※本稿は、早坂信哉『入浴 それは、世界一簡単な健康習慣』(アスコム)の一部を再編集したものです。
■「長風呂」はかえって不健康になる
いつもより長めに湯船に浸かった後、なんだかぐったりしてしまった……そんな経験はありませんか? これは「のぼせ」と呼ばれる現象で、決して珍しいことではありません。「長く入れば入るほど体にいい」と思っていたら、それは間違いです。
湯船に浸かると体温が上がり、体はそれを下げようとして発汗を促します。ところが入浴時間が長すぎると汗の量が増え、体内の水分や電解質(ナトリウムやカリウム)が失われて急激に脱水が進行します。その結果、血液がドロドロになって血液の巡りが悪くなり、体温も上がりすぎて脳や心臓、その他の内臓の機能も一時的に悪くなります。
これが、入浴後の疲労感や頭痛、立ちくらみの原因になることがあります。
特に高齢の方、高血圧や心疾患、糖尿病などの持病がある方は、脳卒中や心筋梗塞などのリスクが高まるため、長風呂には注意が必要です。
さらに、自覚がなくても、浴室の高温多湿の環境の中で熱中症になっている場合も少なくありません。
■10分以上入りたいなら「35~37℃のぬるま湯」で
私は「40℃で10分間の入浴」をすすめていますが、これは医学的根拠に基づいた健康効果があるだけでなく、安全面でも最適だからです。
そのときは、「おでこにじんわり汗がにじんできたら」無理をせずにいったん湯船から出ます。水分を補給して少し体温が下がったら、体が冷えないうちに再度浸かってください。これで体への負担を減らすことができますが、無理は禁物。体調がすぐれない場合は、たとえ10分未満であっても部屋に戻り休みましょう。
逆に、「10分より長く入りたい」という方は、第2回で示したように、35~37℃のぬるい温度に設定します。心身の緊張がほぐれるので、寝る前やストレスが強いときにおすすめです。
それでは、体を洗うのはお湯に浸かる前がいいと思いますか? それとも後?
「そんなのどっちでもいい」と思われるかもしれませんね。でも、実はこの順番、肌の健康のためにはちゃんと意味があるのです。
■体を洗うのは「お湯に浸かった後」
答えは、「お湯に浸かった後に体を洗う」です。意外でしょうか?
【理由1 ゴシゴシ洗わずに汚れが落ちる】
まず湯船で体を温めて皮膚を柔らかくすることで、毛穴が開き、皮脂や汚れが自然に浮き上がります。その状態で体を洗えば、ゴシゴシこすらなくても汚れが落ちやすくなるので、肌への負担がグッと減ります。
【理由2 乾燥やかゆみ、肌荒れを予防する】
肌を強くこすると、必要な角質、皮脂や常在菌まで洗い流してしまい、乾燥やかゆみ、肌荒れの原因になることがあります。特に敏感肌の方は、先にお湯に浸かって、皮脂や汚れを浮き出させてから体を洗う方法がよいでしょう。
「垢」と言われるものは、もともと汚れではなく、皮膚の一部である古くなった「角質」です。角質は皮膚の内側を守ってくれる自分の皮膚の大事な一部分なので、ゴシゴシこすって無理にはがしてはいけません。
泡タイプのボディソープか、泡立てた石けんで、手でやさしくなでるようにして体を洗います。冬に肌が乾燥してかゆくなる人はゴシゴシこするのを止めるだけでかゆみが止まることも多いです。
【注意点1 かけ湯をしっかり行う】
先に湯船に浸かるときは、手足から順にお湯をかけて、体が湯温に慣れるようにします。これで体温や血圧の急激な上昇を抑えることができます。
【注意点2 銭湯や温泉では体を洗ってから入浴】
公共浴場では、先に体を洗ってから入浴するのがマナーです。その場合も、強くこすらず、石けんを泡立ててやさしく汚れを洗い流しましょう。
■入浴は夜がベスト、朝と昼は注意が必要
「入浴するなら、朝、昼、晩のうち、いつが一番効果的ですか?」
これは、私が講演会などでよく受ける質問の1つです。結論から言うと、もっともおすすめの入浴タイミングは「夜」。
一方で、朝の入浴には注意が必要です。朝は交感神経が急激に優位になる時間帯で、血圧の変動が大きくなります。それは、心筋梗塞や脳卒中といった、血管系の疾患が起きやすい時間帯という意味でもあります。そのため、高齢の方や高血圧症と診断されているような方は、夜に入浴するほうが安心です。
では、昼間の入浴はどうでしょうか。昼の時間帯は交感神経にスイッチが入っているため、体は“活動モード”になっています。そのため、入浴によるリラックス効果が得にくくなることがあります。
運動をして汗をかいたら、昼間でも入浴したくなるでしょう。このときにも注意が必要です。
■「寝る90分前の入浴」が最も適している
とはいえ、「どうしても汗を流したい」という場合には、シャワーでサッと流すか、38℃程度のぬるめのお湯に10分程度浸かるようにしてください。私が行った実験では、38℃程度のぬる湯では、運動直後に入浴しても筋肉の疲労回復が遅くなることは見られなかったためです。
いずれにしても、これまで紹介してきた健康効果を期待するのであれば、太陽が沈んだ後の時間帯がもっとも適しています。
また、「寝る直前にお風呂に入ると、よく眠れる」。そう思われていたら、それは間違いです。夜の入浴のタイミングを間違えると、かえって眠りを妨げてしまうことがあります。
