時間を無駄にせず日々を過ごすにはどうすればいいか。資産10億円を築いた実業家で投資YouTuberの上岡正明さんは「未来や過去へ思考がさまよっている時間こそムダな時間だ。
心を『今』に集中することが、時間とエネルギーをセーブして生きるコツだ」という――。
※本稿は、上岡正明『人生が劇的に変わる 「1分」の使い方』(朝日新聞出版)の一部を再編集したものです。
■ブッダの思想「今この瞬間に心を集中させる」
私たちが人生でいちばんムダにしている時間――。それは現在ではなく、未来や過去へ思考がさまよっている時間です。
未来にとらわれれば、どうなるかわからないといった不安が生まれます。過去に縛られれば、あのときああしていればという後悔が生まれます。不安と後悔は、私たちの貴重な時間とエネルギーを静かに、しかし確実に食いつぶしていきます。
そんな私たちに光を投げかけてくれるのが、「前後際断(ぜんごさいだん)」という言葉です。これは禅の言葉で、私の座右の銘のひとつでもあります。
この言葉は、江戸時代の禅僧・沢庵宗彭(たくあんそうほう)が残したもので、「過去と未来を断ち切り、今この瞬間に心を集中させよ」という意味があります。武芸の達人でもあった沢庵は、『不動智神妙録(ふどうちしんみょうろく)』の中で、剣の極意を説く際にもこの思想を語っています。
「斬るという瞬間に心が過去に戻れば手が鈍り、未来を恐れれば刃が迷う」そして、続けて説くのが、「今この一太刀に心を置く」つまり、「今ここ」に心を据えるということです。

■不安と孤独に苦しむ夏目漱石を救った
この考え方は、近代文学の世界にも受け継がれました。日本を代表する文豪・夏目漱石は、ロンドン滞在中に執筆した随筆『倫敦消息』の中でこう記しています。
「前後を切断せよ。みだりに過去に執着するなかれ。いたずらに将来に未来を属するなかれ。満身の力をこめて現在に働け」
異国の地で不安と孤独に苦しんでいた漱石が救いを見出したのが、この「前後際断」の思想だったと言われています。とくに注目したいのは、「満身の力をこめて現在に働け」という一節です。これはまさに、今この瞬間、目の前の1分に集中せよ、というメッセージとも共鳴します。
さらに大事な話に続きます。脳科学の観点から見ても、人間の幸福とパフォーマンスは、「今この瞬間」に意識があるときに最も高まることが証明されているのです。
■「禅の教え」を現代科学が証明した
ハーバード大学の研究チームは、「人は起きている時間の約47パーセントを、今以外のことを考えながら過ごしている」と明らかにしました。これは人生の約半分を、過去や未来にとらわれて生かされている、というふうにも解釈できます。

しかも驚くべきことに、「何をしているか」よりも、「今に意識があるかどうか」が、人間の幸福度に大きく影響を与えるというのです。
過去にも未来にも引きずられず、全身全霊を「今」に注ぐ。禅の教えが何世紀も前から示していた、今に集中することの大切さを、現代科学が裏づけた形です。
私たちの意識は、まるで虫メガネのようなものです。焦点を一点に合わせれば、太陽の光が集まり、紙を焦がすほどのエネルギーを生み出します。けれども、焦点がぼやけていれば、どれほど強い光を浴びせても、何も起きません。
■世界のエリートが瞑想を欠かさないワケ
私たちの意識もまったく同じです。過去の失敗を思い出して落ち込んだり、未来の不安を想像して焦ったりと、焦点が「今」という一点からズレていたら、エネルギーは生まれません。「前後際断」とは、過去でも未来でもない、今という一点にぴたりと焦点を合わせる技術なのです。
今や世界のトップエリートたちは、瞑想を日常の習慣として取り入れています。グーグル、アップル、ナイキ、インテル……名だたる企業の社員研修には「マインドフルネス瞑想」が組み込まれ、投資家やアスリートもトレードや試合の前に心をととのえています。
なぜ彼らは、忙しい中でも瞑想を欠かさないのでしょうか。
理由は明確です。瞑想こそが「前後際断」の境地に素早く到達する、最短ルートであることを知っているからです。
■瞑想は長くやるより、何度もやるほうがいい
多くの人は、「瞑想は長い時間やらないと効果がない」と誤解しています。ただ、私が親しくしている、あるお坊さんはこうおっしゃっていました。
「時間の長さは関係ない。1日に何度もやることが大切だ。時間を長くしようと思っても、苦痛しか感じないのなら意味がない。数分でも、仏さまの悟りの境地に近づこうとする、その気持ちのほうが大事」
私たちが行なう瞑想でも、大事なのは、時間の長さや坐禅を組むことでもありません。いかに、今この瞬間の「あなただけの時間」に集中できるか。
意識が過去や未来にさまよっていると気づいたら、1分だけ「今」に集中する。それを1日に何度もくり返す。このトレーニングを続けているうちに、やがて揺るぎない「前後際断」の境地に到達できるかもしれません。

