子どもが好きなことを見つけて伸ばすにはどうしたらよいだろうか。起業家教育を重視した小学生向けアフタースクールを運営する森博樹氏は「子どもの『好き』の火種の奥にある、本当の『好き』を見つける方法がある」という――。

※本稿は、森博樹『親子ではじめる 10歳からの起業家教育 圧倒的な主体性を育む「5ステップ成長循環メソッド」』(学事出版)の一部を再編集したものです。
■子どもの「好き」の育て方
ステップ①〈情熱の点火〉「好き」の奥にある“本当の好き”を見つける
すべての始まりは、お子さんの心の中にある、ほんの小さな「好き」「得意」「なんだか気になる」という好奇心の火種です。この火種を見つけ、大切に育て、大きな情熱の炎へと変えてあげること。それが、私たちの最初の役割であり、「内発的動機」にまさに火をつけるプロセスです。
しかし、ここで多くの保護者の方が、ある疑問にぶつかります。
「うちの子、ゲームばっかりしていて、他に何が好きなのか分からない……」

「『何がやりたい?』と聞いても、『別に……』としか言わない」
お子さん自身も、自分の「好き」が何なのか、まだ言葉にできないことも少なくありません。そんなとき、私たち親の役割は、お子さんが自分の心の声に耳を澄ませるための、楽しくて安全な環境を整えてあげることです。
そのための最初のヒントは、日常の何気ない会話の中に隠されています。例えば「今日の“心の天気”はなあに?」と、自分の気持ちを天気で表現する対話の習慣は、お子さんの「好き」のサインを見つけるための、最高のアンテナになります。
お子さんが「今日は、図工の時間があったから“快晴”だった!」「友達とドッジボールで勝ったから“晴れのち虹”!」と話してくれたとしたら、それは「図工(何かを作ること)」や「ドッジボール(体を動かすこと、チームで勝つこと)」が、彼らにとっての喜びの源泉であることを示しています。
まずは、この小さなサインを見逃さず、「そっか、○○ちゃんは、何かを作るのが好きなんだね!」と、その気持ちを言葉にして承認してあげましょう。
■本当の「好き」はこうして見つける
「好きの宝探し」~マインドマップを使ってみよう~
お子さんの「好き」の輪郭が少し見えてきたら、次はその「好き」の「なぜ?」を、親子で一緒に探るステップに進みましょう。

私たちが運営しているアフタースクール「キンダリーインターナショナル」の起業家になろう!プログラムでは、自分自身の「好き」を探究するために、マインドマップという思考ツールを使います。これは、ご家庭でも、まるでゲームのように楽しみながら実践できる、パワフルな方法です。
そのやり方は簡単です。大きな紙の真ん中に、お子さんが「好き」だと話したテーマ(例えば「ゲーム」)を書き、そこから連想する言葉を、木の枝のようにどんどん繋げていくだけです。
保護者:「ゲームのどんなところが好き? 例えば『マイクラ』は?」

お子さん:「友達と一緒に、すごい秘密基地を『つくる』ところ!」

保護者:「なるほど! じゃあ『スプラトゥーン』で好きなのは?」

お子さん:「チームで作戦を考えて、『勝つ』のが最高!」
■子どもの「情熱の火種」に親も飛び込む
いかがでしょうか。この対話を通じて、「ゲームが好き」という漠然とした言葉の奥に「仲間と協力して、何かを創造すること(つくる)」「チームで作戦を立てて、目標を達成すること(勝つ)」という、お子さんのより本質的な喜び、すなわち“本当の好き”が見えてきました。
これが、情熱の「火種」です。「ただのアニメ好き」だと思っていたものは、実は複雑なストーリーを考察する「物語分析の専門家」なのかもしれません。
この段階で大切なのは、純粋な好奇心で、お子さんの「好き」の世界に私たち自身が飛び込んでいくことです。この「好き」の探究こそが、お子さんがこの先の長い道のりを、主体的に、そして情熱を持って歩み続けるための、最初の、そして最も重要な一歩となるのです。
■子どもの「好き」を潰さないために
ステップ②〈当事者化〉自己決定が挑戦を「自分ごと」に変える
ステップ①で、お子さんの心の中に「好き」という情熱の火種を見つけたら、次はその火を、具体的な挑戦へと繋げるステップです。しかし、ここで絶対にやってはいけないことがあります。
それは、私たち保護者が、良かれと思って「やるべきこと」を提示してしまうことです。
「ゲームが好きなら、プログラミングを習ってみたら?」

「絵が好きなら、コンクールに出してみなさい」
これらの提案は、一見すると子どもの背中を押しているように見えます。しかし、その主導権は保護者にあります。これでは、せっかくの挑戦も、お子さんにとっては「言われたから、やる」という「やらされごと」になってしまいかねません。
ここで最も重要なのが、「自己決定力」を育む関わり、すなわち、お子さん自身に「どうするか」のハンドルを握らせてあげることです。
私たちキンダリーの起業家になろう!プログラムでは、お子さんのアイデアを具体的な自分だけのプロジェクトへと進化させるために、「プロジェクト・キーワードシート」という一枚のシートを使います。これは、いくつかのシンプルな質問に答えるだけで、漠然とした「やってみたい」が、明確なゴールを持った「自分だけのプロジェクト」へと進化する、思考ツールです。
この「キーワードシート」作りは、ご家庭での対話にもぴったりです。白い紙とペンを用意して、親子でオリジナルシートを完成させてみましょう。
■オリジナルシートの作り方
【キーワードシートの5つの問い】
1 このプロジェクトの「名前」は?

