仕事や勉強に集中できないとき、どうすればいいか。明治大学教授の堀田秀吾さんは「気合で乗り切るのではなく、科学的に証明された『脳のリセット法』を試してほしい。
たとえば、階段の上り下りや散歩、『子猫の動画』を見るだけでも、脳の疲労は回復する」という――。(第2回)
※本稿は、堀田秀吾『ハーバード、スタンフォード、科学的に証明された時間をムダにしない人の習慣』(アスコム)の一部を再編集したものです。
■1分間の刺激で脳疲労は回復する
歯磨きには、もちろん口を清潔にし、虫歯を予防する効果がありますが、それ以外に「脳の疲労を回復させ、集中力を高める」という驚くべき効果があります。
花王ヒューマンヘルスケア研究センターと千葉大学が、計算作業によって疲労した参加者に歯磨きをしてもらい、脳や心理の状態を測定するという共同研究を行ったところ、歯磨きをしたグループはしなかったグループに比べ、脳の疲労度が有意に低減し、注意力が高まる傾向が確認されたのです。
さらに「リフレッシュ感」「すっきり感」も上昇しており、歯磨きによって脳が活性化していることが示唆されています。なお、この研究で使われたのは「統合生理研究手法」という、脳波・フリッカーテスト・VAS(自己評価)を組み合わせたもの。つまり、「歯磨きをすると、スッキリした気がする」という漠然とした主観ではなく、実際に脳の疲労が軽減することが生理学的に証明されたわけです。
仕事や勉強の合間に歯を磨く。1~2分でできるこの動作が、その後の作業効率を大きく左右します。
■「冷たいタオルで顔を拭く」だけで集中力が高まる
同様に、冷たいタオルで顔を拭くという行動も、疲れた脳をリフレッシュさせ、集中力を高めるうえで有効です。電力中央研究所ヒューマンファクター研究センター(電中研HFC)は、「短時間の仮眠をとった後、何をすればもっとも覚醒度が高まり、作業成績を維持できるか」を検証しました。
その結果、冷たいタオルで顔を拭くことが、「即効性」と「持続性」の両面でもっとも優れた方法であることが確認されました。
短時間で覚醒度を上げるには、「冷たいタオルで顔を拭くこと」「ストレッチをすること」「ゲームをすること」が有効でしたが、その後の作業パフォーマンスを長く維持できたのは、「冷たいタオルで顔を拭くこと」「コーヒーを飲むこと」「大豆ペプチドを摂ること」だったのです。
つまり、冷たいタオルで顔を拭くことだけが、両方の条件を唯一満たしていたわけです。仕事や勉強の途中で、眠気や集中力の低下を感じたら、歯磨きをし、冷たいタオルで顔を拭きましょう。
頭が再びシャキッとして、効率が上がります。疲れてきたら、すぐに脳を切り替え、集中力を取り戻せる方法を実践すること。それが、時間をムダにしないうえで、とても大事なことなのです。
■コーヒーよりも階段昇降が効果的
仕事や勉強の途中で眠気に襲われ、集中力が低下したら、みなさんはどうしますか? 「ブラックコーヒーを飲んでカフェインを摂る」という人が多いかもしれませんが、実は階段の昇降運動のほうが、より効果的です。
それを証明したのが、アメリカ・ジョージア大学のランドルフとオーコナーによる実験です。彼らは、カフェイン摂取の習慣がある女子大生18人に、一日中パソコンの前で過ごしてもらいつつ、
●カフェインを摂取する

