■会見から見えたプルデンシャルの組織の歪み
1月23日に東京都内で行われた、外資系生命保険大手のプルデンシャル生命保険元社員らによる不適切行為に関する記者会見。プルデンシャル生命保険の間原寛社長兼最高経営責任者(CEO)ら経営陣と、その親会社であるプルデンシャル・ホールディング・オブ・ジャパンのハーン社長兼CEOも交えて粛々と始まりました。
企業不祥事会見といえば、昨年行われたフジテレビによる10時間超のロングラン会見や、大混乱の末に会社消滅に至った中古車販売大手のビッグモーターなどが記憶に新しいですが、今回の不祥事もそれらに比肩するほど、マスコミの注目を集めた重大なものといえます。
会見自体は2時間を超える長丁場になったものの、ほとんど紛糾することなく、粛々と進みました。質疑応答でも明らかになりましたが、同社はこの会見を日銀記者クラブを対象として開催したものだったのです。
■これで「幕引き」とはならない
記者クラブ所属ではない参加者は、「後部席に配置され、質疑もあくまで記者クラブのために行う」と、司会から再三説明がありました。(2026年1月23日、ABEMA NEWS)
質問の内容も緩いものが多く、また回答をはぐらかす経営陣への追及も甘く、この日の会見は、厳しい糾弾や鋭い質疑がそもそも起きにくい「設定」だったと見るべきです。
記者クラブ会員からも、この席配置や設定に対する疑問が投げかけられていましたが、クラブ外の参加者には、「後ほど主催側担当者が回答する」という説明で押し切っていました。
注目の会見を乗り切ったと言うことで、プルデンシャル事件はこれで幕引きとなるでしょうか。私は会見を冒頭から最後までリアルタイムで視聴しましたが、幕引きどころか、むしろ歪んだ組織構造やコンプライアンスへの疑義を増したのではないかと感じました。
■「悪いのは会社ではない」スタンス
本件の論点は、会社が組織として違法行為や不適切な行為を主導したわけではなく、あくまで「社員個人が犯行に及んだ」という点です。企業には使用者責任があるとはいえ、6000人を超える社員すべての行動を管理するのは不可能に近いでしょう。
しかし深刻なのは、不適切行為に及んだ社員は、会社のリソースである顧客名簿を悪用していた点にあります。継続して取引を続けている顧客に対して、自社の保険商品ではなく、他社の金融商品や投資話を持ち掛けていたことは大きな問題です。
顧客情報はどんな会社でも社外秘が当たり前ですが、富裕層を多く抱える同社の顧客リストは極めて高い価値を持っています。
経営陣は会見で、インセンティブなどで過度に成果報酬を促す、これまでのビジネスモデルへの反省と見直しを口にしたものの、その責任を認める姿勢は乏しく、あくまで「犯罪を犯した社員個人の責任」に矮小化したいように見えました。
あくまで悪いのは犯罪に手を染めた社員ですが、事件の温床となったのは会社の組織の在り方そのものです。にもかかわらず、補償対応の第三者委員会は設置する一方で、問題の発生経緯や背景を調査する調査委員会を設ける意思がないことが、会見でも触れられていました。
■「場を乗り切ること」が最優先
そうした根本的な原因追及への消極的な姿勢や粛々と進む会見を見ていると、事件の重大さを、どこか「他人事」として言葉巧みに逃げている印象を感じたのです。
特に不可解なのは、2025年10月に突如辞任した浜田元房・前プルデンシャル・ホールディング・オブ・ジャパンCEOとの関連です。この退任は、元社員が契約者などから投資名目で金銭をだまし取るなど、詐取容疑で逮捕される事例が相次いた事実上の引責とみられている(2025年10月14日、日本経済新聞)にもかかわらず、間原社長とハーン社長は浜田氏の退任理由について説明を拒否しました。
親会社トップの引責という重大事に対し、明確な説明を避ける経営陣。そしてそれを厳しく追及しない取材陣。これでは互いに身内のような関係に見えてしまい、この日の記者会見がゆるい全体像を印象付けたと感じています。
金融犯罪の線引きの難しさは、どこまで企業側の使用者責任が問えるかという点です。あくまで犯罪行為は組織ではなく勝手な社員の暴走ですが、個人が暴走できる環境をつくったのは会社です。多くの個人情報を抱える同社の顧客リストは、それ自体が重大な価値を持つ情報です。
