2025年に国内で生まれた日本人の子どもの数(出生数)は約66万8000人と推計され、過去最少を更新する見込みだ(朝日新聞推計)。独身研究家の荒川和久さんは「日本全体の出生数の6割以上を占める大都市の中間層が『結婚したくても、できない』現状は問題だ」という――。

■少子化以前の「未婚化・少婚化」
2025年の日本の出生数は約66万8000人と推計され、統計開始以来過去最少を更新する見込みです。
少子化に歯止めがかからない状態ですが、前回の記事でご紹介した通り、日本に限らず、アフリカなど一部を除けば全世界的に共通した話であり不可避なメカニズムとして受け入れるしかないものです(参照:医療・教育・子育て支援が充実するほど子供は減っていく…世界の衝撃データが示す「少子化の不都合な真実」)。
とはいえ、出生数の減少をなるべく穏やかなものにする努力は必要でしょう。
そのためにも、出生が減る原因をそろそろ直視すべき時に来ています。
少子化といいますが、少子化は結果であり、出生数が減るのは婚姻数が減ることによります。つまり、問題は少子化以前の未婚化・少婚化にあります。
「1人以上子どもを産んだ夫婦」の子ども数はそれほど減ってはおらず、2021年の出生動向基本調査においても2.01人です。よくメディアで使われる完結出生児数は1.90人と言われていますが、これは結婚継続年数15~19年の夫婦の平均出生児数であり、その違いに留意が必要です。
■1組の結婚で「1.5人」生まれる法則
子ども2人の夫婦がもう1人産めば少子化解決などという論も見かけますが、見当違いです。問題は子ども0人→1人目が産まれないことにあり、その原因の多くは結婚が発生しないことにあります。1人目がなければ2人目も3人目も永遠にありません。そこの本質的な課題をいつまでも見て見ぬフリをするから、すべての少子化対策が的外れになるわけです(参照:若者の「価値観の変化」でも「恋愛離れ」でもない…政府が無視し続ける「少子化が止まらない根本原因」)。

もうひとつ、私のオリジナルの指標で「発生結婚出生数」というものがあります。ひとつの婚姻に対してどれだけ出生があるかというもので、実はこれも長期間ほぼ一定です。年によって多少のバラつきはあるものの、大体1婚姻につき1.5~1.6人の出生があると見ていいでしょう。
ちなみに、2023年の婚姻数は47万4741組で出生数72万7288人、発生結婚出生数は1.53人となります。逆に言えば、結婚が1組増えれば自動的に1.5人の出生があるということでもあります。
この発生結婚出生数が1.5に満たないのであれば、それは結婚があっても子どもが生まれていないということになり、そうした夫婦に対する対策が必要となります。逆に、1.6以上あるのに少子化が止まらないのであれば、それは婚姻減に課題があるということになり、それぞれの自治体などでの課題発見指標としても役立ちます。
■大都市ほど「結婚減=少子化」
婚姻と出生の関係については、今更言うまでもありませんが、特に最近10年で急激に婚姻が減り、そのため出生数も減っているという現象が顕著です。たとえば、2010年から2023年にかけて、婚姻数は32%減、出生数も32%減です。完全に一致します。
では、各市区町村別にみるとどうなっているでしょうか。
都道府県別までの比較はよくありますが、今回はデジタル庁のジャパン・ダッシュボードデータを基に、1741の市区町村それぞれの婚姻と出生の増減率の相関をみていきたいと思います、元データの関係で比較可能な2013~2022年の10年の増減とします。

結果は図表1の通りです。
市区町村で見ても、婚姻数の増減と出生数の増減は正の相関があります。ただし、出生数1000人以上(青・大都市)と1000人未満(赤・大都市以外)とで分けると、その相関係数に大きな差があります。
大都市以外では0.1700と弱い相関しかないのに対し、大都市では、0.7309という強い相関があります。これは、大都市ほど「婚姻が減れば減るほど出生は減る」という出生の婚姻依存度が高いことを示します。
■日本の「出生数の6割」を握っている
また、相関の弱い大都市以外は「婚姻が増えても出生が増えない」ということではなく、婚姻減少が厳しい中でも、すでに結婚した夫婦の出生で持ちこたえているという見方ができます。実際、婚姻減なのに出生増になっている左上のゾーンにあるのは、ほぼ大都市以外の地域ばかりです。代表的なのは千葉印西市です。ここは結婚後に転入してきてそこで出産・子育てをしているケースも多いでしょう。
いずれにせよ、少なくとも出生数の大きい地域では、出生の婚姻依存度が高いことは間違いないわけで、大都市ほど子育て支援以前に若者が結婚したいと思える環境作りが重要になります。
全体1741地域のうち、1000人以上出生の地域はわずか168で、その割合は9.6%しかありませんが、この1割に満たない地域の出生数だけで日本全体の出生の63%を占めます。裏返せば、残り9割の地域がどんなにがんばっても、この1割の地域の出生が伸びなければどうにもならないわけです。

