高市首相の発言をきっかけに、日中関係が悪化している。それに伴い、中国政府は、国民に日本への渡航を自粛するよう呼びかけている。
管理対象品目には、レアアース(希土類)関連も含まれるとみられる。レアアースは、半導体や自動車などの産業に必要な物資で、その影響は小さくはない。
昨年11月、高市首相は国会で、台湾有事はわが国の存立危機事態になりうると答弁した。それ以降、中国は態度を硬化させ、わが国への批判を強めた。
中国の対日強硬姿勢には、中国の国内事情も影響しているだろう。中国では、不動産バブル崩壊により経済環境がかなり厳しい。若年層の失業率は上昇し、“芭比Q了(終わった)”などの表現がSNSに氾濫し始めた。そうした怒りや不満を緩和し、不満の矛先をわが国に向かわせようとの意図もありそうだ。
中国との貿易が円滑に進まないと、わが国の経済にはマイナスの影響が出ることは避けられない。経済面ばかりではなく、安全保障上の問題も顕在化する可能性もある。防衛予算が増えると、経済対策への余力が減殺されることも考えられる。
■財政悪化で公務員の給料も払えない
昨年11月の高市首相の答弁の後、中国は急速にわが国に対する批判を強めた。その背景には、いくつかの要因が考えられる。
まず、中国は、答弁は“一つの中国”の原則に反すると強硬に批判した。中国は台湾を自国領であり、祖国統一は妨げられない悲願であると主張している。米欧諸国は一つの中国の原則を尊重する考えを示してきた。習政権は、高市首相の答弁はその原則を無視したと見たのだろう。
また、中国国内の不満を海外に向かわせる意図もうかがえる。不動産業界では、かつて中国最優良デベロッパーだった、“万科企業”の社債がデフォルト(債務不履行)した。今のところ、不動産価格下落に歯止めはかからず、地方政府や家計の財政状態は悪化した。国有・国営企業や就職希望熱が高まった公務員まで、給与の支払い遅延、未払いが発生している。
■レアアースを武器に日本を困らせる作戦
中国政府は、対日強硬姿勢を強めて市民の怒りを軽減するため、その矛先をわが国に向ける意図があるとの指摘もある。
1月5日、韓国との首脳会談で、中国側は日本が一線を越えたと強硬姿勢を鮮明にしたようだ。その見返りとして中国サイドは、K-POPなど韓国カルチャーに対する事実上の禁止措置の解除も提案したと報じられた。韓国へのパンダ貸与も示唆したという。
中国が韓国の懐柔を画策する背景には、アジア極東地域における影響力拡大の意図もあるだろう。昨年12月、トランプ政権は国家安全保障戦略(NSS)で、中南米への覇権強化を重視する姿勢を示し、中露と戦略的な安定関係を優先する方針を示した。わが国として、独自に経済・安全保障体制を確立する必要性は高まっている。
そして1月6日、中国はわが国に対して、レアアースなど軍民で利用可能な品目の輸出管理規制を強化した。その直後、わが国産業全体を対象に、レアアース輸出審査を停止したとの報道が出た。中国は、わが国からの食品などの通関手続きを、意図的に遅らせているとの見方もある。中国は、対日貿易の規制を強化し始めたと考えるべきだ。
■各企業が分散させても対中依存度は6割
当面、中国が、日本に対する強硬姿勢を緩和することは考えづらい。わが国としては、米国との安全保障の関係を重視しながら、極東や台湾情勢への対応方法を独自に考えることが必要だ。安易に中国に譲歩すべきではないだろう。
ただし、レアアースの対日輸出規制の影響は、報道されている以上に深刻になる可能性がある。2010年に、中国は、一時、わが国に対するレアアースの輸出を停止した。それ以降、日本企業は調達先を分散し、2024年の対中依存度は6割程度に低下した。それでも最大のレアアース調達先であることに変わりはない。
昨年、中国は米国に対するレアアース輸出を規制した。その際、わが国でも、自動車の生産が停止する企業が出た。レアアース調達先の分散など、供給網の管理は各社で異なる。中国がレアアースなどの輸出を絞ると、国内の自動車、工作機械、半導体などの電子部品、防衛関連機器、およびバッテリー関連部材などの生産は減少するとみられる。
■輸出停止でGDPが下押しされるリスク
自動車産業の付加価値創出額は約11兆円と推計されている。
1年程度の期間にわたって中国からのレアアースが入ってこないと、2~3%程度GDPが下押しされるリスクは覚悟した方がよい。
さらに重要な懸念は、安全保障体制の不安定化だ。米国がアジア地域など世界の安全保障にどう関与するか、先行き不透明感は高まった。世界の主要国は防衛費を積み増している。わが国もその方針を掲げた。
わが国は米国との関係を維持し、欧州や韓国、アジアの親日国との連携を強化することが必要だ。必要に応じて、合同訓練などの必要性は高まる。今後、わが国は安全保障に関する政策を迅速に練り直すことが求められるだろう。
■日本株の好調ぶりはいつまで続くか
1月上旬、国内の株価は史上最高値を更新したが、日中関係の悪化が経済に与える影響は過小評価できない。
中国軍の戦闘機による、自衛隊機へのレーダー照射も起きた。こうした中で経済の安定を維持するために、わが国は、安全保障体制を真剣に考える必要がある。それは、わたしたちの安心、安全に欠かせない要件だ。
また、個人や家計への打撃が懸念されるのは、物価上昇圧力が追加的に高まるリスクだ。主要国の景気動向を見ると、中国は日米欧と異なりデフレ圧力が高まっている。過剰生産能力の深刻化を背景に、経済全体で価格は下落傾向だ。たとえば昨年、中国ではレアアースの生産が急増し、価格下落圧力が高まったといわれている。
米大手金融機関などの推計によると、中国のデフレ圧力は世界の物価上昇率を平均して0.3~0.5%押し下げたようだ。中には、0.7%程度の物価引き下げ要因になったとの試算もある。
■日中関係の悪化は日本人の暮らしにも打撃
中国と欧州や米国は、鉄鋼製品やアパレル製品、太陽光パネル、一部の汎用型半導体、EVバッテリーのダンピング(不当廉売)を巡って対立した。
中国との円滑な貿易取引が難しくなると、わが国の企業は代替調達先を確保しなければならない。それに伴い、企業のコストは増加し、価格転嫁は加速するだろう。
日中関係の悪化、それによる中国の対日貿易管理の強化は、わが国のインフレ加速要因になるだろう。自動車分野では、素材や部品が不足して新車供給が落ち込み、中古車の価格上昇が鮮明になる恐れはある。衣料品、生活雑貨、食品も同様だ。
マクロ経済、安全保障、そして個人の生活への打撃を抑えるため、政府は中国との関係安定化を真剣に模索することが必要だ。
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真壁 昭夫(まかべ・あきお)
多摩大学特別招聘教授
1953年神奈川県生まれ。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリル・リンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員、信州大学経済学部教授、法政大学院教授などを経て、2022年から現職。
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(多摩大学特別招聘教授 真壁 昭夫)

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