会議が「しーん」となるのは、なぜなのか。一級建築士の高原美由紀さんは「メンバーの発言を促すには、座席の配置や環境などを工夫するといい。
たとえば、チームのリーダーが座る場所にも、明日からすぐに試せる“正解”がある」という――。
※本稿は、高原美由紀『できる人は25分で「場所」を変える』(青春出版社)の一部を再編集したものです。
■「会議の発言数」は座席位置で変わる
「うちのチーム、優秀な人がいるのに、なぜか思うような成果が出ないんです」
こう悩むリーダーは多いのではないでしょうか。なぜ、チームが動かないのでしょう。一般的に、チームの生産性を上げるために2つのことに注目します。1つ目は「人」です。優秀な人材を採用し、研修で能力を向上させ、制度を整える。2つ目は「仕組み」です。ITツールを導入し、業務プロセスを改善します。でも、見落としがちなのが第3の要素、「場」です。
本稿では、「場」がチームの生産性、創造性、自律性をどのように左右するのか、その仕組みを見ていきます。
会議での発言をうながす座席配置から、決断を早める方法、そして創造性を高める環境まで――明日から実行できる「場のしかけ」を具体的にお伝えします。

皆さんも会議で、ほとんど発言しない社員を見たことがありませんか。入社3年目の優秀な社員、田中さんの例です。
「何か意見はありませんか?」と部長が声をかけても、田中さんの答えはいつも「とくに……」。普段の雑談ではよく話し、面白い提案もたくさん出します。なのに、会議になると急に口数が減ってしまうのです。
なぜでしょうか。
よく見ると、チームメンバーは毎回なんとなく同じ席に座っていました。部長は奥の席、ドアの近くに座る人も決まっていました。会議室は図表1のような配置でした。
田中さんはテーブルの一番端の席に座っていました。実は「端の席」に座ると、発言が減る傾向があります。
■「端の席」の発言が減る3つの理由
端の席に座ると、何が起きるのでしょう。
そこには、私たちの行動を決める3つのメカニズムがあります。
【①表情が見えないと心理的距離が生まれる――視野60度の法則】
人は視野の中心約60度の範囲で、相手の表情を正確に読み取ることができます。この範囲に相手がいると、表情から意図が伝わりやすいため、会話がしやすいのです。逆に、この範囲から外れると、相手の反応がつかみにくく、「ちゃんと聞いてもらえていない」と感じやすくなります。
中央の席では少し首を動かすだけで複数の参加者の表情が視野に入り、反応を読み取りながらテンポよく会話ができます。一方、端の席では多くの参加者が視野の外に位置し、表情や視線が見えにくくなります。
話しかけにくい、伝わりにくいと感じ、発言を控えがちになるのです。
【②全員の視線が一点に集中し、緊張が高まる】
さらに、端の席から声を発すると、全員が一斉にこちらを振り向きます。この視線の集中は、無意識のうちに交感神経を刺激し、緊張を高めます。実際には誰もそこまで気にしていなくても、人は「自分が注目されている」「恥ずかしい」とプレッシャーを感じやすくなり、発言を控えがちになります。
つまり、端の席はスポットライト効果――「みんなに見られている」と感じやすくなる心理――を強く感じる“緊張の席”なのです。
【③距離が発言を遠ざける】
議論の中心から遠い位置では、視線や発言の流れが届きにくくなり、場の一体感から外れてしまいます。
すると、おのずと当事者意識が薄れ、発言意欲や内容への責任感が低下します。そして、まるで観客席にいるような感覚になります。
さらに、端の席から発言するには、声を大きく張り上げ、首を回して全員を見渡す必要があります。私たちの脳は、こうした身体的な負荷を避けるようにできているため、「話しづらい姿勢」が、発言をためらわせます。
■「座席シャッフル」で空気を変える
【全員の顔が見える席に座る】
できるだけ、全員の顔が無理なく見えるよう、座ってみてください。
テーブルは円形が理想です。長すぎるテーブルは、端の人の表情が見えにくくなります。円形テーブルが難しい場合は、ローテーション制や座席シャッフルを取り入れます。毎回違う位置に座るだけで、発言者の顔ぶれが入れ替わり、会議全体の空気が活性化します。
実は、リーダーの座る位置も発言量を大きく左右します。会議では、リーダーはいつもどこに座っていますか。
A:いわゆる「お誕生日席」

B:テーブルの中央

C:テーブルの端
リーダーが座る位置は、言葉以上に「組織の文化」を無言でつくります。
メンバーたちは無意識のうちに、そのリーダーの位置から「自分たちはどう行動すべきか」を読み取っています。
■リーダーは「端っこ・横並び」に座るといい
【A席(お誕生日席):「指示待ちモード」になる】
最も見晴らしのよい上座(かみざ)です。ここにリーダーが座ると、メンバーを「見下ろす」構図になり、リーダーの視線を意識します。会議は「リーダーへの報告」という一方通行になりがちです。
その結果、メンバーの主体性が低下。自分で考える力が育ちにくくなります。
【B席(中央位置):「圧力と緊張」が高まる】
リーダーが中央に座ると、発言がどうしてもリーダー中心に流れやすくなります。対面のメンバーは常にリーダーの視線を受ける位置にいるため、圧迫感を感じ、意見を言いづらくなります。その結果、リーダーを中心とした「報告の往復」になりやすく、メンバー間の対話やアイデアが出にくくなります。
【C席(端・横並び位置):「任せて見守る」効果】
一見「傍観者の席」に見えますが、メンバーは「自分で考え、意見を出す余白」を感じます。また、横並びに座ることで「一緒に課題を解決する仲間」という感覚が強まり、心理的距離が自然と縮まります。その結果、メンバーの発言が増え、対話が活発になります。