■出生増トップは「東京・中央区」
ところで、これだけ婚姻減と出生減の中において、どちらも10年間で増えているところがありますが、その出生増トップは東京中央区、ついで千葉流山市、東京千代田区と続きます。これらの地区の出生が増えているのも婚姻数が増えているからに他なりませんが、もうひとつ、これらに共通するのは一人当たりの課税所得が増えている地域であるということです。
図表2のグラフは、出生数の増減と一人あたり課税所得の増減との相関を示したものです。同じくデジタル庁のジャパン・ダッシュボードデータを基にしていますが、所得の増減はデータの関係から、近似期間の2014~2023年の10年増減とします。
これを見ると、出生1000人以上の大都市では相関係数0.5161とやや高い正の相関があります。大都市では、所得の多寡が出生とある程度の相関があり、それは同時に所得の多寡が婚姻にも影響を与えていると言えます。もちろん、これは相関関係であり因果関係ではないので、「所得が低いと結婚も出生もできない」とまでは言いませんが、少なくとも所得の増加が少ない地域ほど結婚も出生も減少が著しいという傾向は現実としてあります。
■所得が減れば「婚姻も出生も激減」
一方で、1000人未満の地域ではむしろ▲0.0463とほぼ無相関です。つまり、所得が結婚や出生に大きく影響するのは出生1000人以上の大都市に限られるわけですが、前述した通り、この大都市だけで全体の63%の出生を占めるのですが、全体としていえば「結婚できる、子どもが持てるかどうかは所得がカギ」といっても差し支えはないのではないでしょうか。
より詳細に、10年間での所得の増加額別に、婚姻数と出生数の減り幅に差が出るのかをまとめたものが図表3のグラフです。
一目瞭然ですが、出生数1000人以上も1000人未満でも、所得(年収)が10年間で100万円以上増えた地域は、婚姻数も出生数も減少がきわめて抑えられており、全国平均を上回ります。
特に、1000人以上出生の大都市では、所得増加額が下がれば下がるほど、婚姻も出生も大きく減らすことになっています。
1000人未満では、100万以上増額された地域以外はほぼ同じように婚姻と出生は全国平均並みに激減しています。
■「不本意未婚」が増える本当の理由
注目したいのは、出生数の構成比で、もっとも出生数のボリュームが大きいのは、所得増30万~50万円グループ、つまり中間層にあたるわけですが、その中間層の婚姻と出生が大きく減少していることです。出生1000人以上の大都市だけでも、この中間層含め10年で所得増が50万円未満の構成比は55%、1000人未満の35%とあわせれば、それで90%を占めることになります。つまりは、日本の婚姻減、出生減はこの中間層以下の底上げがないからこそであり、いくら経済上位層が多子世帯化したところでそれをカバーできるものではないということです。
最近では、地方の自治体でこの正しい認識に立つところも多く、私にもヒアリング依頼が増えています。すなわち「子どもが生まれないのではなく、結婚が生まれないから結果として子どもも生まれないのだ」という認識です。
何も「結婚したくない」若者を強制的に結婚させようという話ではありません。選択的非婚は約2割いますが、その意思は尊重されるべきです。が、逆に「結婚したいと思っている若者のうちの6割が結婚できない」という不本意未婚が増えていることこそが問題の本質であり、その問題の根幹には、なかなか実質可処分所得が増えていないという中間層の現状があります。そこから目を背けてはならないでしょう。
お金があれば結婚ができるというものではありませんが、お金がなければ結婚どころか恋愛しようという意欲すら失います。

----------

荒川 和久(あらかわ・かずひさ)

コラムニスト・独身研究家

ソロ社会論及び非婚化する独身生活者研究の第一人者として、テレビ・ラジオ・新聞・雑誌・Webメディアなどに多数出演。
海外からも注目を集めている。著書に『「居場所がない」人たち 超ソロ社会における幸福のコミュニティ論』(小学館新書)、『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』(ぱる出版)、『結婚滅亡』(あさ出版)、『ソロエコノミーの襲来』(ワニブックスPLUS新書)、『超ソロ社会』(PHP新書)、『結婚しない男たち』(ディスカヴァー携書)、『「一人で生きる」が当たり前になる社会』(中野信子共著・ディスカヴァー・トゥエンティワン)がある。

----------

(コラムニスト・独身研究家 荒川 和久)
編集部おすすめ