面接で「選ばれる人」と「埋もれる人」は何が違うのか。就職活動で100社以上に落ち続けた苦い経験を持つ気象予報士の佐藤圭一さんは「どんな人の中にもある『華』を見つけ、それを打ち出せるかどうかにかかっている。
お手本は、箱根駅伝で青山学院大を3年連続9度目の優勝に導いた原晋監督の手法だ」という――。
■青学・原監督がつくるチームの「華」
お正月の風物詩、箱根駅伝。今年も青山学院大学が総合優勝を果たした。3年連続9度目。同一大学が3連覇を2度達成したのは史上初の快挙だ。
毎年話題になる「○○大作戦」という作戦名。今年は「輝け大作戦」だった。レース後のインタビューも含めて、青学というチームには独特の「華」がある。
私はテレビ越しに優勝の瞬間を見ながら、「これぞブランディングだ」と感じていた。青学の「華」は、偶然生まれたものではない。原監督が長年かけて作り上げてきた、戦略的な「わかりやすい個性」なのだ。
実は私自身、かつて就職活動で100社以上に落ち続けた経験がある。
そこから「選ばれる人」と「埋もれる人」の違いを痛感してきた。
今回は、青学のブランディングと私自身の経験を重ねながら、人を惹きつける「華」の正体について考えてみたい。
■キー局の面接官に教わった「受かる人の条件」
私が就職活動で、数百、数千に1人という競争率になることもあるアナウンサーを目指していた頃、全国ネットのテレビ局で活躍するアナウンサーに「どんな人が試験に受かるのですか?」と聞いたことがある。
容姿端麗な人か、高学歴な人か、それともニュース読みが上手い人か。返ってきた答えは、予想とは少し違っていた。
「華のある人だよ」
私は聞いた。「華とは、見た目の良さや輝かしい経歴のことですか?」すると、その方は首を横に振った。
「違う。華というのは、『わかりやすい個性』のことだよ」
面接が終わった後に、「あの○○の子、面白かったね」と一言で思い出せるかどうか。面接官同士が共通認識を持てる「タグ」があるかどうか。それが「華」の正体だというのだ。
しかし、当時の私はこの言葉の意味を浅くしか理解できていなかった。

■100社落ちた私が陥った典型的「埋もれる人」
「わかりやすさ」を「優秀さ」と履き違えてしまったのだ。
私は学生時代の部活の成績を、なんとかキャッチコピーにしてアピールしようとした。就活本には「キャッチコピーが大事」「わかりやすさが大切」と書いてある。だから私も一生懸命、自分の経験をキャッチーな言葉にまとめようとした。
だが、結果は惨敗。100社以上受けて、ことごとく落ちた。
理由は単純だ。どこかで聞いたような実績を、誰かの真似をしてアピールしても、面接官の記憶には残らない。同じようなエピソードを、もっと上手に語れる人がいくらでもいたのだ。
自分を「良く見せよう」とすればするほど、他の誰かと同じになっていく。埋もれている時点で、そこに「華」はない。これが「埋もれる人」の典型的なパターンだ。

