけ、それを徹底して実行すれば、誰でも成果を出せるようになります。
営業とは、単にモノを売ることではありません。相手の抱える課題を発見し、解決策を提示して、喜んでもらうこと。これこそが営業の本質です。このスキルは、営業職に限らず、あらゆる仕事に生かせると確信しています。
社内の調整ごとでも、企画の提案でも、あるいはプライベートな人間関係でも、「相手は何に困っているのか」「どうすれば相手は動いてくれるのか」を考え、行動することは共通しています。
私がキーエンスという環境から学んだ「仕事への向き合い方」や「愛される工夫」は、一生使えるポータブルスキルです。本稿を通じて、一人でも多くのビジネスパーソンが自信を持ち、日本経済全体が元気になることを願っています。
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齋田 真司(さいた・しんじ)
キーレイズ代表取締役
2007年、株式会社キーエンスに新卒入社し13年半在籍。2022年、営業サポート事業を展開する株式会社キーレイズを創業。伴走支援先・研修指導先は多岐にわたり、大手から中堅中小まで、のべ3,000名を超える。著書に『キーエンス 最強の働き方 新人からベテランまで、最短で成果を最大化するシンプルなルール』(PHP研究所)がある。
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(キーレイズ代表取締役 齋田 真司)

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