●偽薬(プラセボ)を摂取する

●30段の階段を10分間かけて上り下りする
という3グループに分け、テストを実施しました。
すると、階段昇降を行ったグループは、記憶力・集中力・モチベーションのすべてが向上し、カフェイン摂取や偽薬では明確な変化が見られませんでした。つまり、「動く」ことこそが、もっともパフォーマンスが上がる方法だったのです。
ただカフェインを摂るだけでは血流は変わりませんが、軽い運動をすることで全身の血液が循環し、酸素が脳へ行き渡ります。
それが脳を目覚めさせ、集中力を高めるのです。
また、イースト・ロンドン大学のエドモンズらは、被験者を2つのグループに分け、片方には約500ミリリットルの水を飲ませてから、もう片方には何も飲ませずに知的作業を行わせました。すると、水を飲んだグループは、注意力と判断力が明らかに高まりました。
軽い運動と水分補給の組み合わせが、集中力アップにもっとも効果的なのです。作業前に、階段を上り、息が少し上がるくらいの状態で水を一杯飲む。たったそれだけで、頭がスッキリして、作業の入りが驚くほどスムーズになります。
■10分程度の散歩が集中力を取り戻す
さらに、イリノイ大学シカゴ校のサラスらの研究では、散歩にも同様の効果があることがわかっています。被験者を「歩くグループ」と「座って風景を眺めるグループ」に分け、それぞれに言葉の記憶テストを行ったところ、歩いたグループのほうが成績が高く、集中力の持続時間も長かったのです。
座りっぱなしで仕事をしていると、集中力が下がります。それよりも、時々は体を軽く動かすことで、集中力が増し、脳もよく働きます。
「時間がない」という人ほど、眠気に襲われたときや集中力の低下を感じたときは、思いきって立ち上がり、10分程度でかまいませんから、階段の上り下りや散歩をし、水分を摂ってください。その10分が、集中力とひらめきを取り戻す鍵になります。

■「かわいいもの」でも脳はリセットできる
「集中が続かない」「イライラして仕事が手につかない」。そんなときは、無理に感情をなだめ、集中しようとするよりも、気分転換をして、感情を少しずらすほうが効果的です。ちょっとした気分転換が、脳をリセットしてくれるからです。
たとえば、「かわいい」ものを見るだけでも、集中力が戻ってきます。
広島大学の入戸野宏教授らの研究では、集中力が途切れたときに、子猫や子犬、赤ちゃんなど「かわいい」と感じる写真を1分~1分半見るだけで、作業効率や集中力が上がることが確認されています。かわいいものを「もっとよく見たい」と思うことで、自然と集中力のスイッチが入り直すからです。
かわいいものは癒しになると同時に、集中力をよみがえらせてもくれるのです。
■「3分テトリス」で生産性が向上
ほかに、3分だけテトリスをするという方法もあります。イギリスのプリマス大学のシュコルカ・ブラウンらは、18歳から30歳の大学生を対象に、「お腹が減ったときや眠気を感じたとき、3分間だけテトリスをプレイしてもらう」という実験を行いました。
すると、テトリスをしたときは、していないときに比べ、欲求の強さと頻度が約20%低下したのです。テトリスに意識を集中させることで、食欲や眠気が抑えられるわけです。
コメディ映像を観ることも、生産性の向上につながります。
ウォーリック大学のオズワルドらの実験では、被験者に5分程度のコメディ映像を視聴させた後で作業を行わせたところ、生産性が10~12%アップしています。コメディ映像を観て幸福感が高まると、注意力や思考の柔軟性が増し、行動の質まで変わるというわけです。一方、悲しい出来事を思い出させたチームでは、生産性が下がる傾向も見られました。
やらなければならない仕事や勉強に対し、どうしても気分が乗らないときや、集中力が低下していると感じたとき、無理に頑張り続けても、なかなか効率が上がりません。それよりも、思いきって1~3分程度時間を割き、かわいい写真を見る、テトリスを3分だけする、面白いショート動画を観るなど、感情が切り替わるようなことをやってみましょう。
それだけで集中力が戻り、効率が上がり、結局は時間のムダをなくすことができるのです。

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堀田 秀吾(ほった・しゅうご)

明治大学法学部教授、言語学博士

1999年、シカゴ大学言語学部博士課程修了(Ph.D. in Linguistics、言語学博士)。2000年、立命館大学法学部助教授。2005年、ヨーク大学オズグッドホール・ロースクール修士課程修了、2008年同博士課程単位取得退学。2008年、明治大学法学部准教授。2010年、明治大学法学部教授。司法分野におけるコミュニケーションに関して、社会言語学、心理言語学、脳科学などのさまざまな学術分野の知見を融合した多角的な研究を国内外で展開している。
また、研究以外の活動も積極的に行っており、企業の顧問や芸能事務所の監修、ワイドショーのレギュラー・コメンテーターなども務める。著書に『特定の人としかうまく付き合えないのは、結局、あなたの心が冷めているからだ』(クロスメディア・パブリッシング/共著)、『科学的に元気になる方法集めました』(文響社)、『最先端研究で導きだされた「考えすぎない」人の考え方』(サンクチュアリ出版)、『図解ストレス解消大全』(SBクリエイティブ)など多数。

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(明治大学法学部教授、言語学博士 堀田 秀吾)
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