※本稿は、陶山健人『世界史の食べ歩き方』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。
■「世界一厳しい」からこそ「世界一安全」
日本からテルアビブに行く場合、エルアル・イスラエル航空の直行便が出ています。ご存知の方もいるかもしれませんが、エルアル・イスラエル航空は世界一搭乗が厳しい航空会社として有名で、あまりの厳しさから他社の経由便で行く人がいるくらいです。
何が厳しいのかというと飛行機に乗るまでのチェックインや保安検査で徹底的に乗客を調べ上げます。イスラエルは、テロの脅威に晒されており、セキュリティ面ですごく神経質です。
逆に考えると、イスラエル基準の検査をクリアした人しか搭乗できないので、テロのリスクは非常に少なく、さらに世界中の航空会社の中で唯一ミサイル回避システムを装備した機材を商用民間機として飛ばしているので、世界一安全な航空会社とも言われています。
■チェックインの前に「取り調べ」がある
エルアル・イスラエル航空は、テルアビブまでのエコノミークラスで片道約14万円。最短でイスラエルに入れるので高額な運賃になるのはしかたがないですが、時間をお金で買うと思えば、コスパは良いのかもしれません。
本来国際線のチェックインは搭乗3時間前が理想的と言われていますが、エルアル・イスラエル航空は搭乗4時間30分以上前にチェックインを受けるようにアナウンスされていました。普通のチェックインなら荷物を預けてパスポートの確認と簡単な質問で、混んでいなければ10分もあれば終わるでしょう。
しかしエルアル・イスラエル航空は違います。
■航空会社の職員が渡航歴を細かくチェック
そこには10人ほどのエルアル・イスラエル航空のスタッフと日本人の通訳が2名いました。乗客に直接尋問するのはエルアル・イスラエル航空の職員が必ず行います。この日の乗客は、ほとんどがイスラエル人だったので割とスムーズに流れていましたが、外国人の乗客は徹底的に調べます。
成田発の便なので日本語通訳がサポートしてくれますが、基本的に全て英語で大量の質問をされます。質問に答えられない場合は、最悪搭乗を拒否されます。
まずは、パスポートのスタンプページに押されているスタンプを、一つひとつチェックされ、当時の渡航理由などを聞かれました。さらに自己申告で過去1年以内に訪問したことがある国を用紙に書いてくれと言われました。スタンプレスの訪問国を把握するためだと思いますが、かなりめんどくさいです。後から虚偽がバレると、大変なことになる可能性があるので正直に書きました。
■次は持ち込み荷物を徹底的にチェック
大量にスタンプがある人ほど時間がかかる可能性があります。
また、タイと韓国の入国スタンプが異常に多いけど、なぜなんだ? としつこく聞かれて、高頻度で行くのか理由を細かく説明するように言われました。このインタビューだけで1時間以上かかりました。なんとかエルアル・イスラエル航空スタッフからOKをもらい、ようやくチェックインカウンターへ。
エルアル・イスラエル航空のスタッフによる厳しい荷物チェックです。全てスタッフがカバンを開けて中身をチェックします。預けるスーツケースはそこまで厳しく見られませんでしたが、持ち込みの荷物は全て一旦取り出して目視でチェックがありました。一つひとつ金属探知機で入念に調べています。それが終わればようやくチェックインカウンターでチケットの発券と荷物の預け作業を行い完了です。ここまでで相当メンタルがやられます。
一連の検査でやたら監視している人がいるように感じました。エルアル・イスラエル航空のスタッフは制服を着ているので分かるのですが、おそらくイスラエル人のセキュリティの人が私服やスーツを着てウロウロしていて、取り調べ中に見張られていたのを覚えています。
■ゲート前の「エルアル部屋」でパンツ1丁に
そして保安検査を受けて日本を出国し、これで後は飛行機に搭乗します。と、思いきや、搭乗時刻の30分前に必ずゲート前に並ぶように言われました。搭乗時刻30分前は流石に早すぎだろうと思ったのですが、これには意味がありました。なんと最終のセキュリティチェックがもう1回あるとのことでした。
エルアル・イスラエル航空の搭乗ゲートに向かうと、今まで成田空港で見たこともない即席で作ったアクリル板で囲われた小部屋が設置してありました。その小部屋の中で対象者は最終的な全身検査が行われます。外部からは完全に見えないようになっており、手荷物や着ている衣服や靴も全てX線検査機と金属探知機で調べます。搭乗者全員ではなく選ばれた乗客だけやる形だそうですが、もちろん私は選ばれています。
この謎すぎる小部屋を私は成田の「エルアル部屋」と名付けました。
