■立憲と公明党が新党結成で合意
「現在の政治状況は、立憲(民主党)に『自民党が崩壊しても日本が迷わぬよう、代わりの政権政党となる準備を急げ』と叱咤を与えているように思えてならない」「真の『政権の選択肢』『新たな国民政党』像を作り上げることが、2026年の立憲に課せられた課題である」
1月9日午後4時に公開した記事(立憲民主党は「存在感ゼロ」でも気にも留めない…「空気」「何をしたいかわからない」批判の裏側にある本当の狙い)で、筆者は野党第1党・立憲民主党の今年の課題をこう指摘した。その記事公開から7時間後、高市早苗首相が通常国会(23日召集)の冒頭で衆院を解散する、という信じがたい暴挙が報じられ、さらにそこから1週間もしない15日、今度は立憲民主党と公明党が、衆院における新党「中道改革連合」結成で合意した。
展開の速さに驚きを禁じ得ないが、今回の動きは「自民党に代わる新たな国民政党をつくる」という野党の課題解決に向けた大きな一歩であり、現時点では一定の評価をしたい。過去の野党の合従連衡に比べても、立憲・公明両党の理念や基本政策の違いは小さく、筆者がこの場でもたびたび訴えてきた「自民党に対する『目指す社会像』の選択肢」という野党像にも近づくと考える。もちろん課題も多いが、まずは今後の展開を注視したい。
と書いておいて恐縮だが、実は今回のテーマは新党についてではない。「立憲・公明新党」誕生の陰で「蚊帳の外」に置かれた国民民主党である。
■「ぼっち」になってしまった国民民主党
高市政権の発足を機に、露骨に政権にすり寄り、連立入りに期待をかけてきた国民民主党。しかし、連立のパートナーは日本維新の会に先を越され、さらに今回の突然の解散方針によって、高市政権からも事実上切り捨てられた。
野党陣営を振り返れば、立憲民主党は、新たに野党入りした公明党と新党「中道改革連合」を結成。国民民主党の支持団体・連合は、長く同党に対し立憲との連携を求めてきたが、今さら新党の軍門に降ることは、とうていできない。
政権与党も野党も自ら新しい政治状況を作るべく、それぞれの動きを強めたなかで、「与党」か「野党」か立場を明確にせず、コウモリのように都合良く政界を遊泳してきた国民民主党は、大きな政治のうねりの中で、いつの間にか「ぼっち」になっていた。
「新しい政治へ!」と空しい言葉を叫びながら、同党は短期決戦の衆院選で「孤独な戦い」に突っ込むことになる。
■新党合流には「くみしない」とバッサリ
「選挙が近づいたら政策を脇に置いて『まとまれば何とかなる』という動きもわからなくはないが、そういった動きにはくみしない。新しい政治を仲間と一緒に堂々と作っていきたい」
国民民主党の玉木雄一郎代表は15日の記者会見で、立憲の安住淳幹事長から榛葉賀津也幹事長宛に新党に加わるよう要請があったことを明らかにした上で「われわれはくみしない」と宣言した。
この日同党は、立憲の現職議員がいる衆院福井1区や岐阜5区に、新人候補を擁立することを、それぞれの県連レベルで決定した。福井県では連合福井が、福井1区と2区で立憲現職を推薦する方針を両党に伝えていたが、それを承知での候補擁立だ。岐阜でも立憲と国民の競合を避ける調整が続いていたが、決裂する形となった。16日には石川2区・3区でも独自候補擁立の方針が決まるなど、こうした動きはさらに加速しそうだ。
「立憲・公明」新党の衝撃が走る政界で、国民民主党は立憲のみならず、自らの党の支持母体である連合の方針さえ顧みず「独自の戦い」に突っ走り始めた。
■「ネット民」受けで党勢拡大を続けてきたが…
隔世の感がある。
立憲・公明新党のニュースの影響で、報道ではここ数日「希望の党騒動」(2017年)を振り返る場面が繰り返されている。当時の野党第1党・民進党(民主党から改称)を事実上の解党に追い込んだ「希望の党騒動」。国民民主党は希望の党に合流した元民主党系議員らによって、翌2018年に結党された。
当時の同党の勢力は、希望の党への合流を拒んだ枝野幸男氏らが立ち上げた立憲民主党と拮抗していた。ともに民主党系の両党はしばらく、近親憎悪のように野党第1党の座をめぐって小競り合いを続けたが、2020年に国民民主党の議員の多くが同党を離れて立憲に合流し、新しい立憲民主党を結党。野党第1党としての基盤を固めて今日に至る。
現在の国民民主党は、この時に立憲への合流を拒んだ玉木氏らが、改めて結党した政党だ。2024年の衆院選で「躍進」したとしてメディアにもてはやされたりもしたが、議席というリアルパワーは、立憲との差は衆院で120に開いている。野党第1党争いをしていたころの面影はまるでなく、同党はいわゆる「ネット民」受けする個別政策を掲げて目立つことで党勢拡大を図るしかなくなった。
■動き次第では「玉木総理」になっていた可能性もあった
国民民主党と玉木氏の側に、自民党に対峙する明確な理念と求心力があれば、同党は今頃立憲を抑えて野党第1党となり、玉木氏は首相候補として、自民党と政権選択選挙を戦うリーダーになっていたかもしれない。ここ一両日の新党構想でメディアの注目を集める「主役」は、立憲の代表から新党の共同代表となった野田佳彦氏ではなく、玉木氏だったかもしれない。
