※本稿は、 石野純也『通信ビジネス』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。
■大容量プランなら年間7000円もお得に
格安SIMや格安スマホとも呼ばれるMVNOは、大手通信事業者と比べて毎月の通信料金が安いことで知られています。
具体例を挙げると、MVNO最大手のIIJはIIJmioというサービスの「ギガプラン」で、5GBの料金を950円に設定しています。ドコモの場合、「ドコモmini」という低容量の料金プランが、各種割引適用前で4GB、2750円。近いデータ容量でも2倍を超える差がついていることがわかります。
低容量だけではなく、中容量や大容量でも差がついています。IIJmioの場合、10GBの料金は1400円。ドコモminiだと、10GBプランが3850円になります。ドコモminiは割引サービスで1980円まで料金は下がるものの、それでもIIJmioのほうが580円安くなります。1年単位で見ると、差は6960円とかなりの違いになってきます。
さらに、老舗MVNOの日本通信であれば、「合理的みんなのプラン」の料金が1390円。
■通信エリアは大手通信事業者と同じ
ここではIIJmioや日本通信を例として出しましたが、他のMVNOもおおむね傾向は同じ。大手通信事業者より高くなることは、ほぼありません。それにもかかわらず、MVNOの通信エリアは、大手通信事業者と変わりません。
これは、MVNOがスマホなどの端末と通信するための基地局を、大手通信事業者から借りているからです。ドコモから借りているMVNOであればドコモと同じ、KDDIから借りているMVNOであればKDDIと同じエリアで、通信することが可能というわけです。料金が安いからといって、大手通信事業者よりつながらないということはなく、安心して利用できます。
なぜここまでMVNOの料金が安いのでしょうか。
それは、MVNOが大手通信事業者から格安でネットワークを借りられているからです。ドコモ、KDDI、ソフトバンクといった大手通信事業者は総務省に「第二種指定電気通信設備」を持つ事業者に指定されており、ネットワークの開放が義務づけられています。
その際の価格も、設備の原価に適正な利潤を乗せた金額と定められており、その価格は毎年公開されています。また、MVNOから接続の申し入れがあった場合、原則としてそれを拒むことができません。
■実店舗を持たず、広告も少なめ
2025年度時点では、ドコモの接続料が10Mbpsあたり10万8740円に設定されています。これは、1秒間に1.25MBのデータを送受信できることを意味しています。大手通信事業者とMVNOを結ぶ回線の太さによって貸し出す料金が変わってくるということです。契約者が増加しているMVNOの場合、この接続帯域を太くすることでネットワーク品質を保つようにしています。
このような取り決めがあるため、MVNOは大手通信事業者の原価と大きく変わらない金額で基地局などの設備を借りることができます。ここに人件費や設備費、広告宣伝費などを上乗せして、料金プランにすればいいというわけです。巨額の設備投資がいらず、かつ設備以外の上乗せが少ないことが、料金の安さに直結します。
わかりやすいのは、店舗です。MVNOのほとんどはネットを中心に集客しており、大手通信事業者のようなショップはほとんどありません。家電量販店で契約できるようにしているMVNOはあるものの、その数は大手通信事業者と比べるとはるかに少ないと言えるでしょう。また、毎日のようにテレビCMや大々的な交通広告を展開している大手通信事業者より、広告の量も少なめ。ゼロではありませんが、出稿量はかなり抑えています。
■コストを抑えて料金を下げている
大手通信事業者は端末をメーカーから購入し、販売しており、その際に販売奨励金を乗せて割引を提供することもあります。自社のネットワークに合わせたカスタマイズの要求などもしており、こうしたところにもコストがかかっています。
これに対し、MVNOはメーカーが家電量販店や自社サイトで販売する端末を仕入れて売るだけにとどまっており、割引も少なめ。端末に関するユーザーサポートもメーカーに任せています。こうした積み重ねで、コストを抑えて料金を下げているのです。
また、先に挙げたように、大手通信事業者からネットワークを借りる際の料金は1秒間にどれだけのデータ通信を流せるかで決まります。極端な話、10Mbpsだけ帯域を借りてしまえば、そこにはいくらでも利用者を詰め込めてしまいます。これも、コストを落とせる要因のひとつです。
ただし、仮に1万人の利用者がいたとして、その1万人がいっせいに通信すると10Mbpsではデータを流すことが困難になってしまうので、実際にはより多くの帯域を借りています。この数値はあくまで仮のものですが、借りる帯域と利用者数のバランスを上手に取ることで、コストを抑えられます。
MVNOの料金が安いのは、こうした仕組みやコストのかけ方の違いによるところが大きいと言えるのです。
■MVNOがネットワークを「借りる」仕組み