■黙っていた人が“発言しやすくなる”
リーダーは、テーブルの端のC席に座ると、メンバーの自律性が高まります。「少し距離を取って見守っている」というポジションになるからです。座る位置を変えるだけで、これまで発言しなかった人が無理なく発言しやすくなります。
家族会議や仲間との会議でも同じです。毎回座席をシャッフルしましょう。座る位置が変わるだけで、その人の「話しやすさ」が激変します。
営業チームの朝礼でも試してみてください。座席をシャッフルすると、いつもは話さない人が、中央に座った途端に提案を出すこともあります。実際、田中さんをテーブルの中央に移すだけで、その後の会議での発言量が大きく増えたといいます。
あなたの会議では、いつも同じ人が同じ席に座っていませんか。
■「立つ」だけで決断が早まる
「このミーティング、なぜ、こんなに長いのだろう」。気づけばもう11時。
議題は進捗確認だったはずなのに、いつの間にか話がそれている。「それでは、この件は来週また検討ということで」。
結局、重要な決定は先送り。こんな光景、覚えがありませんか? 会議が長引く理由は何でしょう。
多くの場合、「座っているから」です。椅子に深く腰を下ろしていると、脳は無意識に「今は考える時間だ」と判断します。発言は長くなり、議論は堂々巡りに。解決策は、意外なほど簡単。それは「立つ」ことです。
人は立つと脳が覚醒モードに入り、判断が早くなります。これは、姿勢を感じ取るセンサーがスイッチの役割を果たし、意識より先に脳の状態を切り替えるためです。下半身の筋肉が働くことで、血流が促進され、眠気が覚めて発想が冴えやすくなります。
さらに、「時間は有限だ」と感じやすくなります。立っている体への軽い負荷が、「長く続けられない」「早くまとめよう」という判断が無意識に働くのです。その結果、立って行う話し合いでは発言が短くまとまり、決断が早くなります。
Bluedornら(1999)の実験では、立って話すグループは座って行うより、平均34%早く結論に達し、決定の質には大きな差は見られなかったと報告されています。ただ、立つ効果は15~45分が目安です。ずっと立ちっぱなしは逆に疲労につながるため、短時間の話し合いや、座位と交互に切り替える使い方が効果的です。
■“創造性を高める空間”の条件
さらに、姿勢や環境の違いは、思考や協力の質にも影響します。立って話す場面のほうが、創造的なアイデアが生まれやすく、参加者同士の協力も高まることが確認されています。
また、ほかの実験(Knight&Baer,2014)でも、非座位のワークスペースは情報の深い検討や協力行動を促進しやすいと報告されています。スタンディング会議を導入したチームでは、話し合いの時間だけでなく、空気そのものが変わったといいます。「だらだら感」が消え、時間意識や緊張感が全員に共有されるためです。
会議には、円形スタンディングテーブルを置くか、腰高の収納を話し合いの場に利用してみましょう。近くにはホワイトボードを。効果的なテーブルの置き場所は次のとおりです。
・普段座っている席や、日常動線から近いこと

・明るく、窓から景色が見える場所

・テーブルの周囲を自由に動けること

・開放感があること
椅子がないだけでなく、「気軽に行きたい」と思わせる場にすることがポイントです。
■「立って10分で決める」と設定しておく
あなたの集まる場に椅子がなかったら――、その話し方も決め方もきっと変わるはずです。“場”を整えることで、「迅速に決める」ことが当たり前の文化になっていきます。
家族でもチームでも、椅子に座ったままだと話がまとまりにくいときがあります。そんなときは、「立って10分で決める」と設定してみましょう。座ると「まだ考える時間がある」と思いがちですが、立つと「早く決めよう」に脳が自動的に切り替わります。
ただし、45分を超えそうな複雑な案件は、座ってゆっくり検討するほうが判断の質が上がります。あなたの周りに、立って話せる場所はありますか。
(参考文献)

・Awad, S., Debatin, T., & Ziegler, A. (2021). Embodiment: I sat, I felt, I performed – Posture effects on mood and cognitive performance. Acta Psychologica, 218, 103353.

・Bluedorn, A. C., Turban, D. B., & Love, M. S. (1999). “The Effects of Stand-up and Sit-down Meeting Formats on Meeting Outcomes.”Journal of Applied Psychology, 84(2), 277–285.

・Knight, A. P., & Baer, M. (2014). Get up, stand up: The effects of a non-sedentary workspace on information elaboration and group performance. Social Psychological and Personality Science, 5(8), 910–917.

----------

高原 美由紀(たかはら・みゆき)

一級建築士、空間デザイン心理学協会代表理事

早稲田大学大学院人間科学研究科修了。職業能力開発総合大学校講師。空間デザイン歴30年超、累計1万件以上の間取り指導実績を持つ。心理学・脳科学・行動科学・生態学など、多分野の科学的知見を空間デザインに統合し、「空間デザイン心理(r)」を体系化。深層のニーズを引き出し可視化する「LDNメソッド(r)」を開発。著書に『ちょっと変えれば人生が変わる!部屋づくりの法則』(青春出版社)がある。

----------

(一級建築士、空間デザイン心理学協会代表理事 高原 美由紀)
編集部おすすめ