まず、これから始まる挑戦に、ワクワクするような名前をつけてあげましょう。名前をつけることで、お子さんはそのプロジェクトに、より一層の愛着と当事者意識を持つようになります。
2 このプロジェクトで「誰が」ハッピーになる?

これは、お子さんの視点を、自分から「他者」へと広げる、非常に重要な問いかけです。
対象は、「弟」「おばあちゃん」「クラスの友達」など、身近な人であるほど、お子さんはイメージしやすくなります。「誰かのために」という想いが、挑戦に深い意味と、より強い動機を与えます。
3 「誰が」「いつ」「どこで」「何をする」プロジェクト?

アイデアを、具体的な行動計画に落とし込む質問です。「僕が」「次の週末に」「おうちで」「弟のためのボードゲームを作る」というように、5W1Hを明確にすることで、やるべきことがはっきりと見えてきます。
4 プロジェクトが達成されたら、あなたは「どんな気持ち」になる?

この質問は、お子さんの「内発的動機」と直結します。最高のゴールを達成したときの、自分の「嬉しい」「誇らしい」といった感情を先に想像することで、困難な道のりを乗り越えるための、強力なエネルギーが心の中に生まれます。
5 このプロジェクトで、あなたが「一番大切にしたいこと」は何?

プロジェクトの「核」となる、お子さん自身の価値観を確認する質問です。例えば「弟をとにかく楽しませること」「誰も見たことがないような、すごいデザインにすること」。この「こだわり」こそが、プロジェクトを、誰かの真似ではない、その子だけのオリジナルなものへと輝かせます。
■事例:不登校の友人を想うあかりさんの場合
これは、キンダリーの起業家になろう!プログラムで活動しているあかりさんのアイデアに関する事例で、ステップ①で「お友達に、また会いたい。元気になってほしい」という“本当の好き(想い)”が見つかりました。
ステップ①で、お子さんの心の中に「好き」という情熱の火種が見つかったとき、重要になるのが、お子さんの「最高の伴走者」である「メンター」としての関わりです。
メンターの役割は、答えを教えることではありません。お子さん自身が、自分の力でアイデアを深め、挑戦を「自分ごと」として捉えられるように、効果的な問いかけを投げかけることです。
続くあかりさんとの対話は、まさにその実践例です。メンターがどのように問いかけることで、あかりさんの漠然とした想いが、明確なゴールを持つプロジェクトへと進化していくのか、そのプロセスにご注目ください。
■対話を通じた大人の関わり方
メンター:「学校にきていないお友達のことが心配なんだね。」

