職場で効率よく仕事をこなすには、どうすればいいのか。『AI分析でわかった 仕事ができる人がやっている小さな習慣』(アスコム)を書いた越川慎司さんは「仕事が遅いのは、職場でのコミュニケーション不足が原因だ。
上司や役員との不要なトラブルを避けるために、ぜひ実践してほしい方法がある」という――。(第5回)
※本稿は、越川慎司『AI分析でわかった 仕事ができる人がやっている小さな習慣』(アスコム)の一部を再編集したものです。
■「コミュニケーション不足」が業務の妨げになる
最近、「話し方」や「聞き方」など、コミュニケーションに関するビジネス書がよく売れています。これは、裏を返せば、コミュニケーションについて悩む人が多いということ。
たとえば、職場でのコミュニケーションは、「怖い顔をした上司との関係」「協力してくれない同僚との関係」「心を開いてくれない後輩や部下との関係」など多彩。ある意味、本来の業務よりも難しい問題です。
コミュニケーションが円滑でないと、仕事にムダが起きやすいことを実感している方は多いと思いますが、それはデータでも裏付けられています。
働き方や人材育成などのビジネスに関する調査研究を行う「HR総研」が2021年に発表した調査によると、コミュニケーション不足が業務の妨げになると答えた人が全体の約7割にのぼりました。なかでも、「迅速な情報共有」「部門間の連携」「業務中の気軽な相談・質問」ができないことが問題だとする答えが多く見られました。
ベテラン社員ですら難しいコミュニケーションですが、20代、30代の若手社員はさらに深刻といえます。若手社員の多くは、プライベートな友人とでさえ、SNSでのコミュニケーションが当たり前になっている世代なので、「人と会って話をする」という「直接コミュニケーション」に苦手意識を持ち、不得意になってしまっているのです。
■生成AIに聞いたところで解決しない
さらにコロナ禍で、就職活動はすべてリモート。
就職してからも、入社式、教育研修、そして、配属後の仕事も全部リモート。上司と直接会ったことがほとんどない新卒社員まで存在するのです。
本稿では、「もう1つのお仕事」とも言うべき、社内コミュニケーションで発生しやすいムダと、その解決策についてお伝えしたいと思います。
あなたは、たとえば、仕事で打ち合わせをしているときに、わからない言葉に遭遇したら、どうしますか? 上司や先輩社員に、気軽に「あの~、今の○○ってどういう意味ですか?」って聞くことができるでしょうか? たぶん、素知らぬ顔でメモしておいて、席に戻ってから生成系AIに聞いてみるのではないでしょうか。
もしかしたら、上司から「わからないことがあったら、いつでも聞いていいから」なんて言われているかもしれません。でも、悲しいかな、そういうことを言ってくれる上司にかぎって鬼軍曹みたいな顔をして、いざ聞いたらお説教が始まったりします。それでつい、聞きにくくてAIに頼るしかない状況になります。
それで言葉の意味が見つかればよいのです。問題は出てこなかったときです。
もし、わからなかった言葉が社内だけで使っている用語なら、いくらAIに聞いても永遠に見つかりません。しかし、打ち合わせのときに、知ったかぶりをしてしまったので、今さら周りに聞くこともできず……。
■上司は「頼りにされる」と喜ぶ
単純な「言葉」だけでなく、「職場で発生したトラブル」の解決策までもインターネットで検索して調べる人も多いそうです。

たとえば、営業部門と開発部門の部門長の仲が悪くて困ったら、ネットで「部門長」「仲が悪い」「解決策」などというワードを打ち込んで、検索するのです。そんなことをしても、社内事情はそれぞれで、ごく一般的な回答しか得られないと思うのですが……。
それもこれも、リアル上司や先輩に気軽に相談できないからです。
実は上司は「頼りにされる」ことを喜びます。自尊心が満たされるからです。手間のかからないデキる部下もありがたいですが、少し鈍くても自分を頼ってくる部下はかわいいもの。
一見、怖い顔の上司や先輩社員も、実は、「若手社員にもっと積極的にいろいろなことを相談してほしい」なんて思っていたりします。
そもそも、「年配者の多くは無表情でいると、不機嫌に見える」ということ。そして、「その8割は、不機嫌でもなんでもない」ということです。とはいえ、実際に上司に怒られたこともあるでしょうし、「あの人は以前、厳しいことを言っていたから避けておこう」と思う気持ちはわかります。
まず大事なのは、ネットを調べれば簡単に出てくる言葉の意味くらいは自分で調べることです。社内の人間関係とか、社内独自の習慣や社内用語とか、ネットには出ていない情報は、直接聞いたほうが圧倒的に早いのです。