しかし「野党の盟主競争」で立憲に敗れて以降、玉木氏はこじらせたかのように、立憲の「逆張り」に走り始めた。今や「逆張り」を越えて「政権与党へのすり寄り」に転じ、野党の立場さえ棄てようとしている。
■「解散」は自民が国民民主を見限ったというメッセージ
2024年秋の衆院選で自民党が大敗して少数与党となると、議席数を7から28に増やした国民民主党は、与党の「補完勢力候補」として、突然注目を浴び始めた。同党は立憲との選挙協力も受けて選挙を戦ったにもかかわらず、玉木氏や榛葉幹事長らは「政策本位」を御旗にして、与党にすり寄る姿勢を隠さなくなった。
その姿勢は高市政権の発足後、さらに露骨になった。昨年12月には同党がこだわってきた、所得税がかかり始める「年収の壁」の178万円引き上げについて、自民党との合意に成功。これを受け国民民主党は、政府の2026年度当初予算について「年度内成立に向けた協力」を約束した。野党として予算案をチェックするどころか「中身も見ていないのに賛成を決めた」態度は、さすがに他の野党をあきれさせた。
国民民主党はこうした「政策実現」を理由に、満を持しての連立入りを狙ったはずだ。ところが、まさにそんな折「高市早苗首相が通常国会冒頭での衆院解散を検討している」と報じられた。自民党として単独で安定した議席を得るための、もっと言えば「国民民主党との連立は不要」になる解散だ。国民民主党は自民党に見限られたわけだ。
■今さら「新党に加わります」など言えるはずもない
一方、立憲は野党の仲間入りした公明党と急速に連携の機運を高め、ついに新党結成に行き着いた。ただでさえ衆院で120に開いていた立憲と国民民主の議席差が、さらに広がることになる。今さら「新党に加わりませんか」と言われても、散々立憲の「逆張り」を続けてきた玉木氏のプライドが許さない。榛葉氏が、立憲の安住淳幹事長からの新党参加の呼びかけを蹴った、その心情も理解できる。
与党にも野党にも居場所を失った国民民主は、来たる衆院選で「独自の戦い」を模索せざるを得なくなった。それが、立憲にも連合にも不興を買う「立憲への対立候補擁立」なのだろう。
15日の記者会見で玉木氏は「(立憲公明新党という)全く新しい政党になるので、これまでの立憲と国民の間の約束はない」と述べた。となれば、立憲と公明の新党が、国民民主党に対立候補をぶつけることも許されるだろう。連携して選挙を戦っておきながら、選挙後に自民党と連立を組まれては、新党としてもたまったものではないからだ。
「自民・維新」の新与党と「立憲・公明」の新野党との間で、国民民主党の候補が埋没する可能性も否定できない。小選挙区制とはそういうものだ。実際、15日の玉木氏の記者会見では、国民民主党の「埋没への懸念」についての質問も出ていた。
■国民民主に近づく「年貢の納め時」
選挙が終われば玉木氏らは、なおも高市政権との連携に望みをつなごうとするだろう。しかし、国民民主党に所属する連合の組織内議員らは、立憲公明新党との連携を望んで玉木氏の路線と距離を置こうとするかもしれない。
高市政権が求めているのは連合の組織力だが、玉木氏らが連合まで引き連れて連立入りを目指すのは、今回の立憲公明新党の誕生で、さらに難しくなるだろう。今後、同党の結束がさらに揺らぐ可能性も否定できない。
それに、現状では可能性は高くないかもしれないが、もし新党が比較第1党の座を勝ち取り、自民党から政権を奪いかねない状況となったら、玉木氏はどう動くのか。
自民党の弱体化が進み、相対的に野党との力関係が伯仲するなかで政界が大きな激動に見舞われれば、自らの軸を持たずに与野党の間を都合よく渡り歩く「ゆ党」は、存在が無意味化してしまう。高市政権発足直後の昨年10月24日に公開した記事「こんな『自民の補完勢力』は見たことない……閣外協力を選んだ維新が『与党入り』と引き換えに失った大きな『代償』」で指摘したことが、現実になった格好だ。
2024年の前回衆院選以降、この1年あまりメディアに「政局のキーマン」などとおだてられ「ゆ党」を満喫してきた国民民主党も、そろそろ年貢の納め時なのかもしれない。
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尾中 香尚里(おなか・かおり)
ジャーナリスト
福岡県生まれ。1988年に毎日新聞に入社し、政治部で主に野党や国会を中心に取材。政治部副部長などを経て、現在はフリーで活動している。著書に『安倍晋三と菅直人 非常事態のリーダーシップ』(集英社新書)、『野党第1党 「保守2大政党」に抗した30年』(現代書館)。
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(ジャーナリスト 尾中 香尚里)

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