就活や転活の面接やプレゼンなど、人前で話す際に緊張しないようにするにはどうしたらいいのか。気象予報士の佐藤圭一さんは「かつて私は極度の上がり症で、面接にも何度も痛い目にあった。
でも、15年かけて根性論ではない科学的な対策を編み出した」という。そのまさかの方法とは――。
■「面接」でガクブルだった男性の緊張克服法
年が明け、転職市場が活発になる時期がやってきた。3月になれば新卒の就職活動も解禁される。職務経歴書を磨き、業界研究を重ね、準備万端で挑む。しかし、どれだけ完璧に準備をしても、本番当日、私たちの前に立ちはだかる巨大な壁がある。
「緊張」だ。
面接やプレゼンにおいて、緊張は最大の敵と言える。声が上ずり、目が泳いでしまうと、それだけで「自信がなさそう」「頼りない」というレッテルを貼られてしまう。逆に、堂々としている人は、それだけで「仕事ができる」ように見えるものだ。
「緊張さえしなければ、うまくいくのに……」そう悔しい思いをしたことのある人は多いだろう。
今でこそ全国ネットの番組で数百~千万人の視聴者に向け天気予報を伝えている私だが、かつては筋金入りの「あがり症」だった。
アナウンサー試験には100社以上落ち、面接官から「なんでそんなに震えているの?」と呆れられたこともある。
今回は、そんな私が15年かけて見つけ出した、「根性論ではない、科学的・物理的な緊張対策」をお伝えしたい。
■生放送中、震える手から…
私のあがり症がどれほどひどかったか、お話ししたい。念願のアナウンサーデビューを果たした直後、生放送でのことだった。
お祭りの中継リポートの本番直前、マイクを握り締めると、自分の意志とは関係なく、手が小刻みに震え始めた。止めようと力を込めれば込めるほど、震えは大きく、激しくなっていく。
やがて、マイクについている番組名の入った飾りが、ガタガタと揺れだした。震えはさらに大きくなり、マイクから外れそうになってきた。
目の前のカメラマンがギョッとして、マイクと私の顔を交互に見ているのがわかった。「おい、落ちるぞ! 飾りが落ちるぞ!」という視線が痛いほど刺さる。頭の中はそのことで一杯になり、何をしゃべったのかほとんど覚えていない。まさに穴があったら入りたい、消えてしまいたい瞬間だった。

■面接官「なんでそんなに緊張しているの?」
さらに時間をさかのぼり、そもそも、私がアナウンサー受験で100社以上落ちた最大の原因も、間違いなくこの「緊張」だった。面接官から「なんでそんなに緊張しているの?」と言われて、激しく落ち込んだこともある。
緊張は、それだけで頼りなく見える。緊張さえしなければ説得力は増す。
わかっている。わかっているのに、どうにもならなかった。
■「落ち着こう」と念じても火に油
学生時代から社会人になってもなかなか再現性のある緊張対策を見つけられない日々が続いた。呼吸法、イメージトレーニング、ルーティン、「人」の字を掌に書いて、飲む。いったい何人を飲んだだろうか。どれもこれも焼け石に水だった。
なぜ、世の中にある「緊張対策」は効かないのかと考えていた。そんなある日、ラジオから流れてきた心理学者の言葉に、私はその答えを見つけ、頭をガツンと殴られたような衝撃を受けた。

「『努力逆転の法則(エミール・クーエの法則)』を知っていますか? 意志と想像力が喧嘩をしたとき、勝つのは常に想像力です」
心理学者の説明はこうだ。例えば、高い板の上を歩くとき、「落ちてはいけない」と思えば思うほど、脳は「落ちてしまう自分」を想像し、足がすくんでしまう。これと同じで、「緊張してはいけない」「落ち着こう」と努力すればするほど、脳は「今は落ち着いていない(=ピンチだ)」という現状を強く想像してしまう。その結果、防衛本能が働き、余計に心拍数を上げ、体を硬直させるのだ。
つまり、「緊張よ収まれ」「落ち着こう」「リラックス」と念じる行為は、火に油を注いでいるのと同じだったのだ。私は長年、自分で自分を追い込んでいただけだったことに気づき、愕然とした。
■ステップ1:「実況中継」で自分を受け入れる
では、どうすればいいのか。私は、思考を180度転換することにした。「緊張を消す」のではなく、「受け入れる」のだ。
緊張して心臓がバクバクしてきたら、無理に抑え込もうとせず、心の中で静かにこう呟くようにした。
「はい、私は緊張しています。あがり症ですからね。
今日もけっこう緊張しています。でも、がんばりますよ。」
まるで他人事のように、自分の状態を実況中継するのだ。「緊張しちゃダメだ!」と否定するのではなく、「ああ、緊張してるね」と認めてあげる。
不思議なもので、こうして自分の状態を客観的に受け入れると、フッと肩の力が抜ける。緊張がゼロになるわけではない。心臓はバクバクしたままだ。だが、自分を見失うことはなくなる。
「緊張していても、頭の片隅に冷静な自分がいる状態」を作ることができれば、それだけで合格点は取れる。リラックスを目指す必要など、最初からなかったのだ。
■ステップ2:「ジャンプスクワット」をする
メンタルの次は、「物理的」な対策だ。これが今回、私が心からおすすめする「秘策」である。
生放送の現場で何度も冷や汗をかきながら、私はある当たり前の事実に気がついた。
緊張すると、必ず心拍数が上がる。そして、その「ドクドク」という激しい鼓動を感じた瞬間に、「うわっ、自分は今すごく緊張している!」と突きつけられ、さらに不安になっていくのだ。
この悪循環を断つにはどうすればいいか。
よく「場数を踏め」と言われるが、大事なプレゼンの前に、本番と同じ緊張感の場数を踏むことなど物理的に不可能だ。
ならば、「心拍数が上がった状態で喋る練習」をしておけばいいのではないか? 心臓がバクバクしている状態でしゃべる練習をすればいいのだ。
そこで私が開発したのが、「ジャンプスクワット話法」だ。やり方は簡単だ。
1.自宅で、しゃがんで地面に手をつけ、全力でジャンプする。