それゆえ社員の行動管理や倫理観についての管理責任は、一般企業の使用者責任とは別次元に異なるほどの高いレベルが求められるべきではないのでしょうか。
私は企業のガバナンス問題に取り組んできましたが、この会見は、「場を乗り切ること」が優先され、今後のガバナンスがどう変わるのかについては示されなかったように思います。社員に求められる高い倫理観やそれを実現するための行動指針は、名目上だけでなく実効性ある制度化などがなければ「画餅(がべい)」と言わざるを得ません。
■ハイパフォーマーの聖域化が組織を腐らせる
「プルゴリ」とも称される同社の強力な営業姿勢は、会社の成長に大きく寄与したといえます。激しい営業も、そうした営業推進を後押しする体制も、それ自体は違法ではありません。しかし、会見で経営陣も認めた通り、過度に(営業成果を)賞賛する風土が、一部の社員による暴走を招いたと考えられます。
顧客からの疑問や内部や外部からの通報等に、どこまで真摯な対応ができていたのかなど、もっと突っ込むべきことはあったのではないでしょうか。
同社に限らず、営業至上主義の組織では、「数字さえ上げれば何をやっても良い」という風潮が生まれやすいです。こうした風潮は、もっとコンプライアンス意識が乏しかった昭和の営業など、多かれ少なかれあちこちで見られたことだと思います。
ハラスメント問題も、どちらからといえば「仕事ができる」と評価される社員が、その立場や有無を言わさない圧倒的成果で、批判をさせなかったという状況がこれまでだったのです。
■社名に込められた矜持の喪失
同社の営業力の強みの一つであるフルコミッション制の営業では、毎日規則正しい無遅刻無欠勤な勤勉さなどではなく、成果を出すか出さないかだけで評価されます。「成果=報酬=立場」と、うまく行く時はすべてが連動し、報酬も立場も地位もすべてが得られます。
一方で、その正のチェーンが途切れれば、社内の立場どころか居場所すらなくなるという厳しい環境です。これを具現化していたのが同社の営業体制なのではないかと思います。
営業で成果を上げ、自らの営業力に自信のある人にとって、理想的な職場ともいえるかも知れません。しかし現在は、コンプライアンスは絶対に求められるというルールに変わったのです。この軌道修正や、新たなルールでの業務遂行をさせるのが経営者の役割でしょう。
ビジネスで問われているガバナンスは、「違法性」より高い倫理観とその実効性です。「Prudential(思慮深さ)」という社名が、「違法行為が露見しないように立ち回る賢さ」を意味するものではあってはなりません。
コンプライアンスを遵守するというルールを放棄した結果が今回の事件の土壌となってしまったと、空しく進行されていく会見を見ながら、同社の根深い課題を痛感せざるを得ませんでした。
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増沢 隆太(ますざわ・りゅうた)
東北大学特任教授/危機管理コミュニケーション専門家
東北大学特任教授、人事コンサルタント、産業カウンセラー。コミュニケーションの専門家として企業研修や大学講義を行う中、危機管理コミュニケーションの一環で解説した「謝罪」が注目され、「謝罪のプロ」としてNHK・ドキュメント20min.他、数々のメディアから取材を受ける。コミュニケーションとキャリアデザインのWメジャーが専門。ハラスメント対策、就活、再就職支援など、あらゆる人事課題で、上場企業、巨大官庁から個店サービス業まで担当。理系学生キャリア指導の第一人者として、理系マイナビ他Webコンテンツも多数執筆する。著書に『謝罪の作法』(ディスカヴァー携書)、『戦略思考で鍛える「コミュ力」』(祥伝社新書)など。
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(東北大学特任教授/危機管理コミュニケーション専門家 増沢 隆太)

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