※本稿は、茂木健一郎『「超」すぐやる脳のつくり方』(三笠書房)の一部を再編集したものです。
■脳科学者が考えるヒット作を生み出すのに必要なこと
ビジネスにおいて、日本国内のマーケットに乗るべきか、それとも海外のマーケットに乗るべきかという、まったく予測がつかないことが多くのビジネスパーソンにとっての悩みの種となっています。つまり、マーケット自体がボーダレスになってきたというわけです。
「どうやってヒット商品を生み出すか」
「どんなビジネスがマーケットに乗るのだろうか」
こんな悩みを抱えるビジネスパーソンも少なくないでしょう。もちろん、この答えを簡単に出せるのであれば何の苦労もいりません。
正直なところ、僕にもその答えはわかりません。ただ、脳科学者としてひとつ言えることは、自分がやっている仕事が楽しいかどうかです。
『「超」すぐやる脳のつくり方』で、僕の『生きがい』という本が2024年にドイツで38週間連続1位という快挙を成し遂げ、年間ベストセラー1位を獲得したとご紹介しましたが、実はスイスでもベストセラー1位になり、ポーランドでも1位になったそうです。しかし、なぜこの本が海外でマーケットに乗ったのかはいまだによくわからないのです。
■つまらないことは放り投げちゃってもいい
ただ、この本を執筆していたときのことを思い返すと、原稿を書いていることが心底楽しかったのです。いまでも「あー、いい仕事ができたな」という満足感があります。
それは、たとえば絵を描く人であれば、絵が展覧会で評価されたり、売れたりするとうれしいわけですが、絵を描いていること自体が楽しければ、そこに生きがいを見つけることができ、満足感を味わうことができます。
ただ、このような話をすると決まって「サラリーマンは楽しいことばかりやってはいられない。つまらない仕事もやらなければいけないんだ」とおっしゃる方がいます。でも、僕はむしろ「つまらないことは放り投げちゃってもいい」ということをこの本で声を大にして皆さんに伝えたいのです。
こう断言する根拠は、もちろんあります。ご承知の通り、いまはAIがどんどん進化していますよね。
■大事なのはどれだけ粘り強く行動できるか
自分がつまらないと思うような仕事や業務のうちで、AIに任せられることは任せてみてはいかがでしょうか。
そのうえで、自分が「楽しい」と思う仕事に特化してみる。僕はそのほうがやりがいも生まれ、結果的に大きな成果を生み出すような気がしてなりません。ただ、誤解してほしくないのは、僕だってこれまでの人生で「つまらないな」という仕事もたくさんやってきました。その人生の中で自分が楽しいと思える仕事の割合を、たとえ時間がかかっても少しずつ増やしてきました。
どんなに楽しいことや好きなことでも、粘り強く努力しなければいけないときもありますし、うまくいかなくて落ち込むこともきっとあるはずです。新しいチャレンジであればなおさらです。『「超」すぐやる脳のつくり方』の中で述べた、行き先の見えないところに島があるかもわからないのに船を漕ぎ出していくときも、大事なのはどれだけ粘り強く行動できるかなのです。
■AIにはできない、人間の最大の強み
僕たち人間にできて、AIにできないことは何なのか。
最近このようなことばかり考えているのですが、僕が出した結論、結局のところそれは「動くこと」なのです。
AIは身体性を持ちませんから、当然動くことはできません。でも、生身の肉体を持っている僕たち人間だからこそできるのは、「動く」ということ。これを脳科学的に提唱するならば、これからの時代はダイナミックに動くことで脳を鍛え抜く人が、AIに負けない働き方や生き方ができるようになるということです。
僕自身は2022年に還暦を迎えましたが、依然として僕の脳は退化するどころか「日々進化しているな」という実感さえあります。脳の研究をしているから? いいえ、違います。記憶をたどってみると、少々古い話で恐縮ですが、僕が就活をしていたときのことを思い出します。
東京大学で理学部物理学科を出てから法学部に学士入学し、大学院(理学部の博士課程)でふたたび生物物理学の研究をしていた僕は、博士課程の修了後に就職をどうするかを考えていました。
■就職活動が全滅だった私を救った決断
僕が尊敬している先生がIBMのニューヨークの研究所にいたので「そこで働きたい」と手紙を書いたのですが、「いやあ、茂木くん。私にはちょっとそれほどの権限はないんだよね。力になれなくて申し訳ない」と断られ、他にもいろいろなところにアプローチしたのですが全滅。なんと、3月の卒業間近になっても就職先が決まらなかったのです。
当時は、履歴書に穴をあけるのは良くないといわれていた時代だったので、「しょうがない。4月から研究生になるしかないな」と考えていた矢先、突然僕の指導教授から、「理化学研究所で脳の研究チームが立ち上がったから行かないか」と声をかけられたのです。
これまで取り組んでいたこととまったくかけ離れた「脳」という研究。そのときに「えっ? 脳ですか? 興味ありません」とその誘いを断っていたら、いまの僕は当然ながら存在していなかったでしょう。
「脳の研究ですか? やってみます!」これが、うまく就活できずに悩んでいた僕がイチかバチかで出した結論でした。
■AI時代を生き残るのは「大胆に動ける人」
皆さんは、 「ヘイルメリーパス」という言葉をご存じでしょうか。ヘイルメリーパスとは、アメリカンフットボールの試合終盤に、負けているチームがイチかバチかの神頼みを込めて無謀なタッチダウンパスを狙うプレーです。
いま、あらためて考えてみると、僕がこれまでに下した人生の重要な選択の数々は、計画通りというわけではなく、予想もしていないものをイチかバチかで受け入れ、動いてきたことの連続でした。
脳の研究もそうですし、イギリスのケンブリッジ大学に留学したのも「たまたま」だったのです。さらに、いまもお世話になっているソニーコンピュータサイエンス研究所とのご縁も、所長の北野宏明さんが僕の『脳とクオリア』という本を読んで会いに来てくださったのがきっかけでした。
このように、それまではまったく興味がなかったことをイチかバチかで受け入れ、ダイナミックに動いてきたからこそ、いまの僕があると思っています。「人生はイチかバチか、動いたもん勝ち!」ということを、皆さんにも知ってもらえるエピソードとして紹介させてもらいました。
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茂木 健一郎(もぎ・けんいちろう)
脳科学者
1962年生まれ。東京大学理学部、法学部卒業後、東京大学大学院理学系研究科物理学専攻課程修了。理学博士。理化学研究所、ケンブリッジ大学を経て、ソニーコンピュータサイエンス研究所シニアリサーチャー。東京大学大学院特任教授(共創研究室、Collective Intelligence Research Laboratory)。東京大学大学院客員教授(広域科学専攻)。
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(脳科学者 茂木 健一郎)

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