■イントロダクション
世界の富豪ランキングに名を連ねるようなビジネスの成功者たちは、一般的には持って生まれた才能や、個人の努力で身につけたスキルによって、その地位をつかみとったと見られがちだ。
しかしながら実際には、その人の文化的背景、生まれた時代、機会、環境といった外部要因によるところが大きいようだ。
原書が2008年に刊行され、全世界860万部突破のロングセラーの新訳・完訳版である本書は、豊富な事例をもとに、「外れ値(アウトライアー)」と呼ばれる例外的な成功者たちが、個人の才能や努力だけでなく、さまざまな外部要因の影響を受けていることを明らかにしている。
たとえば、生まれ育った家庭や時代背景によって、あるいは偶然の出会いにより、成功につながるチャンスが得られたりもする。
著者は、複雑な社会現象を鮮やかに解き明かすカナダ系米国人のジャーナリスト兼作家。『ティッピング・ポイント 世の中を動かす「裏の三原則」』(飛鳥新社)などの著書がある。
はじめに ロゼトの謎
パート1 偶然のチャンス
第1章 マタイ効果
第2章 1万時間の法則
第3章 天才の問題 その1
第4章 天才の問題 その2
第5章 ジョー・フロムの3つの教え
パート2 伝統
第6章 ケンタッキー州ハーラン
第7章 航空事故における民族論
第8章 水田と数学試験
第9章 マリタの取引
エピローグ ジャマイカの物語
本書を読み解くためのガイド
■アイスホッケーのプロ選手の「共通点」
カナダ人心理学者のロジャー・バーンズリーは、アルバータ州南部で開催されたレスブリッジ・ブロンコスの試合を観戦していた。ブロンコスは、(*アイスホッケーの)メジャー・ジュニアA・リーグに所属するチームだ。
バーンズリーは、妻のポーラと、2人の息子と一緒に観客席にいた。妻が読んでいた試合のプログラムには、チームのメンバー表が掲載されている。「ロジャー」と、彼女は夫に声をかけた。
バーンズリーは当時を回想する。「メンバー表を見てみると、妻の言っていることがすぐに理解できた。どういうわけか、1月と2月と3月に生まれた選手の割合が異常に高いんだ」
その夜、バーンズリーは帰宅すると、アイスホッケーのプロ選手の誕生日を可能なかぎり調べてみた。やはりパターンは同じだった。ジュニアであろうとプロであろうと、所属する集団で頂点に入る選手たちは、その40パーセントが1月から3月の間に生まれ、30パーセントが4月から6月の間、20パーセントが7月から9月の間、そして10パーセントが10月から12月の間に生まれている。
■出発点から「アドバンテージ」があった
誕生月が偏るという現象は、きわめて簡単に説明できる。カナダのアイスホッケー界は、年齢規定の基準日を1月1日と定めている。それはつまり、1月2日に10歳になる少年は、その年の終わりまで10歳にならない少年たちと一緒にプレーする可能性があるということだ。
バーズリーは、この種の偏りは3つの条件が揃うと必ず起こると主張する。それは、選抜、能力別クラス編成、そして他とは違う経験だ。
まだ幼い段階で優秀な子どもとそうでない子どもを決め、優秀とされた子どもをその他の子どもから切り離し、そして指導や試合などで特別な体験をさせると、ただ単に早く生まれたという理由だけで「優秀」とされた少数の子どもが、その他大勢に対して大きなアドバンテージを持つことになる。
アイスホッケーと誕生日の物語は、成功についてどんなことを私たちに教えてくれるのだろうか。
もちろん、プロにまでなったアイスホッケー選手は、あなたや私よりもはるかに才能に恵まれている。しかし彼らは、出発点からかなりのアドバンテージがあった。このチャンスは、正当なものでも、自分で勝ち取ったものでもない。それなのに、彼らの成功で決定的な役割を演じているのだ。
■成功は「累積的優位性」の結果
成功とは、社会学でいうところの「累積的優位性」の結果である。プロのアイスホッケー選手も、最初は他の子どもたちより少しうまいだけだった。その小さな差がチャンスにつながり、差がさらに大きくなって、また別のチャンスに恵まれる。そのくり返しで最初の小さな差がどんどん大きくなり、外れ値(*他と比べて並外れた能力を発揮する成功者)に属するアイスホッケー選手が誕生するのだ。
アイスホッケーの例からわかることの2つ目は、このシステムはそれほどうまく機能していないということだ。ジュニアのオールスターリーグやギフテッド(*知能、芸術、運動など特定の分野で生まれつき突出した才能を持つ人)のためのプログラムなどは、子どもが小さいうちから始めたほうがいいとされている。そうすれば才能の取りこぼしがないと考えられているからだ。
