■実技4教科が10倍の比重の都道府県も!
高校入試(一般入試)は、学力検査(英数国理社)と調査書(内申書)が主な選抜材料になります。学科の点数と同じく、合否を大きく左右するのが内申点(調査書点)ですが、これは都道府県によって計算方法が大きく異なります。
主要5教科と実技4教科(音楽・美術・保健体育、技術・家庭)の評価割合は一律ではなく、特に実技4教科の成績を重視する制度が多くの地域で採用されています。
全国47都道府県の制度を精査した結果、実技4教科の評定を主要5教科の2倍として計算する都道府県が10以上もあります。例えば、東京都や宮城県、秋田県などでは、実技科目の評定がそのまま2倍で内申点に加算されます。また、鹿児島県では10倍の比重をかけられています。
このため、受験や保護者のみなさんは、居住地域や志望校の制度を確認し、定期テスト対策だけでなく、実技科目も5教科と同等、あるいはそれ以上に重要であるという認識を持ち、日々の授業や提出物に真剣に取り組むことが志望校合格への鍵となります。
■文科省が推奨する「新しい学力観」
近年、公立高校入試において実技4教科の比重が高まっているのは、「知識の活用」と「多面的な資質・能力の評価」を重視する文部科学省の方針と社会的な要請が背景にあります。
文部科学省は、2020年度から全面実施された新しい学習指導要領において、育成を目指す資質・能力を「3つの柱」として再定義しました。これは、単に知識を覚えるだけでなく、それを活用する力や、主体的に学ぶ態度を評価する「新しい学力観」に基づくものです。
実技4教科は、美術の制作、体育の実践、技術の設計など、座学の5教科では評価しにくい「思考力・判断力・表現力」や「主体的に学習に取り組む態度」を具体的に評価するのに極めて有効です。内申点の比重を高めることで、生徒が全教科の学習に偏りなく取り組むことを促しています。
また変化の大きい時代において、企業や社会は、既知の知識を効率良く処理する人材よりも、協働性、創造性、問題解決能力を持つ人材を求めています。実技教科でのチーム活動や創意工夫のプロセスは、これらの非認知能力を評価するのに適しており、高校入試の段階から生徒の多様な能力を測る必要性が高まっています。
実技4教科の重要度は、今後も継続して高い水準で維持されるか、さらに高まる傾向にあると考えられます。大学入試改革と同様に、高校入試も学力検査だけでなく、調査書の内容や面接、特色検査などを重視する多角的・総合的な評価へと移行しています。実技教科での高い評価や、特別活動の記録が合否に占める割合が増加する傾向は今後も強まるでしょう。
■5科目の偏差値60超でも志望校を断念
学習塾の現場で最も多く目にするのは、実技4科目の内申点を上げることが難しいと判断し、志望校のランクを下げざるを得ない事例です。
事例1:偏差値が届いているのに内申点が足りず志望校を下げる
主要5科目の偏差値が60を超える生徒がいました。「60」というと上位20%程度に位置する実力です。この生徒はもともと偏差値59の都立高校を目指していたのですが、換算内申は、65満点中42点でした(※)。その高校は内申点オール4(65満点中52点)以上がボーダーと言われています。その生徒は学力検査では合格圏内ですが内申点が足りないため、志望校を偏差値54の都立高校に下げました。
(※)都内入試の内申点は65点満点。
事例2:得意だった音楽が「3」でトップ校を断念
主要5教科の成績が優秀で偏差値63の都立高校を目指していた男子生徒は幼いころからピアノを習っており、音楽には絶対の自信がありました。ただ、「合唱コンクールの伴奏にも選ばれたし、実技テストで点が取れるから音楽は安心」と高をくくり、1学期期末試験の勉強を疎かにし、授業での音楽鑑賞のレポートも気が緩んでいました。その結果、1学期についた内申点は「3」。
都立トップ校を目指す場合、実技4科目は「5」がほしいところです。1学期に「3」がつくと2学期に挽回して「5」にすることは至難の業です。このひとつの「3」が致命傷になり、彼は都立トップ校への出願を諦めることになりました。
事例3:選択肢から都立を外す
「9科目をまんべんなくこなす」という都立入試のスタイルが合わず、都立を選択肢から外さざるをえなかった生徒もいました。
中1は順風満帆でした。学習内容は彼にとってそこまで難しくなく、9科目の期末試験も難なく乗り切ることができました。しかし、中2の1学期の期末試験から歯車が狂いはじめます。中2になって主要5科目の難度が上がりました。
