■大晦日のドイツで起こっていたこと
ドイツ公共第1放送は元旦の20時のニュースで、「大晦日の夜は概ね平穏に過ぎた」と報道。
ところが、実はその日の午前のニュースでは、今回もまた(!)暴動紛いの騒ぎがエスカレートし、負傷者が多数、そして死者まで出たことを詳細に伝えていた。
騒ぎの主役は言わずもがな、移民・難民である。
ちなみに同放送局は、2015年の大晦日にケルンの大聖堂前広場で、主に中東や北アフリカの移民、難民、および難民申請者による700件を超える婦女暴行事件が起こった時にも、しばらくは沈黙を保った放送局だ。
政府の都合を忖度し、肝心のところで外国人を擁護する体質は、今もさほど変わっていないらしい。あるいは、毎日、20時のニュースを見てくれている50年来のお得意さんを不安な気持ちにさせないための思いやり?
真実は、この深夜、いくつかの都市では危険なロケット花火に狙い撃ちされた警官が立ちすくみ、救急隊員が逃げ惑っていたのだ。
映像を見ると、花火というよりロケット弾が、すごい勢いで連続発射され、しかも、上にではなく、間違いなく人間(主に機動隊)や警察の車両を狙っている。
■そしてメディアは沈黙した
もちろん、こんなものが許可されているわけはなく、自家製である。その他、暗闇の中で燃え上がる自動車やバス、あるいは、道の真ん中に引き摺り出されて炎に包まれる大型のゴミのコンテナetc.。
そして、ベルリン市だけでこの夜、4000人以上の警官が出動、430人の暴徒が拘束された。警官のうち35人は強力なロケット花火で負傷している(2名は重症)。
また、全国的にも花火の爆発で数多の負傷者が出た。
ビーレフェルトでは18歳の青年2名が死亡(やはり自家製の花火の暴発で)。なお、ベランダに打ち込まれたロケット花火で火災の発生した家屋も複数あった。いったいどこが「概ね平穏」なのか?
いずれにせよ、日本でこんなことが起こったら、向こう1カ月はワイドショーの話題を独り占めするだろうが、ドイツではこれら忌まわしい出来事は、翌日にはすでにニュースから消えていた。
■本来、危険を感じるような日ではなかった
ドイツの大晦日はパーティーの日だ。夕方から友人が集まってワイワイ。ハイライトは零時きっかりに始まる打ち上げ花火。
ただし、大型のロケット花火はそうでなくても危険なので、ドイツでは1年のうち、12月29日から31日の3日間しか販売されない(日曜日が入ると1日繰り上げ)。25年はこの3日間で2億ユーロ(1ユーロ=170円で換算して340億円)の売り上げがあったという。
零時少し前になると、花火係を買って出た男性陣が酒盛りの宴から離れて、外でいそいそと花火の準備に取り掛かる。そのうち、厚いコートを着込んだ残りのメンバーが、シャンペンのグラス片手にぞろぞろと出てきて待機。
ドイツに来て間もなかった時、本当に時報と同時に始めるのが、いかにもドイツ人らしいと感心したのを覚えている。
そして、それから20分ほどは夜空一面が赤や緑に染まり、騒音にもかかわらず、辺りはかなり幻想的な雰囲気に包まれる。
しばらくすると、皆、我に返り、今度はそこらへんにいるご近所さんにも「ハッピー・ニューイヤー」とご挨拶。皆、少々酩酊気味なので、手当たり次第、ハグやら乾杯をするのがドイツ国民の正しい新年の祝い方だ。
家の前にいようが、見晴らしの良い高台に遠征しようが、ヒューッ、パンパン、「ハッピー・ニューイヤー!」は変わらない。大晦日は犬や猫にとっては一年で最悪の日だが、それを除けば私には楽しい思い出しかない。もちろん、身に危険を感じるようなことは一度たりともなかった。
■転機は2015年だった
それが一転したのが、前述の2015年のケルン事件からだ。
この時の特徴の一つが、例年とは違って、暗くなったらあちこちで花火の音がし出したこと。集団婦女暴行は零時前に起こっていたが、その頃はすでに花火も盛んに飛び交っていた。
その後、たとえば19年の大晦日のライプツィヒの深夜は、集結した約1000人の極左や移民の暴徒が、警備の警官隊を剥がした敷石や、ガラス瓶、そして、もちろんロケット花火で攻撃し、戦闘状態となった。
暴れる移民の特徴は警察を敵視していることで、警察を「国家の犬」と軽蔑する極左とは馬が合う。このライプツィヒ事件の直後、SPD(社民党)の党首エスケン氏(当時)が、「警官隊の出動が妥当であったかどうか早急に調査するべき。もし、妥当でなければ、この事件の責任は州の内相(キリスト教民主同盟)にある」と述べたのには度肝を抜かれた。社民党も極左か?
