わかりやすく話すためには何をすればいいか。ビジネス数学・教育家の深沢真太郎さんは「話す内容が構造化されていれば、『わかりやすい』は必ずつくれる。
誰かに話したいことがあれば、話し始める前にその内容をいくつかの要素に分け、それらを関連づけることで1枚の絵を描くといい」という――。
※本稿は、深沢真太郎『人生をシンプルにする 数学的思考 「速さ」よりも、やることを「少なく」。』(三笠書房)の一部を再編集したものです。
■斬新なアイデアを出す4文字で表現される思考法
ビジネススキルの基本は、いつの時代も「考える」と「話す」です。もしあなたが昨日お仕事をしていたなら、その1日でしていたことを思い出してみてください。そのほとんどが「思考」と「コミュニケーション」であることに気づくはずです。
そこでまずは、「考える」という行為において私が大切にしてきたことをご紹介します。具体的には、アイデアを出す際に実践していることです。
私は斬新なアイデアが欲しいとき、頼りにしている思考法があります。
それは「合」「分」「逆」「移」という4文字で表現されます。実はこれらは数学から教えてもらった重要な思考法です。

合という字には「あわせる」という意味があります。
合計という言葉は、まさに数学の領域で使われるものでしょう。あるいは図形には合同という概念があり、集合という単元名にもまさに「合」という文字が使われます。

因数分解、微分、積分など、数学は物事を細かく分けることによって新たな発見が誕生したり、難問が解決できる学問でした。数学者・デカルトの言葉とされる「難しい問題は小さく分けて考えなさい」は数学の特徴を実に端的に表現しています。

図形の問題などでは、その図形を逆さにする発想を持ち込むことで、いとも簡単に問題が解けてしまうことがあります。また、命題の「仮定」と「結論」を入れ替えたものを「逆」と呼んだりします。「2」と「1/2(2分の1)」の関係を逆数と呼びます。数学では「逆」を考える瞬間がたくさんあります。

数学には変化を科学する側面があります。「平面上を移動する」「球体上を移動する」「移動平均法を使う」など、数学には移動することで問題を解決したり、物事を説明しようとすることが多々あります。
■いいアイデアとは、絶妙にずらしたもの
この4文字で表現される思考が、実はアイデアや発想を求める際に役立っています。ひとつずつ説明しましょう。

「合」はあわせるという意味があります。単体で考えるのではなく、複数のものをあわせることでうまくいくことはないでしょうか。
いわゆる「コラボ」と呼ばれるものはまさにこの構造をしています。私もこれまでたくさんのコラボを体験してきましたが、それはすべて私という単体だけでは不可能なものでした。
「分」は、反対に細かい単体に分けてみる発想です。たとえば私は、教育者という活動をしているひとりですが、「ビジネス数学・教育家」という発想は「教育者」という概念を細分化した結果の産物とも説明がつきます。
「逆」はパワフルです。なぜならアイデアや発想は、みんなと同じように考えていては生まれないものだからです。みんなとは逆に考えることに意味があるのです。
私はかつて「計算しない数学」というコンセプトを考案しました。多くの人は数学の授業では計算が必須のものだと認識しています。
多くの人にとって常識ということは、逆にそれを否定できれば斬新なものになるということ。
実際に私の「逆」はコンテンツ化されたり、面白がってくださる方が増えたりしました。
「移」はちょっとずらす感覚です。いいアイデアというものは、絶妙にずらしたものであることが多々あります。
■数学的・アイデアや発想が出てくる4つの問い
私は昨今、外食でランチをする際は、意図的にピークタイム(正午)をずらすようにしました。以前はランチは正午に食べるものであり、それが規則正しい生活なのだと信じ込み、混雑というものに対する不快と時間的ロスを我慢していました。
規則正しく生きることは大切ですが、その結果として不自由さを感じるとしたら本末転倒。実はちょっとずらすだけで、快適さがあっさり手に入ります。
ぜひあなたも何かアイデアや発想が欲しいとき、この4つの思考法を活用してみてください。実践しやすい形になるよう、あなたが自問自答できる質問形式にしてプレゼントします。
【数学的・アイデアや発想が出てくる4つの問い】・それは何と組み合わせられるでしょうか?
・それはどのように細かく分けられるでしょうか?
・それを逆にするとどうなるでしょうか?
・それをちょっとずらすとどうなるでしょうか?