すでにメンタルがボロボロになっている状態に、これは相当萎えます。さらに下着以外の衣服と靴も脱いでトレーに並べるように言われました。まさかの成田空港でパンツ1丁の姿になって、金属探知機で全身検査です。
■フレンドリーなCAさんの優しさが染みた
ゲート付近の待合で待機している大勢の乗客たちはアクリル板で囲われた部屋の中で、私がほぼ全裸に近い状態で検査をされている状況など想像もつかないでしょう。これって女性の場合はどうなるんでしょう? もちろん女性スタッフが対応するとは思いますが、拷問でしかないと思います。
検査が終わると、全てのチェックが完了したので「お疲れ様でした」と言われました。一連の流れを全てフルコースで体験し、多くの人が避ける理由が分かりました。
そしていよいよ搭乗です。
私が利用した日は乗客が少なめで、横に誰も来なかったので1列独占で利用できました。事前情報だと機内にはイスラエルの私服警察官が何名も乗っており、機内で写真や動画を撮ることはできないと聞いていたのですが、全くそんなことはなかったです。むしろ、CAさんが写真撮影を手伝ってくれるくらいフレンドリーで先ほどの鬼の検査後だったので優しさが身に染みるくらいです。
■「世界一厳しい入国審査」のはずが…
機内食ですがイスラエルは厳格なユダヤ教の国なので、もちろん機内食もユダヤ教に合わせた食事です。そもそもユダヤ料理について、あまり深い知識はなかったのであまり気にしてなかったのですが、出てきたエコノミークラスの機内食は普通に美味しかったです。
新鮮なサラダやフムス、熱々のパンやトマトペンネなど、野菜多めでヘルシーでした。お菓子やジュースなど何度も出てきました。CAさんたちもとても愛想が良く、優しい人ばかりでした。
テルアビブ空港に到着しました。ここで最後の難関です。また、世界一厳しい入国審査を受けます。すでに覚悟はできていましたので淡々と進みます。飛行機を降りて少し歩くとキオスクが置いてありそこで外国人は顔写真の撮影とパスポート情報の読み込みをしなければなりません。操作は日本語にも対応していたのでここは簡単です。完了するとレシートが出てくるので受けとってさらに進みます。空港内はとても綺麗で先進的です。
■まさかの「質問ゼロ」でイスラエル入国
イミグレーションが見えてきました。自分から見て左側には大量のアフリカ系と思われる方々がまとめられて待たされているのを横目で見ました。おそらく審査にすごく時間がかかる人は選別されているのではないかと思いました。
審査場に入る手前に係員がいて、先ほどのレシートとパスポートを見せるように指示をしてきます。その係員の指示でどのレーンに並ぶのか指示されます。自分の順番が来たので進むと係員がレシートをチラ見してお前はこのまま真っ直ぐ進めと指示をされました。この時点でかなり緊張しています。
指示通り進むとそこは自動化ゲートでした。自動化ゲートの端末に先ほどのレシートのバーコードを読み込ませて扉が開きます。そしてその先は荷物受け取り場でした。えっ??? 混乱して言葉を失いました。荷物受け取り場の先は空港の外です。結果をいうとこれで入国審査は終わりでした。まさかの質問ゼロで簡単に入国手続きが終わってしまいました。
現在は電子渡航認証システム「ETA-IL」が日本人の入国には必要になりました。申請料は25シュケル(約1200円)が必要なので、ノービザで行けなくなったのでご注意ください。
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陶山 健人(すやま・けんと)
YouTuber/クリエイター
1989年生まれ。愛知県出身。地元大手企業で10年間の会社員時代を経て脱サラ。2018年YouTubeチャンネルを開始。登録者30万人超の「SU channel / 旅行」アカウントを運営し法人化。現在はSUポメロ株式会社の代表取締役。交通関連、エアライン、ホテル、海外渡航情報、現地グルメなどに精通しつつ日本人があまり行かない国や街、様々な国境エリアを実際に自ら訪れ、リアルな様子や体験談をわかりやすくまとめてコンテンツとして提供。視聴者を楽しませる現場主義スタイルが人気。実用的な旅行情報と親しみやすい人柄で多くの視聴者に愛され影響力も持つクリエイター。座右の銘は「思い立ったら即行動!」。好物はうなぎ。
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(YouTuber/クリエイター 陶山 健人)

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