実技4科目のテスト対策に時間を割こうとすると、難化した主要5科目の勉強時間が圧迫され、点数が下がってしまう。かといって主要科目を優先すれば実技科目がボロボロになる……。まさに「共倒れ」の状態でした。
「多くの科目で高得点を狙うと、強みである3教科の対策が疎かになってしまう」、そう思った彼は、中3の志望校検討の段階で、都立高校の受験を断念しました。
高い基礎学力を持っていても、複数科目をバランスよくこなす器用さがない生徒は、学費の安い都立高校という選択肢そのものを捨てざるを得ない。これもまた、内申点重視の入試が生む一つの現実です。
なお、実技科目に関しては弊著『中学校の実技4科が1冊でしっかりわかる本』(かんき出版)を参照してください。
■テストの点数が良ければいいわけではない
「内申点」の評価対象に含まれるものは、定期テストの点数だけではありません。キーワードは「提出物」と「忘れ物」です。
提出物を「期限内に出す」のは当たり前(スタートライン)です。評価されるのは、その質です。
また、軽視されがちなのが「忘れ物」です。リコーダーや体操着など、特に実技教科での忘れ物は「授業に参加する準備ができていない」とみなされ、致命的な減点対象になることがあります。
テストの成績だけではなく、こういった「提出物」と「忘れ物」、そして授業態度などにも気を配ることが大切です。
■実技4科で高得点を取る生徒の特徴
多くの受験生を見てきた経験から、実技4科で「5」を取る生徒には共通点があることに気づきました。それは「妥協を許さない完璧主義」な生徒が多いということです。
彼らは主要5科目だけでなく、実技4科目でも「なんとなく」で済ませることを嫌います。例えば、英語の授業で疑問が出ると理解できるまで質問を繰り返します。実技科目、例えば美術では、自分が納得できるまで細部にこだわって作品を完成させます。
この「中途半端な完成度を許さない」「細部までおろそかにしない」という厳格な姿勢がそのままテストの得点や成果物に表れます。
また、家庭にも共通点があります。それは、「教科に優劣をつけない」という価値観が保護者に浸透しているということです。「美術なんていいから英単語を覚えなさい」「体育は適当でいい」などと口にしていると、「実技は手を抜いていい教科だ」という子どもが勘違いしてしまう。それが学校での消極的な態度として表れ、内申点の低下につながります。
また、4教科も高成績な家庭では、休日に美術館に行ったり、一緒に料理を作ったり、スポーツ観戦に行ったりと、実体験を大切にしています。結果として、子どもは「数学の図形問題」と「美術のデッサン」を別のものと捉えず、「どちらも空間認識能力を使う面白いもの」としてリンクさせて捉えることができます。
トップ校に受かる子どもは、勉強はもちろん、行事や部活、実技科目も前向きに楽しみます。この「何事も面白いと感じる好奇心」こそが、結果として内申点「オール5」を引き寄せます。
実技4科目は、皆さんの心を豊かにし、人生をより良く生きるための力をあたえてくれます。ぜひ、楽しみながら学んでください。
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清水 章弘(しみず・あきひろ)
学習塾経営者
1987年、千葉県船橋市生まれ。海城中学高等学校、東京大学教育学部を経て、同大学院教育学研究科修士課程修了。
プラスティー教育研究所:東京、京都、大阪で中学受験、高校受験、大学受験の塾を運営する学習塾。代表はベストセラー『現役東大生がこっそりやっている 頭がよくなる勉強法』(PHP研究所)などの著者で、新聞連載やラジオパーソナリティ、TVコメンテーターなどメディアでも活躍の幅を広げる清水章弘。「勉強のやり方を教える塾」を掲げ、勉強が嫌いな人のために、さまざまな学習プログラムや教材を開発。生徒からは「自分で計画を立てて勉強をできるようになった」「自分の失敗や弱いところを理解し、対策できるようになった」の声が上がり、全国から生徒が集まっている。学習塾運営だけではなく、全国の学校・教育委員会、予備校や塾へのサービスの提供、各種コンサルティングやサポートなども行っている。
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(学習塾経営者 清水 章弘)

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