■いつでもどこでも気軽にできる「1分瞑想」
瞑想というと、ひとりきりの静寂な場所でやるものだと思いがちです。しかし、これから紹介する「1分瞑想」は、オフィスでも、電車の中でも、カフェでも、それこそ大事な商談前でも、いつでもどこでもできます。
坐禅を組む必要もありません。立ったままでも、イスに座ったままでもかまいません。特別な道具も必要ありません。
私は年に数回、500名以上の聴衆の前で講演する機会があります。その際、必ずやるのがこの1分瞑想です。これから1分、静かに自分と向き合って、過去や未来に奪われた意識を取り戻してください。
■簡単「1分瞑想」の3ステップ
ステップ1 深呼吸をする(20秒)
まずは目を閉じて、呼吸に意識を向けましょう。鼻からゆっくり吸い、口から長く吐いてください。
現代人の多くは、無意識のうちに「胸式呼吸」になっています。お腹をふくらませながら吸い、お腹をへこませながら吐く「腹式呼吸」を意識するようにしてください。
呼吸のリズムに意識を集中していると、扁桃体の興奮がしずまり、前頭前野が活性化していきます。大事なのは、意識して変化していく自分自身を感じ続けることです。
ステップ2 五感を使って「今」を感じる(20秒)
次に、五感をフルに使って、「今ここ」に戻りましょう。目の前に見えている風景、耳に届いている音、指先に感じる温度や質感……。見えているもの、聞こえている音、触れている感覚に注意を向けてください。
こうして五感に意識を向けると、脳は「今ここ」に存在していると認識します。頭の中でさまよっていた未来や過去が、少しずつ消えていくのを感じましょう。
ステップ3 ひとつの行動に「全集中」(20秒)
最後に、いま目を向けている動作に意識を100パーセント注いでみましょう。一点に目の焦点を絞り込んでいくような感覚です。メールを打つ、書類を読む、コーヒーを飲む、どんなことでもかまいません。指先の動き、音、香り、質感……。その中の一点にフォーカスし、「今ここ」に心を置いてください。

■1分で心のモヤモヤをすっきり晴らす
この1分瞑想は、古典的なマインドフルネス瞑想にアレンジを加えた瞑想法です。目をつぶったり、おおげさに両手を広げて坐禅を組んだりすることもありません。
実際にやってみると、頭の中にあったモヤモヤや焦りが、不思議と小さくなっていることに気づくはずです。それは、あなたの意識が過去や未来から切り離され、今という一点に戻ってきた証拠です。
手軽に実践できるので、「切り替えの1分」として、ぜひ活用してみてください。

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上岡 正明(かみおか・まさあき)

投資YouTuber、作家、フロンティアコンサルティング代表

1975年生まれ。放送作家を経て、27歳で戦略PR、ブランド構築、マーケティングのコンサルティング会社を設立し、独立。これまでに大手上場企業など200社以上の広報支援、スウェーデン大使館やドバイ政府観光局などの国際観光誘致イベントなどを行う。チャンネル登録者36万人を誇る人気YouTuberとしても活躍中。著書に『お金が増える強化書』『勝てる投資家は、「これ」しかやらない』(PHP研究所)など多数。

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(投資YouTuber、作家、フロンティアコンサルティング代表 上岡 正明)
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