■「雑音」に惑わされないでほしい
首都圏の中学受験では、埼玉や千葉ですでに試験が行われ、2月に入ればいよいよ東京・神奈川の中学校でも入試が始まります。東京の私立中も受ける予定で……と緊張が続いているご家庭も多いでしょう。
SNSには根拠不明な情報が飛び交います。学校や塾にいけば○組の△△さん・□□くんが受かったらしいといった話も耳に入っているかもしれません。塾業界がその年の受験傾向を「思考力重視」とか「安全志向」と分析している情報を見ることもあるでしょう。
しかし、約30年にわたり現場で生徒たちを見送ってきた私からすれば、そんな雑音に惑わされる必要は一切ありません。入試の仕組みがどう変わろうと、合格する子の本質は不変だからです。
実は、入試当日の朝のようすで、私はその子の合否が見えてしまいます。昨今はコロナ禍以降の自粛や学校側からのお願いもあり、私たち塾の関係者が当日の校門前で応援する機会はほとんど無くなってしまいました。ただ、長年見てきた経験を基にすると、合格率が高い子は校門前である特徴を見せます。
■「寝ぐせ」は受かるサイン
私は寝ぐせの子を見ると「この子は受かりそうだ」と感じます。一見すると、身だしなみが整っておらず、だらしなく見えるかもしれません。しかし、私がこれまで校門前で数多くの受験生を見送ってきた過去を振り返っても、そのカンは実際に当たることが多く、紛れもない「合格のサイン」と言えます。
理由は明確です。第一に、本人が周囲の目を気にせず、目の前の試験に完全に没頭できている証拠と言えるからです。髪型を整える時間や鏡を見る余裕さえ惜しい……というよりは、自分の姿が気にならないほど、意識が「試験に向いている」状態だと言えます。
この「没頭」こそが、極限のプレッシャーがかかる本番で実力を出し切るために不可欠な要素となります。入試会場に平常心で向かえる子は、やっぱり強いのです。
第二に、この寝ぐせは「親のメンタル」を映しているのではないか、とも見ています。もし親が過度な不安を感じていれば、子供の寝ぐせを「みっともない」と指摘し、当日の受験生のテンションを削いでしまうかもしれません。
一方で、寝ぐせを笑って流せる余裕がある家庭では、親の不安が子供に伝染していません。私は「親の不安は子供の不安」だと確信しています。
■「ニコニコ」している子は強い
寝ぐせと並んで、私が現場で確信めいたものを感じたのが、合格する子は驚くほど「ニコニコ」しているという事実です。
特に女の子に多く見られますが、彼女たちは人生をかけた大一番の朝であっても、応援に来た私を見つけるとパッと表情を輝かせ、「先生、来てくれてありがとう」と笑顔で駆け寄ってきました。
これは、視野が極端に狭まっていないことの証しと言えます。中には、視野が狭まり、応援に来ている私たち講師の存在に気づかないまま通り過ぎてしまう子もいました。しかし、合格する子は自分の状況を俯瞰できており、周囲への感謝を伝える余裕を持っています。この精神的な余裕があるからこそ、難問に直面してもパニックにならず、冷静に対処できるのです。
そして、校門をくぐった後の行動でも、差が出ます。合格する子は、一度も親のほうを振り返らない傾向にあります。親としては手を振って送り出したい気持ちがあるかもしれませんが、彼らの背中は意外にもあっさりとしています。私はその背中を見るたびに、頼もしさや合格への確信を同時に抱いていました。
これは親からの自立が完了したというサインなのかもしれません。親の顔色をうかがう段階を脱し、自分ひとりで勝負する覚悟が決まっている、とも言えます。受験が「親にやらされているもの」から「自分の戦い」へと完全に切り替わっています。
■トラブルにも臨機応変に対応できる
また、合格する子の強さは、不測の事態が起きた時にこそ発揮されます。
過去には、入試当日の朝、校門をくぐった後に腕時計を忘れたことに気づいた教え子がいました。普通の子なら顔面蒼白になりかねない場面です。しかし、彼は違いました。校門前にいた私のほうへ猛ダッシュで駆け寄ってきて、開口一番こう言ったのです。
「先生、時計貸して!」
彼は一瞬で「塾の先生なら時計を持っているはずだ」「先生に頼めば確実に貸してくれる」と考えたのでしょう。この「トラブルシューティング」の速さと図太さは、合格する子に共通する能力です。彼らは起きてしまったミスを悔やむことにエネルギーを使わないようです。事実を前提に、どうすれば最短でリカバリーできるかを考えたようなのです。
その後、彼からは「先生の時計なら縁起が良さそうだから、入試が終わるまで貸しておいて」と言われました。結果、彼は借りた時計を返さないまま、最難関校を含むすべての受験校に合格しました。
また、ある教え子は、試験会場の机がガタついていることに気づき、試験官を呼ぶのではなく、手元にあったプリントのような紙を小さくちぎって脚の下に挟み、自分でガタつきを直して試験に臨んだそうです。大人が仕事の現場で行うような「現場判断」を、小学生が自ら行ったのです。
彼らのように「自分に最適な環境を自分で作る」という意識がある子は、どのような環境でも実力を発揮できます。会場の席に着くまでの所作の中に、その子の実力が表れると言えます。
■「鉛筆がなければ現地で借りればいい」