しかし、驚くべきことに、大手メディアまでがこの意見に同調。警察の不必要に大掛かりな出動が左翼を挑発したのではないかなど、極左びいきのコメントが流れ、警官があまりにも気の毒だった。
■「花火禁止」に集まった300万人超の署名
その後、20年、21年の大晦日の花火はコロナで一時中断したが、22年に復活。
ちょうど娘の家を訪問中だった私は、近所で繰り広げられるごく普通の光景を窓越しに楽しみ、翌朝、綺麗に花火のカスが片付けられていた通りを見て清々しい気持ちになった。それは、まさに昔ながらの懐かしいドイツの元旦の光景だったのだ(現在、公共の場所はあまりにも汚くなってしまっているが)。
しかし、その年も、市民が楽しく花火を楽しんでいた同じ時間に、やはりベルリン市では5000人の機動隊が出て、戦闘と思しき事態となっていたことを、私は元旦のニュースで知ったものだ。そして、それ以後も、大晦日の秩序は2度と改善されなかった。
現在、それらの帰結としてテーマとなっているのが花火の禁止だ。
いつも最大の標的となっているベルリン警察の労組が始めた署名運動には、1月22日現在、すでに330万の署名が集まっている。まだ増えるだろう。
ペットの平安や空気汚染防止のために花火禁止を求めている人たちは前々からいたが、現在、署名したのは、昨今の大晦日の暴力沙汰にほとほと嫌気がさし、「いっそのこと、こんなものはやめてしまえ!」と思っている人たちだ。
しかし、花火がなくなれば暴力は止むのだろうか?
■拘束された暴徒の正体
新年の暴動の原因は花火ではなく、花火を武器とする人たちだ。
彼らの心の中にある破壊の欲求や警官に対する憎悪、言い換えればドイツという国家に対する憎悪は、たとえ花火を禁止しても消えるわけではない。
闇夜に乗じて器物を損壊し、ロケット花火で警官を狙い撃ちにした人たちは一体誰なのか。
報道によれば、昨年(2025年)ベルリンで同種の暴動が起こった際、拘束された670人の4割近くがドイツのパスポートを持っていなかった。今年の拘束者の素性については、現時点ではわからないが、状況が大きく変化しているとは思えない。
つまり問題は、そんな外国人がドイツで暮らしていて、しかも、政治がそれを放置してきたことだ。問題は花火ではない。
しかし、公共放送は今回もまた政府の意向を汲み、昨年の暮れは、あまり教養のなさそうな人が花火を大量に買っている映像を流し、そして、年が明けての街頭インタビューでは、今度は教養のありそうな人たちが、「花火など不必要」と言っている映像を流していた。
■こうして「国柄」は消えていく
もちろん、大晦日の花火など無くなってもたいしたことではないかもしれない。
しかし、考えてみてほしい。外国人に押されて次に失うものは、もっと大切なものかもしれないのだ。伝統であれ、風物詩であれ、単なるドイツらしさであれ、崩れていくのは意外に早い。しかも、一度失ったら2度と戻ってはこない。
実は昨年、クリスマスマーケットという名称を「ウィンターマーケット」に変えた自治体まである。その背景に、イスラム教徒を刺激しないようにという配慮があるのは自明だ。
青山学院大学の福井義高教授は、「共産主義で押さえつけられていた旧ソ連邦の国柄は、そのイデオロギーが外れればあっという間に元に戻った。しかし、人間が入れ替わってしまうと、国柄は2度と元に戻らない」と警告している。
私の瞼の裏には、花火のカスがきれいに片づけられていた元日の住宅地の風景が、今もありありと浮かぶ。
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川口 マーン 惠美(かわぐち・マーン・えみ)
作家
日本大学芸術学部音楽学科卒業。1985年、ドイツのシュトゥットガルト国立音楽大学大学院ピアノ科修了。ライプツィヒ在住。1990年、『フセイン独裁下のイラクで暮らして』(草思社)を上梓、その鋭い批判精神が高く評価される。2013年『住んでみたドイツ 8勝2敗で日本の勝ち』、2014年『住んでみたヨーロッパ9勝1敗で日本の勝ち』(ともに講談社+α新書)がベストセラーに。『ドイツの脱原発がよくわかる本』(草思社)が、2016年、第36回エネルギーフォーラム賞の普及啓発賞、2018年、『復興の日本人論』(グッドブックス)が同賞特別賞を受賞。その他、『そして、ドイツは理想を見失った』(角川新書)、『移民・難民』(グッドブックス)、『世界「新」経済戦争 なぜ自動車の覇権争いを知れば未来がわかるのか』(KADOKAWA)、『メルケル 仮面の裏側』(PHP新書)など著書多数。新著に『無邪気な日本人よ、白昼夢から目覚めよ』 (ワック)、『左傾化するSDGs先進国ドイツで今、何が起こっているか』(ビジネス社)がある。
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(作家 川口 マーン 惠美)

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