■終わらない子育て「8050問題」への不安
不登校ひきこもり専門カウンセラーのそたろうです。
これまで8000回以上の相談に乗ってきましたが、不登校に悩む親御さんが共通して抱えているのが「8050問題」(80代の親が、50代のひきこもりの子どもを支えることで、経済的・社会的に孤立してしまう問題)への恐怖です。
いま学校に行けなくなっている子どもが、年齢を重ねてもこのまま社会に出られなかったらどうなるのか。「私が年老いても、この子が働けなかったらどうしよう」「私がいなくなったら、この子はどうやって生きていくんだろう」と語られます。
経済的負担も大きいです。実際に僕の元へ相談に来られる親御さんの多くが、「私たちの年金だけで、この先、何十年もこの子を養っていけるのだろうか」という切実な不安を口にされます。お子さんの国民年金や健康保険料、日々の生活費の肩代わりがこの先20年続けば、出費は1000万円を超えてきます。ご自身の介護費用に充てるはずだった老後資金が、お子さんの生活費として消えていく……。
親の医療費が払えず、親子共倒れになってしまうといった悲しいニュースを耳にしたことがある方も多いのではないでしょうか。
2014年と少し前のデータになりますが、文科省が行った不登校の児童の追跡調査で不登校からひきこもりに移行する割合は18.1%。8割のお子さんは不登校になっても、なんらかの形で社会に復帰していると言えるわけですが、そのままひきこもりになってしまうお子さんも決して少なくはないのです。
きっかけは不登校だけではありません。高校・大学卒業後に就職できなかったり、社会に出てからも職場の人間関係のつまずきなどで、ひきこもりになってしまうこともあります。内閣府調査では、15~64歳でひきこもり状態にある人は推計で146万人。その年代の50人に一人がひきこもりとなる計算です。
子育て中の親御さんが「子どもが自立しない」「終わらない子育て」に不安を持つのは当然だと思います。社会に復帰できる8割のお子さんと、ひきこもりが長引いてしまう家庭には、どんな違いがあるのでしょうか。
今回は、実際にあった事例やメディアで取り上げられたケースを通じて、「子の自立」と「ひきこもり」の分岐点について解説したいと思います。
※プライバシー保護のため、ご本人を特定できないよう、詳細な設定を一部変更して紹介します。
■事例① 「9070」まで問題が長引いてしまったケース
まずご紹介するのは、私がいまの仕事に就く前に個人的に話を聞かせていただき、衝撃を受けたケースです。90代の母親と、70代のひきこもりの息子、ひろしさん(仮名)の話です。
ひろしさんは幼い頃から少し発達の特性があり、周囲と馴染むのが苦手でした。心配したお母さんは、中学卒業後の進路について、「この子には高校生活は無理だろう」と判断しました。
ひろしさんは母親の言う通りに就職しましたが、やはり人間関係がうまくいかず、すぐに退職。その後も、母親が仕事を探してはあてがい、また辞めてしまう……ということを繰り返し、やがて完全にひきこもるようになりました。それから数十年。お母さんが「働かないのか」「外に出ないのか」と促したある日、70代になったひろしさんは激昂してこう叫びました。
「全部、お前が決めたんだろ!」
本当は高校に行きたかったかもしれない。別の道があったかもしれない。しかし、母親の「先回り」と「過干渉」によって、「自分で選んで、自分で失敗する」という経験を奪われたひろしさんは、70代になってもなお、「自分の人生がうまくいかないのは親のせいだ」と思い続けていたのです。親が良かれと思ってレールを敷くことが、子どもの「人生の責任感」を奪い、結果として8050問題(この場合は9070問題)へと繋がってしまった、あまりにも悲しい事例です。
■事例② 母親が倒れて、50代で息子が動き出したケース
次に、2025年に「ザ・ノンフィクション」で放送され、大きな反響を呼んだ「ひきこもって37年 母と息子の小さな食卓」の事例(まさきさん・仮名)を見てみましょう。私がカウンセリングを担当したケースではありませんが、自立に向けて動き出すきっかけがとてもわかりやすい事例だったのでご紹介させてください。
52歳のまさきさんは、中学時代の挫折といじめをきっかけに15歳からひきこもり、79歳の母親と団地で二人暮らしをしていました。
しかし、転機が訪れます。高齢の母親が倒れ、体が思うように動かなくなったのです。母親が自分の世話をできなくなった時、まさきさんは初めて「自分がやらなければ」と動き出しました。長年手つかずだった荷物を整理し、外に出るのが怖いはずなのに、母親の誕生日を祝うために勇気を出してスーパーへ買い物に行きました。
この事例が教えてくれるのは「親が何でもやってあげてしまう(過保護・過干渉)状態では、子どもは自立できない」ということです。皮肉なことに、親が手を出せなくなった(出さなくなった)時、子どもは生きるために必然的に自分と向き合い、自立への一歩を踏み出したのです。
■事例③ 30代で息子が社会復帰したケース
最後は、前の2事例よりも早くにお子さんが動き出したケースを紹介します。私が実際にカウンセリングを担当させていただいた、30代のひきこもりの息子、ゆうきさん(仮名)の事例です。
ゆうきさんは社会人経験がありましたが、馴染めずに退職し、実家に戻ってひきこもっていました。母親とのコミュニケーションはほぼ断絶状態。
当時のゆうきさんは部屋に閉じこもりきり。お母さんは心配のあまり、毎朝仕事に出かける前にサンドイッチを作って置いていましたが、ゆうきさんは全く手を付けませんでした。