■「酒を飲んでいただけ」の学生が内定した理由
そんな連敗中の私が、ある地方局の試験会場で度肝を抜かれる光景を目にした。
一緒に受けていた学生が、面接官に「学生時代に頑張ったことは?」と聞かれた時のことだ。いわゆる「ガクチカ」だ。普通なら、ボランティアや留学経験など、少しでも自分を良く見せるエピソードを話す場面である。
しかし、彼は堂々とこう言い放った。
「ありません! バイトして、お酒を飲んで過ごしていました。その分、働き始めたら頑張ります!」
一瞬で、会場の空気が彼に持っていかれた。面接官たちも笑っている。私は「やられた」と思った。
彼には圧倒的な「わかりやすい個性」があったのだ。何千人もいる優等生風の志願者の中で、彼は唯一無二の「正直すぎる男」というタグを、面接官の脳裏に刻み込んだ。
それだけではない。
面接官はこう思ったはずだ。「ここ一番の勝負所で、自分を良く見せようと嘘をつく学生より、マイナス面をさらけ出せるこの男のほうが、仕事でも信用できる」と。
何千人もいる「良い子」の仮面を被った学生の中で、彼は「リスクを取れる人間」として差別化されたのだ。彼はその後、見事に内定を獲得し、その地方局の人気アナウンサーになった。
■「普通の趣味」にこそ個性があった
この出来事をきっかけに、私は自分自身を掘り下げ直すことにした。
どこかで聞いたような実績ではなく、自分自身が本当に好きなこと、時間をかけていること。その中に「自分ならではのこだわり」がないか、徹底的に探した。
考え抜いた末に気づいたのは、「月に1~2回、音楽ライブに行っている」という事実だった。自分自身でライブをするわけではない。もっと頻繁に通うマニアもいるだろう。一見、就活の自己PRには使えなさそうなネタだ。
しかし、私はこれを深掘りした。
なぜ家で音源を聞けば済むのに、わざわざライブに行くのか。
理由は、テレビやCDでは伝わらない迫力と、アーティストの人柄を感じられるから。データとして綺麗な音を聞くのと、現場でメッセージを受け取るのとでは、得られる情報量がまったく違うからだ。
私はこの気づきを「現場主義」というタグに変換した。
「私はテレビ画面では伝わらない『現場の空気』を届けられるアナウンサーになりたい」
さらに、この「現場主義」を裏付けるように、就職活動を続けながら話題の現場に足を運び続けた。スポーツ、政治、イベント――行ける場所にはどこでも行った。そして、そこで感じたことを面接でも話した。
すると、面接官の反応が変わった。他の受験生と話が被ることもなくなり、選考を勝ち進めるようになった。今思えば、これが私のブランディングだったのかもしれない。
■原監督のブランディングが「青学」を輝かせた
話を箱根駅伝に戻そう。青山学院大学がなぜこれほど強いのか。
そしてなぜ、これほど人気があるのか。
それは原監督が、チームに「わかりやすい個性」を与え続けてきたからだと思う。
かつての駅伝の強豪校は「丸刈りで寡黙」が当たり前だった。しかし原監督は、選手の髪型を自由にし、「自分で考えて行動できる選手を育てる」という方針を打ち出した。当初は批判もあったと聞く。
ユニフォームも象徴的だ。かつては一般的な青色だったが、現在の鮮やかな「フレッシュグリーン」に刷新した。どこを走っていても一目で「青学だ」とわかる。
「○○大作戦」という作戦名も同じだ。一言で今年のチームをどのように注目すればいいのかが伝わる。
没個性な集団が多かった駅伝界の中で、青学は強烈に「わかりやすかった」。
「勝ったから華が出た」のではない。華のあるチームに人が惹きつけられ、有力な選手や応援する人が集まり、強いチームになったのだと思う。
■「試合に一度も勝てなかった野球部の部長」の話
私は今、就職や転職活動の相談に乗ることがある。ある学生が「野球部の部長をやっていたが、試合で一度も勝ったことがないので就活には使えない」と悩んでいた。
こんなおいしいネタはめったにない。「一度も勝てなかった部長」なんて、逆に珍しすぎる。負け続けた中で何を考え、どうチームと向き合ったのか。そこには彼にしか語れないストーリーがあった。結果、彼はこのエピソードで志望企業から内定を獲得した。
「ラーメンの食べ歩きが好き」という学生が、面接官の地元のおすすめ店をプレゼンして大企業に受かった例もある。
輝かしい実績だけが個性ではない。地味だからこそ、目立つことだってある。
■あなたの「普通」に、華は眠っている
就活や転職、プレゼンの場において、私たちはつい「スーパーマン」になろうとしてしまう。欠点を隠し、マニュアル通りの言葉で、自分を大きく見せようとする。
だが、それは「その他大勢」に埋もれる落とし穴だ。
強さや輝かしい実績だけが個性ではない。弱さも、失敗も見せ方一つで「華」になる。あなたが「普通」だと思っていることの中に、実は圧倒的な個性と華が眠っているかもしれない。

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佐藤 圭一(さとう・けいいち)

気象キャスター、リポーター

長野県岡谷市出身。学生時代、アナウンサーを志すも100社以上から不採用通知を受け取る。それでも粘り強く挑戦を続け、ローカル局でキャリアをスタート。その後、文化放送の報道記者・リポーターとして国会や首相官邸、災害現場など幅広い取材を経験。現在は気象予報士としての資格を生かし全国ネットのテレビ局やラジオ局で気象キャスターとして活動している。

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(気象キャスター、リポーター 佐藤 圭一)
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