■「希望の党」騒動の再来とはならなかった立憲・公明の合流
野党第1党の立憲民主党と、連立政権から離脱した公明党による新党「中道改革連合」が電撃的に誕生した。19日には新党の綱領や基本政策も公表され、そのスピード感は政界に「高市解散」に劣らない驚きを与えた。
両党の「基本政策の不一致」という観測を覆された一部メディアなどは、安全保障政策や原発政策をめぐり「立民に『変節』指摘」などと、立憲の党内の「不協和音」を予測した。だが20日現在、立憲の衆院議員148人のうち、新党への不参加はわずか2人(公明は全員が合流)。2017年に当時の野党第1党・民進党(民主党から改称)を分裂させた「希望の党騒動」のようにはならなかった。
なぜか。両党の政策の違いがもともと小さかったこともあるが、それ以上に各党の議員が、新党の綱領に定めた「目指す社会像」を共有でき、自民党政権が進めてきた社会像との対立軸になり得る、という確信を持てたのだろう。
筆者はこの場でも「多弱」の野党に対し「個別政策より『目指す社会像』でまとまる」ことを訴えてきたが、今回の合流は、それをほぼ体現している。衆院選の構図が「2大政治勢力による『目指す社会像』の選択」に近づいたことを、まずは歓迎したい。ただ、超短期決戦のなか、両党の支持層が政治家同様にまとまれるか、無党派層に支持を広げられるかは、予断を許さない。
■もともと立憲と公明の政策の違いは小さかった
「目指す社会像」の前に、今回の基本政策の合意について述べておきたい。
昨年までの政治状況、つまり「自民、公明党の連立政権」「立憲、日本維新の会、国民民主党など野党陣営」の構図では、与野党のそれぞれの内部で各党の政策の溝があった。
与党側は、経済は成長重視、安全保障ではタカ派的(表現が古い)志向の自民党に対し、公明党は生活重視でハト派志向が強い。ただ、政権という接着剤があったが故に「公明党は黙っていても自民党についていく」と評され、両党の政策の違いはさほど考慮されなかった。
野党側は「自民党への対抗勢力を作るべくまとまれ」と圧力を受け、そのたびに各党の政策の違いが取り沙汰された。特に、穏健な中道から穏健なリベラル(好みの表現ではないが)まで包含し「支え合い」を重視する立憲と、改革保守勢力として「自己責任」社会を志向する維新との差は大きく、筆者も「政界の対立軸は立憲と維新の間にある」と指摘したことがある。
与党内、野党内に政策の違いを抱えるなか、与野党に分かれていた公明と立憲の方が政策の違いが小さいことは、政界では共通認識だった。公明党の政権離脱を機に、その距離は驚くほど早く縮まった。
■「原発ゼロ」に固執せず、「将来的な脱原発」で落ち着いた
新党は基本政策で、原発政策について立憲の綱領にあった「原発ゼロ」の表現を使わなかった。立憲側の反発による混乱を予測する向きもあったが「将来的に原発に依存しない社会を目指す」姿勢をうたった上で「安全性が確実に確認され、実効性のある避難計画があり、地元の合意が得られた」と条件を付けて再稼働を容認した文言に、立憲側から大きな異論は出ず、合流への影響はなかった。
野党第1党として議席を伸ばし「多弱野党の一つ」から「自民党に対峙する政権の選択肢」に格上げされた立憲にとって、コアな支持層の外に広がる多様な国民の支持を得るには、①脱原発依存という「方向性」、②原発の積極的活用に突き進む自民・維新政権との「対立軸」――の2点が明確であれば、最終目標である「ゼロ」の表現に固執しないことは、実は意外に低いハードルだった。メディアの立憲観のほうが、どうやら古かったようだ。
■安保法で折り合いをつけるための「ウルトラC」
安全保障基本法(安保法)に対する見解については、さすがに両党のハードルは高いとみていた。
公明党の連立離脱、維新の連立入りという「与野党のパートナーチェンジ」によって、与野党の政策の「ねじれ」は相当に解消された。だが、与野党に分かれていた立場の違いを乗り越えるのは、政策の違いを乗り越えるより難しい。
立憲にとって「集団的自衛権を容認した」安保法を合憲と呼ぶのは、原発政策以上にハードルが高かっただろうし、公明党にとっても、苦労して成立に関与した同法を「違憲」と呼ぶのは、心理的負担が大きかったはずだ。
だから基本政策で「平和安全法制(安保法)が定める存立危機事態における自国防衛のための自衛権行使は合憲」という文言を見た時は驚いた。安保法自体を「合憲」と認める一方、安保法が定める「合憲」の範囲を「存立危機事態における自国防衛のための自衛権行使」に限定している。文言を素直に読めば、これは個別的自衛権にほかならない。
基本政策は安保法の全てを「合憲」とするのを避け、安保法に基づく個別的自衛権、つまり専守防衛の行動に限り合憲と認めた。「この手があったか」と妙に感心した。
■公明もまた安倍政権の暴走を止めようとしていた
安保法制定過程での公明党の動きを思い返せば、集団的自衛権の行使容認に前のめりだった当時の安倍晋三政権を、何とか押しとどめようとしていたのは確かだ。同党は「安保法は自国防衛を目的としたもの」「他国を守ることそれ自体を目的とした集団的自衛権の行使は認められない」として、同法における自衛権行使を「現行憲法の解釈に収まる」と主張してきた。