2.これを10~20回ほど繰り返す

3.息が上がり、心臓がバクバクしている状態で、面接の自己PRやプレゼンをしゃべる。
これをスマホで自撮りして見返してみてほしい。最初は息が切れて喋れないかもしれない。だが、何度か繰り返すと、「心臓がバクバクしていても、意外と声は出るし、頭は回る」ということがわかってくる。

これが最強の「疑似場数」になる。本番当日、緊張で心拍数が上がっても、脳はこう判断する。「ああ、この心拍数は家で練習した時と同じだ。あの時も喋れたんだから、今回も大丈夫だ」
緊張による身体反応(動悸)を、「異常事態」ではなく「予行演習通りの状態」だと脳に覚えさせるのだ。これから重要な商談や面接を控えている人は、ぜひ心拍数を上げた練習をして挑んでみてほしい。驚くほど自信になるはずだ。
■ステップ3:自分を「主役」から引きずり下ろす
最後は、意識の持ち方だ。緊張する理由は「自分をよく見せようとするから」とよく言われる。しかし、人生が決まるような面接やプレゼンで、自分自身がいいパフォーマンスを目指すのは当然だ。「カッコつけるのをやめたら緊張しなくなりました」なんて、そんな簡単な話があるわけがない。
私は緊張する場面をどのようにとらえればいいのか考え続け、一つの結論が出た。
アナウンサー時代、リポーターとして現場に立つ中で、緊張を忘れて無我夢中で伝え「良いリポートだった」と褒められたことがある。あのとき、自分はどんな精神状態だったのか。振り返って気づいた。主役が「自分」ではなく、「届けたい内容」になっていたのだ。
「自分がどう見られるか」はどうでもよかった。現場で起きていること、取材で見つけた情報。それを届けることに集中していた。すると、緊張ではなく「覚悟」のような感覚になり、結果としていいパフォーマンスができたのだ。
この考え方は、いろいろな場面に応用できる。歌手の主役は楽曲。芸人の主役はネタ。気象キャスターの主役は天気。自分自身を輝かせようとするのではなく、届けたい中身を輝かせることに集中する。
就活や転職の面接でも同じだ。主役は「今日の自分」ではなく、「これまでの経験」や「未来のビジョン」だ。今この瞬間の印象をよくしようとするのではなく、中身を相手に渡すことに集中する。
プレゼンなら、さらにイメージしやすい。主役は喋っている自分ではなく、ビジネスプランや商品だ。自分がかっこよく見えることより、プレゼンの中身を輝かせることに集中すればいい。
「届けたい内容さえ伝われば、自分はどう見られてもいい」。そうやって「自分」という主役を降りた瞬間、過剰な自意識から解放される。結果として、あなたの言葉は緊張に邪魔されることなく、相手の心に真っ直ぐ届くようになるはずだ。
■緊張はなくならない。でも、乗り越えられる
私は今でも緊張する。新しい番組や大勢の前での講演前は、相変わらず心拍数が上がり、足が震えることだってある。
それでも、昔のように逃げ出したいとは思わない。「お、来たな」と受け入れ、スクワットで慣らした心臓を感じながら、「大切な情報」を届けることに集中する。
緊張するのは、あなたがその場に対して真剣である証拠だ。震える手も、高鳴る鼓動も、すべて味方につけて、「よし、緊張しているな」とつぶやいてみてほしい。その瞬間、あなたはもう「あがり症」ではなく「本番に強い人」に変わっているはずだ。

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佐藤 圭一(さとう・けいいち)

気象キャスター、リポーター

長野県岡谷市出身。学生時代、アナウンサーを志すも100社以上から不採用通知を受け取る。それでも粘り強く挑戦を続け、ローカル局でキャリアをスタート。その後、文化放送の報道記者・リポーターとして国会や首相官邸、災害現場など幅広い取材を経験。現在は気象予報士としての資格を生かし全国ネットのテレビ局やラジオ局で気象キャスターとして活動している。

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(気象キャスター、リポーター 佐藤 圭一)
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