多くの研究を調べて、たどり着いた結論は、入浴は「就寝の90分前」に済ませるのがもっとも理にかなっているということ。その理由は、深部体温のリズムにあります。
人間の体は、深部体温がゆるやかに下がっていくときに、自然な眠気が訪れるようにできています。入浴によって一度体温を上げ、その後、普段より、少し急に下がっていく過程で、脳と体が「眠る準備が整った」と判断するのです。
■「41℃以上」「長湯」は睡眠を阻害する
この「体温の下降カーブ」のとき就寝するのが、入眠後90分で訪れる「質のよい眠りのゴールデンタイム」を導く鍵になります。
眠りについて、最初の90分間に、心身の回復を促す成長ホルモンが多く分泌されます。この90分間に深く眠れれば、その夜はしっかりと疲労回復ができて、逆に眠りが浅いと成長ホルモンの分泌が滞り、翌朝に疲れが残ってしまうのです。ぐっすり眠るためには、ぜひ以下のポイントも気にかけてください。
○41℃以上の熱いお湯に入らない
熱いお湯は交感神経が刺激されて覚醒状態になり、眠りが妨げられてしまいます。
○長湯をしない
10分以上お湯に浸かると、のぼせたり、交感神経が刺激されたりすることがあります。
こうしてみると、40℃で10分間は、やはり究極の入浴法です。
ただ、寝るまで90分も時間がない! という場合は、シャワーか40℃の湯船に5分ほどの短い入浴にします。あえて体温をあまり上げすぎないようにして、就寝を邪魔しないようにするのです。ですが、できればきちんとお風呂→90分後の就寝がおすすめです。
入浴のタイミングとしては、食後すぐも避けたいところです。食後は消化のために胃に血液が集まりますが、そのときに入浴してしまうと、本来消化に必要な血液が皮膚に行ってしまうからです。
夕食の時間が遅い方は簡単ではないかもしれませんが、食後1時間ほど休んでから入浴→90分たったら就寝、というのがもっとも体にやさしいリズムです。
■シャワーだけなら「42℃」がおすすめ
入浴の健康効果は、「お風呂は温かい」からこそ得られます。
湯船にしっかり浸かれば、深部体温が1℃上がり、文字通り体を芯から温めることができます。その一方で、シャワーだけでは深部体温の上昇は0.1~0.2℃程度と、ごくわずか。つまり、一時的に体がポカポカしても、体の芯まではなかなか温まりきらないのです。
とはいえ、忙しい日や暑い季節など、シャワーで済ませたいというときもありますよね。入浴の効果には及びませんが、シャワーでも温熱作用をできるだけ得る方法をお教えしましょう。
シャワーの設定温度は42℃がおすすめです。お湯は空気に触れている間に、冷めてしまいます。設定温度を少し高めの42℃にしておけば、体に届く頃には40~41℃程度と、適温になります。
体のどこにシャワーを当てるかも重要なポイントです。特に、太い血管が通る以下の部分にお湯を当てることで、効率よく全身が温まります。
・首の後ろ・側面
・わきの下
・足のつけ根
■「足湯」を併用するといい
さらに、「足湯併用シャワー」にすれば完璧です。シャワーを浴びる前に浴槽に10cmほどのお湯を張ります。温度は、冷めることを考えて、42~43℃がよいでしょう。そこに足を浸しながらシャワーを浴びるという方法です。
浴槽に立ってシャワーを浴びる方法ですが、イスに座るなら、洗面器にお湯を張って、そこに足を入れてもかまいません。
足湯で温まった血液が全身を巡るので、シャワーだけのときと比べて、体の温まり方に違いを感じられるはずです。これなら手間もかかりませんし、シャワー単独では得にくい温熱作用を補うことができます。
湯船に浸かれない日に、ぜひ取り入れてみてください。
(参考文献)
・石澤太市、小番美鈴、奥川洋司、中西信之、松本圭史、早坂信哉「入浴の頻度および体温上昇と健康との関連」
・竹花美紅、萬羽郁子、鴻池孝宏「ヒノキ精油による心理・生理反応」
・田中信行、宮田昌明、下堂薗恵、出口晃、國生満、早坂信哉、後藤康彰「入浴と運動の健康増進効果の比較─1回入浴と200m走の循環、代謝、末梢血組成の変化─」
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早坂 信哉(はやさか・しんや)
東京都市大学人間科学部教授・医師、一般財団法人日本健康開発財団温泉医科学研究所所長
温泉療法専門医、博士(医学)。浜松医科大学医学部准教授、大東文化大学スポーツ・健康科学部教授などを経て、現職。公益財団法人中央温泉研究所理事、一般社団法人日本銭湯文化協会理事、一般社団法人日本温泉気候物理医学会理事、日本入浴協会理事。著書に『最高の入浴法』(大和書房)ほか。メディア出演も多数。環境省の「新・湯治効果測定調査プロジェクト」の調査の研究責任者を務める。
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(東京都市大学人間科学部教授・医師、一般財団法人日本健康開発財団温泉医科学研究所所長 早坂 信哉)

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