さらにここで、(*カナダのアイスホッケー界と同様に年齢規定で1月1日を基準日と定めている)チェコの(*サッカー)U-20代表チームのメンバーを見てみよう。7月、10月、11月、12月に生まれた選手はひとりもいない。そして8月生まれと9月生まれはそれぞれひとりだけだ。年度の後半に生まれた子どもたちは、存在に気づいてもらえず、このスポーツから除外されてきた。チェコのスポーツ人口のうち、有能な選手の実質的に半数が無駄になっているということだ。
■年度の基準日には重大な意味がある
私たちは、成功というものをあまりにも属人化しすぎている。そのため、成功の定義から漏れた人たちをトップに引き上げるチャンスを逃してきたのだ。現行のルールでは、成功を阻害される人がいる。基準に満たない人が、あまりにも早い段階で切り捨てられている。
さらに、何よりも問題なのは、私たちがあまりにも受け身的になっていること。私たちは、成功者とそれ以外が決まる過程で、自分が演じている役割の大きさに気づいていない――そして、ここで言う「私たち」とは、「社会」という意味だ。
私たちがその気になれば、年度の基準日には重大な意味があると認めることができる。
よりよい世界を構築するには、偶然の幸運や、恣意的なアドバンテージという要素に頼るのではなく、すべての人間がチャンスを手に入れられるシステムを確立しなければならない。
■「裕福な家庭」と「貧しい家庭」の違い
社会学者のアネット・ラルーは、小学校3年生の児童を対象にとても興味深い研究を行った。彼女が研究の対象に選んだのは、白人の子どもと黒人の子どもの両方だ。裕福な家庭の子もいれば、貧しい家庭の子もいる。そして最終的に、12の家庭に絞り込んだ。ラルーの研究チームは、最低でも20回、それぞれの家庭を訪問した。1回の訪問は数時間に及んだ。
12の家庭のそれぞれと長い時間を一緒にすごしたら、12通りの子育てスタイルが手に入るだろうと思うかもしれない。厳しい親もいれば、甘い親もいる、口うるさい親もいれば、のんびりした親もいる、というように。
しかし、ラルーが発見したことは、それとはまったく違っていた。
中流家庭の親は、子どもとよく話し合いをする。きちんと説明することで理解してもらおうとする。子どもが権威ある立場の大人に対して反論し、交渉し、異議を申し立てることを期待している。ラルーは中流家庭の子育てスタイルに「協働的育成」という名前をつけた。
■貧しい家庭の子どもは「権利意識」を身につけづらい
協働的育成には巨大なアドバンテージがある。中流家庭の子どもは、必要なときは自分の意見を主張できるようになる。ラルーの言葉を借りれば、中流家庭の子どもは「権利意識」を学べるということだ。
貧しい家庭の子どもは、それとは対照的だ。彼らはどんな環境にいようとも、自分の要求を通す方法を知らない。
大切なのは、家庭での教育で身につけた権利意識が、現代の世界で成功するのに完璧に適した態度だということだろう。
どこで生まれ、どこで育ったということは、人生に大きな影響を与える。どんな文化に属し、祖先からどのような遺産を受け継いだかということが、私たちには想像もできないような形で、人生で達成できることを決めている。
あらゆる外れ値たちは歴史とコミュニティの産物であり、チャンスと伝統の産物だ。さまざまなアドバンテージや遺産が密接にからまり合い、その上に彼らの成功が築かれている。
その中には、彼らにふさわしいものもあれば、そうでないものもあるだろう。自分の力で手に入れたものもあれば、純粋な運で手に入ったものもある――しかし、それらすべてが、彼らを彼らたらしめるために欠くべからざるものだったのだ。
※「*」がついた注および補足はダイジェスト作成者によるもの
■コメントby SERENDIP
アネット・ラルー氏の研究からは、「生い立ち」という、どうしようもない運命的なものに人生が左右されてしまうように思えるかもしれない。だが、たとえ貧しい家庭に育ち、権利意識を学べなかったとしても、成長の過程でそれを学ぶチャンスはあるはずだ。著者は本書で、航空機事故の原因の一つにパイロットの文化的背景があることも指摘しているが、同時に航空会社で再教育を行うことで事故を減らした事実も伝えている。人生を左右する外部要因に気づき、それに抗うチャンスをしっかりとつかむことが、成功の秘訣といえるのではないだろうか。
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