※本原稿で挙げる事例は、実際にあった事例を守秘義務とプライバシーに配慮して修正したものです。
■離婚の相談に母親が同席
私の事務所に、30代の会社員Aさんが相談に来ました。問い合わせの内容は、「妻と仲が悪くて別居している。離婚の条件を決めたい」というごく一般的なものでした。
当日事務所に現れたAさんの横には、女性が立っていました。どなたですかと聞くと、「母です」と言います。
私は、「お話はあくまでご本人から伺いますよ」と念を押した上で、相談を始めました。
経緯を聞いていくと、母親が会話に割り込んでくることはないものの、Aさんは言葉を選びながら、どこか歯切れの悪い話し方をします。こちらが質問をすると、母親の方を見る場面も何度かありました。
Aさんは結婚10年目で、同じく会社員の妻との間には7歳になる長男がいます。Aさんの要望は、財産分与は相応に行い養育費も基準通りに支払う、長男の親権は希望しないが面会はしたいという、基本的な内容でした。
一般的な協議を行えばおおむねその内容で合意になるだろうという見通しを示して、Aさんからも了承を得て、依頼を受けることになりました。
■穏やかだった協議が突然ストップ
その後妻にも弁護士が付き、離婚協議が始まりました。協議は比較的穏やかに進み、主な財産は預金のみなのでそれを分ける、養育費は双方の収入に応じた基準通りに月7万円という条件で、Aさんと妻の了承を得ることができました。
そこで和解条項案を作成して、最終確認のためにAさんに見せたところ、突然ストップがかかりました。
Aさんはメールで「この条件でなら合意する」と、和解条項案のデータを修正したものを送ってきたのですが、その内容は、長男の親権は夫、財産分与なし、慰謝料を支払え、さらに結婚生活が破綻したことについて妻とその両親からの対面での謝罪を求めるというものでした。
Aさんは、これまでの協議で決めてきた条件をすべて変えてしまい、さらに話題に出たこともない謝罪について持ち出してきたのです。
■和解条項案に怒り出した母親
このメールは、内容以外にも違和感がありました。メールのフォントが、つぎはぎのように、ところどころ変わっているのです。
これまでと180度違う返答に驚いたので、Aさんに来てもらって打ち合わせをすることにしました。
理由を聞くと、Aさんは最初はこれが自分の希望だと言っていたものの、理由を詳しく聞いていくと、最終的には困ったように、「実は母親に案を見せたら怒り出したんです」と打ち明けてくれました。
母親は、財産を分与するなんて家の恥だ、○○家の跡取りだから親権はうちでないとおかしい、出来の悪い嫁に子育てなどできないと、ものすごい剣幕で怒り、「この内容を弁護士に送りなさい」とAさんにメールをしてきたので、それをそのまま切り貼りして私に送ってきたというのです。つぎはぎのようにフォントが変わっていたのは、そのせいでした。
Aさんは「自分では決めたつもりでも、母親に怒られると反論できなくて……。母親を説得してくれませんか」というので、今度は父親と母親にも来てもらい、四者で打ち合わせをしました。
母親は「こんなに簡単に離婚するなんて負けたようなもの」「相手の両親にも責任を取らせたい」と憤っていましたが、この条件は一般的な内容で、妻が調停や裁判をしたら結局この条件になると説明すると、父親は、「一般的な内容だと思うし、本人がいいならそれでいい」とあっさり言いました。すると母親も何も言えなくなり、結局当初の和解条項案の通りに合意することになりました。
■親が介入するケースが増えている
このようなケースは、最近の20代、30代の離婚では珍しくありません。
相談の段階から親が同席することもありますし、親が弁護士を探して問い合わせてくることもあります。
もちろん、方針にも積極的に意見を出してきます。本人とやりとりするメールを両親にも送ってほしいと言われることもあります。
また、Aさんの事例のように、本人とやりとりをして十分説明して納得してもらった条件でも、最後に本人から報告を受けた親が「こんなものはおかしい」と反対してしまうこともあります。
このように、離婚の際に親の意向が深く入り込んでくるケースが増えているのです。
■離婚となると親の意向をうかがってしまう
親が子どもを心配する気持ち自体を否定するものでありません。しかし、離婚はあくまで本人同士の問題で、離婚の条件はその後の人生をどうするかにも大きく関わるため、本人の意思で決めることが基本です。
今後はさらにこのような流れが加速していく可能性があります。
昔は夫婦トラブルは親に言いたくない、恥ずかしいことという感覚がありましたが、今はそういった心理的ハードルがかなり低くなっているようです。
結婚後も親子関係が良好に続いているということでもあるので、それ自体は悪いことでありません。
ただ、親の意向が強く出過ぎてしまうと、本来であればそこまで揉めずにすむ離婚がこじれてしまい、本人にとって納得のいく着地ができなくなることもあるので、注意が必要です。
特徴的なのは、こういった親子であっても、結婚する時には必ずしも親の承諾を重視していない点です。親が連れてきた相手と結婚したわけではなく、時には反対されて結婚しているのに、離婚となると、急に親の意向が最優先になってしまうのです。
そこには、大人になっても、面倒なことやつらいことを親に委ねたくなる心理があるのかもしれません。
■親は“第三者”ではない
また、離婚前の夫婦げんかの段階から夫婦両方の両親が関与していることも少なくありません。夫婦と両親6人のLINEグループができていて、そこで大げんかになって「離婚だ」「慰謝料を払え」という言葉が飛び交っている……というケースもいくつも見たことがあります。
こういった人に後で話を聞くと、「第三者を入れた方が冷静に話し合えると思った」と言いますが、親は第三者ではありません。むしろ強い利害関係のある存在で、感情面では本人以上にヒートアップしてしまいがちなので、両親を入れたら冷静に話が進むという期待はしない方がよいでしょう。
離婚の話し合いは、夫婦がどうしたいかという気持ちをすり合わせて進めていくもので、親の意向を聞いて進めていくべきものではありません。
親の意見に耳を傾けることと、親に決断を委ねてしまうことは別だということを、改めて意識する必要があるでしょう。
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堀井 亜生(ほりい・あおい)
弁護士
北海道札幌市出身、中央大学法学部卒。堀井亜生法律事務所代表。第一東京弁護士会所属。離婚問題に特に詳しく、取り扱った離婚事例は2000件超。豊富な経験と事例分析をもとに多くの案件を解決へ導いており、男女問わず全国からの依頼を受けている。また、相続問題、医療問題にも詳しい。「ホンマでっか!?TV」(フジテレビ系)をはじめ、テレビやラジオへの出演も多数。執筆活動も精力的に行っており、著書に『ブラック彼氏』(毎日新聞出版)、『モラハラ夫と食洗機 弁護士が教える15の離婚事例と戦い方』(小学館)など。
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(弁護士 堀井 亜生)

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