Takaichi ShockあるいはSanae Shockという言葉が金融市場で駆け巡っている。ことの発端は、1月19日の夕刻の記者会見で、高市早苗総理が解散総選挙に向けた決意を述べた際に、2年間の限定で食品類にかかる消費税をゼロにすることを検討すると表明したことにあった。
こうした高市総理の財政拡張発言が嫌気され、国債の売りに拍車がかかった。特に超長期金利の上昇は深刻で、翌20日にかけて金利が跳ね上がり、一時は4.246%まで上昇する極めて異例の事態となっている。国債市場において“日本売り”が急加速していることが窺い知れる。金融市場は明らかに高市総理に向けて強い警告をしている。
高市総理は、その就任の前から強い財政拡張志向を持つことで知られた。そして総理に就任した直後、実際に巨額の補正予算を組むと表明。このことが材料視されて国債が売られことに鑑み、直後から総理は発言を後退させた。しかし投資家の信頼が取り戻せず、金利のじり高が続いていたところで、総理は消費減税の可能性に言及したのだ。
ところで、日本の超長期債を売っているのは、恐らく海外勢、特にヘッジファンドだろう。海外勢は国債保有割合の1割を超える程度であるが、彼らは主に超長期債を購入していることで知られる。海外勢が日本の財政運営の持続可能性が低下したと判断したため、超長期債を売っているとしたら、それこそまさに“日本売り”だといっていい。
そもそも海外勢を中心に日本財政に対する危機感が高まっているからこそ、欧米を中心にTakaichi ShockあるいはSanae Shockといった表現をする市場関係者が増えているのだろう。海外勢が金利の形成に強い影響力を持つ超長期債が急速に売られている様子に危機感を抱かない市場関係者などいない。楽観視できる状況ではもはやないのだ。
■最悪のシナリオは選挙期間中の金利急騰
高市総理が記者会見を行う直前、片山さつき財務大臣は訪米してスコット・ベッセント財務長官と会見し、行き過ぎた円安に関して為替介入を行うことへの理解を得たようだ。協調介入が行われる可能性も意識されたことで、円安ドル高の流れは1ドル=160円を目前として止まっている。このことがかえって総理の危機感を弱めたのかもしれない。
ただし、そのベッセント財務長官からも、日本に対して長期金利の安定に向けた動きを取るように注文がついている。米国の長期金利は、グリーンランドを巡る欧州諸国との対立もあり、上昇基調を強めている。これ自体は米国の責任だが、そこに日本発の金利上昇圧力が加わったことで、米国ひいては世界の国債市場が不安定さを強めている。
日本の金利が一段と上昇すれば、日銀が国債を購入してその安定に努めるだろう。トラスショックの際も、イングランド銀行が国債を購入している。とはいえ、中銀による国債購入は本質的には通貨安要因だ。
しかし、日本はこれから解散総選挙に突入する。つまり1月23日に衆議院は解散され、27日に公示、2月8日に投開票が行われる。自らの主張への賛同を得るための解散だから、高市総理は消費減税なり財政拡張を撤回できまい。これに乗じて、海外勢が超長期国債や円の売りを加速させれば、日本の自己実現的な金融危機に突入しかねない。
財政拡張による需要刺激を声高に主張する経済ブレーンの影響もあり、総理は今回の解散総選挙の争点に消費減税を掲げたのだろう。とはいえ自民党の中でも、さすがに今般の高市総理の“スタンドプレー”に対し、苦言を呈する向きが強まっているようだ。強気の高市総理だが、結局は金利の急騰を招き、金融市場を不安定にさせてしまった。
■まだ序章である高市ショック
介入観測から一方的な円安ドル高に一応の歯止めがかかったことや、年初来の強相場の“のりしろ”のため株価の下落が限定的なことから、個人投資家や一般国民の間には悲壮感は漂っていないようだ。これが円や株の暴落を伴う段階になって初めて、個人投資家や一般国民の間に危機感が拡がるのだろう。特に問題となるのが円相場の暴落だ。
確かに、介入への期待はある。とはいえ、円相場の暴落の主因が高市総理による不用意な衆議院の解散にあるなら、単独介入はまだしも、協調介入などまず望めないだろう。財政運営の持続可能性の低下を嫌気した円相場の暴落は投機的な動きでないため、単独介入だけでは、それこそ効果は一時的だし、さらなる円相場の暴落を招きかねない。
協調介入を要請するなら、米国から相応の対価を求められるはずだ。マクロ経済運営的には、大幅な利上げと財政運営の健全化といった、国際通貨基金(IMF)から融資を受けた場合と同様の条件が要求されるのではないか。他にも、例えばトランプ大統領の政策への協力などが要請されそうだが、果たして日本はそれを受け入れられるだろうか。
それに、長期金利が低下に転じなければ、その悪影響は着実に経済を蝕んでいくことになる。今後、借り入れができない家計や企業も増えていくだろう。そもそも国債費が膨らむため、政府財政を圧迫する。それこそ、高市総理が言うところの積極財政など不可能になる。経済アドバイザーに従った結果、かえって日本経済を痛めつけるのである。
■なぜトラスショックから学べなかったのか
日本と英国の経済構造の違いを考慮した場合、日本でトラスショックは起きないと高市総理の経済アドバイザーらは主張したようだ。
総理の周辺が責任ある積極財政は可能だと主張したところで、実際に国債を購入する投資家に、甘酸っぱい理屈は全く通用しない。では国債を日銀に買わせればいいと考えるのかもしれないが、それでは円安に歯止めがかからなくなる。円安が進めばインフレが加速し、国民の生活はさらに窮する。実にシンプルな理屈を総理周辺は理解しない。
ない袖は振れないにもかかわらず、それを強行しようとしたから、トラス元首相はその座を追われた。見方を変えると、トラス元総理は短期で身を引いたからこそ、英国経済の混乱は短期で収束した。高市総理も早く構想を撤回すべきだが、そもそもトラスショックの本質を理解したならば、構想そのものを打ち出すことはなかっただろう。
就任に当たって経済最優先を掲げた高市総理だったが、海外勢からは否定的に評価され、Takaichi ShockやSanae Shockという言葉を当てられてさえいる。このままでは与党が大勝したとしても、日本のマクロ経済運営は極めて危ういものとなる。
(寄稿はあくまで個人的見解であり、所属組織とは無関係です)
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土田 陽介(つちだ・ようすけ)
三菱UFJリサーチ&コンサルティング 調査部 主任研究員
1981年生まれ。2005年一橋大学経済学部、06年同大学院経済学研究科修了。浜銀総合研究所を経て、12年三菱UFJリサーチ&コンサルティング入社。現在、調査部にて欧州経済の分析を担当。
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(三菱UFJリサーチ&コンサルティング 調査部 主任研究員 土田 陽介)

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