■原則① まずは相談 怒られないための「3つの注意点」
では、上司や先輩社員に相談するときに、絶対に怒られないようにするための注意点を3つお伝えしましょう。
【注意点1 あらかじめ、相談を予告する】
相談するときは、できれば事前に「○○についてちょっと相談したいのですが、明日、少しお時間いただけますか?」などと、予告しましょう。相手も、「ああ、あの件ね」と、相談の前に少し回答を考えてきてくれます。
【注意点2 自分でも仮説を立てて聞く】
相談のときは、単に「どうしたらいいでしょう?」ではなく、「私はこうしたいと思うのですがどうでしょう?」と、自分なりの仮説を提示することが大切。これがないと、あなたのことを成長させたいと思っている相手から「自分はどうしたいと思っているの?」って返されてしまいます。
【注意点3 長々と聞かない】
いくら上司が相談ウエルカムでも、いきなり相談に行って長々と時間を割いてもらうのはマナー違反です。
ちなみに、上司が最初に知りたいのは、「なぜ今、自分に聞きにきたのか?」という意義目的なんですね。「お客様対応で、明日、提案しなければならないので、今、よろしいですか?」などと、今、聞きにきた理由を伝えると、突然、聞きに行っても、「今、忙しいから」と断られずに、相談を受けてくれる確率が倍になります。
結局のところ、上司が目指しているのは、「チームの目標達成」です。いつも、それで頭を悩ませているから眉間にシワが寄っていますが、その目標を達成するために、あなたが相談してくるのはウエルカムなんです。そこがわかっているだけでも、少しは声がかけやすくなると思います。
■原則② 「社内の共演NG」を把握しておく
芸能界で、よく「この2人は共演NGだから」なんていう話を聞きます。
出版界でも、「この作家とこの作家は、犬猿の仲だから、絶対に対談を組んではいけない」という話があるそうです。
これと同じように、会社の中でも、「A部長とB部長は、仲が悪いから、同じ会議に呼ぶときは要注意」などということがあります。なんだか子どもっぽい話ですが、会社とて「人間が集まる集団」ですから、避けられない話なのかもしれません。
まあ、分別のある大人同士ですから、会議で取っ組み合いのケンカは始めないでしょうが、枝葉の話で意見が食い違ったあげく感情的になり、揚げ足を取り合う大激論になる、といった目も当てられない事態になる恐れも。避けて通るべき「社内地雷」を踏んでしまったわけです。
議事を円滑に進めるためには、「A部長の案件があるときは、B部長のメンツをつぶさないように注意する」などの人間関係の情報は知っておいたほうがよいのはたしかでしょう。
人間関係だけでなく、個人的な傾向を知ることも重要です。
たとえば、「A部長は、何よりも数字のデータを重んじる」とか「B部長は競合情報が入っていない案件にはオーケーを出さない」とか、そういう情報ですね。こうした情報もまた、知っているといないとでは仕事の進み方が大違い。知らなかったために、余計な仕事が増えてしまうこともあるでしょう。
■原則③ 「根回しの構造化」で手間を省く
でも、そんな情報、いったいどうやって把握すればよいのでしょう?
解決策をひと言で言えば「根回しの構造化」です。
たとえば、
「A課長に提案するときは、必ずこのステップを踏まないとオーケーが出ない」

「B部長はこの話題は地雷だから、絶対に本人の前で触れないようにする」

「C役員とD役員は犬猿の仲だから、同じ会議には呼ばないようにする」
など、そんな「人の情報」をチーム内だけで共有するのです。

根回しという、やっかいな代物をシステマティックに運用できるようにするのですね。もちろんこれは、チーム内の極秘文書、シークレットファイル。人物名などは、実名を使ってはいけません。
創業社長に振り回されていた企業には、「社長にYESと言ってもらう3要素」という極秘マニュアルがあったそうです。マニュアルを作るまでは手間ですが、完成後にかからなくなる手間のほうが圧倒的に多いはず。
なお、この極秘攻略マニュアルは、お客様に対しても有効です。交渉相手の性格や好みなどが書かれた「顧客別攻略マニュアル」を引き継いでいる営業部門は多いのではないでしょうか。

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越川 慎司(こしかわ・しんじ)

クロスリバー代表

元マイクロソフト役員。国内および外資系通信会社に勤務し、2005年に米マイクロソフト本社に入社。2017年にクロスリバーを設立し、メンバー全員が週休3日・完全リモートワーク・複業を実践、800社以上の働き方改革の実行支援やオンライン研修を提供。オンライン講座は約6万人が受講し、満足度は98%を超える。著書に『AI分析でわかったトップ5%リーダーの習慣』、『AI分析でわかったトップ5%社員の習慣』(共にディスカヴァー・トゥエンティワン)、近著に『29歳の教科書』(プレジデント社)がある。


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(クロスリバー代表 越川 慎司)
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