※本稿は、牧野知弘『50歳からの不動産 不動産屋と銀行に煽られないために』(中公新書ラクレ)の一部を再編集したものです。
■世帯年収1500万円の夫婦がペアローンを組むと…
高騰する住宅を何とか手に入れるために、最近その存在が注目されているのが夫婦ペアローンです。このローンは、夫婦共働きが当たり前になったことに着目して、金融機関が夫婦ともに住宅ローンを貸し出すことができるようにした商品です。
パワーカップルという言葉を最近目にするようになったと思いますが、タワマンと同様にパワーカップルに明確な定義はありません。ニッセイ基礎研究所では夫婦それぞれの年収が700万円を超える世帯をパワーカップルと定義して、その数は全国で約45万世帯になると推計しています。年収700万円といえば大企業勤めの中堅社員くらいのイメージでしょうか。世帯年収でおおむね1500万円以上の世帯が該当します。
ではこの世帯年収1500万円の夫婦が金融機関で夫婦ペアローンを申し込むと今、どのくらいのお金を貸してくれるでしょうか。メガバンクなどの住宅ローン審査では、年間ローン返済額(元金返済及び金利の合計)が年収の25%以内くらいに設定しています。最近は金利が低いので金融機関の中には年収の30%を超えるラインであっても貸し出すところもありますが一応の目安とされているのです。
■都心タワマンを手に入れたカップル
仮にローン金利が2%、期間35年、元利均等返済のローンを組もうとすれば最大で9400万円程度を借りることができます。
この夫婦ペアローンを使って都心のタワマンを手に入れたカップルがたくさんいます。お互いに都心勤務であれば通勤負担がかなり低減できます。子どもがいても近所の保育所に子どもを預け、どちらか早く退勤したほうが子どもを迎えに行く。都心は塾などの施設も充実しているので、中学受験などを目指すにも好都合。うまく合格できれば都心の私立中学に通学するにも便利、とよいことづくしになることが期待できるのです。
■金利上昇で返済額が跳ね上がる
タワマンはみんなの憧れ。資産価値も高いとされるので、重たいローンを背負っても大丈夫。自分たちの年収も年齢が嵩(かさ)むにつれて上がっていくはずだから、負担感も徐々に軽減される。いざというときには売却すれば問題はない。タワマンに限った話ではないですが、都心マンションを購入するパワーカップルの頭の中はだいたいこんな感じです。
ただ50歳代からのペアローンについては少し気を付けなければいけない点がいくつかあります。
①金利の変動
固定金利で調達した場合は別ですが、現在住宅ローンを組む人の約8割が変動金利型ローンを組んでいます。このローンは日銀の政策金利に連動します。つまり日銀の金融政策が変わると大きな影響を受けることになります。したがってローン期間中に政策金利が上昇していく可能性が高い場合、将来の返済額が跳ね上がるリスクを内包しているのが変動金利型住宅ローンなのです。
ちなみに先述した年収1500万円のパワーカップルが限度額いっぱいの9400万円を35年元利均等返済で借りていた場合、金利が1%上がる効果は月額で5万円、年額で60万円もの負担増となります。55歳の多くは残念なことにこの先年収が増える見込みがありません。生活物価の高騰に加えて返済額がアップする事態に耐えられるか要注意なのです。
金利上昇は夫婦ペアローンに限った話ではありませんが、夫婦共働きだから大丈夫と思って目いっぱいローンを組んでいると金利の上昇はローン金額が膨らんでいるがゆえにかなりの負担増となることを知っておいたほうがよいです。
■借りた時には会社の経営が安定していても…
②リストラ
どんな大企業であっても未来永劫続いていくものではありません。かつては誰しもがうらやむ企業であっても、産業構造の変化、社会の変化などで会社自体の存続が危うくなるところもあります。業績不振が続くと人員のリストラが始まります。
借りた時には夫婦とも勤務する会社は万全の経営状況であっても、その後の会社経営リスクに晒された場合、どちらかの年収が激減してしまうことになります。夫婦どちらかだけが借りていれば、片方のリスクを他方が補うことができますが夫婦ともに思い切り背伸びをしているとリスクを回避することが難しくなります。
50歳を過ぎるとリストラの対象にいつなんどきなってしまうかもわかりません。ペアローンのリスクはこんなところにもあるのです。
■「保険があるから大丈夫」ではない健康リスク
③健康
会社の健康のみならず、夫婦どちらかの健康が害された場合、長期の療養を余儀なくされる、長期離職によって所得が下がる、役職が変わるなどのリスクが露わになります。とりわけ中高年夫婦にとっては身近なリスクといえます。
よく保険に入っているので大丈夫と言われますが、疾病もいろいろ。単なる体調不良程度であっても継続的な勤務が叶わないケースもあります。ましてや死亡すれば保険が、といっても亡くなるまでにそれ相応の時間が経過しますし、その期間中の収入減には注意する必要があります。
④離婚
50歳代くらいになると、若かった頃のように仲良し状態が継続している夫婦は少なくなります。熟年離婚が増えているのも現代の傾向です。
■都心部のマンション市場も安心できない
このように夫婦ペアローンは始まりこそよくとも、世の中の変化、仕事の変化、そして家庭内の変化によって大きく左右される「恐怖のローン」に転じるリスクがあります。とくに55歳夫婦にとってリストラや健康、離婚はかなり身につまされる話なのではないでしょうか。
こうした状況に陥った場合、解決手段はひとつだけ。売却です。売却額が取得額を超えていれば難を逃れることは可能ですが、問題はマーケットが崩れている場合です。現在マンションマーケットは堅調ですが、今後はわかりません。人口が集中する都心部でさえ、今後は多死・大量相続時代を迎えます。ペアローンのリスクを低減するには借入額で背伸びしすぎないこと、早めに期限前返済をしていざというときに慌てないようにしておくことです。
----------
牧野 知弘(まきの・ともひろ)
不動産事業プロデューサー
東京大学経済学部卒業。ボストンコンサルティンググループなどを経て、三井不動産に勤務。
----------
(不動産事業プロデューサー 牧野 知弘)

![[のどぬ~るぬれマスク] 【Amazon.co.jp限定】 【まとめ買い】 昼夜兼用立体 ハーブ&ユーカリの香り 3セット×4個(おまけ付き)](https://m.media-amazon.com/images/I/51Q-T7qhTGL._SL500_.jpg)
![[のどぬ~るぬれマスク] 【Amazon.co.jp限定】 【まとめ買い】 就寝立体タイプ 無香料 3セット×4個(おまけ付き)](https://m.media-amazon.com/images/I/51pV-1+GeGL._SL500_.jpg)







![NHKラジオ ラジオビジネス英語 2024年 9月号 [雑誌] (NHKテキスト)](https://m.media-amazon.com/images/I/51Ku32P5LhL._SL500_.jpg)