一方で、私は過去に、校門前で喧嘩する親子も見てきました。「なんで鉛筆を削ってくれなかったの!」「受験票が見当たらない!」と言い合っているのです。つまり、親が先回りして準備してあげることが当たり前になっている。これは子供がそれに依存してしまった結果です。
このような状態で試験に臨んでも、良い結果には繋がりづらいでしょう。朝から喧嘩して消耗してしまえば、難問に立ち向かう力など残りません。
「なければ現地で借りればいい」くらい腹を括れるような家庭であれば、お子さんも本番で動じることなく本来の実力を発揮できるでしょう。
余談ですが、受験生を疲弊させてしまう親の行動は、試験から帰ってきた直後にもあります。たまに聞くのが、「試験の答え合わせ」と「勝手な分析」です。
試験から家に帰ると、つい「どうだった? できた?」と聞きたくなる気持ちはわかります。熱心な親御さんほど、問題用紙を見せてもらい、「今年はここが出たのね」「この問題は簡単だったじゃない」と分析を始めたり、塾やネットの速報を見て勝手に丸つけをしたりします。
はっきり言いますが、これは絶対にやめてください。百害あって一利もありません。なぜなら、親の分析など当てにならないからです。また、塾の解答速報があっているとも限りません。変な混乱を生み、場合によっては疲れを溜めてしまいます。
終わった試験の結果は変わりません。
■親の言葉は少なければ少ないほどいい
ただ、応援したいと思う親御さんは多く、それは自然な気持ちだと思います。ではどうすればいいのか。講演などでよく聞かれるのが「どんな言葉をかければ子供がやる気になるでしょうか」という相談です。しかし、私が子供たちからよく聞くのは、親にはとやかく言われたくないといった話です。
子供たちが「これを言われるのが嫌だ」と口を揃えるのが、「ミスするなよ」とか「字は綺麗に書くんだよ」といった具体的な指示です。子供たちに言わせれば、これらは励ましではなく、「お前はミスをするに違いない」と親から信用されていないとも受け取れるようです。
また、「社会は時事問題が出るからね」といった教科の中身への口出しも嫌なようです。「そんなことわかってるよ」というのが、本音でしょう。「大丈夫だからね」という励ましも、子供は敏感ですから、「もし落ちたら親を悲しませることになる」と捉えてしまう子もいるようです。
ですから、言葉は少なければ少ないほどいい、というのが私の考えです。その代わり「ボディランゲージ」で伝えるのはどうでしょう。コロナ禍であまり会話ができない時期に気づいたのですが、あの時期、私は試験前日などに無言でグータッチして送り出していました。その時、言葉よりも遥かに強く、子供たちが「やってやるぞ」という目に変わるのを何度も見てきました。家族であれば、言葉以上のことが伝わるかもしれません。ぜひ試してみてほしいです。
■一番の応援は「いつも通り」の徹底
まとめると、今、親ができる一番の応援は「何も変えないこと」です。親御さんの中には、何か特別なことをしてあげたいという思いから、普段と違う行動をとろうとする方がいらっしゃるかもしれません。ですが、それは逆効果になりえます。受験生にとっては「今日はいつもと違う日なのだ」と緊張を増幅させる「余計なこと」でしかないからです。徹底して「いつも通り」に過ごせば、それでいいのだと思います。
普段通りの朝食を出し、試験会場に向かう。会場の学校に着いても、普段通りのトーンで「いってらっしゃい」と送り出す。親側が日常を崩さず、どっしりと構えている姿こそが、受験生のお子さんにとって最大の応援となります。
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渋田 隆之(しぶた・たかゆき)
国語専門塾・中学受験PREX代表
教育コンサルタント・学習アドバイザー。神奈川大手学習塾で中学受験部門を立ち上げ、責任者として20年携わる。毎年、塾に通う生徒全員と直接面談を実施。保護者向けにも、ガイダンス、進路面談、カウンセリングを担当し、これまで関わった人数は2万人以上にのぼる。日々の思いを綴るブログ「中学受験熱血応援談」は年間100万件以上のアクセスを獲得している。2022年7月に中学受験PREXを立ち上げ、現在も継続して中学受験の最前線に立ち続ける。国内最大の受験人数を誇る首都圏模試センターの中学受験サポーターも歴任し、中学校と受験生の橋渡しとなる情報提供を日々行っている。一番大切にしていることは、ご縁があり指導することになった子どもたちとご家族のために、誠心誠意、ベストを尽くすこと。著書に『中学受験 合格できる子の習慣 できない子の習慣』(KADOKAWA)、『2万人の受験生親子を合格に導いたプロ講師の 後悔しない中学受験100』(かんき出版)、『親の声掛けひとつで合否が決まる! 中学受験で合格に導く魔法のことば77』(KADOKAWA)がある。
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(国語専門塾・中学受験PREX代表 渋田 隆之)

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