あかりさん:「おそろいのキーホルダーをプレゼントしたら喜んでくれると思う。プロジェクト名は『おそろいのキーホルダープロジェクト』」

メンター:「それが完成したら、あかりさんはどんな気持ち?」

あかりさん:「すっごく、うれしい気持ち!」

メンター:「そっか。このプロジェクトで一番大切にしたいことは何だろう?」

あかりさん:「お友達の笑顔と、私の笑顔!」
このメンターとのプロジェクト・キーワードシート作りを通じて、「友達が心配」という漠然とした想いは「おそろいのキーホルダーで、お友達と自分を笑顔にする」という、お子さん自身が主人公の、明確なプロジェクトへと進化します。
この「自分で決めた」という感覚こそが、挑戦を「やらされごと」から「自分ごと」へと変える、その後のすべての挑戦を支える、最も大切な土台となるのです。
■アイデアに「かたち」と「気持ち」を込める
キーワードシートでプロジェクトの「骨格」が見えてきたら、次はそのアイデアに具体的な「かたち」を与え、お子さんの「気持ち」を込めていく、さらに楽しいステップに進みましょう。
ここで大切になるのが、アート思考(Art Thinking)というアプローチです。保護者の方が「アート思考」と聞くと、「うちの子は絵がうまくないから……」と、少し身構えてしまうかもしれません。
しかし、これは、決して「上手な作品を作ること」が目的ではないのです。
アート思考とは、一言で言えば「頭だけでなく、手と心で考える」こと。言葉だけでは表現しきれない、アイデアの持つ「世界観」や「温かみ」をお子さん自身が深く感じ取り、プロジェクトへの想いを確固たるものにするための、非常に重要なプロセスなのです。ご家庭でも、粘土や雑誌の切り抜きを使って、簡単に実践できます。
1 ムードボード:頭の中のイメージを「見える化」する
お子さんの頭の中に生まれたばかりのアイデアは、まだ言葉にならない「もやもや」としたイメージの塊です。ムードボードとは、この頭の中にある漠然としたイメージを、写真や絵、好きな言葉などを一枚のボードに貼り付けて、目に見える形に整理していくための、非常に楽しい方法なのです。
このプロセスを通じて、お子さん自身もまだ気づいていなかった、アイデアの「核」となる世界観や、本当に大切にしたいことが、少しずつ浮かび上がってきます。
■粘土でアイデアを広げていく
2 粘土アート:「手で考える」ことで、アイデアの本質に触れる
ムードボードでアイデアの「イメージ」を広げたら、次は言葉を使わずに、粘土を使ってそのアイデアの「本質」に触れてみましょう。これは、単なる粘土遊びではなく、「手で考える」というこのプロセスは、お子さんが自分のアイデアと、より深く、そして直感的に繋がるための非常に重要なアート思考へのアプローチとなるのです。
例えば、ムードボード作りを終えたお子さんに、こう問いかけてみましょう。
「さっきムードボードで集めた、君の『大好き!』とか『伝えたい!』っていう気持ちを、今度は言葉を使わずに、この粘土で自由に表現してみようか」
ここで起こっているのは、言葉で考えるのではなく「手で考える」という、非常に創造的なプロセスです。お子さんは、粘土をこね、丸め、伸ばす、その手の感触を通じて、頭の中にある、まだ言葉にならないモヤモヤとしたアイデアに込めた、「本当に伝えたい想い」を探し当てようとしているのです。
■事例:昆虫が好きなそういちろうくんの場合
起業家になろう!コースに、カブトムシやクワガタが戦う姿に興味関心をもった、そういちろうくんがいました。
彼の最初の興味の原点は、多くの子どもたちがそうであるように、その圧倒的な「強さ」と「かっこよさ」にありました。
しかし、キンダリーで環境問題について学ぶ中で、彼の視点に大きな変化が訪れます。彼は、「自然環境を守りたい」という強い想いを抱くようになりました。これまでただ「かっこいい」と見ていた昆虫たちが、実は森の生態系を支える重要な役割を果たしていることを知ったのです。この発見は、彼の心の中に強い問題意識を生み出しました。
「昆虫は、森の掃除屋さんとしてもすごく大切な存在なのに……。どうして、みんなはその価値を知らずに、『気持ち悪い』と思ってしまうのだろう」
彼の心の中にあった、「戦う昆虫って、なんてカッコいいんだ!」という憧れと、「この大切な自然環境を守りたい」という新しい想い。この二つが掛け合わされたとき、一つの力強い目標が生まれました。それは「昆虫の本当の魅力を伝えて、そのイメージを変えること」でした。
■「好き」が「目指す未来」になった
そのための方法として、彼は「昆虫が自然界で果たしている大切な役割を伝えるゲーム」を作る、というアイデアを思いつきます。しかし、そのアイデアを実現するための第一歩として、彼が取り組んだのが、昆虫への尊敬と、その魅力を詰め込んだムードボードの作成でした。
彼は、図鑑やインターネットから、様々な昆虫の写真を印刷し、一枚のボードに並べていきました。戦うクワガタの勇ましい姿の隣に、土を耕すフンコロガシの写真を置く。色鮮やかなチョウの隣に、花の受粉を助けるハチの写真を置く。
このムードボード作りという「手と心で考える」プロセスは、彼の頭の中にあった「昆虫って、実はこんなにすごい役割を果たしていたんだ!」という驚きと感動を、一つの鮮明な光景へと変えました。
それは「僕が作ったゲームで、みんなが昆虫の本当のすごさを知り、自然を大切にするようになる」という、昆虫に関心をもったそういちろうくんの心の底からの願いが、はっきりとした「目指すべき未来」になった瞬間でした。

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森 博樹(もり・ひろき)

子供教育創造機構 代表理事/共創機構 代表取締役

大学卒業後、NTTにてキャリアグレードのオペレーションシステム研究開発や光戦略会社の立ち上げに携わり、新規事業開発を10年以上推進。テクノロジーの進化を肌で感じるなか、変化に対応できる人材育成の重要性を痛感し、子供教育創造機構を設立。小学生向けアフタースクール「キンダリーインターナショナル」を10年以上経営しながら、全国高校生起業家教育事業や教育カリキュラム改訂にも参画。2025年1月には文部科学省より「アントレプレナーシップ推進大使」を拝命し、10歳からの起業家教育普及に注力。大手商社、製造、食品、金融、SIer等、多様な業種での新規事業開発支援を手がける。

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(子供教育創造機構 代表理事/共創機構 代表取締役 森 博樹)
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