■「構造」で話す
次は「話す」について、私が大切にしていることをご紹介します。ある女性向けメディアの取材を受けたときのこと。インタビュアーさんが私にこう言いました。

「深沢さんは構造でお話をされますね。だからとてもわかりやすいです」
どうやらお褒めいただいたようです。とても印象的な言葉であり嬉しかったですね。一方で、「見抜かれているな」とも思いました。
確かに私は、企業の研修などでもビジネスパーソンに構造化する思考法を指導します。自分でも物事を構造化して考えたり、話したりする瞬間がとても多いと自覚しています。
ここからの話の展開上、どうしても「構造」で話すとはどういうことかを理解していただく必要があります。数学的な話題を避けることができませんが、できるだけシンプルにお伝えしますので、少しばかりお付き合いください。
構造というものを極めて直感的に理解するなら、「要素とそれらのつながり」となります。さらに直感的な情報にするなら、もはや図解しか選択肢はありません。代表的なものを表現してみます。
構造とは次の図解のような状態を指します。
これをあえて数学的に表現してみます。
「AならばB、BならばC、ゆえにAならばCである」

「Mを満たす条件は3つある」
あなたもかつて数学の授業においても、このような表現を耳にした(あるいはこのような図解を目にした)ことがあるのではないでしょうか。構造なしに数学を語ることはできません。つまり構造で話すとは、数学のように話すということです。
■「わかりやすい」は正義
準備が整いました。本題はここからです。
冒頭でご紹介したインタビュアーさんは私の話す内容から、構造の存在を読み取りました。何より重要なのは、「わかりやすい」とコメントされたことです。
誰しも、自分が話す内容は相手に理解して欲しいはず。つまり私たちは無意識に、相手から「わかりやすい」と思われたくて話をしています。「わかりにくい」と思われたくて話す人はおそらくいません。
ビジネスコミュニケーションに限って言えば、「わかりやすい」は正義です。

そういう意味で私は数学に感謝しています。何かを伝えた相手から「わかりやすい」と言ってもらえる経験を、これまで何度もすることができたからです。ですからもし、あなたがこの「わかりやすい」を課題に感じているなら、突破するヒントは次の言葉にあります。
「要素とそれらのつながり」
これからは誰かに話したいことがあれば、話し始める前にその内容をいくつかの要素に分け、それらを関連づけることで1枚の絵を描いてみてください。その絵がまさに構造です。
その絵が見えていない相手に対して、見えるように伝えてあげる。それがいわゆる、わかりやすい話なのです。
具体的に提案できるメソッドとしては、2つの問いを習慣にしてください。相手に話をする前にその内容はいくつの要素に分かれるのか、それらはどう関連づけることができるのかを自問自答し明らかにします。
たとえばここまでの内容にも構造があります。それは大きく5つの要素があり、そして4つの論理(=つながり)で接続されています。
ご覧のように話のスタートからゴールまでが1本の道になっているように話が構成されています。私はこの原稿を執筆するにあたり、先ほどのメソッドを使って、書く前にこの構造を頭の中に用意しました。
■大切な話をする前に冒頭で述べるフレーズ
結果、実際に書いた文章も構造化されたものになっています。
これは話すという行為においても同じです。ぜひ話す前に行う習慣として、実践してみてください。
話す内容が構造化されていれば、「わかりやすい」は必ずつくれます。
最後に、構造で話すスキルを磨くための習慣としてもうひとつ提案があります。
大切な話をする前に、次のようなフレーズを冒頭で述べることを自分に課してください。
「言いたいことは4つあります」

「要点は2つあります」

「大きく3点。まず前提、次に提案、最後に事例。この順番で話をします」
……
なぜかというと、話す内容を構造化できていないと、冒頭で「数」を述べることができないからです。繰り返しですが、構造化とは要素を洗い出し、それを関連づけることです。要素の数が明確になっていなければ、構造化は絶対に完成しません。
今日からすぐにできるシンプルな習慣。ぜひともトライしてみてください。

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深沢 真太郎(ふかさわ・しんたろう)

ビジネス数学教育家

日本大学大学院総合基礎科学研究科修了。理学修士(数学)。国内初のビジネス数学検定1級AAA認定者。予備校講師から外資系企業の管理職などを経て研修講師として独立。その独特な指導法で数字や論理思考に苦手意識を持つビジネスパーソンの思考とコミュニケーションを劇的に変えている。大手企業をはじめプロ野球球団やトップアスリートの教育研修まで幅広く登壇。SMBC、三菱UFJ、みずほ、早稲田大学、産業能率大学など大手コンサルティング企業や教育機関とも提携し、ビジネス界に数学教育を推進。2018年に国内でただ1人の「ビジネス数学エグゼクティブインストラクター」に就任し、指導者育成にも従事している。著書に『数学的思考トレーニング 問題解決力が飛躍的にアップする48問』(PHPビジネス新書)、『わけるとつなぐ これ以上シンプルにできない「論理思考」の講義』(ダイヤモンド社)、『数字にだまされない本』、『数学女子智香が教える 仕事で数字を使うって、こういうことです。』(ともに日経ビジネス人文庫)などがある。

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(ビジネス数学教育家 深沢 真太郎)
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