一般の利用者にサービスを提供しているMVNOは、大手通信事業者と相互に接続しています。
MVNOを支援するMVNOのことを、MVNEと呼びます。たとえば、旅行代理店大手のHIS傘下でMVNOを展開するHISモバイルは、日本通信経由でドコモやソフトバンクの回線を利用。イオンモバイルも、IIJ経由でドコモやKDDIのネットワークを使用しています。
この相互接続は、より専門的に言うとP-GW(ゲートウェイ)という交換機をMVNO側に設置して、回線を貸す大手通信事業者側のS-GWにつなぎます。データを送信する場合の経路は、まず端末が基地局を通り、大手通信事業者のS-GWから相互接続点を経て、MVNO側のP-GWに入り、インターネットへと抜けていきます。
このP-GWに利用者の認証装置などをつなげることで、MVNOは契約者のデータ使用量を管理したり、課金したりしています。データを端末にダウンロードする際には、この逆の経路をたどります。
■1秒間に通るデータ量で値段が決まる
MVNOがネットワークを借りる際の料金は、この接続点の太さによって決まります。さきほど説明したように、この料金の原価に適正利潤を乗せた額と決められており、公表も義務づけられています。このルールにのっとり、MVNO側はMbps単位で接続点の帯域を購入します。ところが、この単位は1秒間にどの程度のサイズのデータが通れるかというもの。
一方で、MVNOはもちろん、MNOである大手通信事業者も、利用者には月間のデータ容量でサービスを提供しています。つまり、利用者はどのタイミングでデータ通信をしてもいいということ。1カ月間の累積が料金プランで定められた容量に達しなければ、通信の制限は受けません(ただし、3日間など、より短い期間での制限を設けている通信事業者や料金プランもあります)。
この単位の違いが少々厄介です。利用者の通信する時間が分散することを見越して接続帯域の幅を減らしてコストを削減できる一方で、特定の時間に通信が集中すると、速度が極端に低下するといったことも起こってしまいます。通信が集中するピークの時間帯に合わせて接続点を太くしてしまうと、コストがかさんでここまで料金を安くできない一方、それ以外の時間帯はスカスカになってしまい無駄が多いからです。
■お昼休みと帰宅時は「魔の時間帯」
MVNOは通信速度が遅いと言われたり、特定の時間に通信ができなくなると言われたりするのは、そのためです。すべてのMVNOがそうというわけではありませんが、一般論として、サラリーマンがお昼休みを取る午後12時台や、帰宅に重なる夕方から夜にかけては、通信速度が低下する傾向があります。
この状態を放置していると、利用者からの評判が下がり、契約者離れにつながってしまいます。MVNOは数も多く、料金水準が近いサービスは多々あるため、転出も比較的容易。そのため、各社とも相互接続点の帯域は、契約者の数を見越して定期的に増強しています。
見込みが外れて、契約者が一気に増えすぎてしまうと、一時的に速度が低下することはあるものの、最近では、利用が困難なまでにデータ通信が遅くなることは少なくなってきました。
■「つながらない!」を改善する工夫
利用者が帯域の混雑状況を予見しやすいよう、通信品質を開示しているMVNOも存在します。オプテージの運営するmineoは、サイト上に公開情報として天気予報形式でネットワークの混雑状況を表示。帯域を増強するスケジュールや、その増強の程度もカレンダーに記載しています。ここまで細かく情報を公開しているMVNOは少ないものの、先々のことを知れるのは契約時の安心材料になりそうです。
また、データの利用時間や上下の方向が分散するよう、一般の利用者以外を増やして通信量の均一化を図っているMVNOもあります。たとえば、監視カメラがつながった回線は、一般の利用者が使うスマホとは異なり、下りの通信はほぼ使いません。逆に、一般的なスマホはやはり下りの通信量が多くなります。
また、監視カメラに昼休みや通勤はないので、ネットワークにつながる時間も一般の人が使うスマホとは異なります。MVNO側は一般の利用者と監視カメラの双方から収入を得られるので、そのぶんより多くの帯域を借りられるようになります。借りた帯域をより効率よく利用することで、総帯域を増やして、すべてのユーザーに対して快適な通信を提供できるようになるのです。
ネットワークの借り方によっても、ビジネスの仕方が変わってくる事例と言えるでしょう。
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石野 純也(いしの・じゅんや)
IT・スマホ ジャーナリスト
大学卒業後、出版社へ入社。IT関連の雑誌・書籍の編集を行う。独立後はモバイル関連を中心に、スマホからネットワーク、コンテンツに至るまで多岐に取材。著書に『ケータイチルドレン』(SBクリエイティブ)など。
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(IT・スマホ ジャーナリスト 石野 純也)

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