この主張を認めるか否かは、政治的立ち位置によって異なるだろう。
だが、評価はともあれ、公明党と当時の民主党は、与党と野党それぞれの立場で、安倍政権の暴挙を止めようとしていた。野党に転じた公明党に対し、与党時代の行動を全否定する態度で臨めば、せっかく誕生した「政策の近い野党」との連携の機会を失いかねない。両党は「安保法の個別的自衛権部分」を合憲とすることで、それぞれの立場に配慮して折り合った。
■なぜメディアは「消費税」を争点にしたがるのか
仮に中道改革連合主軸の政権ができたとしたら、安保法の条文が現行通りでも、好んで集団的自衛権の行使に踏み切るとは考えにくい。原発政策と同様、専守防衛の「方向性」、自衛隊の活動範囲拡大を目論む高市政権との「対立軸」の2点が明確であれば、安保法の合憲・違憲論争は、選挙前は棚上げできるのではないか(選挙後には改めて党内議論があっていい)。
少なくとも今回の選挙では、安保法への姿勢に過度に着目するより、高市政権で検討される非核3原則見直し論や、日本の核武装を語る官邸幹部を放置する姿勢への批判で共通認識を持つことを優先すべきだ。
そもそも、メディアは選挙のたびに「憲法・安全保障」「原発」「消費税」に過剰に注目し、そこだけで選挙を語ろうとしすぎる。
その3大テーマの残る1点「消費税」については、中道改革連合が「食料品の消費税ゼロ」を打ち出し(ここで何度も書いたので繰り返さないが、筆者はこのことに最も失望している。立憲が政策変更を行うのなら、原発よりも安保法よりも、この部分こそ変更すべきだった)、高市首相も後追いして「食料品の消費税2年間ゼロ」を言い出した。これでは消費税は争点にならない。それなのに、メディアは「各党の消費減税案の細かな違い」を延々と繰り返す。
何が楽しいのだろう。経済政策なら「積極財政で株高・円安を目指す高市政権」vs「行き過ぎた円安を是正し物価引き下げを目指す中道改革連合」など、大きな対立軸を描けるテーマを選ぶほうが、有権者の政権選択に資するのではないか。
■消費減税が「2年か恒久か」なんてどうでもいい
基本政策以上に重要なのは、各党の「目指す社会像」だ。野党の場合、社会の現状をどうとらえ、それをどう変えたいかを語ることが重要で、個別政策はその社会像を実現するためのツールである。立憲の安住淳幹事長は19日、新党の綱領発表の記者会見でこう語った。
「分断と対立をいたずらにあおり、人々の憎しみの心を引き出して政治的なエネルギーにしていく傾向が、世界的にも日本にもみられる。そういう社会に危機感を持っている。人々の良心を引き出して、共生と包摂の社会へと転換する(ことを目指す)。私たちの党(が目指す社会)は、高市首相が目指す社会とは違う」
こうした「目指す社会の方向性」と「高市政権との社会像の対立軸」を共有できたから、立憲、公明両党の議員が、個別の基本政策の違いを超えて結集できたと考える。
高市首相には反論があるだろう。政権選択選挙である衆院選では、そんな与野党の応酬こそ聞きたい。食料品消費税ゼロは恒久的か2年限定か、そんな些末なことはどうでもいいのだ。
■「新党に票が集まるかどうか」はまた別の話
さて、ここまでは中道改革連合が政策の違いを超えて結集したことを前向きに評価したが、支持者を含む有権者が、同様に結集できるかは別問題だ。
宗教団体を母体とする公明党の場合、コアな支持者はついてくるだろう。だが、周辺の弱い支持層や無党派層に、与党から野党へ立場を変えたことがどう受け止められるか。
立憲の場合、支持者の考え方は所属議員以上に多様で、党に対し不満や問題点の指摘を容赦なくぶつける政党文化を持つ。議員が政治判断でまとまって新党に合流しても、支持者は「置き去りにされた」と考え、党と距離を置くかもしれない。こうした支持者をつなぎ止められるか。
野党側に興味深い動きがある。左派系野党の共産党と社会民主党の連携強化だ。政策は近いものがありながら、歴史的経緯もあり距離の遠かった両党が、立憲と公明の新党結成を機に急接近している。21日には東京都内で、共産党の田村智子委員長と社民党の福島瑞穂党首が、異例の合同街頭演説を行った。立憲から左派系の支持が離れる可能性を意識しているのは間違いない。
政権交代の可能性か、政策の純粋性か。
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尾中 香尚里(おなか・かおり)
ジャーナリスト
福岡県生まれ。1988年に毎日新聞に入社し、政治部で主に野党や国会を中心に取材。政治部副部長などを経て、現在はフリーで活動している。著書に『安倍晋三と菅直人 非常事態のリーダーシップ』(集英社新書)、『野党第1党 「保守2大政党」に抗した30年』(現代書館)。
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(ジャーナリスト 尾中 香尚里)

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