一方で「光熱費を入れろ」と要求しながら、一方で「心配だから」と食事を用意する。そんな母親のチグハグな対応への反抗だったのでしょうか。ゆうきさんは親の作ったものを拒否し、カップラーメンやコンビニ弁当ばかり食べていました。それを見て、お母さんは栄養バランスが崩れるとさらに不安になり、また干渉してしまう……という悪循環に陥っていたのです。
■なぜ母親は息子を信じられるようになったのか
そこで、カウンセリングを通じて、お母さんはアプローチをガラリと変えました。息子を変えようとするのをやめ、「自分自身の人生」を充実させることに集中したのです。
まず向き合ったのは、自身の心の中にある「不安」でした。「このまま引きこもりが続いたらどうしよう」という恐怖。しかし、カウンセリングで心を整理していくうちに、お母さんは「その不安は“親の都合”であり、子どもの目線が欠けていた」ということに腹落ちしていきました。
そうして、自分の抱える不安を子どもに払拭してもらうのではなく、自分で理解し、寄り添えるようになっていきました。友達とランチに出かけたり、ずっとやりたかったガーデニングに勤しんだり。自分が心地よく過ごせる時間や場所を増やし、人生を充実させていくと、不思議なことに、自然と「息子は息子の人生を歩むだろう」と信じられるようになっていったのです。
お母さんが自分の人生を楽しみ、息子への干渉(手出し口出し)をやめると、驚くべき変化が起きました。心を閉ざしていたゆうきさんが部屋から出てきて、母親の作った食事を食べるようになったのです。やがて一人で釣りに出かけるようになり、外出が増えていきました。
そしてある日、ゆうきさんは自分からこう言いました。「また働こうと思う。家を出て一人暮らしをするよ」
家を出る前、ゆうきさんは「カニが好きなお母さん」のために、美味しいカニ料理のお店に連れて行ってくれたそうです。親が子どもをコントロールするのをやめ、自分の人生を生きた結果、子どももまた自分の人生を取り戻し、自立していったのです。
■「介入しない」勇気が、未来を変える
この3つの事例に共通しているのは、「親の過度な介入が、子どもの自立を阻んでいる」という事実です。
「介入しないと、このまま一生ひきこもってしまうんじゃないか?」その親御さんの不安と焦りこそが、パラドックス(逆説)的に、子どもから「自分でなんとかしよう」とする力を奪い、8050問題を引き寄せてしまっています。
もちろん、「ただ放っておけばいい」という単純な話ではありません。事例③のお母さんのように、親自身が自分の不安と向き合い、自分の人生を楽しむこと。そして、子どもを信じて「手を出さない」という選択をすること。それが、お子さんが自分の人生と向き合い、再び歩き出すためのスペース(余白)を作ることになるのです。
■その行動は「愛」か「不安」か
8050問題への不安は、尽きないかもしれません。しかし、その不安からお子さんに介入してしまう前に、一度立ち止まってみてください。
あなたが今お子さんにしていることは、事例③のように「自立を信じるサポート」でしょうか? それとも事例①のように「失敗させないためのコントロール」でしょうか? 心を整理するためのワークシートをご用意しました。ぜひご活用ください(画像1)。
最初に現状の「棚卸し」と「仕分け」を行います。普段、お子さんに対して「やってあげていること」を書き出し、その動機がAとBどちらに近いかチェックを入れてみましょう。
A:愛・サポート(「助けて」と言われた、困っているから)
B:不安・介入(将来が怖いから、私が安心したいから)
「B(不安・介入)」にチェックがついた行動は、思い切ってやめる・減らすチャンスです。その行動をやめて「空いた時間」で、あなた自身のために何をするか考えてみてください (例:カフェでゆっくりコーヒーを飲む、趣味の時間に充てる)。
親御さんが「不安」から行動している時、お子さんは「信頼されていない」と感じてエネルギーを失います。逆に、親御さんが自分の人生を楽しんでいる時、お子さんは「大人は楽しそうだ」「自分の人生を生きていいんだ」と希望を持ちます。「B」の行動を減らすことは、冷たいことではありません。お子さんを信じる「愛」の行動です。
まずは親御さんがご自身の人生を大切にすることから始めてみてください。それが、結果としてお子さんの未来を拓く一番の近道になるのです。
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そたろう(そたろう)
不登校ひきこもり専門カウンセラー
20代の頃、理学療法士として働く傍ら、夫婦関係や仕事に行き詰まったことをきっかけに自分が心の問題を抱えていることに気づき、心理学を学び始める。その過程で自己受容の大切さを知る。2019年、子どもを受容する声かけなどを指導する「不登校ひきこもり専門カウンセラー」今野陽悦さん〔今野陽悦『学校に行けない子どもに伝わる声がけ』(WAVE出版)〕に出会い、仕事を手伝いはじめる。2022年に独立。累計300人、約8000回(2025年9月末時点)のカウンセリング実績のなかで、不登校を本質的に解決する具体的なメソッドを構築。自身のYouTubeチャンネル「不登校ひきこもり解決そたろう」で発信を行っている。クライアントの9割が自分自身を大切にすることを学ぶなかで、家族関係が改善し、子どもが再登校をしたり、社会復帰するなど問題解決を果たしている。著書に『親が変わると、世界が変わる 不登校・引きこもりを本質的に解決したある母の物語』がある。
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(不登校ひきこもり専門カウンセラー そたろう)

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